年末調整の対象者の判定|中途入社・退職者・掛け持ちの扱い

・採用・労務・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

年末調整の季節になると、まず詰まるのが「この人は対象なのか」という判定です。フルタイムの社員だけを見ていれば済むならよいのですが、実際には年の途中で入った人、辞めた人、他社と掛け持ちしている人、扶養に入りながら働いているパートの方などが混ざります。この記事では、対象かどうかを判断する順番を、中途入社・中途退職・乙欄・丙欄・ダブルワークといったよくあるケースごとに整理します。細かな税額計算ではなく、「誰を年末調整の対象にするか」に絞って読める内容にしました。

この記事の結論

  • 年末調整の対象者は、その年の最後の給与を支払う時点で「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している人が基本となり、提出のない人は対象外として扱われます。
  • 中途入社の人は、前職の源泉徴収票を提出してもらえれば前職分と合算して年末調整を行い、間に合わない場合は本人が確定申告で精算する流れになります。
  • 掛け持ちで働いている人は、扶養控除等申告書を出している主たる勤務先のみが年末調整を行い、乙欄で計算している従たる勤務先は年末調整を行いません。

年末調整の対象者は誰か|判定の起点は扶養控除等申告書

年末調整をするかしないかで迷ったら、最初に見るのは「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」が自社に提出されているかどうかです。この申告書が出ている人は源泉徴収税額表の甲欄で毎月の税額を計算しており、その年の最後の給与を支払うときに年末調整を行うのが原則です。逆に、提出がない人は乙欄または丙欄で計算しているため、年末調整の対象にはなりません。

雇用形態や勤務時間は、直接の判定基準ではありません。正社員でも申告書が未提出なら対象外になりますし、週2日のパートでも申告書が出ていれば対象になり得ます。「正社員かどうか」ではなく「申告書が出ているか」で切り分けると、判定はかなりすっきりします。

もうひとつ押さえておきたいのが、給与の年収が一定額を超える人や、災害減免法で源泉徴収の猶予を受けている人など、申告書が出ていても年末調整の対象から外れるケースがあることです。該当しそうな人がいる場合は、国税庁の「年末調整のしかた」や所轄税務署の資料で最新の要件を確認し、判断に迷えば税理士に相談してください。

年末調整をする人としない人|この順番で見ていくと迷わない

実務では、次の順に見ていくと整理しやすくなります。第一に、12月の給与(または年内最後の給与)を自社が支払う人かどうか。第二に、その人から扶養控除等申告書が提出されているか。第三に、年収や特殊事情で対象外となる条件に当てはまらないか。この3つを通過した人が年末調整の対象になります。

「しない人」として典型的なのは、乙欄で計算している掛け持ち先の従業員、日雇いで丙欄計算をしている人、年の途中で退職して年内に再就職する予定の人、そして扶養控除等申告書を最後まで提出しなかった人です。これらの人には年末調整を行わず、源泉徴収票を交付して本人の確定申告に委ねる形になります。

年内に海外へ転勤して非居住者になった人のように、その時点で年末調整に相当する精算を行うケースもあります。該当者がいるときは、出国の時期と給与の支払日を並べて時系列で確認し、判断が難しければ税理士に相談するのが安全です。

中途入社の年末調整|前職の源泉徴収票が集まるかで分岐する

年の途中で入社した人も、自社に扶養控除等申告書を提出していれば年末調整の対象になります。ただし、その年に前職で受け取った給与と源泉徴収された税額を合算して計算する必要があるため、前職の源泉徴収票を提出してもらうことが前提になります。入社時点で回収できていない場合は、年末調整の書類配付とあわせて早めに依頼しておくとよいでしょう。

もし年末調整の計算に間に合わないときは、自社分だけで無理に計算するのではなく、年末調整を行わずに源泉徴収票を交付し、本人が確定申告で精算する流れを案内します。前職分を落としたまま年末調整をしてしまうと、後から修正が必要になり、かえって手間が増えます。

なお、前職が「給与」ではなく業務委託の報酬だった場合は、年末調整で合算する対象ではなく、本人の確定申告で扱われるのが一般的です。前職の性質があいまいなときは、源泉徴収票なのか支払調書なのかという書類の種類から確認すると整理しやすくなります。

中途退職者の扱い|年内に精算する人と、確定申告に回す人

年の途中で退職した人は、原則として年末調整の対象外です。退職後に別の会社へ就職すれば、再就職先が前職分(=自社分)を含めて年末調整を行います。そのため、退職時には速やかに源泉徴収票を交付し、本人が次の勤務先へ提出できる状態にしておくことが大切です。

例外として、年内に再就職せず、その年の給与がそれ以上支払われないことがはっきりしている場合などに、退職時点で年末調整に相当する精算を行える取り扱いがあります。ただし条件があるため、該当しそうなケースでは国税庁の資料を確認するか、税理士に判断を仰ぐことをおすすめします。

12月に退職する人は、最後の給与をいつ支払うかで扱いが変わります。年内最後の給与を自社が支払い、扶養控除等申告書も出ているなら、そのタイミングで年末調整を行うのが自然です。退職日と支払日がずれる会社では、締め日・支払日を並べて確認してから判断してください。

ダブルワーク・乙欄・丙欄の人はどうするか

掛け持ちで働いている人は、扶養控除等申告書を提出できるのが1社だけというルールが基本になります。申告書を受け取っている「主たる給与」の勤務先が甲欄で計算し、年末調整まで行います。もう一方の勤務先は乙欄で源泉徴収し、年末調整は行わずに源泉徴収票を交付するだけです。

自社が従たる勤務先になる場合、本人が掛け持ちであることを申告してこないと、誤って甲欄で処理してしまうことがあります。採用時のヒアリングと、年末調整書類の配付時の確認で、他社に申告書を出していないかを聞いておくと防ぎやすくなります。

日雇いや短期で丙欄を適用している人も、年末調整は行いません。年間を通じて複数社から給与を受けている人は、最終的に本人が確定申告で精算することになりますので、源泉徴収票の交付を漏らさないことが会社側の役割になります。制度の細かい要件は変わることがあるため、所管官庁の資料で確認してください。

対象者を確定させるまでの実務の流れ

時期としては、10月下旬から11月上旬に対象者リストを作り、書類を配付するのが一般的な進め方です。リストの作り方としては、まず給与計算ソフトからその年に給与を支払った全員を出し、そこから退職者・乙欄・丙欄の人を外し、中途入社者に印を付けて前職源泉徴収票の回収状況を管理する、という順が扱いやすいでしょう。

本人から集める書類は、扶養控除等申告書のほか、基礎控除・配偶者控除等・所得金額調整控除に関する申告書、保険料控除申告書、住宅ローン控除の2年目以降に使う書類、そして中途入社者の前職源泉徴収票などです。提出先は会社であり、会社が年末調整を行ったうえで、翌年1月の法定調書や給与支払報告書の提出につながっていきます。

電子化を進めている会社では、控除証明書を電子データで受け取る運用もあります。保存方法については電子帳簿保存法の考え方が関わる場面があるため、運用を変える前に所管官庁の資料を確認し、判断が難しい部分は税理士に相談しておくと安心です。

対象者の判定は、給与の締め日・支払日、退職日、他社との関係といった事実の確認が中心です。判断に迷う人が一人でもいる場合、自己判断で進めるより、顧問税理士や所轄税務署に早めに確認することをおすすめします。労務面で在籍状況の整理が必要なときは、社会保険労務士にあわせて相談するとスムーズです。

よくある質問

扶養控除等申告書を出していない社員も年末調整できますか。

その年の最後の給与を支払うときまでに提出がない場合、年末調整の対象外として扱うのが原則です。期限までに提出を促し、それでも出ない場合は源泉徴収票を交付して本人の確定申告で精算してもらう流れになります。

中途入社者の前職の源泉徴収票が届かないときはどうしますか。

自社分だけで年末調整をするのではなく、年末調整を行わずに源泉徴収票を交付し、本人に確定申告での精算を案内するのが一般的です。前職の会社へ再発行を依頼してもらい、間に合うかどうかを早めに見極めてください。

ダブルワークの社員は両方の会社で年末調整するのですか。

扶養控除等申告書を提出している1社のみが年末調整を行い、もう一方は乙欄で源泉徴収したうえで源泉徴収票を交付します。最終的な精算は本人の確定申告で行われることが多いため、掛け持ちの有無を事前に確認しておくと安心です。

12月に退職する人は年末調整の対象になりますか。

年内最後の給与を自社が支払い、扶養控除等申告書の提出がある場合は、そのタイミングで年末調整を行うのが自然です。退職日と給与の支払日がずれる会社では、どちらの会社が最後の給与を支払うかを確認し、迷う場合は税理士にご確認ください。

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