契約書管理のやり方|電子契約後の保管・検索ルールの決め方

・契約・電子署名・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

契約書は、締結した瞬間がゴールではありません。半年後に「あの取引先との契約、いつまでだっけ」「自動更新だったか」と聞かれたときに、5分で出せるかどうかが管理の実力です。電子契約サービスを使い始めた会社ほど、締結済みデータがサービスの中に溜まる一方で、紙やPDFが別の場所に散らばり、全体を見渡せなくなりがちです。この記事では、ひとり社長や数人規模の会社が最初に決めるべき保管・検索ルールを、決める順番に沿って整理します。

この記事の結論

  • 契約書管理の出発点は、保管場所を1か所に集約し、ファイル名の付け方を統一することです。
  • 電子契約サービスに締結済みデータが残っていても、紙の契約書や相手方の別サービスで締結した契約があるため、全契約を一覧できる台帳を別に持つと探しやすくなります。
  • 検索したい条件(相手方・契約種類・終了日・自動更新の有無)を先に決めてから、ファイル名と台帳の項目を設計すると、後から作り直す手間が減ります。

なぜ契約書管理は「締結後」でつまずくのか

電子契約サービスを導入すると、締結までの流れは大きく楽になります。一方で、締結後の書類は「サービスの中にあるから大丈夫」と考えてしまい、管理ルールを決めないまま数が増えていきます。半年、一年と経つと、どの契約が生きていて、どれが終わっているのかが分からなくなります。

つまずきの多くは、契約書が複数の場所に分かれることから起きます。自社が送信した電子契約はサービス内に、相手方が送信した契約は先方のサービスから届いたPDFに、古い契約や相手方の都合で紙にした契約はキャビネットに、といった具合です。場所が3つに分かれた時点で、「全部見る」という行為が難しくなります。

もうひとつは、検索したい切り口とファイルの保存のされ方がずれていることです。日付順に並んでいても、「この取引先と結んでいる契約を全部」「今期中に期限が来る契約を全部」という探し方には答えられません。管理ルールは、探し方から逆算して決めるのが近道です。

最初に決める3つ:保管場所・命名ルール・台帳

やることを絞ると、決めるのは3つです。第一に、締結済み契約の「原本がどこにあるか」を集約する場所。第二に、ファイル名の付け方。第三に、全契約を一行ずつ並べた台帳です。この3つが揃えば、社員が増えても同じやり方を引き継げます。

保管場所は、電子契約サービスの保管機能をそのまま原本置き場にする方法と、クラウドストレージに契約書専用フォルダを作ってそこへ集約する方法があります。自社発の電子契約がほとんどで、他社サービスや紙が少ないならサービス内で完結させやすく、締結ルートがばらばらならストレージ集約のほうが見通しが良くなります。どちらでも、「ここを見れば全部ある」と言い切れる場所を1つに決めることが大切です。

命名ルールは、迷いが出ない形にします。たとえば「締結日_相手方名_契約種類_(枝番)」のように、先頭を日付にすると並び順が自然になります。年月日は4桁+2桁+2桁で揃え、相手方名は正式名称か略称かをあらかじめ決めておくと、後から検索がぶれません。

台帳に載せる項目と、作り方の手順

台帳は表計算ソフトの1シートで十分です。載せる項目は、探したい条件そのものです。契約書名、相手方名、契約種類(業務委託・秘密保持・賃貸借など)、締結日、開始日、終了日、自動更新の有無、更新の通知期限、原本の保管場所(サービス名やフォルダのパス)、社内の担当者。この10項目程度から始めると運用が続きやすくなります。

作る手順は、まず現状を棚卸しすることからです。手元にある契約書を、電子契約サービスの締結済み一覧、メールで受け取ったPDF、紙のファイルの3ルートから集め、重複を除いて一覧化します。数が多い場合は「今も効力がありそうなもの」から着手し、終了済みのものは後回しにして構いません。

次に、集めた契約を台帳に転記しながら、原本ファイルを決めた保管場所へ移し、命名ルールに沿ってリネームします。ここで紙しかない契約はスキャンしてPDFを保管場所に置き、台帳の保管場所欄に「紙原本:○○キャビネット/PDF:△△フォルダ」と両方を書いておくと、後で迷いません。最後に、台帳の場所を社内で共有し、以後は締結したその日に1行追加する運用に切り替えます。

電子契約サービス内の管理機能と、外部の管理をどう分けるか

クラウドサインをはじめ、多くの電子契約サービスには締結済み文書の保管・検索やフォルダ分け、権限設定といった文書管理の機能があります。自社が送信側になる契約が中心で、社内の利用者も少ないうちは、サービスの機能だけで運用できることが多いでしょう。機能の範囲や設定できる項目はサービスごとに異なるため、導入前後に各社の公式サイトで最新の仕様を確認してください。

一方、相手方が別の電子契約サービスで送ってきた契約や、紙で締結した契約は、自社のサービス内には自動では入りません。こうした「外から来た契約」が一定数あるなら、サービス内だけを見ていても全体像はつかめません。この場合は、原本の置き場としてサービスを使いつつ、全体の一覧は台帳で持つ、という二段構えが現実的です。

会計や労務のクラウドサービス(freeeなど)に書類を保存する機能がある場合も、考え方は同じです。請求書や領収書はそちらに、契約書は契約書の保管場所に、と書類の種類で分けたうえで、契約については台帳に保管場所を書いておくと、どのサービスを開けばよいかが一目で分かります。どのサービスにどこまで保存できるかは、各社の公式情報でご確認ください。

更新期限とアクセス権限:事故を防ぐ2つの設定

契約書管理で実害が出やすいのは、自動更新の見落としと、解約通知の期限切れです。台帳に「終了日」と「通知期限」を入れたら、通知期限の1〜2か月前の日付でカレンダーに予定を入れておくと気づけます。担当者が1人しかいない会社ほど、記憶ではなくカレンダーに預けておくことをおすすめします。

アクセス権限は、「誰でも見られる」と「社長しか見られない」の両極端を避けるのが基本です。契約書には取引条件や単価が書かれていることが多いため、閲覧できる範囲を役割で分けます。編集・削除ができる人は少人数に絞り、他のメンバーは閲覧のみ、といった形にすると、誤って原本を上書きする事故を減らせます。

同時に、担当者が退職したり体調を崩したりしたときに誰も開けない、という状態も避けたいところです。保管場所へのアクセス権を持つ人を最低2人にしておく、台帳の場所と命名ルールを文書にして共有しておく、といった備えが役に立ちます。

保存期間と電子保存の注意点

契約書は、法人税法や会社法などの観点から一定期間の保存が求められる書類にあたることがあり、書類の種類や状況によって扱いが変わります。また、電子取引で授受したデータの保存については電子帳簿保存法に関する考え方があり、保存の方法や検索の要件が定められています。要件の詳細は国税庁など所管官庁の資料を確認し、自社の状況に当てはまるかは税理士にご確認ください。

実務としては、「取引年月日・取引先・金額(契約であれば契約種類)で探せる状態にしておく」という方向で整えておくと、後から要件を確認する際にも動きやすくなります。この点でも、命名ルールと台帳を揃えておくことが役立ちます。

契約が終了した後も、一定期間は消さずに残すのが無難です。台帳に「ステータス(有効/終了)」の列を足し、終了した契約は行を削除せずステータスだけ変える運用にすると、履歴が残り、同じ相手方と再契約するときにも過去の条件をたどれます。

今日からできる進め方(最短ルート)

一度に完璧を目指すと止まってしまいます。まずは1時間で、保管場所を1つ決め、命名ルールを一文で書き、台帳の空シートを作るところまでを終わらせます。これだけで、今日以降に締結する契約は正しい場所に正しい名前で積み上がっていきます。

次の週末などにまとまった時間を取り、過去の契約を棚卸しします。優先順位は、今も効力がある契約、金額や期間が大きい契約、自動更新がある契約の順です。全部を遡れなくても、生きている契約さえ台帳に載れば、実務上の困りごとはかなり減ります。

運用が回り始めたら、月に一度、台帳を上から眺める時間を5分だけ取ります。期限が近い契約の確認と、台帳に入れ忘れた契約がないかのチェックで十分です。契約書管理は、仕組みを大きくするより、小さく決めて毎回同じようにやることが効きます。

なお、契約内容そのものの妥当性や、保存期間・電子保存の要件の当てはめについては、判断が分かれる場面があります。契約条項や紛争リスクに関することは弁護士に、保存期間や税務書類としての扱いは税理士に、それぞれ早めにご相談ください。

よくある質問

電子契約サービスに入っていれば、別に台帳を作らなくてもよいですか。

自社が送信した契約だけで完結しているなら、サービス内の検索で足りる場合もあります。ただし相手方のサービスで締結した契約や紙の契約がある場合は、それらを含めて一覧できる台帳を別に持つほうが、全体を見渡しやすくなります。

紙で結んだ契約書はスキャンして捨ててもよいですか。

書類の種類や保存方法によって扱いが変わるため、一律には判断できません。スキャンしたデータの保存については電子帳簿保存法に関する要件があり、原本の廃棄可否も含めて税理士にご確認のうえで進めることをおすすめします。

ファイル名はどこまで細かく決めるべきですか。

迷いが出ない最小限で十分です。締結日・相手方名・契約種類の3つを決まった順番と表記で並べるだけでも、並び替えと検索がしやすくなります。項目を増やしすぎると入力が面倒になり、続かなくなります。

契約書の管理を外部のサービスに任せる場合、何を基準に選べばよいですか。

自社の締結ルート(自社発信が中心か、相手方発信や紙が多いか)、一覧に必要な項目、権限設定の細かさ、既存の会計・電子契約サービスとの連携の4点を軸に比較するとよいでしょう。機能や料金は変わるため、各社の公式サイトで最新の情報を確認してください。

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この記事は一般的な情報をまとめたものです。税務・法務・労務の個別の判断については、税理士・弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。 料金や条件は変わることがあるため、お申し込み前に必ず各サービスの公式サイトで最新の内容をご確認ください。