労働条件通知書の相談窓口・受動喫煙などの記載|必要な項目と例文
労働条件通知書のテンプレートを埋めていくと、最後のほうに「相談窓口」「受動喫煙対策」といった見慣れない欄が出てきます。ここは空欄のままでいいのか、誰の名前を書けばいいのか、そもそも全員分に必要なのか。迷いやすいこれらの項目について、どんな働き方の人に必要で、どこまで書けばいいのかを、例文とあわせて整理します。
この記事の結論
- パートタイム・有期雇用で働く人を雇うときは、待遇に関する相談窓口を文書などで明示することが求められており、部署名や担当者の役職・連絡先を書くのが一般的な書き方です。
- 受動喫煙対策の記載は、求人を出すときの明示事項として定められているもので、労働条件通知書にも「屋内禁煙」「喫煙専用室あり」などの形で書いておくと入社後のトラブルを防ぎやすくなります。
- 同一労働同一賃金に関しては、通知書そのものに待遇差の理由を書き切る必要はなく、求められたときに説明できるよう相談窓口とあわせて体制を整えておく考え方が基本です。
労働条件通知書に書く項目は「全員共通」と「働き方ごと」の2階建て
労働条件通知書の記載項目は、大きく2つに分かれます。ひとつは雇用形態を問わず明示が求められる基本項目で、契約期間、就業場所と業務の内容、始業終業の時刻や休憩・休日、賃金の決定や支払方法、退職に関する事項などがこれにあたります。もうひとつが、パートタイム・有期雇用で働く人など、特定の働き方の人に対して追加で求められる項目です。
相談窓口の明示は、この「追加で求められる項目」の側にあります。テンプレートによっては正社員用と短時間・有期雇用者用で様式が分かれていることがあり、正社員用の様式には相談窓口欄がない場合もあります。自社のひな形がどちらなのかを最初に確認すると、空欄の扱いで迷いにくくなります。
また、2024年4月の労働条件明示のルール改正により、就業場所・業務の「変更の範囲」や、有期契約の更新上限の有無、無期転換の申込みに関する事項などが明示項目に加わっています。古いテンプレートを使い回している場合は、この観点でも一度見直しておくことをおすすめします。詳しい要件は厚生労働省の資料でご確認ください。
雇用契約書に相談窓口を書く義務があるのは、どんな人を雇うとき?
相談窓口の明示が求められるのは、主に短時間労働者(いわゆるパート・アルバイト)と有期雇用労働者を雇い入れるときです。短時間・有期雇用労働法では、これらの人に対して、昇給・退職手当・賞与の有無、そして雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口を、文書の交付などの方法で明示することとされています。フルタイムの無期雇用(一般的な正社員)については、この項目は法令上の明示事項には含まれていません。
実務上の判断としては、まず「その人の契約期間に定めがあるか」を見ます。定めがあれば有期雇用として相談窓口欄を埋めます。次に「所定労働時間が同じ事業所の通常の労働者より短いか」を見ます。短ければ短時間労働者として、やはり相談窓口を記載します。どちらにも当てはまらない人については、記載しても差し支えはなく、社内の窓口を統一して案内している会社では全員分に書いている例もあります。
ひとり社長の会社や、従業員が数名の会社でも、パート・アルバイトを雇うならこの欄は埋めることになります。専任の担当者がいない場合でも、後述のように代表者を窓口として記載する方法があります。
相談窓口の記載例|何を書けば足りるか
相談窓口として書くのは、担当者の氏名そのものより、「誰に・どうやって連絡すればよいか」が伝わる情報です。一般的には、部署名、役職、氏名、内線番号やメールアドレスのいずれかを組み合わせて書きます。担当者が代わるたびに通知書を差し替えるのが大変であれば、役職と連絡先を中心に書いておくと運用が楽になります。
記載例としては、次のような書き方があります。「相談窓口:管理部 人事課 課長(内線◯◯)」「相談窓口:総務担当 ◯◯(メール:〜)」。従業員数が少ない会社であれば「相談窓口:代表取締役 ◯◯(電話:〜)」のように、代表者自身を窓口にする書き方も使われています。社外の社会保険労務士に窓口機能を委託している場合は、その旨と連絡先を書く方法もあります。
注意したいのは、窓口を書いただけで終わらせないことです。相談が来たときに誰がどう受けるか、記録をどう残すか、といった最低限の運用を決めておくと、いざというときに慌てずに済みます。相談内容がハラスメントに関わる場合は別の体制が必要になることもあるため、窓口を一本化するのか分けるのかも、あわせて整理しておくとよいでしょう。
労働条件通知書の受動喫煙対策欄は、何をどう書く?
受動喫煙対策の明示は、もともと労働者の募集や求人申込みの際の明示事項として定められたものです。就業の場所における受動喫煙を防止するための措置の内容を示すことが求められており、求人票に書く項目として知られています。労働条件通知書の法定記載事項そのものではありませんが、求人時の内容と入社時の条件をそろえる目的で、通知書の様式に欄が設けられていることがよくあります。
書き方は難しく考える必要はなく、その事業場で実際にとっている措置をそのまま書きます。例としては「屋内全面禁煙」「敷地内全面禁煙」「屋内禁煙(屋外に喫煙場所あり)」「屋内原則禁煙、喫煙専用室あり」「喫煙可能な場所での作業あり」といった表現です。複数の就業場所がある場合や、飲食店など業態によって扱いが変わる場合は、その人が実際に働く場所の状況を書きます。
判断の順番としては、まず敷地内が禁煙かを確認し、次に屋内に喫煙できる室があるかを確認し、最後にその人の業務中に喫煙可能な場所へ立ち入る可能性があるかを確認します。求職者にとっては入社を決める材料になる情報なので、求人票の記載と通知書の記載が食い違わないようにしておくことが大切です。屋内喫煙室の構造や標識などの要件は健康増進法に基づくもので、詳細は厚生労働省の資料を確認してください。
同一労働同一賃金は、労働条件通知書にどこまで書くのか
同一労働同一賃金と呼ばれるルールは、通常の労働者とパートタイム・有期雇用労働者との間の不合理な待遇差を設けないこと、そして本人から求められたときに待遇差の内容と理由を説明することを、事業主に求めるものです。労働条件通知書に「待遇差の理由」を長々と書き込むことが求められているわけではありません。
実務では、通知書には昇給・賞与・退職手当の有無や各種手当の適用状況を正確に書き、あわせて相談窓口を明示する、という形で対応するのが一般的です。そのうえで、社内の賃金・手当の基準を整理し、「この手当は誰に支給し、なぜその範囲なのか」を説明できる状態にしておきます。説明を求められてから慌てて理屈を組み立てると、説明の内容がぶれやすくなります。
見直しの順番としては、まず各種手当(通勤手当、食事手当、精皆勤手当など)の支給範囲を確認し、次に賞与・退職金の扱い、最後に福利厚生施設の利用や教育訓練の機会を確認していくと進めやすいです。待遇差が合理的といえるかどうかの判断は個別事情に左右されるため、気になる点があれば社会保険労務士や弁護士に確認しておくと安心です。
作成から交付までの手順と、迷ったときの進め方
流れとしては、採用が決まった段階で、その人の雇用形態(無期か有期か、フルタイムか短時間か)を確定させ、それに合った様式を選びます。次に、契約期間、就業場所と業務内容およびその変更の範囲、労働時間、賃金、退職に関する事項といった基本項目を埋め、短時間・有期雇用であれば昇給・賞与・退職手当の有無と相談窓口を追記します。受動喫煙対策欄があれば、求人票と同じ内容を書きます。
交付のタイミングは、働き始める前です。実際の初日に慌てて渡すのではなく、条件を確認してもらう時間を見込んで早めに渡すほうが、認識の食い違いを減らせます。交付方法は書面が基本ですが、本人が希望した場合にメールなどの電子的な方法で送る運用も認められています。送信後に届いたかどうかを確認し、控えを社内で保管しておきましょう。
判断に迷ったときの順序はシンプルです。まず法令上の明示事項として必要かを確認し、必要でなければ「書いておいたほうがトラブルを防げるか」で考えます。相談窓口や受動喫煙対策のように、書いても不利益が生じにくい項目は、記載しておく方向で検討するとよいでしょう。
なお、契約期間の更新上限や無期転換、有期雇用から正社員への転換制度など、記載の仕方によって後々の運用に影響する項目もあります。自社の就業規則との整合も含めて確認したい場合や、待遇差の説明に不安がある場合は、社会保険労務士に相談し、必要に応じて様式そのものを見直してもらうことをおすすめします。労働契約の解釈が争点になりそうな場面では、弁護士に相談する選択肢もあります。
よくある質問
雇用契約書に相談窓口を書かないと違反になりますか?
短時間労働者や有期雇用労働者を雇い入れる際には、雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口を文書などで明示することが求められています。記載が漏れていると、行政からの指導の対象となる可能性がありますので、該当する方については様式を確認して追記しておくとよいでしょう。判断に迷う場合は社会保険労務士にご確認ください。
相談窓口は代表者の名前でも大丈夫ですか?
従業員が少なく専任の担当者がいない会社では、代表者を窓口として記載している例もあります。大切なのは、誰にどうやって連絡すればよいかが分かり、相談が来たときに実際に対応できる体制があることです。担当交代が多い場合は、氏名より役職と連絡先を中心に書いておくと運用しやすくなります。
受動喫煙対策の欄は、完全禁煙なら書かなくてもいいですか?
屋内が禁煙であっても、その事実を書いておくほうが求職者・入社者にとって分かりやすく、求人票との整合もとれます。「屋内全面禁煙」「敷地内全面禁煙」のように、実際にとっている措置を短く記載すれば足りることが多いです。喫煙室の構造などの要件は健康増進法に基づくため、詳細は所管官庁の資料をご確認ください。
同一労働同一賃金について、通知書に説明文を入れる必要はありますか?
待遇差の理由を通知書に書き込むことが求められているわけではなく、本人から求められたときに説明できる状態にしておくことが基本の考え方です。通知書では手当や賞与の有無を正確に記載し、相談窓口を明示しておくとよいでしょう。自社の待遇差が説明できるか不安な場合は、社会保険労務士に相談することをおすすめします。