設立時の発行株数と発行可能株式総数の決め方|1株の価格の考え方

・会社設立・登記・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

定款をつくる段階で必ず決めなければならないのが、設立時に発行する株数と、発行可能株式総数です。どちらも「正解の数字」が法律で決まっているわけではなく、資本金をいくらにするか、将来だれに株を持ってもらう可能性があるか、という自社の事情から逆算して決めます。この記事では、ひとり社長でも共同創業でも使える決め方の順番を、判断の基準とあわせて整理します。

この記事の結論

  • 設立時の発行株数は「資本金の額 ÷ 1株あたりの価格」で決まるため、先に資本金と1株の価格を決めれば自動的に定まります。
  • 発行可能株式総数は将来の増資枠を含めた上限であり、設立時の発行済株式数より多めに設定しておくと、後の増資で定款変更の手間を減らせます。
  • 1株の価格はきりのよい金額にし、株数は後から分けやすい数にしておくと、共同創業者の追加や増資のときに調整しやすくなります。

設立時の発行株数はどう決める? まず資本金と1株の価格から逆算する

発行株数だけを単独で考えようとすると決まりません。順番としては、①資本金をいくらにするか決める、②1株あたりの価格を決める、③資本金の額を1株の価格で割って株数を出す、という流れになります。設立時は出資された金額がそのまま資本金(および資本準備金)になるため、この三つは連動しています。

たとえば1株の価格をきりのよい金額にしておくと、株数は自然と計算しやすい数になります。逆に1株の価格を細かい端数にすると、後から株を譲渡したり追加出資を受けたりするときの計算が煩雑になりがちです。

ひとり社長で当面は出資者を増やす予定がない場合、株数そのものが経営に影響することはほとんどありません。それでも「将来、共同経営者や従業員に一部を持ってもらう可能性があるか」を一度考えたうえで決めておくと、後の選択肢が広がります。

1株の価格(株価)の考え方|細かく割るか、大きくまとめるか

1株の価格を小さくすれば株数は多くなり、大きくすれば株数は少なくなります。どちらが向くかは、株を「分ける可能性」がどれくらいあるかで判断します。将来、共同創業者や役員、外部の出資者に持ち分を割り当てる可能性があるなら、1株を小さめにして株数を多めにしておくほうが、細かい調整がしやすくなります。

一方、当面は自分ひとりで全株を保有し、外部からの出資も想定していないなら、株数を少なくしてシンプルに管理する考え方もあります。株主名簿の管理や、将来の相続・譲渡の手続きを考えると、数が少ないほうが扱いやすい面があります。

なお、設立時の1株の価格は「出資金を株数で割った金額」にすぎず、会社の価値を示すものではありません。増資のときには、その時点の会社の状況をふまえて別の価格で発行することもあります。具体的な金額の設定で迷う場合は、税務上の取り扱いにも関わるため税理士にご確認ください。

発行可能株式総数とは? 発行済株式数との違い

発行可能株式総数は、その会社が将来にわたって発行できる株式の上限枠です。設立時に実際に発行する株数(発行済株式総数)とは別の概念で、定款に記載して登記事項にもなります。枠を設けておくことで、増資のたびに株主総会で定款を変更しなくても、枠の範囲内であれば取締役会や株主総会の決議で新株を発行できます。

設立時は、発行済株式数と同数にするのではなく、ある程度の余裕を持たせて設定するのが一般的な考え方です。枠を使い切ってしまうと、次に増資したいときに定款変更と登記が追加で必要になり、時間と費用がかかります。

ただし、株式の譲渡に会社の承認が必要な「非公開会社(株式譲渡制限会社)」か、そうでない会社かによって、枠の設定に関する会社法上の制限が異なります。設立時の小規模な会社の多くは譲渡制限を付けますが、自社がどちらに当たるか、枠をどこまで広げられるかは、法務局の案内や司法書士に確認しておくと安心です。

共同創業・出資者が複数いるときの株数の分け方

出資者が複数いる場合、株数は「誰がどれだけ議決権を持つか」を直接決めるものになります。株主総会の決議には、過半数の賛成で足りるものと、より多くの賛成を必要とするものがあり、持ち分の配分は会社の意思決定の速さに直結します。設立前に、誰が最終的な決定権を持つのかを話し合っておくことをおすすめします。

実務上は、均等に分けるとどちらも単独で決められない状態になり、意見が割れたときに動けなくなることがあります。中心となる創業者に多めに配分し、他のメンバーには貢献に応じた株数を割り当てる、という設計を検討する会社が多く見られます。

また、共同創業者が途中で離脱したときに株式をどう扱うかも、設立時に取り決めておきたい論点です。株主間契約や譲渡制限の設計が関わるため、金額が大きい場合や関係者が多い場合は弁護士・司法書士に相談しながら進めると、後のトラブルを減らせます。

定款と登記でどこに書くか|設立手続きの流れ

株数に関する事項は、定款作成の段階で確定させます。定款には発行可能株式総数を記載し、設立時に発行する株式の数や1株と引換えに払い込む金額、割当先については、定款または発起人の決定で定めます。公証役場での定款認証(株式会社の場合)を受けた後は、内容の変更に手間がかかるため、認証前に発起人全員で確認しておきます。

次に、決めた金額を発起人名義の口座に払い込み、通帳の写しなどで払込みを証明する書類を用意します。その後、設立登記申請書、定款、払込証明書、印鑑関係の書類などをそろえて、本店所在地を管轄する法務局へ登記を申請します。必要書類の様式は法務局の案内で最新のものを確認してください。

登記が完了すると、発行可能株式総数と発行済株式の総数が登記事項証明書に記載されます。銀行口座の開設や取引先への提出時にも見られる項目なので、内容に誤りがないか登記後に確認しておきましょう。登録免許税などの費用は条件によって異なるため、法務局や司法書士事務所の公式サイトで最新の情報をご確認ください。

よくあるつまずきと、後から直す方法

よくあるのは、発行可能株式総数を発行済株式数と同じにしてしまい、増資のときに定款変更が必要になるケースです。この場合は株主総会の特別決議で定款を変更し、変更登記を申請します。手続き自体はできますが、時間と費用がかかるため、設立時に余裕を持たせておくほうが結果的にスムーズです。

もうひとつは、共同創業者に株を持たせすぎて意思決定が滞るケースです。いったん発行した株式を会社の都合だけで取り戻すことはできないため、譲渡や自己株式の取得といった手続きが必要になり、税務上の取り扱いも絡んできます。設計段階で慎重に検討しておきたいところです。

株式の分割・併合によって株数を後から調整することも可能です。ただし手続きと登記が伴い、発行可能株式総数との関係も見直す必要があります。判断に迷う場面では、登記面は司法書士、株価や税務面は税理士と、内容に応じて相談先を分けると話が早く進みます。

よくある質問

株式会社の設立は何株から可能ですか?

会社法上、設立時に発行する株式の数に下限として特別な制限はなく、1株からでも設立できます。実務では資本金の額と1株あたりの価格の組み合わせで決めることが多く、後の増資や譲渡を見据えて分けやすい株数にしておくと扱いやすくなります。

発行可能株式総数は多めに設定しても大丈夫ですか?

譲渡制限を付けた非公開会社か、そうでない会社かによって会社法上の制限が異なります。将来の増資に備えて余裕を持たせる考え方が一般的ですが、自社がどこまで設定できるかは、法務局の案内を確認するか司法書士にご相談ください。

設立時の1株の価格はどう決めればよいですか?

出資金の総額を発行株数で割った金額が1株の価格になります。きりのよい金額にしておくと計算や管理がしやすく、増資や譲渡の際にも扱いやすくなります。金額の設定が税務上の取り扱いに関わる場合もあるため、税理士にご確認ください。

設立後に株数を変更することはできますか?

株式の分割・併合や増資によって変更できますが、株主総会の決議と変更登記が必要になる場合があります。手続きの手間を減らすためにも、設立時点である程度の見通しを立てて決めておくことをおすすめします。

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