マイクロ法人・合同会社の決算申告|ひとり社長の進め方
会社をつくって最初の一年が終わると、必ずやってくるのが決算申告です。社員が自分ひとりのマイクロ法人でも、合同会社でも、規模にかかわらず法人は毎年の決算と申告が求められます。とはいえ「何から手をつければいいのか」が分かりにくいのがこの作業。この記事では、期限の考え方、逆算スケジュール、用意するもの、提出先、そして自分でやるか専門家に頼むかの判断基準までを、進める順番どおりに整理します。
この記事の結論
- 法人の決算申告は、原則として事業年度終了日の翌日から2か月以内に、法人税・地方法人税・法人住民税・法人事業税などの申告と納付を行います。
- 合同会社もマイクロ法人も、株式会社と同じ流れで決算書を作成し、税務署・都道府県税事務所・市区町村の3か所へ申告するのが基本です。
- 赤字でも申告は必要で、法人住民税の均等割は所得がなくても課される扱いが一般的なため、期限内の申告と資金の確保を前提に準備します。
法人の決算申告はいつまで?期限の基本を押さえる
法人税の申告期限は、原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内です。3月31日決算なら5月31日、9月30日決算なら11月30日、12月31日決算なら翌年2月末日が目安になります。期限が土日祝にあたる場合は翌開庁日に繰り下がる扱いが一般的です。
納付の期限も同じ日に設定されているのがポイントです。「申告書は出したけれど納税資金がない」という状態になりやすいので、決算月の2〜3か月前には、おおよその利益と税額の見込みを立てておくと安心です。
消費税の課税事業者になっている場合は、消費税の申告・納付も原則として課税期間の末日の翌日から2か月以内です。法人税とは別の申告書になるため、自社が課税事業者かどうかを先に確認しておきましょう。なお、申告期限の延長には所定の申請と要件があり、納付の期限まで同じように延びるとは限らないため、検討する場合は税務署の案内や税理士に確認してください。
決算月から逆算するスケジュール(ひとり社長向け)
まず決算日から2か月後の申告期限をカレンダーに入れ、そこから逆算します。目安としては、決算日から2〜3週間で取引の締めと入力を終え、1か月後までに決算整理、その後に決算書と申告書を作る、という流れです。ひとり社長の場合、本業の合間に進めることになるので、余裕を持った配分が現実的です。
決算日の前後にやることは分けて考えます。決算日前は、売掛金・買掛金の確認、在庫がある場合の棚卸し、固定資産の状況確認、未使用の経費精算の締め切り。決算日後は、通帳と帳簿の残高照合、減価償却の計上、未払費用や前払費用の整理といった決算整理に進みます。
税理士に依頼する場合は、決算日の1〜2か月前には声をかけておくとスムーズです。繁忙期(3月決算法人が集中する時期など)は依頼が立て込みやすいため、初年度こそ早めの相談をおすすめします。
何を用意する?決算書と申告書の中身
決算で作るのは、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書(合同会社では社員資本等変動計算書と呼ばれます)、個別注記表といった計算書類です。これに加えて、税務署へ出す際には勘定科目内訳明細書と法人事業概況説明書を添付するのが通例です。
申告書そのものは、法人税申告書(別表と呼ばれる複数の様式)と、地方税の申告書に分かれます。会計ソフトや申告ソフトを使うと、決算数値から自動で転記される範囲が広く、ひとり法人の単純な取引構成であれば作成のハードルは下がります。
手元にそろえておく資料は、通帳のデータ、請求書・領収書、契約書、給与や社会保険の資料、固定資産の購入資料などです。帳簿や書類の保存には電子帳簿保存法の考え方が関わるため、電子データで受け取った請求書などの扱いは国税庁の資料で最新の要件を確認しておくと安全です。
どこに出す?税務署だけで終わらない点に注意
提出先は原則3か所です。税務署(法人税・地方法人税・消費税)、都道府県税事務所(法人事業税・特別法人事業税・法人都道府県民税)、市区町村(法人市町村民税)。東京23区内に本店がある場合は、都税事務所にまとめて申告する扱いになります。
提出方法は、e-Tax(国税)とeLTAX(地方税)による電子申告が主流です。電子申告には電子証明書や利用者IDの準備が必要なので、初年度は申告直前ではなく、決算月のうちに登録まで済ませておくと慌てません。
申告と前後して、社内手続きも忘れずに。合同会社では、決算書について社員(出資者)の承認を得る手続きを定款や会社法の定めに沿って行います。株式会社と異なり、合同会社には決算公告の義務は課されていないという整理が一般的ですが、自社の定款の定めは一度確認しておきましょう。
自分でやるか、税理士に頼むか。判断の順番
迷ったら、次の順に見てください。①消費税の課税事業者かどうか、②売上や取引件数の規模、③役員報酬や社会保険、外注などの論点があるか、④自分が作業に使える時間。①に該当する時点で、計算区分の判断が増えるため専門家の関与を検討する価値が高まります。
自分で進めやすいのは、消費税の免税事業者で、取引がシンプルで、会計ソフトに日々入力できているマイクロ法人です。逆に、期中の記帳が止まっている、在庫や固定資産がある、複数の事業を持っている、インボイス制度への対応で取引の扱いに迷いがある、といった場合は、早い段階で税理士に相談したほうが結果的に手戻りが少なくなります。
依頼する場合は「決算申告だけ」「記帳から通年で」など関与の範囲で内容が変わります。料金体系は事務所ごとに異なるため、複数の事務所に問い合わせて、対応範囲・連絡手段・繁忙期の対応をそろえて比較してください。最新の料金は各事務所の公式サイトや見積もりで確認しましょう。
よくあるつまずきと、その前にできること
もっとも多いのは、期中の記帳をためてしまい、決算月を過ぎてから一年分をまとめて処理しようとするパターンです。月に一度でも通帳と帳簿を突き合わせる習慣があるだけで、決算作業の時間は大きく変わります。法人用の口座とクレジットカードを個人と分けておくことも、地味ですが効果的です。
役員報酬の扱いもつまずきやすいところです。法人税の計算上、役員報酬には金額や決め方に関するルールがあり、期中に自由に変えると損金として扱われないことがあります。決算後の新事業年度の開始にあわせて検討するのが一般的な進め方なので、変更を考えるなら税理士に相談してからにしましょう。
赤字だから申告しなくてよい、ということにはなりません。所得がなくても法人住民税の均等割は課される扱いが一般的で、申告を怠ると加算税や延滞税の対象になることがあります。期限内申告を続けること自体が、金融機関や取引先からの信用にもつながります。
判断に迷う論点が出てきたときは、早めに税理士に相談してください。初年度の決算を一度一緒に組み立ててもらうと、二年目以降の自走がぐっと楽になります。
よくある質問
合同会社の決算申告の締切はいつですか?
原則として、事業年度終了の日の翌日から2か月以内に申告と納付を行います。決算月は会社ごとに設定できるため、自社の定款で事業年度を確認したうえで期限をカレンダーに入れておきましょう。株式会社と期限の考え方は基本的に同じです。
売上がほとんどないマイクロ法人でも決算申告は必要ですか?
必要です。売上や利益がなくても法人である以上、決算書を作成して申告する流れは変わりません。赤字でも法人住民税の均等割が課される扱いが一般的なので、納付分の資金も見込んでおくと安心です。
決算申告を自分でやることはできますか?
取引がシンプルで期中の記帳ができていれば、会計ソフトと申告ソフトを使って自分で進めている方もいます。ただし消費税の課税事業者である場合や、固定資産・在庫・複数事業がある場合は判断が増えるため、税理士への相談を検討してください。
申告が期限に間に合わなさそうなときはどうすればよいですか?
まずは分かった時点で税務署や税理士に相談し、できるだけ早く申告することを優先します。期限後の申告は加算税や延滞税の対象になることがありますが、放置するより影響を小さくできる場合があります。期限の延長制度には要件があるため、適用可否は所管の税務署に確認してください。