年末調整で社員から集める書類|必要書類と申告書の確認点

・採用・労務・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

年末調整は「計算」よりも「書類を集めて中身を確認する」工程に時間がかかります。誰から何を集めるのか、どこを見れば不備に気づけるのかが決まっていれば、12月の負担はかなり軽くなります。この記事では、社員から回収する書類の一覧と申告書ごとの確認ポイント、回収スケジュールの組み方を、はじめて担当する方にも追える順番で整理します。

この記事の結論

  • 年末調整で全社員から回収する基本の書類は、扶養控除等(異動)申告書、基礎控除・配偶者控除等・所得金額調整控除の申告書、保険料控除申告書の3種類です。
  • 生命保険料・地震保険料・小規模企業共済等掛金・国民年金保険料などの控除を受ける人は、申告書に加えて発行元の控除証明書の添付が必要です。
  • 中途入社した人は前職の源泉徴収票が揃わないと年末調整を進められないため、回収予定を早めに確認しておくと安全です。

年末調整で会社に提出する書類は何か

年末調整で社員から集める書類は、大きく「申告書」と「証明書類」に分かれます。申告書は社員自身が記入するもので、証明書類は保険会社や金融機関などが発行し、申告書に添付するものです。この二段構えを意識すると、回収漏れの場所が見えやすくなります。

申告書のうち、全員から回収するのが扶養控除等(異動)申告書です。あわせて、基礎控除申告書・配偶者控除等申告書・所得金額調整控除申告書が一体になった様式と、保険料控除申告書を配布します。控除の対象がない人でも、基礎控除に関する部分は記入が必要になるため、「該当なしだから出さない」とならないよう案内文で一言添えておくと回収が早くなります。

住宅ローン控除を2年目以降に受ける人は、税務署から送られてくる住宅借入金等特別控除申告書と、金融機関の年末残高証明書を追加で提出してもらいます。1年目は本人が確定申告をする流れになるため、対象者には早めに伝えておきましょう。

全員から集める書類と、該当者だけ集める書類を分ける

最初にやるべきは、社員を「全員」と「該当者」に分ける整理です。全員が対象なのは、扶養控除等(異動)申告書と、基礎控除・配偶者控除等・所得金額調整控除の申告書、保険料控除申告書の3点。まずこれを配り切って、回収状況を名簿で管理します。

該当者だけに追加で依頼するのは、生命保険料控除証明書、地震保険料控除証明書、社会保険料(国民年金保険料や国民健康保険料など)の支払を証明する書類、小規模企業共済等掛金の払込証明書、住宅ローン控除の関係書類、そして中途入社者の前職の源泉徴収票です。全員に一律で「証明書を出してください」と伝えると、対象でない人が混乱します。

進め方としては、①全員配布→②回収→③記入内容を見ながら該当者に追加依頼、の順が現実的です。最初から完璧を求めず、1回目の回収で母数を押さえ、2回目で個別に埋めるイメージで組み立てると回ります。

扶養控除等(異動)申告書の確認点

扶養控除等(異動)申告書は、翌年分と当年分の2種類が動くことがある書類です。年末調整で使うのは当年分ですが、翌年の源泉徴収税額の計算に備えて翌年分も同時に配るのが一般的です。どちらの年分を出してもらっているのか、様式の年を必ず見比べてください。

確認のポイントは順番に見ると漏れません。まず氏名・住所・マイナンバーの記載欄(会社の取り扱い方針により記載省略とする運用もあります)、次に配偶者や扶養親族の氏名・続柄・生年月日、そして所得の見積額です。生年月日は控除区分(特定扶養親族、老人扶養親族など)の判定に関わるため、空欄や西暦・和暦の混在は確認しておきたいところです。

年の途中で結婚・出産・離婚・扶養親族の就職などがあった場合、内容が変わります。提出済みの申告書と今年の状況が食い違っていないか、本人に一度確認を促す文面を添えると、あとからの訂正が減ります。判断に迷うケース(親族の所得が基準の前後にある、海外に住む親族がいるなど)は、税理士に確認しておくと安心です。

保険料控除申告書と証明書の突き合わせ方

保険料控除申告書は、証明書とセットで見るのが鉄則です。申告書に金額が書いてあっても、証明書が添付されていなければ確認ができません。逆に証明書だけ封筒に入っていて申告書が白紙、というパターンも起こりがちなので、両方が揃っているかをまずチェックします。

生命保険料控除は、一般の生命保険料・介護医療保険料・個人年金保険料の区分と、新制度か旧制度かの区分があります。証明書に書かれている区分と申告書の記入欄がずれていることが多いので、ここは丁寧に見ます。また、証明書の金額は「証明額」と「参考額(12月まで払った場合の見込額)」が併記されていることがあり、どちらを転記するかで金額が変わります。

国民年金保険料や国民健康保険料などの社会保険料控除は、控除証明書や納付書の控えなど、支払を確認できる書類の添付を求める取り扱いがあります。家族の分を本人が支払っている場合は誰の分かも確認しておきましょう。証明書を紛失したという申し出には、発行元への再発行依頼を早めに案内してください。

回収スケジュールの組み方と、期限に間に合わないときの対応

スケジュールは逆算で決めます。源泉徴収票の交付と、翌年1月の法定調書・給与支払報告書の提出から逆算すると、12月の給与計算に間に合う締切を設定する必要があります。多くの会社では、10月下旬〜11月上旬に書類を配布し、11月中旬〜下旬を社内締切、12月の給与で精算という流れを取ります。

締切は社内締切と最終締切の二段階にしておくと運用が楽です。社内締切を過ぎた人には個別に声をかけ、それでも揃わない場合の最終締切を伝えます。名簿に「配布済/回収済/不備あり/追加依頼中」の状態を持たせておくと、誰に何を催促すればいいかが一目で分かります。

証明書が間に合わない、前職の源泉徴収票が届かないといった理由で年末調整に含められない項目が出ることもあります。その場合は、本人が確定申告で対応する流れになる旨をあらかじめ伝えておくと、後のトラブルを避けられます。対応の可否や進め方に迷うときは、顧問の税理士に相談してください。

書類の保管と、電子化を検討するときの考え方

回収した申告書は、会社で保管する扱いになります。保管期間や保管方法の要件は所管官庁の資料で確認し、紙で預かる場合は施錠できる場所に、担当者を決めて管理しましょう。マイナンバーが記載された書類は取り扱いのルールを別途決めておく必要があります。

電子化を検討する場合は、自社の状況から見ます。社員数が少なく、全員が同じ場所にいるなら紙でも回ります。一方で、拠点が分かれている、リモート勤務が多い、毎年の記入ミスの訂正に時間がかかっている、といった条件に当てはまるなら、給与計算ソフトの年末調整機能や電子申告に対応したサービスを検討する価値があります。

選ぶときは、今使っている給与計算ソフトとつながるか、証明書の電子データ(保険会社が発行する電子的控除証明書など)を取り込めるか、社員がスマートフォンから入力できるかを順に見ます。料金や対応範囲は各社の公式サイトで最新の情報を確認してください。電子で受け取る場合の要件は、電子帳簿保存法など関連する制度の考え方にも関わるため、導入前に税理士に相談しておくと進めやすくなります。

はじめて年末調整を担当する人が、最初にやること

まず、対象者の名簿をつくります。年末時点で在籍している人、年の途中で入社した人、退職した人を分けて並べるだけで、やるべきことの輪郭が見えます。退職者は原則として年末調整の対象外となる扱いですが、時期によって取り扱いが変わるため、迷ったら確認しましょう。

次に、配布物のセットを決めます。申告書の様式、記入例、社内の締切と提出先を書いた案内文、証明書が必要な人向けの補足。この4点をひとまとめにして配ると、問い合わせが目に見えて減ります。記入例は前年のものを流用せず、年分の表記を更新してください。

年末調整は、判断が分かれるケースが毎年必ず出てきます。扶養親族の範囲、所得の見積額、住宅ローン控除の取り扱いなどは、社内だけで結論を出さず、顧問税理士に確認する前提で進めるのが安全です。社会保険や給与計算とあわせて整理したい場合は、社会保険労務士にも相談しておくと、年末から年始にかけての事務がつながって見えるようになります。

よくある質問

年末調整で社員全員から集める書類は何ですか。

扶養控除等(異動)申告書、基礎控除・配偶者控除等・所得金額調整控除の申告書、保険料控除申告書の3種類が基本です。控除の対象がない人でも記入が必要な欄があるため、全員から回収する前提で案内するとスムーズです。

保険料控除証明書をなくしたと言われたらどうすればよいですか。

保険会社などの発行元に再発行を依頼してもらうのが基本の流れです。再発行に時間がかかることもあるため、締切に間に合わないときは本人が確定申告で対応する方法もある旨を伝えておくと安心です。

中途入社した社員の前職の源泉徴収票は必要ですか。

その年に前職の給与がある場合、前職分を合算して年末調整を行うため、前職の源泉徴収票が必要になります。届いていない場合は前職へ交付を依頼してもらい、間に合わないときの取り扱いは税理士に確認してください。

申告書に不備があったとき、どう対応すればよいですか。

該当箇所を具体的に示して本人に訂正を依頼し、名簿で状態を管理すると追いかけやすくなります。会社側で勝手に金額を書き換えるのは避け、本人の記入・確認を経るようにしましょう。

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