記帳代行と会計ソフトの使い分け|freee・マネーフォワードでの共有方法

・会計・税務・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

記帳代行を頼もうと思ったとき、まずつまずくのが「会計ソフトは自分で契約するのか、それとも依頼先のものを使うのか」という点です。ここを決めないまま資料だけ渡してしまうと、あとからデータを引き取れない、数字をいつでも見られない、といった不便が出てきます。この記事では、記帳代行と会計ソフトの役割分担、クラウド会計での共有のしかた、依頼先を選ぶときの判断の順番を、実務の流れに沿って整理します。

この記事の結論

  • 記帳代行を使う場合でも、会計ソフトは自社名義で契約し、依頼先を共有ユーザーとして招待する形にしておくと、契約終了後もデータを自社に残せます。
  • freee・マネーフォワード・弥生などのクラウド会計は、いずれもメールアドレス単位で別ユーザーを招待し、閲覧や編集の範囲を設定して共有する仕組みが用意されています。
  • 依頼先を選ぶときは「料金」よりも先に「自社が使いたい会計ソフトに対応しているか」「データの所有者が誰になるか」を確認すると、あとからの乗り換えで困りにくくなります。

記帳代行と会計ソフトは、どちらが「入れ物」でどちらが「作業」か

まず整理しておきたいのが、記帳代行と会計ソフトは競合するものではなく、役割が違うという点です。会計ソフトは仕訳や残高を保存しておく「入れ物」で、記帳代行はその入れ物に数字を入れていく「作業」にあたります。会計ソフトを契約したから記帳代行が不要になるわけでも、記帳代行を頼んだから会計ソフトがいらなくなるわけでもありません。

実際には、会計ソフトを自社で契約したうえで、仕訳を入力する作業を外部に任せる、という組み合わせが多くとられます。この形だと、社長はいつでもログインして残高や損益の状況を確認でき、決算のときも同じデータをそのまま使えます。

逆に、依頼先が自分の事務所の会計ソフトに入力し、月次で試算表をPDFで送ってくる形もあります。手間は少ないのですが、自社側にデータが残らないため、依頼先を変えるときに移行の手間がかかることがあります。どちらが向くかは、社長自身が数字を見たいかどうかで分かれます。

会計ソフトは自社契約か、依頼先の契約か:迷ったらこの順に見る

判断の順番としては、次の三つを上から見ていくと決めやすくなります。第一に、社長や担当者が月の途中でも残高や売上を見たいか。見たいなら自社契約にして、依頼先を招待する形が合います。第二に、将来的に経理を内製化したり、依頼先を変える可能性があるか。あるなら、やはり自社契約にしてデータを手元に置いておくほうが動きやすくなります。

第三に、請求書発行や経費精算、給与計算といった他の機能もまとめて使いたいか。クラウド会計は周辺機能とつながっていることが多いので、経理以外の業務もそのソフトで回すつもりなら、自社契約が前提になります。

反対に、取引件数がごく少なく、数字は決算と年に数回の試算表で足りる、という場合は、依頼先のソフトを使ってもらう形でも回ります。ただしその場合でも、仕訳データをCSVなどの形式で出してもらえるか、契約前に確認しておくと安心です。

freee・マネーフォワード・弥生での共有のしかた

クラウド会計は、いずれもメールアドレス単位でユーザーを追加し、権限を設定して共有する仕組みを備えています。おおまかな流れは共通で、自社の管理者アカウントでログインし、設定画面からメンバー招待を行い、依頼先の担当者のメールアドレスを入力して、付与する権限を選ぶ、という順になります。招待された側は届いたメールから参加します。

権限は、すべて操作できる管理者、仕訳の入力や編集ができる一般ユーザー、見るだけの閲覧者、といった区分で用意されていることが多いです。記帳代行を依頼するなら、仕訳を入力できる権限は必要ですが、事業所の削除や契約情報の変更まで任せる必要はありません。最小限の範囲から始めて、足りなければ広げるのが安全です。

弥生のようにデスクトップ版とクラウド版の両方がある製品では、どちらを使うかで共有の方法が変わります。デスクトップ版はデータファイルのやりとりが中心になるため、同時に作業できない、バージョンを揃える必要があるといった制約があります。複数人でリアルタイムに見たいならクラウド型が扱いやすいでしょう。各機能の詳細や画面の名称は更新されることがあるため、実際の設定手順は各社の公式ヘルプで最新の情報を確認してください。

共有する前に決めておく、権限とアカウントのルール

共有を始める前に、三つだけ決めておくと後のトラブルが減ります。一つ目は、管理者アカウントは自社の代表者や担当者が持つこと。依頼先の担当者を管理者にしてしまうと、契約終了時にアカウントの整理で手間取ることがあります。

二つ目は、銀行口座やクレジットカードの連携情報の扱いです。クラウド会計は明細を自動取得できますが、その設定に使うIDやパスワードは自社で管理し、依頼先には連携済みのデータを見てもらう形にするのが基本です。金融機関の規約上、認証情報の共有が制限されている場合もあります。

三つ目は、担当者が交代したときの手続きです。依頼先の担当者が変わったら、旧担当のユーザーを削除して新担当を招待する、というルールを契約時に決めておきます。退職者のアカウントが残り続けるのは避けたいところです。

記帳代行を依頼するまでの手順と、毎月の資料の渡し方

依頼までの流れは、おおむね次のようになります。まず現状を整理します。取引の件数がおおよそ月にどれくらいあるか、事業用の口座やカードは分かれているか、請求書や領収書は紙かデータか。この三点をメモしておくと、見積りの相談がスムーズです。次に、使いたい会計ソフトを決めるか、決まっていなければ依頼先に対応可能なソフトを聞きます。そのうえで、契約内容として「入力の範囲」「月次で何を受け取るか」「決算まで含むか」を確認します。

契約後、最初にやるのが会計ソフトの共有設定と、期首残高や勘定科目の設定です。設立直後なら残高はシンプルですが、途中から依頼する場合はそれまでの帳簿を引き継ぐ作業が入ります。ここは時間がかかるので、余裕をもって進めてください。

毎月の資料の渡し方は、締め日と方法を決めておくのが要点です。通帳やカードはクラウド会計の連携で自動取得できる部分が多く、残るのは領収書や請求書、現金出納の記録です。スマホで撮影してクラウドストレージや会計ソフトのファイルボックスに入れる、といった形にすると、郵送の手間がなくなります。なお、電子データで受け取った請求書や領収書の保存方法には電子帳簿保存法上のルールがあり、扱いは事業者の状況によって異なります。要件の詳細は国税庁の資料を確認するか、税理士にご相談ください。

依頼先とプランを比べるときに見る順番

料金は各社・各事務所で条件が大きく異なり、取引件数や業種、決算まで含むかどうかで変わります。金額の比較から入ると条件の違いを見落としやすいので、先に次の点を揃えてから見積りを取ると比べやすくなります。対応している会計ソフト、入力してもらう範囲(通帳だけか、請求書や経費も含むか)、月次資料の提供有無とその時期、決算や申告が含まれるか、消費税の申告が必要な場合の扱い。

会計ソフト会社が案内している記帳代行つきのプランや、提携している事務所の紹介制度もあります。ソフトと依頼先が同じ系列だと設定がスムーズな一方、後で別のソフトに移りたくなったときの自由度は下がることがあります。料金や提供条件は変更されることがあるため、各社の公式サイトで最新の内容を確認してください。

最後に、記帳代行と税務申告は別のサービスだという点も押さえておいてください。税務書類の作成や税務相談は税理士の業務とされています。記帳だけを頼むのか、決算・申告まで含めて任せるのかで、依頼先の選択肢も費用感も変わります。自社にどこまで必要かの線引きに迷ったら、早い段階で税理士に相談し、会計ソフトの選定を含めて一緒に設計してもらうのが結果的に近道です。

よくある質問

記帳代行を頼むなら、会計ソフトは自分で契約しなくてもいいですか。

契約しない選択もできますが、その場合はデータが依頼先側に置かれるため、月の途中で自分で数字を見たり、依頼先を変えたりするときに手間がかかることがあります。数字を自分でも見たい、将来内製化するかもしれない、という場合は自社契約にして依頼先を招待する形が扱いやすいです。

freeeやマネーフォワードで、税理士や記帳代行会社にはどう権限を渡せばいいですか。

いずれも設定画面からメールアドレスを指定してメンバーを招待し、権限の範囲を選ぶ仕組みが用意されています。仕訳の入力・編集ができる範囲から始め、事業所の削除や契約情報の変更まで含む管理者権限は自社側で保持しておくのが無難です。画面名や手順は更新されることがあるので、各社の公式ヘルプをご確認ください。

弥生のようなデスクトップ型のソフトでも記帳代行は頼めますか。

依頼できる場合が多いですが、データファイルをやりとりする方式になるため、同時編集ができない、製品のバージョンを合わせる必要がある、といった制約が出ることがあります。複数人でリアルタイムに確認したいならクラウド型が向きます。依頼先がどの製品・バージョンに対応しているか、契約前に確認してください。

記帳代行の料金はどのくらいかかりますか。

取引件数、入力する資料の範囲、決算や申告を含むかどうかで大きく変わるため、一律の目安を示すことは難しいです。条件を揃えたうえで複数から見積りを取り、各社の公式サイトで最新の提供内容を確認するのが確実です。

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この記事は一般的な情報をまとめたものです。税務・法務・労務の個別の判断については、税理士・弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。 料金や条件は変わることがあるため、お申し込み前に必ず各サービスの公式サイトで最新の内容をご確認ください。