年末調整の配偶者控除・配偶者特別控除|年収の判定と見込みが変わったとき

・会計・税務・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

年末調整の季節になると、「配偶者のパート収入がいくらまでなら控除を受けられるのか」「提出したあとで収入が増えてしまった」という相談が一気に増えます。配偶者控除・配偶者特別控除は、その年の12月31日時点の状況と、その年1年間の所得で判定するしくみです。つまり、年末調整の書類を書く時点では、どうしても「見込み」で書くことになります。この記事では、判定の考え方、見込みがずれたときの直し方、年末調整後に気づいたときの確定申告までを、順番に整理します。

この記事の結論

  • 配偶者控除・配偶者特別控除は、その年の12月31日時点の状況と、その年1年間の合計所得金額で判定するため、年末調整の書類は「年末までの見込み」で記入します。
  • 見込みが変わったときは、会社が年末調整を終える前に申告書を出し直せば、年末調整の中でやり直してもらえることが一般的です。
  • 年末調整が終わったあとに誤りに気づいた場合は、勤務先での再年末調整か、ご自身の確定申告で精算するのが基本的な流れです。

年末調整の配偶者控除と配偶者特別控除は何が違うのか

どちらも「生計を一にする配偶者がいて、その配偶者の所得が一定額以下のとき」に受けられる所得控除です。大きな違いは、配偶者の所得水準の帯です。配偶者の所得が低い帯にあるときは配偶者控除、そこを超えて一定の範囲に収まっているときは配偶者特別控除、という段階になっています。

もうひとつ大事なのが、控除を受ける本人(給与所得者側)の所得にも上限があることです。本人の所得が一定額を超えると、配偶者の収入がいくらであっても控除を受けられません。共働きで両方の収入が伸びている世帯では、ここで対象外になるケースがあります。

控除額は、配偶者の所得帯と本人の所得帯の組み合わせで段階的に決まります。金額の区分は税制改正で見直されることがあるため、その年に適用される具体的な区切りと控除額は、国税庁の年末調整の手引きや配偶者控除等申告書の裏面にある表で、必ずその年の版をご確認ください。古い年の情報をそのまま使うと判定を誤りやすい部分です。

「年収」はいつ時点の何で判定する?パート収入と副業がある場合

判定の基準日は、その年の12月31日です。年の途中で結婚した場合も、年末時点で配偶者であれば対象になり得ます。逆に、年の途中で離婚・死別した場合は別の取り扱いになるため、該当する年は勤務先の担当者か税理士に確認してください。

使う数字は「年収」そのものではなく「合計所得金額」です。配偶者がパート・アルバイトなど給与だけで働いている場合は、年収から給与所得控除を差し引いた金額が所得になります。書類では年収(支払金額)と所得の両方を書く欄があるので、給与明細や見込みの支給額を集計して計算します。

配偶者にフリーランスの報酬や不動産収入などがある場合は、それぞれの所得を合算して判定します。給与だけのつもりで書いたら、副業分を足すと帯が変わっていた、というのはよくある行き違いです。年末調整前に、配偶者本人に「今年の収入は給与以外にもあるか」を一度確認しておくと安全です。

なお、通勤手当のように所得に含めないものもあります。何を含めて何を含めないかは国税庁の資料に整理されているので、判断に迷う収入があるときは、そちらを確認するか税理士にご相談ください。

申告書はいつ・何を・どこに出すか

時期は、多くの会社で11月から12月上旬です。勤務先から配布(または電子申告システムで案内)される「給与所得者の基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」に記入して、勤務先に提出します。提出先は税務署ではなく、給与を支払う会社です。

用意するものは、配偶者の今年の収入が分かる資料です。給与明細、勤務先から出ている支給予定額、シフトの見通しなど、手元にあるもので構いません。年末までの分は確定していないので、11月までの実績に12月分の見込みを足して記入するのが一般的なやり方です。

記入するのは、配偶者の氏名・個人番号・生年月日、今年の収入(見込み)と所得、そして本人自身の所得の見積りです。本人の所得欄を空欄にしたまま出すと、控除額が確定できず差し戻しになります。給与以外の所得がある人は、そこも忘れずに書いてください。

配偶者が別居していても、生活費を送っているなど生計を一にしていると認められる場合は対象になり得ます。この判断が微妙なときは、自己判断せず勤務先の担当者に相談しましょう。

提出後に配偶者の収入見込みが増えた・減ったときの対応

まず確認する順番は、①会社がまだ年末調整の計算を締めていないか、②締めていれば源泉徴収票が出ているか、の2つです。①の段階なら、いちばん簡単に直せます。

年末調整の計算前であれば、申告書を出し直すのが基本です。勤務先に「配偶者の収入見込みが変わった」と伝え、新しい申告書に正しい見込みを書いて再提出します。12月のシフトが増えた、賞与が出た、年末に単発の仕事が入った、といった変化は珍しくないので、気づいた時点ですぐ連絡するのが結局いちばん早く済みます。

逆に、見込みより収入が減ったときも同じです。減ったことで配偶者特別控除から配偶者控除の帯に移る、あるいは対象外だったのが対象になる、ということがあります。増えたときだけでなく、減ったときも申し出る価値があります。

年末調整の計算が終わってしまっている場合は、次のセクションの流れになります。会社側で再計算(再年末調整)ができる期限があるため、まずは勤務先に事情を伝えて、対応可能かどうかを聞いてみてください。

年末調整のあとに間違いに気づいたら:再年末調整と確定申告

会社は、年末調整の結果をまとめて源泉徴収票を作成し、翌年の決められた期限までに税務署や市区町村へ提出します。この提出が済む前であれば、勤務先の判断で年末調整をやり直してもらえることがあります。源泉徴収票を受け取ってすぐに誤りに気づいたら、まず勤務先に連絡するのが第一手です。

勤務先での対応が難しい場合は、ご自身の確定申告で精算します。控除を受けそびれていた(本来は控除できたのに申告しなかった)ケースでは、確定申告をすることで納めすぎた分の還付を受けられることがあります。申告時期は翌年の申告シーズンで、源泉徴収票と配偶者の収入が分かる資料を手元に用意します。

反対に、配偶者の収入が見込みより増えて控除を受けすぎていた場合は、納める税額が不足している状態になります。この場合も確定申告で正しい内容に直して精算するのが基本です。放置すると後から指摘を受けることがあるため、気づいた時点で動くほうが負担は小さくて済みます。

なお、税の配偶者控除の判定と、健康保険・年金の被扶養者の基準は別のしくみです。税の控除の対象から外れたかどうかと、社会保険の扶養に入れるかどうかは、それぞれ別に確認が必要です。社会保険側の要件は、加入している健康保険組合や協会けんぽ、日本年金機構の案内でご確認ください。

会社側(ひとり社長・小さな会社)が気をつけたいこと

自分が給与を支払う側になると、従業員から集めた申告書のチェックが仕事になります。実務でつまずきやすいのは、配偶者の所得欄が空欄・本人の所得の見積り漏れ・扶養親族と配偶者の欄の書き間違いの3点です。回収時にこの3点だけでも目視で確認すると、後戻りがかなり減ります。

社長自身が役員報酬を受け取っている場合も、給与所得者として年末調整の対象になるのが一般的です。ただし、役員報酬以外に事業所得や不動産所得があるなど、確定申告が必要になるケースもあります。自分の分は後回しにしがちなので、従業員分と一緒に進めてしまうのがおすすめです。

申告書の様式や記載欄は年によって変わることがあります。前年のファイルを使い回さず、その年に国税庁が公開している最新様式と手引きを使ってください。電子での回収に切り替える場合は、保存方法についても所管官庁の資料を確認しておくと安心です。

判断に迷ったら税理士に相談を

配偶者控除・配偶者特別控除は、区分の金額が改正で見直されることがあり、さらに本人の所得による制限や、副業・別居・年の途中の身分変更といった個別事情が絡みます。ネット上の情報は年度が古いまま残っていることも多く、そのまま当てはめると判定を誤るおそれがあります。

「配偶者に給与以外の収入がある」「本人の所得が高めで対象になるか微妙」「年末調整後に誤りに気づいたが会社で直せない」といったケースは、早めに税理士にご相談ください。会社として従業員の年末調整を行う立場であれば、初年度だけでも税理士に確認しながら進めると、進め方の型ができて翌年以降が楽になります。

よくある質問

年末調整の配偶者控除は、配偶者の年収がいくらまでなら受けられますか。

配偶者の合計所得金額が一定額以下であることが条件で、給与だけの場合は年収から給与所得控除を引いた金額で判定します。具体的な区切りの金額は改正で見直されることがあるため、その年の国税庁の年末調整の手引きや申告書裏面の表でご確認ください。判断に迷う収入がある場合は税理士にご相談ください。

提出したあとに配偶者の収入が見込みより増えました。どうすればよいですか。

会社が年末調整の計算を締める前であれば、申告書を出し直して正しい見込みに直してもらえるのが一般的です。締めたあとでも、源泉徴収票の提出前なら勤務先で再計算できる場合があるため、まず勤務先に連絡してください。それも難しいときは、ご自身の確定申告で精算します。

年末調整で配偶者控除を間違えた場合、確定申告でやり直せますか。

はい、確定申告で正しい内容に直して精算するのが基本的な流れです。控除を受けそびれていた場合は還付になることがあり、控除を受けすぎていた場合は不足分を納めることになります。源泉徴収票と配偶者の収入が分かる資料を用意して手続きしてください。

税の配偶者控除から外れると、社会保険の扶養からも外れますか。

税の控除の判定と、健康保険・年金の被扶養者の判定は別のしくみで、基準も異なります。どちらか一方から外れても、もう一方は継続する場合があります。社会保険側の要件は、加入している健康保険組合や協会けんぽ、日本年金機構の案内でご確認ください。

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