法人口座の審査に落ちた理由と、再申し込みまでにやること

・法人口座・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

法人口座の開設を断られると、「自分の会社に何か問題があるのでは」と不安になります。ただ、金融機関は落ちた理由を教えてくれないのが一般的で、そこで止まってしまう人がとても多いところです。この記事では、審査で見られやすいポイントを整理したうえで、再申し込みまでに何を、どの順番で整えるかを具体的にまとめます。

この記事の結論

  • 法人口座の審査に落ちても理由は原則開示されないため、事業実態が書類で伝わっているかを自分で点検し直すのが再申し込みの出発点です。
  • 断られる要因としては、バーチャルオフィスなどの所在地、事業内容の説明不足、資本金や取引先の情報不足、ホームページや連絡先の不備などが挙げられやすいところです。
  • 再申し込みは同じ金融機関にすぐ出し直すより、事業計画書・契約書・請求書といった裏づけ資料をそろえたうえで、取引実態に合う別の金融機関も並行して検討するのが現実的です。

法人口座の審査に落ちたとき、まず理解しておきたいこと

まず前提として、金融機関は審査に落ちた理由を説明しないのが一般的です。問い合わせても「総合的な判断です」と返ってくることがほとんどで、ここで理由を聞き出そうとしても時間が過ぎていきます。落ちた理由そのものより、「自社の事業実態が、書類だけで第三者に伝わる状態になっていたか」を点検するほうが前に進みます。

また、審査に落ちたことは会社の信用情報のようなかたちで他行に共有されるものではありません。ある金融機関で断られても、別の金融機関では開設できたという話は珍しくありません。金融機関ごとに見るポイントや取引したい会社の像が違うためです。

一方で、犯罪収益移転防止法にもとづく本人確認や事業内容の確認は、どの金融機関でも行われます。口座の不正利用を防ぐという目的があるため、事業の中身が曖昧なまま何度出し直しても結果は変わりにくい、という点は押さえておきたいところです。

法人口座の審査で落ちる理由として挙げられやすいポイント

よく指摘されるのが、所在地です。バーチャルオフィスやレンタルオフィス、自宅を登記地にしている場合、事業の実態が確認しにくいという理由で慎重に見られることがあります。これ自体が問題というわけではなく、そこで実際に業務をしている裏づけを添えられるかどうかが分かれ目になります。

次に、事業内容の説明です。定款の事業目的が十数行にわたって並んでいて、しかも相互に関係のない業種が混ざっていると、「実際に何をする会社か」が読み取れません。設立時に将来の可能性を詰め込みすぎた結果、かえって審査で不利に働くケースがあります。

ほかに挙げられやすいのは、資本金が事業規模に対して極端に小さい、固定電話や会社名義の連絡先がない、ホームページや会社案内がなく事業の説明資料が何もない、取引先や売上の見込みを説明できない、といった点です。代表者の本人確認書類や住所と、登記上の情報が食い違っているケースも確認に時間がかかります。

再申し込みまでにそろえる書類と、整える順番

順番としては、①登記・定款まわりの整合性、②事業実態を示す資料、③連絡先とオンライン上の情報、の順に手を付けるのが効率的です。まず履歴事項全部証明書と定款を並べ、所在地・代表者住所・事業目的が現状と合っているかを確認します。引っ越し後に登記変更をしていない、といったズレはここで見つかります。

次に、事業実態の裏づけです。すでに取引があるなら、契約書・発注書・請求書・入金記録の控えを用意します。まだ取引前なら、事業計画書、見込み客とのやり取り、サービス紹介資料などを準備します。「誰から、何の対価として、どのくらいの入金があるのか」を一枚で説明できる資料があると、窓口での説明がぐっと楽になります。

最後に連絡先です。会社名義の電話番号、会社のメールアドレス、事業内容・代表者名・所在地が載ったホームページを用意します。オフィスを借りているなら賃貸借契約書、自宅兼事務所なら業務スペースが分かる写真を添えられるようにしておくと、所在地の確認がスムーズになります。

同じ銀行に再申し込みするか、別の金融機関を選ぶか

判断の順番としては、まず「落ちた原因に心当たりがあり、それを解消できたか」を見ます。登記の不備を直した、契約書がそろった、ホームページを作ったなど、前回と明確に状況が変わったのであれば、同じ金融機関への再申し込みにも意味があります。一般には、状況が変わらないうちに短期間で出し直すのは避けたほうがよいとされています。

原因に心当たりがない、あるいは改善に時間がかかる場合は、取引実態に合う別の金融機関を並行して検討します。地域に事務所や店舗があり、地元での取引が中心なら、地方銀行や信用金庫に足を運んで事業を直接説明する方法が向きます。担当者と顔を合わせて話せる点は、書類だけでは伝わらない部分を補えます。

オンライン中心で、取引先も全国に散っているならネット銀行が候補になります。手続きがオンラインで完結しやすい一方、書類の整合性はきっちり見られます。なお、将来の融資まで視野に入れるなら、早い段階からメガバンクや地域金融機関との関係をつくっておく、という考え方もあります。手数料やサービス内容は各社の公式サイトで最新の情報を確認してください。

申込時の説明で、伝わり方が変わるところ

申込書や面談では、事業内容を「業種名」ではなく「誰に、何を売り、どう入金されるか」で説明します。たとえば「コンサルティング業」だけでは伝わりませんが、「中小の製造業向けに生産管理の改善支援を月額契約で提供し、法人から毎月銀行振込で入金される」と言えれば、口座の使われ方まで想像してもらえます。

想定する入出金の内容も、あらかじめ整理しておきます。主な入金元、月あたりのおおよその取引件数、海外送金の有無などです。海外との取引や現金の扱いが多い業種は、確認事項が増える傾向があるため、説明資料を厚めに用意しておくと安心です。

設立直後で取引実績がない場合は、実績がないこと自体を隠さず、そのうえで見込みを示します。前職での経験、すでに話が進んでいる取引先、開業までのスケジュールなどを事業計画書にまとめておくと、説明に一貫性が出ます。

開設できるまでの間、どう回すか

口座が開くまでの期間、代表者個人の口座で会社の入出金を一時的に受けるのは、経理上の切り分けが煩雑になりやすい方法です。やむを得ず立て替える場合は、いつ・何に・いくら使ったかを記録し、領収書を会社分として保管しておきます。後の処理について、税理士に扱いを確認しておくと安心です。

この期間を、書類を整える時間に充てるという考え方もできます。会計ソフトの導入、請求書のひな形づくり、ホームページの整備などは、どのみち必要になる作業です。結果として次の申し込みの材料にもなります。

なお、複数の金融機関に同時に申し込むこと自体は一般的に行われています。ただし、そのために書類を雑に出すと、どこも通らないという事態になりかねません。一社ずつ丁寧に、同じ資料セットで説明できる状態をつくるのが近道です。

判断に迷ったら専門家に相談を

事業目的の書き方や登記内容の変更は司法書士、設立直後の経理や入出金の整理は税理士が扱う領域です。とくに定款の事業目的を見直す場合は、変更登記が必要になるため、費用と手間を含めて司法書士に相談しておくと判断しやすくなります。

許認可が必要な業種で、許認可の取得状況が審査に影響しているケースもあります。この場合は行政書士や、業種によっては弁護士への相談が向きます。自社だけで原因を推測し続けるより、書類を見てもらったほうが早く前に進むことが多いところです。

よくある質問

法人口座の審査に落ちた理由は教えてもらえますか。

金融機関は審査基準や個別の判断理由を開示しないのが一般的で、問い合わせても具体的な回答は得られにくいところです。理由を探すより、登記内容の整合性、事業実態を示す資料、連絡先やホームページの有無を自分で点検し直すほうが現実的です。

落ちた後、どれくらい期間を空けて再申し込みすればよいですか。

明確な決まりはありませんが、状況が前回と変わらないまま短期間で出し直しても結果が変わりにくいとされています。契約書や事業計画書がそろった、登記を修正したなど、説明材料が増えたタイミングを目安にするとよいでしょう。

バーチャルオフィスだと法人口座は開設できないのでしょうか。

バーチャルオフィスであることだけで一律に開設できないわけではありませんが、事業実態の確認により時間がかかることがあります。利用契約書、取引先との契約書、業務内容が分かるホームページなど、実際に事業を行っている裏づけを添えて説明する準備をしておくと進めやすくなります。

設立したばかりで売上がなくても口座は開けますか。

実績がないこと自体が直ちに開設できない理由になるわけではありません。事業計画書や見込み取引先とのやり取りなど、これからどう入出金が発生するかを説明できる資料を用意し、隠さず伝えることが大切です。

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この記事は一般的な情報をまとめたものです。税務・法務・労務の個別の判断については、税理士・弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。 料金や条件は変わることがあるため、お申し込み前に必ず各サービスの公式サイトで最新の内容をご確認ください。