課税事業者をやめて免税事業者に戻る|条件と不適用届出の手順

・会計・税務・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

インボイス制度をきっかけに課税事業者になったものの、取引先の顔ぶれが変わったり、売上の規模が落ち着いたりして「そろそろ免税事業者に戻れないか」と考える方は少なくありません。消費税の課税事業者をやめる手続きは、自分がどのルートで課税事業者になったかによって、出す書類も期限もまったく変わります。この記事では、戻れる条件の見分け方と、届出をどの順番で出すかを整理します。

この記事の結論

  • 消費税の課税事業者をやめられるかどうかは、「自分の意思で選択したのか」「売上規模で自動的になったのか」「インボイス登録のためになったのか」のどれに当てはまるかで判断の入口が変わります。
  • 自分の意思で課税事業者を選択している場合は、やめたい課税期間が始まる前日までに「消費税課税事業者選択不適用届出書」を所轄の税務署へ提出するのが基本の流れです。
  • インボイス(適格請求書発行事業者)の登録をしている間は、登録を取りやめる手続きをしない限り、売上規模にかかわらず課税事業者として申告が必要になります。

消費税の課税事業者をやめる前に、自分がどのルートで課税事業者になったか確認する

同じ「課税事業者」でも、そうなった理由は大きく3つに分かれます。第一に、基準期間(個人事業者は前々年、法人は前々事業年度)の課税売上高が一定額を超えたため、自動的に課税事業者になったケース。第二に、還付を受けたいなどの理由で「消費税課税事業者選択届出書」を自分から出したケース。第三に、インボイス制度に対応するため適格請求書発行事業者として登録したケースです。

やめる手続きは、このどれに当てはまるかで完全に変わります。売上規模で自動的になった場合は、原則として届出で「やめる」ものではなく、基準期間の課税売上高が基準以下に下がった時点で免税事業者に戻ります。自分で選択した場合は「選択不適用届出書」、インボイス登録が理由の場合は登録の取りやめ手続きが入口になります。

まず、過去に提出した届出の控えを探してください。控えが見当たらないときは、所轄の税務署に問い合わせると、どの届出が提出済みかを確認できる場合があります。顧問税理士がいる場合は、申告書の控えと合わせて確認してもらうのが早道です。

課税事業者選択不適用届出書はいつ、どこに出すのか

自分の意思で課税事業者を選択している場合、やめるために出すのが「消費税課税事業者選択不適用届出書」です。提出期限は、免税事業者に戻りたい課税期間が始まる日の前日まで。12月決算の法人が翌期から免税に戻りたいなら、その年の12月31日までに出しておく、というイメージです。提出先は、納税地を所轄する税務署です。

ここで見落としやすいのが「期限を1日でも過ぎると、その課税期間は間に合わない」という点です。決算月の直前に慌てて判断するのではなく、決算日の2〜3か月前には、翌期の売上見込みと設備投資の予定を並べて検討しておくと安全です。届出書は国税庁のサイトから様式を取得でき、e-Taxでの提出にも対応しています。

なお、この届出を出したからといって、過去の課税期間の申告義務がなくなるわけではありません。課税事業者だった期間の消費税申告は、通常どおり行う必要があります。届出はあくまで「次の課税期間から」の話だと理解しておいてください。

「2年縛り」と設備投資の「3年縛り」に引っかかっていないか

課税事業者を自分で選択した場合、原則として2年間(事業を開始した課税期間などを除き、選択の効力が生じた課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ)不適用届出書を提出できない、という制約があります。いわゆる2年縛りです。還付目的で選択した初年度に「思ったより還付が少なかったからやめる」ということは、基本的にできません。

さらに、課税事業者を選択している期間中や、新設法人などが課税事業者となる期間中に、調整対象固定資産や高額特定資産を取得して一般課税で申告した場合には、その後3年程度、課税事業者としての申告と原則課税が続くよう定められた規定があります。事務所用の不動産や高額な機械・車両などを買った年がある方は、ここに該当していないかを必ず確認してください。

この判定は、取得時期・金額・そのとき適用していた計算方法の組み合わせで決まり、条文も複雑です。該当しそうな取得がある場合は、自己判断で届出を出す前に税理士に確認することをおすすめします。縛りの期間中に届出を出しても効力が認められず、免税になったつもりで申告を怠ると、後から追徴の対象になることがあります。

インボイス登録をしている場合は、登録の取りやめが先

適格請求書発行事業者として登録している間は、基準期間の課税売上高が基準以下であっても、課税事業者として消費税の申告義務が続きます。つまり「売上が下がったから自動的に免税に戻る」とはならず、まず登録を取りやめる手続きが必要です。使うのは「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」です。

提出のタイミングにもルールがあります。登録を失効させたい課税期間の初日から起算して一定日数前までに提出しないと、効力が生じるのが次の課税期間にずれ込む、という仕組みです。日数の数え方は制度上細かく定められているため、余裕をもって決算日の数か月前には準備してください。詳細な期限は国税庁のインボイス制度に関する資料で最新の記載を確認しましょう。

また、免税事業者から経過措置で登録した方については、登録日から一定期間は課税事業者として申告が必要とされる取扱いがあります。「登録を取り消せばすぐ免税」とは限らないため、登録日がいつだったかを確認したうえで進めてください。

実務面での影響も忘れずに。登録をやめるとインボイスを発行できなくなり、取引先が仕入税額控除を受けられる範囲が変わります。主要な取引先が課税事業者中心なら、値下げ要請や取引条件の見直しにつながる可能性があります。手続きの前に、取引先構成を一度棚卸ししておきましょう。

売上が下がって免税に戻る場合に出す「課税事業者でなくなった旨の届出書」

自分で選択したわけではなく、基準期間の課税売上高が基準を超えたために課税事業者になっていた方は、基準期間の課税売上高が基準以下に下がれば、原則として免税事業者に戻ります。このとき提出するのが「消費税の納税義務者でなくなった旨の届出書」です。提出期限は「事由が生じた場合、速やかに」とされており、所轄の税務署に出します。

ただし、基準期間の売上だけで決まるわけではありません。特定期間(個人事業者は前年の上半期、法人は前事業年度の上半期)の課税売上高や給与等支払額による判定もあり、基準期間が下がっていても課税事業者となる場合があります。前年の上半期の数字も合わせて確認してください。

なお、インボイス登録を続けている場合は、この届出を出しても課税事業者としての申告は続きます。あくまで「登録による課税事業者」と「売上規模による課税事業者」は別の話だと切り分けて考えると混乱しません。

戻るべきかどうかを判断する順番

最初に見るのは取引先の構成です。売上の大半が一般消費者や免税事業者であれば、インボイスを発行できないことの影響は比較的小さくなります。一方、課税事業者の法人取引が中心なら、戻ることで取引条件の交渉が発生しうると考えておきましょう。

次に、消費税の納税額の見込みです。売上に含まれる消費税から仕入れにかかった消費税を引いた差額が、実際の負担になります。仕入れや外注が多い業種では、課税事業者のままでも負担が小さい、あるいは還付になることもあります。簡易課税や小規模事業者向けの特例を使っている場合は、それを続けたときの試算と比べてください。

最後に、今後1〜2年の設備投資予定です。大きな買い物を予定しているなら、課税事業者のまま仕入税額控除を受けたほうが有利になることもあります。ただし前述の3年縛りが絡むため、判断は慎重に。この3点を並べたうえで、金額の影響が大きいと感じたら、届出を出す前に税理士へ相談するのが確実です。

消費税の納税義務判定は、法人の設立時期、資本金、組織再編、特定期間の判定など、条件の組み合わせで結論が変わる領域です。届出の提出期限を逃すと1年単位で影響が出ますので、自社の状況に当てはめた判断は、税理士に確認したうえで進めてください。インボイス登録の実務や取引先への通知の進め方についても、あわせて相談できます。

よくある質問

課税事業者をやめると、何年間は元に戻れないなどの制約はありますか。

自分の意思で課税事業者を選択した場合、原則として2年間は選択不適用届出書を提出できないという制約があります。免税事業者に戻った後で再び課税事業者を選択すること自体は可能ですが、選択届出書の提出期限も「適用したい課税期間の前日まで」が基本です。行き来を繰り返すと判定が複雑になるため、税理士に確認しながら進めてください。

インボイス登録をやめれば、すぐに免税事業者に戻れますか。

登録の取消しを求める届出書の提出時期によって、効力が生じる課税期間が変わります。また、免税事業者から経過措置で登録した方は、登録日から一定期間は課税事業者として申告が必要とされる取扱いがあるため、すぐに戻れるとは限りません。国税庁のインボイス制度の資料で最新の要件を確認するか、税理士にご相談ください。

届出書を出し忘れたまま決算日を迎えてしまいました。どうなりますか。

提出期限を過ぎた場合、その課税期間からは免税事業者に戻れず、課税事業者として申告する必要があると扱われることが一般的です。翌期からの適用を目指して、あらためて期限内に提出し直す流れになります。やむを得ない事情がある場合の取扱いもあるため、まず所轄の税務署か税理士に事情を伝えて相談してください。

免税事業者に戻ったら、受け取った消費税相当額はどう扱えばよいですか。

免税事業者は消費税の申告・納付を行いませんが、請求書の記載方法や価格設定を取引先とどう整理するかは、実務上の検討事項になります。取引先から取引条件の見直しを求められることもあります。売上計上や所得税・法人税への影響も含め、税理士に確認したうえで対応を決めると安心です。

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