履歴事項全部証明書と印鑑証明書の取り方|設立後すぐ必要になる書類

・会社設立・登記・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

登記申請が受理されても、その日のうちに証明書が取れるわけではありません。登記が完了するまで数日から一週間程度かかり、完了してはじめて履歴事項全部証明書(登記事項証明書)と会社の印鑑証明書を取得できます。この2つは、法人口座の開設、税務署への届出、社会保険の手続き、取引先との契約と、設立直後のあらゆる場面で求められる書類です。この記事では、いつ・何を持って・どこへ行けば取れるのかを、順番どおりに整理します。

この記事の結論

  • 登記完了後、会社の履歴事項全部証明書と印鑑証明書は、全国どこの法務局(登記所)の窓口でも取得でき、郵送やオンライン請求にも対応しています。
  • 会社の印鑑証明書を取るには先に印鑑カードが必要で、印鑑カード交付申請書を法務局に提出してカードを受け取ってから請求する流れになります。
  • 納税証明書は法務局ではなく税務署や都道府県・市区町村の窓口で発行されるもので、登記事項証明書とは発行元も用途も別の書類です。

登記申請から証明書が取れるまでの流れ

会社設立は、法務局に登記申請書を提出した日が「会社の成立日(設立日)」として扱われます。ただし、申請したその場で登記が終わるわけではありません。法務局内で審査が行われ、登記簿に記録されるまでには数日から一週間ほどかかるのが一般的です。この期間は法務局や時期によって変わるため、申請時に完了予定日を確認しておくと予定が立てやすくなります。

登記が完了すると、はじめて履歴事項全部証明書(いわゆる登記簿謄本)と会社の印鑑証明書が取得できるようになります。逆にいえば、完了前に法人口座の面談予約を入れても書類がそろわない、ということが起こります。設立日を月初などに合わせたい場合でも、証明書が手に入るのは数日後になる前提でスケジュールを組んでください。

申請に不備があると法務局から連絡が入り、補正(修正)が必要になります。補正すると完了日が後ろにずれますので、申請後は連絡先の電話番号に出られる状態にしておくと安心です。オンライン申請をした場合は、申請用のシステム上で処理状況を確認できます。

履歴事項全部証明書とは?どの種類を取ればいい?

登記事項証明書にはいくつか種類があります。代表的なのが「履歴事項全部証明書」で、現在有効な登記内容に加えて、一定期間内に抹消された過去の記録(本店移転や役員の変更履歴など)も載ります。設立直後は履歴がほとんどありませんが、提出先から「登記簿謄本を」と言われた場合、実務上はこの履歴事項全部証明書を出すのが一般的です。

一方「現在事項全部証明書」は、今有効な事項だけが記載されたものです。過去の変更を見せたくない、という理由で選ぶ人もいますが、提出先が履歴事項を求めていると出し直しになります。迷ったら履歴事項全部証明書を取っておけば、たいていの提出先で通ります。ほかに、特定の事項だけを抜き出した一部事項証明書や、代表者の資格を証明する代表者事項証明書もあります。

選び方の順番はシンプルです。まず提出先の案内文に書類名が指定されていないか確認し、指定があればそのとおりに取る。指定がなく「登記簿謄本」「登記事項証明書」としか書かれていなければ、履歴事項全部証明書を取る。この2ステップで判断できます。

法務局での取り方:窓口・郵送・オンラインの選び方

登記事項証明書は、会社の本店所在地を管轄する法務局でなくても、全国どこの登記所(法務局・地方法務局とその支局・出張所)の窓口でも取得できます。窓口に備え付けの交付請求書に、会社の商号・本店所在地・会社法人等番号・必要な証明書の種類と通数を書いて提出します。商号や本店の表記が登記どおりでないと検索できないことがあるので、設立時の書類を手元に置いて正確に書いてください。

急がないなら郵送請求もできます。管轄の法務局宛に請求書と手数料分の収入印紙、返信用封筒を同封して送る方法で、往復の日数を見込む必要があります。オンラインでは「登記・供託オンライン申請システム(かんたん証明書請求)」から請求でき、窓口受取または郵送受取を選べます。手数料はオンライン請求のほうが低く設定されている扱いですが、金額は変わることがあるため、法務局の公式サイトで最新の手数料を確認してください。

選び方の目安としては、その日のうちに現物が必要なら窓口、まとまった通数を落ち着いて取り寄せるならオンライン請求+郵送受取、近くに法務局がなく急ぎでもないなら郵送、という整理になります。法人口座の申込みや行政の手続きでは「発行後3か月以内」などの期限が付くことが多いので、取りだめしすぎないことも大切です。

会社の印鑑証明書は印鑑カードから。取得の手順

会社の印鑑証明書(印鑑証明)は、法人の実印として法務局に届け出た印鑑についての証明書です。個人の印鑑証明書とは別物で、発行元も法務局になります。そして、請求するには先に「印鑑カード」が必要です。カードなしでは印鑑証明書を取れないため、設立直後にまずカードを作るのが定番の流れです。

手順は、印鑑カード交付申請書に必要事項を記入し、法人実印(登記所に提出した印鑑)を押して、管轄の法務局に提出します。窓口ならその場でカードが交付されるのが一般的で、郵送でも申請できます。登記申請と同時に印鑑カード交付申請書を出しておくと、登記完了後すぐカードを受け取れるので、時間を短縮できます。

カードを受け取ったら、印鑑証明書交付申請書にカード番号・商号・代表者名などを記入し、印鑑カードを添えて窓口に提出します。印鑑カードを持っていれば、代表者本人でなくても使者が請求できる運用のため、カードの管理は厳重にしてください。紛失した場合は廃止と再交付の手続きが必要になります。なお、印鑑証明書の交付はオンライン請求にも対応していますが、カード番号などの情報が必要です。

何通取ればいい?設立直後に提出を求められる場面

設立直後に登記事項証明書や印鑑証明書の提出を求められやすいのは、法人口座の開設、税務署・都道府県税事務所・市区町村への法人設立届出、年金事務所での社会保険の新規適用、労働基準監督署やハローワークでの労働保険・雇用保険の手続き、許認可の申請、大きめの取引先との契約、事務所の賃貸借契約、リースや各種サービスの法人契約などです。

通数は、これらのうち自社に当てはまるものを数え、余裕を1〜2通足す程度が現実的です。原本を回収されるものと、コピーで足りるものがあるので、提出前に「原本提出か、コピーか、原本提示か」を確認すると無駄が減ります。発行日からの有効期間を設けている提出先もあるため、半年先の予定のために先取りするのは避けたほうが無難です。

なお、登記事項証明書は誰でも取得できる公開情報ですが、印鑑証明書は印鑑カードがないと取れません。契約時に「印鑑証明書を」と言われたら、法人実印での押印とセットで求められているケースがほとんどです。実印・銀行印・角印の使い分けもこのタイミングで決めておくと、あとの事務が楽になります。

納税証明書は法務局では取れません

「会社設立 納税証明書」で検索する方も多いのですが、納税証明書は法務局ではなく、税務署(国税)または都道府県税事務所・市区町村(地方税)が発行します。許認可の申請や入札参加資格、融資の審査などで求められることがある書類です。国税の納税証明書は、納付すべき税額や納付した額、未納がないことなどを証明する種類に分かれており、提出先が指定する種類を取る必要があります。

設立したばかりの会社は、まだ申告も納付もしていない状態です。この場合でも発行自体は受けられることがありますが、内容は「該当なし」に近いものになります。提出先がそれで足りるのか、別の書類(登記事項証明書や決算書など)で代替するのかは、申請先の案内で確認してください。

国税の納税証明書は、税務署の窓口・郵送のほか、e-Taxを使ったオンライン請求にも対応しています。地方税の証明書は自治体ごとに様式や請求方法が異なるため、各自治体の案内を確認するのが確実です。どの種類を取ればよいか判断がつかないときは、税理士に相談すると手戻りが減ります。

取得後にやること:原本の保管と電子化の考え方

取得した証明書は、提出用と保管用を分けて管理します。設立直後は同じ書類を何度も使うため、原本を1通は社内に残し、提出先ごとにどの通を出したかをメモしておくと、再取得の判断がしやすくなります。登記内容に変更(本店移転、役員変更、増資など)があった場合は、古い証明書は使えなくなる点にも注意してください。

最近は、行政手続きや契約の一部が電子化され、法人の代表者の電子証明書(商業登記電子証明書)を使う場面も出てきています。電子申請を中心に進めたい場合は、登記完了後に電子証明書の発行を申請する選択肢があります。必要かどうかは、使う予定の手続きが電子対応しているかで判断してください。

なお、受け取った証明書や領収書などを電子データで保存する場合は、電子帳簿保存法の考え方に沿った保存が求められることがあります。要件は改正されることがあるため、国税庁の資料や所管官庁の案内で最新の内容を確認し、自社の運用に迷いがあれば税理士に相談してください。

設立直後は、登記・税務・社会保険の手続きが短い期間に重なります。書類の種類や提出先の判断で迷ったときは、登記まわりは司法書士、税務関係は税理士、社会保険・労働保険は社会保険労務士と、分野ごとに専門家へ相談すると、手戻りなく進めやすくなります。

よくある質問

登記申請をした当日に履歴事項全部証明書は取れますか?

取れません。登記が完了して登記簿に記録されるまでに数日から一週間程度かかり、完了後にはじめて取得できます。法人口座の開設など証明書が必要な予定は、完了予定日を法務局で確認してから組むと安心です。

履歴事項全部証明書は本店の管轄の法務局でないと取れませんか?

登記事項証明書は全国どこの登記所の窓口でも取得でき、オンラインや郵送でも請求できます。ただし印鑑カードの交付申請など一部の手続きは管轄が関係する場合があるため、事前に法務局の案内で確認してください。

会社の印鑑証明書を取るのに代表者本人が行く必要はありますか?

印鑑カードを持参していれば、使者による請求ができる運用になっています。逆にいえばカードを持つ人が請求できてしまうため、カードは金庫などで厳重に管理し、紛失時は速やかに廃止・再交付の手続きをしてください。

設立したばかりでも納税証明書は発行してもらえますか?

発行を受けられる場合がありますが、申告・納付の実績がないため内容は限られたものになります。提出先がその状態の証明書で足りるのか、別書類で代替するのかを事前に確認し、判断に迷う場合は税理士にご相談ください。

あわせて読みたい

「会社設立・登記」の記事をすべて見る →

次に決めること

記事をすべて見る(1087本)→

この記事は一般的な情報をまとめたものです。税務・法務・労務の個別の判断については、税理士・弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。 料金や条件は変わることがあるため、お申し込み前に必ず各サービスの公式サイトで最新の内容をご確認ください。