雇用契約書の郵送・返送の進め方|送付状の書き方と回収の管理

・採用・労務・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

入社前の本人がまだ出社していない、リモート勤務で対面の機会がない、複数人が同じ日に入社する。こうした場面では、雇用契約書と労働条件通知書を郵送でやり取りすることになります。郵送は「送って終わり」ではなく、返ってきて初めて完了する手続きです。この記事では、送る前の準備、送付状(添え状)の書き方、返送用封筒の整え方、そして回収の管理までを、実務の順番どおりに整理します。

この記事の結論

  • 雇用契約書を郵送するときは、契約書2部・労働条件通知書・送付状・返送用封筒をひとつの封筒にまとめ、返送期限を送付状に明記するのが基本の形です。
  • 返送用封筒は、会社の宛先と切手をあらかじめ用意しておくと返送率が上がり、回収の遅れを減らせます。
  • 送付・到着・返送・保管までを一覧表で管理し、返送期限の数日前にリマインドを入れる運用にしておくと、契約書の未回収を防ぎやすくなります。

雇用契約書を郵送する前に、何を確認しておくか

まず確認したいのは、その書類が「通知するもの」なのか「双方が署名・押印するもの」なのかという点です。労働条件通知書は会社から労働者へ労働条件を明示するための書類で、原則として会社が交付すれば足りると考えられています。一方、雇用契約書は双方が内容に合意した証として記名・押印(または署名)し、一部ずつ保管するものです。この違いを押さえておくと、何部送って何部返してもらうかが自然に決まります。

実務では、労働条件通知書の内容を盛り込んだ「労働条件通知書兼雇用契約書」という形にして、1つの書類で明示と合意を兼ねる会社も多くあります。この形式にする場合は2部送り、1部を返送してもらい、1部は本人保管とするのが一般的です。どの形式にするかは、最初に社内で決めて雛形を固定しておくと、入社のたびに迷わずに済みます。

送る前には、氏名の漢字、住所、入社日、就業場所、業務内容、始業終業時刻、賃金、契約期間の有無といった記載を、採用時の条件と突き合わせて確認します。郵送は修正のやり直しに時間がかかるため、送る前のチェックが最大の時短になります。明示すべき事項の詳細は、厚生労働省の資料や所管の労働局の案内で最新の内容をご確認ください。

封筒に入れるものの一式と、送り方の手順

同封するのは、原則として次の4点です。ひとつめは雇用契約書2部(会社側の記名・押印を済ませたもの)、ふたつめは労働条件通知書(兼用でない場合)、みっつめは送付状(添え状)、よっつめは返送用の封筒です。入社手続きの書類(誓約書、通勤経路の届出、扶養控除等申告書、口座届など)をまとめて送る場合は、送付状に書類名を箇条書きで並べ、何を返送し何を本人保管とするのかを分けて書きます。

手順としては、①社内で契約内容を最終確認する、②会社側の記名・押印を済ませる、③送付状と返送用封筒を用意する、④封入してチェックリストで数を確認する、⑤発送して追跡番号や発送日を記録する、の順です。個人情報を含む書類なので、簡易書留など追跡できる方法を選ぶ会社が多くあります。郵送方法ごとの取扱いや料金は日本郵便の公式サイトで最新の内容をご確認ください。

封入時に意外と多いのが、契約書を1部しか入れていない、押印を忘れている、返送用封筒に宛名を書き忘れている、といったミスです。封をする前に、送付状の箇条書きと中身を指差しで照合する習慣にしておくと、入社直前の再送を避けられます。複数人分をまとめて作業するときは、1人分ずつ封入して封をする方式にすると取り違えが起きにくくなります。

雇用契約書の送付状(添え状)の書き方と文例

送付状は、右上に日付、その下に宛名(本人の氏名+様)、右側に会社名・部署名・担当者名・連絡先、中央に件名、本文、同封書類の一覧、という構成にします。本文は3〜4行で十分です。大切なのは「何を送ったか」「何をしてほしいか」「いつまでか」の3点が、読み流しても分かる形で書かれていることです。

文例です。『拝啓 時下ますますご清祥のこととお喜び申し上げます。このたびは当社へのご入社をお決めいただき、誠にありがとうございます。つきましては、雇用契約書ほか入社手続きに必要な書類を同封いたしました。ご内容をご確認のうえ、雇用契約書2部のうち1部にご署名・ご捺印いただき、同封の返信用封筒にて◯月◯日までにご返送くださいますようお願い申し上げます。残る1部はお手元にて保管をお願いいたします。ご不明な点がございましたら、下記までお気軽にお問い合わせください。敬具』

この下に「同封書類」として、雇用契約書(2部)、労働条件通知書(1部)、誓約書(1部)、返信用封筒(1通)のように部数つきで並べます。返送が必要なものには「※ご返送ください」、本人保管のものには「※お手元で保管してください」と一言添えると、問い合わせが減ります。返送期限は入社日より前に余裕をもたせ、到着までの日数も見込んで設定します。

返送用封筒の準備と、返ってこないときの動き方

返送用封筒は、会社の住所・会社名・担当部署までを印字し、切手を貼った状態で同封します。相手に宛名を書かせない、切手を買わせない、この2点だけで返送の心理的なハードルは大きく下がります。封筒のサイズは、契約書を折らずに入れられる角形が扱いやすく、複数書類を返してもらう場合は特に折り目が付かず読みやすくなります。

返送期限は送付状に日付で書き、あわせて「ご返送が難しい場合はご連絡ください」と添えておきます。期限の2〜3日前になっても届かない場合は、責める調子にならないようメールで一度リマインドします。『◯日にお送りした雇用契約書について、お手元に届いておりますでしょうか。ご不明な点があればご案内いたしますので、お気軽にご連絡ください』程度の文面で十分です。

それでも返送がない場合は、電話で状況を確認します。押印箇所が分からない、印鑑が手元にない、引っ越し中で受け取れていない、といった事情が判明することもあります。入社日までに返送が間に合わない見込みなら、初日に持参してもらう、その場で記入してもらう、といった代替案を先に伝えておくと、本人も動きやすくなります。

メール送付や電子交付にする場合の考え方と例文

労働条件の明示は、一定の要件のもとで電子メールなどの方法で行うことも認められています。ただし、本人が希望していること、出力して書面を作成できる方法であること、といった条件があるとされています。電子でのやり取りに切り替える場合は、厚生労働省の資料や所管の労働局の案内で要件を確認したうえで、社内ルールを決めてください。判断に迷う場合は社会保険労務士にご相談ください。

メールで送る場合の例文です。『件名:雇用契約書・労働条件通知書のご送付(◯◯株式会社)/本文:◯◯様 お世話になっております。◯◯株式会社の◯◯です。◯月◯日入社にあたり、雇用契約書および労働条件通知書を添付いたします。ご内容をご確認のうえ、◯月◯日までにご返信をお願いいたします。ご不明な点がございましたら本メールにご返信ください。』

電子契約サービスを使って締結する方法もあります。選ぶときは、本人確認の方式、締結後の書類の保管方法、入社者側がアカウント登録を必要とするか、他の入社手続き書類とまとめて送れるか、という順で比較すると判断しやすくなります。料金や機能は変わるため、各社の公式サイトで最新の情報をご確認ください。なお、電子で保存する書類の取扱いは電子帳簿保存法などの関連制度にも関わるため、範囲や要件は所管官庁の資料を確認するか、税理士にご相談ください。

回収状況の管理と、返ってきた後の保管

入社者が数名を超えると、誰の契約書が返ってきていないのかが分からなくなります。スプレッドシートで、氏名・入社日・発送日・発送方法・追跡番号・返送到着日・不備の有無・保管場所、という列を作り、1人1行で管理するのがシンプルです。返送到着日が空欄の行だけを見れば、その日にやることが決まります。

返ってきたら、署名・押印の有無、日付の記入漏れ、修正箇所への訂正印の有無を確認します。不備があれば、その場で本人に連絡し、どの箇所をどう直すかを具体的に伝えます。返送されたものを開封したまま机に置かない、確認が済んだら所定の場所へ移す、という動線を決めておくと紛失を防げます。

保管については、労働者名簿や賃金台帳などと同様に、一定期間の保存が求められる書類があります。保存期間や対象の詳細は法改正で変わることがあるため、最新の要件は所管官庁の資料でご確認ください。紙とデータのどちらで保管するかを社内で統一し、アクセスできる担当者を限定しておくと、個人情報の管理としても整理しやすくなります。

迷ったときの判断の順番と、専門家への相談

郵送か電子かで迷ったら、まず「本人が電子での受け取りを希望しているか」を確認します。希望していなければ郵送が無難です。次に「入社日までに往復の日数が確保できるか」を見ます。確保が難しければ、電子で先に内容を共有し、署名は初日に対面で、という組み合わせも選択肢になります。

書類の形式で迷ったら、まず労働条件通知書兼雇用契約書の1本にまとめられないかを検討します。まとめられるなら管理する書類が減ります。契約期間の定めがある、試用期間の条件が複雑、といった事情がある場合は、記載内容の整理に手間がかかるため、雛形の作成段階から専門家の目を入れておくと安心です。

労働条件の明示事項、電子交付の要件、契約書の保存期間などは、制度改正の影響を受けやすい部分です。自社の雛形や運用が現行のルールに合っているか不安がある場合は、社会保険労務士にご相談ください。契約内容そのものに法的な論点が含まれる場合は、弁護士に確認する方法もあります。

よくある質問

雇用契約書は何部送って、何部返してもらえばよいですか。

双方が記名・押印して1部ずつ保管する形が一般的なので、2部送り、1部を返送してもらう運用が多く見られます。送付状に「2部のうち1部にご署名・ご捺印のうえご返送ください。残る1部はお手元で保管してください」と書いておくと、行き違いを防げます。

返送用封筒に切手は貼っておくべきですか。

会社側で切手を貼り、宛名も印字した状態で同封すると、返送までの手間が減り、回収が進みやすくなります。契約書を折らずに入れられるサイズを選ぶと、返ってきた書類も読みやすく保管しやすくなります。郵送方法や料金は日本郵便の公式サイトでご確認ください。

労働条件通知書はメールで送ってもよいのでしょうか。

一定の要件を満たす場合に電子メールなどでの明示が認められているとされていますが、本人の希望や出力可能であることなどの条件があります。要件の詳細は厚生労働省の資料や所管の労働局の案内でご確認いただき、運用に迷う場合は社会保険労務士にご相談ください。

入社日までに契約書が返送されてこない場合はどうすればよいですか。

まずメールで到着の確認とリマインドを行い、反応がなければ電話で状況を聞きます。押印箇所が分からない、受け取れていないといった事情が分かることもあります。間に合わない見込みなら、初日に持参してもらう方法をあらかじめ案内しておくと進めやすくなります。

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この記事は一般的な情報をまとめたものです。税務・法務・労務の個別の判断については、税理士・弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。 料金や条件は変わることがあるため、お申し込み前に必ず各サービスの公式サイトで最新の内容をご確認ください。