本店移転したときの許認可の届出|建設業・宅建業・古物商の手続き
本店移転は、法務局での登記が終わればおしまい、ではありません。許認可を持っている会社の場合、その許認可ごとに「どこへ」「いつまでに」届け出るかが決まっていて、しかも同じ都道府県内の移転か、他県への移転かで手続きの重さがまったく変わります。ここでは、相談の多い建設業・宅建業・古物商を中心に、移転後に何をどの順で進めるかを整理します。
この記事の結論
- 本店移転の許認可手続きは、まず法務局で移転登記を済ませて登記事項証明書を取り、そのうえで許認可ごとの窓口(都道府県庁・地方整備局・警察署など)へ変更届を出す、という順番で進めます。
- 同じ都道府県内の移転なら多くは「変更届」で足りますが、他県への移転になると建設業許可は許可換え新規、宅建業免許は免許換えといった、あらためて申請し直す手続きになることがあります。
- 宅建業で営業保証金を供託している場合は、主たる事務所の最寄りの供託所が変わるため、保管替えの請求や新たな供託が必要になることがあり、保証協会に加入している場合は協会経由の手続きになります。
本店移転後の許認可の届出は、どの順番で進める?
最初にやることは、法務局での本店移転登記です。許認可の変更届では、ほぼ例外なく登記事項証明書(履歴事項全部証明書)の添付を求められます。登記が完了していないと添付書類がそろわないため、先に登記、次に許認可、という順番が基本になります。登記完了までは日数がかかるので、移転日が決まった段階で司法書士に相談しておくと、後工程の遅れを防ぎやすくなります。
次に、自社が持っている許認可を棚卸しします。建設業許可、宅建業免許、古物商許可のほか、産業廃棄物収集運搬業、一般貨物自動車運送事業、旅行業、飲食店営業、派遣・職業紹介、酒類販売など、会社によっては複数を抱えているはずです。許可証の写しをすべて並べ、「許可権者(知事か大臣か、どの公安委員会か)」「事務所の所在地が許可の要件になっているか」を1件ずつ確認します。
そのうえで、届出期限の短いものから着手します。許認可の変更届は、変更後の一定期間内に提出することが法令で定められているものが多く、なかには数週間程度と短いものもあります。期限は許認可ごとに異なるため、所管の窓口や公式の手引きで最新の内容を確認してください。届出が遅れると、更新時に指摘を受けたり、手続きが長引いたりすることがあります。
建設業許可の本店移転:同一県内の変更届と、他県への許可換え新規
建設業許可では、商号・所在地・役員などに変更があったときに変更届出書を提出することとされています。本店(主たる営業所)の移転もこれにあたり、同じ都道府県内での移転であれば、許可権者である知事あての変更届で対応するのが一般的です。提出先は都道府県の建設業担当課(土木事務所などの出先が窓口になる地域もあります)で、登記事項証明書や、新しい営業所の使用権原・写真などを求められることがあります。様式や添付書類は都道府県ごとに細かく異なるので、必ずその県の手引きを見てください。
他県へ本店を移す場合は、扱いが変わります。たとえばA県知事許可の会社がB県へ本店を移し、A県に営業所が残らないときは、B県知事の許可を取り直す「許可換え新規」の申請になります。営業所が複数の都道府県にまたがることになれば、国土交通大臣許可への許可換えが必要になる場合もあります。どのパターンにあたるかは、移転後に「どの都道府県に営業所が残るか」で決まると考えると整理しやすいです。
許可換え新規は、実質的に新規申請と同じ書類を求められることが多く、準備に時間がかかります。移転が決まった段階で、移転先の都道府県の窓口に「現在の許可状況と移転予定」を伝えて、必要書類と流れを確認しておくのが安全です。なお、許可換えの申請中の取扱いや、経営業務の管理体制・専任技術者の配置の確認など、実務で判断が分かれる点もあります。判断に迷う部分は、建設業に詳しい行政書士や所管窓口に確認してください。
あわせて、公共工事の入札参加資格(経営事項審査や各発注機関への登録)も所在地情報の変更手続きが必要になります。許可の変更届だけで自動的に反映されるわけではないため、入札参加資格を持っている会社は、発注機関ごとの変更手続きも忘れずにリスト化しておきましょう。
宅建業の本店移転:届出で済む場合と、免許換えが必要な場合
宅地建物取引業では、事務所の所在地は免許の内容そのものです。同じ都道府県内で本店を移転する場合は、免許権者である知事あての変更の届出で対応するのが通常で、都道府県の宅建業担当課へ提出します。あわせて、免許証の書換えを求められることが多いため、窓口の案内に従って手続きします。
一方、他県へ本店を移す場合は「免許換え」になります。A県知事免許の会社がB県に本店を移し、A県に事務所が残らないならB県知事免許へ、事務所が二つ以上の都道府県にまたがるなら国土交通大臣免許へ、というのが基本の考え方です。免許換えは新しい免許権者あてに申請し、免許番号が変わる・免許の有効期間が新しく始まるといった影響も出ます。名刺やホームページ、重要事項説明書の記載にも関わるので、切り替えのタイミングを社内で共有しておきましょう。
手続きの重さを考えると、宅建業は「移転先が同じ県かどうか」を最初に確認するのが分かれ道です。同一県内なら届出中心、他県なら免許換えの申請、という整理で準備を始めてください。実際の書式・添付書類・窓口の運用は自治体で差があるため、移転先の都道府県の手引きで最新の内容を確認するのが確実です。
営業保証金は本店移転でどうなる?保証協会加入の場合との違い
営業保証金を自ら供託している会社の場合、本店移転で論点になるのが供託所です。営業保証金は主たる事務所の最寄りの供託所に供託する仕組みなので、本店が移って最寄りの供託所が変わると、そのままにしておけない場合があります。金銭のみで供託しているか、有価証券を含んでいるかによって、保管替えを請求する方法と、移転先の供託所に新たに供託してから従前の分の取戻しを受ける方法のどちらになるかが分かれます。
この手続きは順番を誤ると営業に支障が出ることがあるため、移転日より前に免許権者の窓口と供託所の両方に相談しておくことをおすすめします。供託に関する具体的な手続きや必要書類は、法務局・供託所の案内で確認してください。
宅地建物取引業保証協会に加入している場合は、弁済業務保証金分担金を協会に納付する仕組みのため、自前の供託そのものは不要なのが通常です。ただし、協会への変更の届出や、支部の管轄が変わることに伴う手続きが生じます。協会経由で免許権者への届出書類を提出する運用になっている地域もあるので、まず加入している協会の支部に連絡して、必要な手続きと順番を確認するのが早道です。
古物商の本店移転:どこの警察署へ、何を出す?
古物商許可は、公安委員会から受けている許可です。届出先は公安委員会ですが、実際の窓口は警察署の生活安全課(防犯係)で、主たる営業所の所在地を管轄する警察署が受付になります。本店(主たる営業所)を移転したときは変更届出書を提出し、許可証の記載事項が変わる場合は書換えの申請もあわせて行うのが一般的です。
古物営業法の改正により、主たる営業所の考え方や、他の都道府県へ移る場合の手続きが整理されています。現在は、他県へ主たる営業所を移す場合でも、あらためて許可を取り直すのではなく、届出で対応できる取扱いになっています。ただし、どの警察署に出すか(移転前の管轄か、移転後の管轄か)や、届出の時期については運用の確認が必要なので、移転前に管轄の警察署へ電話で流れを聞いておくと二度手間になりません。
古物商の変更届は、期限が比較的短く定められています。登記事項証明書を添付する必要がある場合の取扱いも含め、期限と必要書類は警察署の案内や都道府県警のウェブサイトで確認してください。なお、URLを使った取引をしている場合はその届出、営業所を増減した場合の届出など、所在地以外の変更も同時に発生していないか見直しておくと安心です。
許認可以外に必要な届出と、抜けを防ぐチェックの順番
本店移転では、許認可のほかにも届出先が広がります。税務では、法務局での登記変更が一定範囲で連携される仕組みが整ってきている一方、地方税や自治体の手続きは別に必要になることがあります。移転に伴って納税地や提出先の税務署・都道府県税事務所・市区町村が変わる場合もあるため、取扱いは顧問税理士や所轄の税務署に確認してください。
労務では、日本年金機構への事業所の所在地変更、労働基準監督署・ハローワークへの届出が関係します。管轄が変わるかどうかで様式や提出先が変わるため、社会保険労務士に確認するか、各窓口の案内で手順をそろえておくと進めやすいです。また、銀行口座、クレジットカード、リース・賃貸契約、取引先への通知、印鑑・名刺・請求書の住所、ホームページや特定商取引法に基づく表記なども、移転日を起点に順に直していきます。
抜けを防ぐコツは、「許可証・免許証・登録票がある手続き」をすべて紙で並べ、1件ずつ①届出先②期限③必要書類④担当者、の4項目を書き出すことです。そのうえで、期限が短いもの(古物商など)から着手し、時間のかかるもの(建設業の許可換え新規、宅建業の免許換え)は移転が決まった段階で窓口に事前相談する、という二本立てで進めると、営業を止めずに切り替えやすくなります。
本店移転に伴う許認可の手続きは、同じ「移転」でも、許認可の種類と移転先の都道府県によって必要な手続きがまったく変わります。登記そのものは司法書士、建設業許可や宅建業免許・古物商許可の申請実務は行政書士、納税地や税務の取扱いは税理士、社会保険・労働保険の手続きは社会保険労務士と、相談先を分けて考えると迷いが減ります。移転日が決まったら早めに声をかけ、スケジュールを一緒に組み立てておくことをおすすめします。
よくある質問
本店移転の変更届は、登記が終わる前に出してもいいですか?
多くの許認可では登記事項証明書の添付を求められるため、実務上は登記の完了を待ってから提出することになります。ただし、届出の期限は移転の日を起点に数えるものが多いので、登記申請と同時に窓口へ相談し、提出時期の考え方を確認しておくと安心です。
建設業許可を持っていて他県へ本店を移す場合、許可は一度なくなりますか?
移転先の都道府県知事の許可を取り直す「許可換え新規」になるのが一般的で、申請中の取扱いや従前の許可の扱いには決まりがあります。工事の受注スケジュールに影響することがあるため、移転が決まった時点で移転先の都道府県の窓口や、建設業に詳しい行政書士に確認してください。
宅建業で営業保証金を供託しています。本店移転で何をすればいいですか?
主たる事務所の最寄りの供託所が変わる場合、保管替えを請求する方法と、新たに供託してから従前分の取戻しを受ける方法があり、金銭のみか有価証券を含むかで扱いが分かれます。順番を誤ると営業に支障が出ることがあるので、免許権者の窓口と供託所に事前に相談してください。
古物商許可は、他の都道府県に本店を移しても取り直さなくていいのですか?
現在は、主たる営業所を他県へ移す場合も届出で対応できる取扱いになっています。ただし提出先の警察署や期限、許可証の書換えの要否は運用の確認が必要なので、移転前に管轄の警察署へ流れを問い合わせておくとスムーズです。