創業計画書・事業計画書の書き方|様式と記入のポイント
創業融資を申し込むとき、ほぼ必ず求められるのが創業計画書(事業計画書)です。「何を書けばいいのか分からない」「テンプレートは見つけたが、埋め方が分からない」という声をよく聞きます。この記事では、様式をどこから手に入れるか、各欄に何を書くか、数字の根拠をどうそろえるかを、書く順番に沿って整理します。
この記事の結論
- 創業融資の創業計画書は、日本政策金融公庫の公式サイトで様式(記入例つき)が公開されており、まずはその様式に沿って書くのが基本です。
- 創業計画書は「創業の動機・経歴」「商品とお客様」「必要な資金と調達方法」「事業の見通し」の4点がそろっていれば、形式が違っても評価の土台になります。
- 売上や経費の数字は、単価×数量のように計算の過程を書き、その根拠(前職の実績、仕入先の見積、近隣の相場など)を説明できる状態にしておきます。
創業融資の事業計画書と創業計画書は何が違う?
呼び方は複数ありますが、中身はほぼ同じものだと考えて差し支えありません。日本政策金融公庫が創業時の申込みで使う様式が「創業計画書」で、民間金融機関や信用保証協会の制度融資では「事業計画書」「創業計画書」など、機関ごとに名称と書式が分かれています。
どの様式でも聞かれていることは共通しています。誰が、何を、誰に売るのか。いくら必要で、どこから調達するのか。そして返済していけるだけの利益が見込めるのか。この3点に答える書類だと考えると、書く内容が決まりやすくなります。
そのため、先に公庫の創業計画書を1枚しっかり書いておくと、別の金融機関の様式に転記するのは比較的簡単です。まずは1つの様式を軸にして作り込むことをおすすめします。
様式・テンプレートはどこで手に入る?
最初に探すべきは、申込先の公式サイトです。日本政策金融公庫は創業計画書の様式と記入例を公開しており、業種別の記入例が用意されている場合もあります。自治体の制度融資を使う場合は、自治体や信用保証協会のサイトに専用の様式があることが多いので、そちらを確認してください。様式は改定されることがあるため、必ず最新版をダウンロードしてから記入します。
インターネット上には民間のテンプレートも多くありますが、申込先が様式を指定している場合は、指定の様式を使うのが原則です。民間のテンプレートは、指定様式に書ききれない内容を補足資料としてまとめるときに使う、という位置づけが扱いやすいでしょう。
書式の分量にも考え方があります。指定様式は1〜2枚程度に収まる構成になっていることが多く、そこに詰め込みすぎると読みにくくなります。詳しい売上計算や市場の説明は別紙にして、様式本体は要点だけを簡潔に書く、という分け方が現実的です。
記入欄ごとの書き方|創業の動機から事業の見通しまで
創業の動機の欄では、思いだけでなく「なぜ今、自分がこの事業をやるのか」が伝わる書き方を意識します。前職での経験、取引先や顧客からの引き合い、準備してきた資格や設備など、実際に動いてきた事実を短く並べるほうが説得力があります。
経営者の略歴等の欄は、職歴を羅列するのではなく、これから始める事業と関係する経験を中心に書きます。同じ業種での勤務年数、担当していた業務、売上や店舗運営に関わった経験などは、返済の見込みを判断する材料として見られやすい部分です。
取扱商品・サービス、取引先・取引関係等の欄では、「何を」「いくらで」「誰に」売るのかを具体化します。セールスポイントは抽象的な言葉ではなく、競合と比べて何が違うのかを一文で説明できると良いでしょう。取引先がまだ決まっていない場合は、見込み客の属性や、既に話が進んでいる相手がいればその状況を書きます。
必要な資金と調達方法の欄は、設備資金と運転資金に分けて書きます。設備は見積書の金額と対応させ、運転資金は仕入れ・家賃・人件費など数か月分の目安として積み上げます。調達側は、自己資金・親族からの借入・融資希望額の合計が、必要資金の合計と一致しているかを必ず確認してください。
事業の見通しの欄では、創業当初と軌道に乗った後の売上・原価・経費・利益を書きます。ここが計画書の心臓部で、面談でも最も質問が集中します。売上は「客単価×客数×営業日数」「単価×受注件数」のように計算式を添え、その数字を置いた理由を一行で書き添えておくと、後の説明が楽になります。
数字の根拠はどうそろえる?迷ったときの見る順番
数字に迷ったら、次の順で確認していくと整理しやすくなります。第一に、自分の経験から言える実績値。前職で自分が担当していた顧客数や単価、店舗の1日あたりの客数などは、最も説明しやすい根拠です。第二に、見積書や契約書などの書類。設備、内装、仕入れ、家賃はここで固めます。第三に、業界団体の資料や公的機関が公開している業種別の指標です。
それでも埋まらない項目は、控えめな数字を置くほうが無難です。売上を高く見せた計画は、根拠を問われたときに崩れやすく、かえって信頼を損なうことがあります。逆に経費は漏れやすいので、税金や保険料、通信費、広告費、予備費まで書き出してから削るようにします。
自己資金についても、通帳で流れを説明できる状態にしておくことが大切です。どのように貯めたのかが分かる履歴は、計画の実行力を示す材料として見られることがあります。現金でのやりとりが多いと確認しづらくなるため、できるだけ口座を通しておきましょう。
提出前のチェックと、面談で聞かれやすいこと
提出前に見直したいのは、まず数字の整合性です。必要資金と調達方法の合計が合っているか、事業の見通しの利益から返済ができる形になっているか、別紙と本体で数字が食い違っていないかを確認します。次に、専門用語を使いすぎていないか。業界の外の人が読んで理解できる言葉になっているかを、家族や知人に読んでもらうのも有効です。
面談では、計画書に書いた数字の根拠を口頭で説明する場面があります。「この売上はどう計算しましたか」「想定より売れなかったときはどうしますか」「生活費はいくら必要ですか」といった質問は想定しておくとよいでしょう。答えられない項目があれば、計画書に戻って補強します。
提出のタイミングは、開業前でも開業後でも申込みは可能な場合がありますが、設備の支払いが発生する前に相談を始めておくほうが選択肢は広がります。必要書類は申込先によって異なるため、創業計画書のほか、見積書、許認可に関する書類、資金の状況が分かる資料など、何を求められるかを事前に確認してください。
専門家に相談する目安
自分で書ける範囲でまず一度書き切ることをおすすめします。そのうえで、売上計画の立て方が分からない、資金の必要額が読めない、許認可や契約の扱いに不安がある、といった段階で相談すると話が早く進みます。
税金や決算の見通しに関わる部分、たとえば利益計画や役員報酬の考え方については税理士に、従業員を雇う予定がある場合の社会保険や雇用に関する手続きは社会保険労務士に、契約書や許認可に関わる論点は弁護士に確認するのが一般的です。制度の要件や様式の詳細は改定されることがあるため、所管する機関の最新の資料も併せてご確認ください。
創業融資の申込みは、計画書の完成度だけでなく、準備の進め方によっても進みやすさが変わります。判断に迷う点が出てきたら、早い段階で税理士などの専門家に相談し、計画書の数字と実際の資金繰りをすり合わせておくと安心です。
よくある質問
創業計画書のテンプレートは、どれを使えばいいですか。
申込先が様式を指定している場合は、その公式サイトからダウンロードした最新版を使うのが基本です。日本政策金融公庫は創業計画書の様式と記入例を公開しています。民間のテンプレートは、指定様式に収まらない補足資料をまとめる用途に向いています。
事業の見通しの売上は、どこまで細かく書くべきですか。
様式本体には要点だけを書き、計算の過程は別紙にまとめる方法が読みやすくなります。「単価×件数」のように式を示し、その数字を置いた理由を一行添えておくと、面談での説明がしやすくなります。
自己資金が少ないと、創業計画書を丁寧に書いても意味がないですか。
自己資金は見られる要素の一つですが、それだけで結果が決まるわけではありません。経験や取引先の見込み、資金の使い道の妥当性なども合わせて判断されるため、説明できる材料を計画書にそろえることに意味があります。
開業してからでも創業融資の申込みはできますか。
創業後一定期間内であれば対象になる制度もありますが、条件は制度や申込先によって異なります。設備の支払いが発生する前に相談を始めるほうが選択肢は広がるため、早めに申込先の窓口や税理士に確認してください。