会社設立代行サービスの選び方|依頼できる範囲と費用の比べ方
「会社設立を誰かに頼みたいけれど、司法書士と行政書士と税理士で何が違うのか分からない」「代行費用が無料と書いてあるのはなぜか」——設立前に一度はぶつかる疑問です。この記事では、依頼先ごとにできることの範囲、見積もりの内訳の読み方、そして自分の状況ならどれを選べばよいかの判断の順番を整理します。金額そのものは各事務所・各サービスで違うため、比べ方のほうを持ち帰ってください。
この記事の結論
- 会社設立の費用は「国や公証役場に納める法定費用」と「依頼先に払う報酬」の二階建てで、比較すべきは後者だけです。
- 登記申請そのものを代理できるのは司法書士(および弁護士)で、行政書士は定款作成や許認可、税理士は設立後の税務を中心に支援します。
- 「設立代行費用が実質不要」とうたうサービスの多くは顧問契約や口座開設などの条件が前提のため、総額と継続コストで比べるのが安全です。
会社設立の費用は「法定費用」と「報酬」に分けて考える
会社設立にかかるお金は、大きく二つに分かれます。ひとつは、公証役場に納める定款認証の費用や、法務局に納める登録免許税などの法定費用です。これは誰に頼んでも、自分でやっても発生するもので、会社の種類(株式会社か合同会社か)や資本金の額によって扱いが変わります。金額は制度改正で変わることがあるため、法務局・公証役場・日本公証人連合会などの公式情報で最新のものを確認してください。
もうひとつが、司法書士・行政書士・税理士や設立代行サービスに支払う報酬です。比較して差が出るのはこちらだけなので、見積もりを並べるときは「法定費用込みの総額」なのか「報酬だけ」なのかを必ずそろえます。片方が総額表示、もう片方が報酬のみだと、見かけ上の差が実態とずれます。
もうひとつ覚えておきたいのが、紙の定款には収入印紙が必要になる一方、電子定款であればその負担が生じない扱いになっている点です。電子定款に対応している依頼先を選ぶと、その分の差が出ることがあります。対応可否は事前に確認しておきましょう。
設立にかかる法定費用
どちらの形態でもかかる、国が定めた費用です。設立代行サービスの手数料は、これとは別にかかります。
| 項目 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 登録免許税(設立登記) | 資本金の額の1,000分の7。15万円に満たないときは1件につき15万円 | 資本金の額の1,000分の7。6万円に満たないときは1件につき6万円 |
| 定款の認証手数料 | 資本金100万円未満 3万円/100万円以上300万円未満 4万円/300万円以上 5万円 | 日本公証人連合会の手数料の案内に掲載なし |
| 定款の謄本(同一の情報の提供) | 1枚につき250円 | 日本公証人連合会の手数料の案内に掲載なし |
| 収入印紙(紙の定款の場合) | 4万円 | 日本公証人連合会の手数料の案内に掲載なし |
司法書士・行政書士・税理士、依頼できる範囲はどう違う?
まず前提として、設立登記の申請を本人に代わって行えるのは司法書士(および弁護士)です。行政書士は定款の作成や電子定款の認証手続きのサポート、設立後の営業許可(建設業、飲食業、古物商、人材派遣など)を得意とする専門家で、登記申請そのものは扱いが異なります。「登記まで一貫して任せたい」なら司法書士、「許認可が必要な業種で、そこまで見据えて相談したい」なら行政書士が入口になりやすい、と考えると整理しやすいはずです。
税理士は、設立そのものよりも設立後が本領です。資本金や決算期の決め方、役員報酬の設定、消費税の課税事業者になるかどうかの判断など、あとから変えにくい論点について相談できます。多くの税理士事務所は提携の司法書士と組んで登記まで手配する体制をとっているため、「顧問契約を前提に設立もまとめて」という依頼の仕方ができます。
社会保険労務士は、従業員を雇う予定がある場合に関わってきます。社会保険・労働保険の手続きや就業規則の整備は設立直後から発生するため、採用を1年以内に考えているなら、設立の段階で相談先だけ決めておくと後が楽です。それぞれの専門家で扱える業務の範囲は法律で定められているので、一社ですべてが完結すると期待しすぎないほうが現実的です。
オンラインの会社設立サービスはどんな会社に向く?
フォームに入力すると定款や登記書類の案が自動で作成され、提携専門家が手続きを進める、という形式のオンラインサービスも広く使われています。向いているのは、事業内容がシンプルで、発起人が一人または少人数、資本金も大きくなく、許認可が不要なケースです。決めることが少ないほど、定型フローの利点が出ます。
一方で、株主が複数いて出資比率や議決権の設計を相談したい、種類株式や役員構成に希望がある、許認可や外国人役員が絡む、といった場合は、個別に相談できる専門家のほうが向きます。定款は後から変更できますが、変更には手間と費用がかかるため、最初の設計に迷いがある段階で定型フローに乗せるのは避けたほうが無難です。
なお「設立代行費用が実質不要」と表示されているサービスは、税理士との顧問契約、指定の金融機関での口座開設、特定のサービスへの申し込みなどが条件になっていることがあります。条件そのものが自分の計画と合っていれば合理的ですが、条件を外したときにいくらになるのか、顧問契約は何か月縛りがあるのかまで確認してから判断してください。料金やプランの内容は変わるため、各社の公式サイトで最新の条件を確認するのが確実です。
迷ったら、この順番で決める
判断の順番はシンプルです。第一に、許認可が必要な業種かどうか。飲食、建設、運送、古物、人材紹介などに当てはまるなら、許認可に慣れた行政書士に最初に相談すると、定款の事業目的の書き方を含めて手戻りが減ります。事業目的の記載が許認可の要件を満たしていないと、後で定款変更が必要になることがあります。
第二に、設立後すぐに税理士が必要かどうか。売上の見込みが立っている、インボイス登録や消費税の判断が絡む、役員報酬を決めなければならない——こうした事情があるなら、税理士主導で設立から入るほうが一貫します。第三に、そのどちらでもなく、単に登記を正確に速く済ませたい場合は、司法書士に直接依頼するか、オンラインの設立サービスを使う選択になります。
最後に、そもそも自分で申請する道もあります。法務局の様式や記載例は公開されており、合同会社で発起人が自分一人、といったシンプルな構成なら自力で進める人もいます。ただし、書類の不備で補正になると設立日がずれます。設立日を特定の日に合わせたい、開業準備で手がいっぱい、という場合は、時間を買うつもりで依頼するのが現実的です。
見積もりを取るときに確認したい5つのこと
依頼先を2〜3社に絞ったら、同じ質問を投げて回答を比べます。①見積もりは法定費用を含む総額か、報酬のみか。②電子定款に対応しているか。③印鑑証明書の取得や法人実印の作成など、自分でやる作業はどこまで残るか。④設立後の税務署・都道府県・市区町村への届出、年金事務所への手続きは範囲に含まれるか。⑤登記完了までの目安期間と、希望の設立日に間に合うか。
特に④は差が出やすいところです。登記が終わっても、法人設立届出書や青色申告の承認申請、給与支払事務所等の開設届出など、期限のある届出が続きます。ここまで面倒を見てもらえるのか、それとも登記までなのかで、実際の手間はかなり変わります。
準備するものも早めに聞いておきましょう。一般には、発起人・役員の印鑑証明書、本人確認書類、会社の商号や事業目的、本店所在地、資本金額、決算期などの基本情報、法人実印が必要になります。資本金の払込を証明する通帳の写しも使うため、個人の口座を一つ空けておくとスムーズです。
「安く済ませる」ときに気をつけたい線引き
費用を抑えたいという動機はまっとうですが、報酬だけを見て決めると、後で別の形でコストが戻ってくることがあります。たとえば、事業目的が実態と合っておらず許認可の申請時に定款変更が必要になった、決算期の設定が繁忙期と重なって毎年しんどい、資本金の額の決め方が消費税や許認可の要件と噛み合わなかった——こうしたものは、設立時に数十分相談していれば避けられた可能性があります。
逆に、相談すべき論点がほとんどない会社もあります。ひとり社長の合同会社で、許認可不要、当面は売上も小さい、というケースなら、手続きの正確さと速さを基準に選んで差し支えないでしょう。自分がどちらのタイプかを見極めるのが、費用の使いどころを決める第一歩です。
なお、資本金の額、役員報酬、決算期の設定は、税務上の取り扱いに影響することがあります。一般的な考え方の範囲を超える判断が必要なときは、税理士にご確認ください。登記や定款の設計については司法書士、許認可の要件については行政書士、従業員を雇う場合の社会保険や就業規則については社会保険労務士に相談すると、それぞれの専門領域に沿った回答が得られます。
よくある質問
会社設立の代行費用の相場はどのくらいですか?
報酬額は依頼先の種類や業務範囲(登記のみか、設立後の届出まで含むか)によって幅があり、一律の相場を示すことは難しいのが実情です。複数の事務所・サービスから、法定費用を含めた総額ベースで見積もりを取り、同じ条件で比べてください。金額は各事務所やサービスの公式サイト、または直接の問い合わせで最新のものを確認しましょう。
会社設立は司法書士と行政書士のどちらに頼むべきですか?
設立登記の申請代理を任せたいなら司法書士(または弁護士)、許認可が必要な業種で事業目的の設計から相談したいなら行政書士が入口になりやすいです。両者が連携している事務所もあるため、自分の業種に許認可があるかどうかをまず確認し、その答えで振り分けるとスムーズです。
設立代行費用が実質かからないサービスは、どういう仕組みですか?
多くの場合、税理士の顧問契約、指定の口座開設、特定サービスへの申し込みなどが条件になっています。その条件が自社の計画と合致していれば合理的な選択になりますが、継続的に発生する費用を含めた総額で判断するのが安全です。条件の詳細は各社の公式サイトで確認してください。
会社設立を自分でやるのと頼むのでは、何が違いますか?
法定費用は自分でやっても発生するため、差が出るのは報酬分と、かかる時間・手戻りのリスクです。書類の不備で補正になると設立日がずれることがあるため、設立日を決めている場合や開業準備で手が回らない場合は、依頼を検討する価値があります。