会計ソフトのインボイス・消費税設定|登録番号と2割特例の扱い
会計ソフトを開いて「消費税設定」の画面にたどり着いたものの、課税事業者区分、経理方式、申告方式、税区分……と選択肢が並んで手が止まる。インボイス制度が始まってから、この画面でつまずく人はとても増えました。ここでは、クラウド会計の消費税まわりの設定を「どの順番で、何を根拠に決めるか」に絞って整理します。自社の登録番号の登録、取引先の登録番号の管理、そしていわゆる2割特例の扱いまで、ひと通り確認できる構成にしています。
この記事の結論
- 会計ソフトの消費税設定は、①自社が課税事業者か免税事業者か、②適格請求書発行事業者の登録番号を持っているか、③消費税の計算方式(原則課税・簡易課税・特例の適用)、の順に決めると迷いにくくなります。
- 自社の登録番号は事業所(事業者)情報の設定画面に登録し、請求書に自動で印字される状態にしておくと、発行のたびに入力する手間と記載漏れを防げます。
- いわゆる2割特例は、申告時に選択できる経過的な措置として設計されているため、会計ソフト側では日々の仕訳ではなく消費税申告の設定画面で選ぶ形になっているものが多く、適用できるかどうかは税理士に確認するのが安全です。
設定の前に決める3つ──課税事業者か、登録番号があるか、計算方式は何か
会計ソフトの消費税設定は、画面に出てくる順番どおりに埋めようとすると混乱します。先に紙やメモで、次の3つを決めてしまうのが近道です。①自社は課税事業者か免税事業者か。②適格請求書発行事業者の登録番号を持っているか(申請中か)。③消費税の計算方式は原則課税か簡易課税か、経過的な特例を使うか。
この3つは互いに関係しています。たとえば免税事業者のままなら、原則として消費税の申告そのものがないため、ソフト上も「免税事業者」を選んでおけば税区分の入力は基本的に不要になります。一方、登録番号を取得して課税事業者になった場合は、②と③まで決めないと帳簿の付け方が定まりません。
判断に迷うのは、設立してまもない法人や、基準期間の課税売上高がボーダー付近の会社です。基準期間の課税売上高が一定額を超えるか、特定期間の判定に当たるか、資本金の額による判定に当たるかで扱いが変わるため、初年度から課税事業者になるかどうかは、決算を見てもらう税理士に確認してから設定するのをおすすめします。
クラウド会計の「消費税設定」で実際に触る項目
多くのクラウド会計では、事業所(事業者)の設定のなかに消費税に関する項目がまとまっています。触る項目はおおむね次の4つです。課税事業者・免税事業者の区分、経理方式(税込経理か税抜経理か)、申告の計算方式(原則課税か簡易課税か)、そして簡易課税を選ぶ場合の事業区分です。
経理方式は、税込と税抜のどちらを選ぶかで損益計算書の見え方が変わります。税抜経理にすると売上高や経費が消費税を含まない金額で並ぶため、業績を見るときに比較しやすいという利点があります。ただし、期中に方式を変えると過去の仕訳の集計に影響が出るため、変更するなら期首のタイミングで、顧問税理士と相談してから行うのが無難です。
設定を保存したら、テストとして売上の仕訳を1本入力してみてください。税区分が自動で入り、消費税額が想定どおりに分かれていれば、基本設定はひとまず機能しています。ここで税区分が空欄のままなら、事業者区分が免税のままになっているか、勘定科目側の初期設定が残っている可能性があります。
自社の登録番号は「事業所情報」に登録する
適格請求書発行事業者の登録番号を取得したら、まず会計ソフトの事業所情報(事業者情報・会社情報などの名称で用意されています)に登録番号を入力します。ここに入れておくと、ソフトの請求書機能で発行する書類に番号が自動で印字され、毎回手入力する必要がなくなります。
登録するタイミングは、通知を受け取ったらすぐで構いません。ただし、登録の効力が生じる日より前に発行した請求書に番号を載せてしまうと、取引先の処理と食い違うことがあります。通知書に記載された登録年月日を確認し、その日以降の発行分から番号入りの書式に切り替えるのが整理しやすいやり方です。
あわせて、請求書のテンプレートに「適用税率ごとに区分した合計額」と「税率ごとの消費税額」が表示されるかも確認してください。インボイスとして扱われる書類にはいくつかの記載事項が求められており、ソフトの標準テンプレートであれば概ね対応していますが、自社で項目を削っている場合は抜けが出ることがあります。記載事項の詳細は国税庁の資料で最新の内容をご確認ください。
取引先の登録番号は「取引先マスタ」に入れて使い回す
自社の番号の次に手を付けたいのが、仕入先・外注先の登録番号です。クラウド会計には取引先(パートナー)を登録する画面があり、そこに相手先の登録番号を保存できるものが一般的です。一度入れておけば、経費の仕訳を切るたびに請求書を見返して番号を確認する手間が減ります。
登録番号は国税庁の公表サイトで検索・確認できます。新しい外注先と取引を始めるとき、請求書に番号の記載がない、あるいは番号の桁や名義が請求書と合わない、といったケースはときどきあります。支払い前に一度確認し、取引先マスタに反映させるのを月次の作業に組み込んでおくと安全です。
免税事業者など、登録番号を持たない相手からの仕入については、仕入税額控除の扱いが原則と異なり、経過的な措置が設けられています。会計ソフト側にも、それに対応した税区分(控除割合を反映した区分)が用意されていることが多いので、取引先マスタの登録有無と税区分をひもづけて運用すると、入力のたびに悩まずに済みます。どの区分を使うべきか判断が割れる取引は、税理士に確認してください。
2割特例は「日々の仕訳」ではなく「申告の設定」で扱う
いわゆる2割特例は、免税事業者からインボイス発行事業者になった小規模な事業者について、売上に係る消費税額をもとに納付税額を計算できる経過的な措置です。対象になるかどうかは、基準期間の課税売上高などの要件と、適用できる期間の定めによって決まります。要件の詳細は国税庁の資料で確認し、自社が該当するかは税理士に見てもらうのが確実です。
会計ソフト上の扱いで押さえておきたいのは、この特例が「事前の届出をしてから使うもの」ではなく、申告のときに選択する形で設計されている点です。そのため多くのソフトでは、日々の仕訳の入力方法は原則課税のときと変わらず、消費税申告書を作成する画面で特例を適用するかどうかを選ぶ構成になっています。「設定画面に2割特例の項目が見当たらない」と探し回る前に、申告書作成のメニューを開いてみてください。
判断の順番としては、まず①自分が特例の対象期間・対象要件に当てはまるかを確認し、②当てはまるなら、原則課税で計算した場合・簡易課税で計算した場合・特例を使った場合の納付額を申告時に比べる、という流れになります。クラウド会計には計算方式を切り替えて試算できる機能を備えたものもあるため、決算前に一度試しておくと、提出直前に慌てずに済みます。
つまずきやすい場所と、月次でやっておくチェック
よくある行き違いは3つです。1つ目は、事業者区分が免税事業者のままで期中の仕訳がすべて税区分なしになっていたケース。2つ目は、銀行口座やクレジットカードの明細から自動で作られた仕訳の税区分が、初期値のまま放置されていたケース。3つ目は、軽減税率の対象となる飲食料品などの支払いが、標準税率の区分で入っていたケースです。
対策はシンプルで、月次のタイミングで「税区分別の集計」を一度表示してみることです。見慣れない区分に大きな金額が乗っていたり、あるはずの区分が空だったりすれば、その月の入力にずれがあるサインになります。年度末にまとめて直すより、毎月数分見るほうがずっと楽です。
あわせて、電子で受け取った請求書や領収書の保存方法も確認しておきましょう。電子取引のデータ保存については法令上の考え方が定められており、クラウド会計の証憑保管機能を使う場合も、検索できる状態や改ざん防止の運用が求められます。要件の詳細は国税庁の資料で最新の内容をご確認ください。
なお、会計ソフトの料金やプランごとの機能差は改定されることがあります。消費税申告書の作成機能やインボイス対応の範囲がどこまで含まれるかは、各社の公式サイトで最新の情報をご確認ください。
設定に迷ったら、決算を頼む相手に先に聞く
消費税の設定は、会計ソフトの操作というより税務の判断が先にある領域です。課税事業者になる時期、簡易課税を選ぶかどうかの届出、経過的な特例の適用可否は、いずれも判断を誤ると後から直すのが難しい部分があります。
もし顧問税理士がいるなら、ソフトの設定画面のスクリーンショットを送って「この選択で問題ないか」と確認してもらうのが早道です。まだ依頼先が決まっていない場合も、消費税の申告が発生する年度に入る前に、一度税理士に相談しておくことをおすすめします。設定が整っていれば、日々の入力の迷いも、決算期の手戻りも減らせます。
よくある質問
freee会計などのクラウド会計で、インボイスの登録番号はどこに入力しますか。
自社の登録番号は、事業所情報(会社情報)の設定画面に入力するのが一般的です。ここに登録しておくと請求書に自動で反映されます。取引先の番号は、取引先マスタ側に保存しておくと経費入力のたびに確認する手間が減ります。
2割特例を使いたいのですが、会計ソフトのどこで設定しますか。
多くのソフトでは日々の仕訳設定ではなく、消費税申告書を作成する画面で適用を選ぶ形になっています。この特例は申告時に選択する設計とされているためです。自社が対象要件や適用期間に当てはまるかは、税理士にご確認ください。
免税事業者のままでも、会計ソフトの消費税設定は必要ですか。
事業者区分を「免税事業者」に設定しておけば、税区分の入力は基本的に不要になります。ただし将来課税事業者になる見込みがあるなら、切り替える期の期首に設定を見直す前提で運用しておくと移行がスムーズです。
税込経理と税抜経理、どちらを選べばよいですか。
業績を比較しやすくしたい場合は税抜経理が選ばれることが多く、入力の簡便さを優先するなら税込経理という考え方もあります。期中の変更は集計に影響するため、変えるなら期首に、顧問税理士と相談したうえで行ってください。