外国人を雇うときの雇用契約書|在留資格の確認と多言語での明示

・採用・労務・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

外国人を雇うときの雇用契約書は、日本人を雇うときの契約書に「在留資格の確認」と「本人が理解できる言語での明示」という二つの作業が加わる、と考えると整理しやすくなります。この記事では、内定から入社までの順番に沿って、何を確認し、どの書式を用意し、どこに出すのかをまとめました。外国人材の採用がはじめてのひとり社長や、小さな会社のバックオフィス担当の方に向けた内容です。

この記事の結論

  • 外国人の雇用契約書は、日本人と同じ労働条件の書面明示に加えて、在留カードで在留資格と就労可否を確認し、本人が理解できる言語でも内容を伝えるという二つの作業が必要になります。
  • 在留カードは「在留資格の種類」「在留期間の満了日」「就労制限の有無」「資格外活動許可の有無」の4点を必ず見て、コピーを保管しておくと後の手続きで役立ちます。
  • 特定技能の雇用契約は入管に提出する所定の様式があり、厚生労働省が公開している多言語の労働条件通知書のひな形とあわせて、公的なテンプレートを使うのが安全です。

外国人の雇用契約書は日本人と何が違うのか

労働基準法にもとづく労働条件の明示義務は、国籍に関係なく適用されます。そのため、契約期間、就業場所と業務内容、始業・終業時刻、休憩や休日、賃金の決定方法と支払い方法、退職に関する事項といった基本項目は、日本人を雇うときとまったく同じように書面で示す必要があります。ここは外国人向けだからといって省略できる部分ではありません。

違うのは、追加で二つの作業が発生する点です。ひとつは採用前後の在留資格の確認で、その人が日本で働けるか、どんな仕事ならできるかを在留カードで確かめる作業です。もうひとつは、契約内容を本人が理解できる言語で伝える作業で、日本語だけの契約書を渡して署名させても、後で「聞いていない」というトラブルになりやすくなります。

実務では、日本語の雇用契約書兼労働条件通知書を正本として作り、その訳文を併記または別紙で添える形がよく使われます。訳文はあくまで理解を助けるためのもので、どちらを正本とするかを契約書の中に書いておくと、解釈が割れたときの整理がしやすくなります。

在留カードで確認する4つのポイント

内定を出す前、遅くとも契約書を作る前に、在留カードの原本を見せてもらいます。見るべきところは、①在留資格の種類、②在留期間の満了日、③「就労制限の有無」欄、④裏面の資格外活動許可の記載、の4点です。この4点をメモし、表裏のコピーを取って保管しておくと、後の届出や更新のときに毎回探さずに済みます。

判断の順番はこうです。まず「就労制限の有無」を見て、制限なしと書かれていれば(永住者や日本人の配偶者等など)業務内容の制約は基本的にありません。次に、就労資格が特定されている場合は、その在留資格で認められる活動と、自社で任せたい業務が合っているかを見ます。技術・人文知識・国際業務の人にライン作業だけを任せる、といった組み合わせは在留資格に適合しないと判断されることがあるため注意が必要です。

留学生をアルバイトで雇う場合は、裏面の資格外活動許可の有無と、許可された時間の範囲を確認します。在留カードが本物かどうかは出入国在留管理庁が提供している在留カード等読取アプリや番号の失効情報照会で確かめられます。判断に迷うときは、行政書士や入管に事前に確認しておくと安心です。

雇用契約書に書いておきたい外国人向けの項目

基本項目に加えて、外国人従業員の場合に書いておくと後で助かる項目がいくつかあります。まず、在留資格が更新されなかった場合や在留期間が満了した場合の取り扱いです。就労できる在留資格を維持していることを雇用継続の前提とする旨を書いておくと、万一のときの整理がしやすくなります。

次に、社会保険・雇用保険・税の取り扱いです。要件を満たせば国籍に関係なく加入の対象になりますが、本人が母国の制度と混同していることも多いため、給与から何が引かれるのかを一覧で示しておくと説明がスムーズです。母国へ帰国する場合の脱退一時金など個別の扱いは、社会保険労務士に確認してください。

住居の提供や寮費の控除、渡航費の負担、帰国時の取り扱いなどを会社が用意する場合は、その金額と内訳を契約書または別紙に明記します。控除できる範囲や手続きにはルールがあるため、賃金からの控除を考えているときは事前に社会保険労務士へ相談するのが安全です。

英語・ベトナム語・ネパール語など多言語の書式はどこで手に入るか

まず探すべきは公的なひな形です。厚生労働省は、外国人労働者向けに英語、中国語、ベトナム語、ネパール語、ポルトガル語、インドネシア語など複数の言語に対応した労働条件通知書のモデル様式を公開しています。日本語と対訳の形になっているものが多く、自社で一から英訳するよりも、記載漏れが起きにくいのが利点です。最新版は厚生労働省の公式サイトで確認してください。

自社で訳文を作る場合は、賃金、労働時間、時間外労働、退職・解雇に関する条項を優先して訳します。機械翻訳だけに頼ると、手当や控除といった日本の給与制度特有の言葉がうまく伝わらないことがあるため、公的ひな形の言い回しを参考にするのがおすすめの進め方です。

渡すときは、署名の前に読む時間を確保します。面接と同じ日に契約書を出してその場で署名、という進め方は避け、事前に訳文を送っておき、質問を受けてから署名日を設定すると、認識のずれが減ります。説明した日付と説明者を記録に残しておくと、後から経緯を確認できます。

特定技能・技能実習など在留資格ごとの様式と入管への提出

特定技能で受け入れる場合は、雇用契約の内容そのものに基準が定められており、出入国在留管理庁が公開している「特定技能雇用契約書」と「雇用条件書」の参考様式を使うのが一般的です。これらは在留資格認定証明書交付申請や在留資格変更許可申請の添付書類として入管に提出するため、自社独自の書式だけで済ませるのは現実的ではありません。様式は改定されることがあるので、申請の都度、出入国在留管理庁の公式サイトで最新版をダウンロードしてください。

技能実習の場合は監理団体を通じた手続きが中心になり、雇用契約書や待遇に関する書面も機構の定める様式に沿って作成します。技術・人文知識・国際業務などの就労資格では、決まった契約書様式はないものの、申請の際に雇用契約書の写しを求められるため、業務内容と学歴・職歴とのつながりが読み取れる書き方にしておくと説明しやすくなります。

入社後は、雇用保険の被保険者資格取得届に在留資格などを記載する形で、外国人雇用状況の届出を行います。雇用保険の対象外の人を雇った場合は別の様式でハローワークに届け出る必要があり、離職時にも同様の届出があります。届出の期限や様式は厚生労働省・ハローワークの案内で確認してください。

内定から入社までの進め方チェックリスト

順番としては、①在留カードの原本確認とコピー保管、②任せる業務が在留資格の範囲に収まるかの確認、③必要なら在留資格の変更・認定申請、④日本語の雇用契約書兼労働条件通知書の作成、⑤訳文の用意と事前送付、⑥説明と署名、⑦入社後の社会保険・雇用保険手続きと外国人雇用状況の届出、という流れになります。新卒の留学生を採用する場合は、③の在留資格変更が入社日に間に合うよう、逆算してスケジュールを組みます。

保管しておくとよい書類は、在留カードのコピー、パスポートの該当ページの写し、雇用契約書と労働条件通知書(訳文を含む)、在留資格に関する申請書類の控え、届出の控えです。在留期間の満了日は、更新忘れを防ぐために更新月の数か月前にリマインドを設定しておくと安心です。

小さな会社ほど、採用担当と労務担当が同じ人になりがちです。だからこそ、最初の一人を採用するときにこの流れをテンプレート化しておくと、二人目以降がぐっと楽になります。

在留資格の適合性や契約条項の書きぶりは、個別の事情によって判断が変わります。入管手続きについては行政書士、労働条件や社会保険の取り扱いについては社会保険労務士、契約書の条項やトラブル対応については弁護士、税務の扱いについては税理士に、契約書を作る前の段階で相談しておくことをおすすめします。

よくある質問

雇用契約書は英語だけで作ってもよいですか。

本人が日本語を理解できない場合でも、日本国内の労働法令に沿った内容であることが前提になるため、日本語の正本を作り、英訳を併記または別紙で添える形が一般的です。どちらを正本とするかを契約書内に明記しておくと、解釈が分かれたときの整理がしやすくなります。厚生労働省が公開している多言語のモデル様式を参考にしてください。

在留カードのコピーは取っておく必要がありますか。

法律上コピーの保管そのものが義務づけられているわけではありませんが、外国人雇用状況の届出や在留期間の管理で記載内容を何度も使うため、表裏のコピーを保管しておく実務が広く行われています。保管する場合は、個人情報として適切に管理し、利用目的を本人に伝えておくと丁寧です。

特定技能の雇用契約書は自社のひな形でよいですか。

特定技能では、出入国在留管理庁が公開している特定技能雇用契約書・雇用条件書の参考様式を使うのが一般的で、これらは申請の添付書類として提出します。様式や記載要領は改定されることがあるため、申請のたびに公式サイトで最新版を確認し、判断に迷う点は登録支援機関や行政書士に相談してください。

留学生をアルバイトで雇うときも雇用契約書は必要ですか。

アルバイトであっても労働条件の書面明示は必要です。加えて、在留カード裏面の資格外活動許可の有無と、認められている就労時間の範囲を確認し、シフトがその範囲に収まるように管理します。時間の上限を超えた就労は在留資格に影響することがあるため、勤怠記録を残しておくと安心です。

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