管轄外へ本店移転するときの登記|印鑑届・印鑑カードと費用の流れ
オフィスの引っ越し先が、今の法務局の管轄の外だった。このとき本店移転登記は、同じ管轄内での移転と比べてやることが増えます。申請書が2通になり、印鑑の届出をやり直し、印鑑カードも新しい管轄で取り直すことになるのが基本です。この記事では、いつ・何を用意して・どこに出すかを、順番どおりに整理します。
この記事の結論
- 管轄外への本店移転は、旧本店を管轄する法務局に新旧2通の申請書をまとめて提出し、旧管轄から新管轄へ書類が送られる流れが基本です。
- 管轄をまたぐと会社の登記記録が新しい管轄で作り直されるため、新管轄あての印鑑届書を申請時に添え、印鑑カードも新管轄で交付を受け直すのが一般的です。
- 登録免許税は新旧2つの管轄分がかかる扱いが基本で、金額と最新の取扱いは法務局の公式サイトや窓口で確認してください。
「本店移転 他管轄」で何が変わるのか
本店移転には、同じ法務局の管轄内で動く場合と、管轄をまたぐ場合の2パターンがあります。同一管轄内なら、これまでの登記記録の本店欄が書き換わるだけなので、申請は1件で済みます。印鑑カードもそのまま使えるのが通常です。
一方、管轄外への移転では、新しい管轄の法務局に会社の登記記録が新しく起こされます。つまり「旧管轄で閉じて、新管轄で開く」という形になるため、申請書が2通必要になり、印鑑の届出も新管轄にあらためて出すことになります。
まず確認すべきは、移転先の住所を管轄する法務局がどこかという一点です。同じ市内でも管轄が分かれていることがあり、たとえば名古屋市内から近隣市へ移る場合、名古屋法務局の本局・支局・出張所のどれが管轄かで扱いが変わります。法務局のウェブサイトにある管轄一覧で、移転前後の住所をそれぞれ確認してください。
移転前にやること:定款を見て、どの決議が必要かを決める
最初に見るのは定款の本店所在地の条項です。「当会社は、◯◯市に本店を置く」と最小行政区画までしか書いていない場合、同じ市区町村内での移転なら定款変更は不要で、取締役の決定(取締役会設置会社なら取締役会決議)で具体的な所在場所を決める形が一般的です。
移転先が定款に書いた市区町村の外に出るときは、定款変更が必要になるため株主総会の特殊な決議(特別決議)を経ることになります。管轄外へ移る場合はこちらに当たることが多く、株主総会議事録と、具体的な番地・移転日を決めた取締役の決定書(取締役会議事録)の両方を用意する流れになります。
順番としては、①定款の条項を確認、②必要なら株主総会で定款変更、③取締役の決定で新住所と移転日を確定、④実際に移転、⑤登記申請、です。登記は移転の効力が生じた日から2週間以内に申請するのが原則とされているので、引っ越し日が決まった時点で逆算してスケジュールを組んでおくと安心です。
申請の出し方:旧管轄の法務局にまとめて出す
管轄外移転の申請書は、新本店所在地を管轄する法務局あてのものと、旧本店所在地を管轄する法務局あてのものの2通を作成します。提出先は、旧本店を管轄する法務局です。ここに2通をまとめて出すと、旧管轄で処理したうえで新管轄へ書類が回される、という流れになります。
添付書類は、株主総会議事録(定款変更をした場合)、取締役会議事録または取締役の決定書、株主リスト、代理人に頼む場合は委任状、というのが一般的な組み合わせです。会社の実情によって必要なものが変わるので、申請前に管轄法務局の窓口や法務局のウェブサイトで様式と添付書類を確認してください。
申請方法は、窓口持参、郵送、オンライン申請のいずれかです。オンライン申請は登録免許税の扱いに違いが設けられていることがあるため、利用を考えている場合は法務局の案内で最新の条件を確認しておくとよいでしょう。完了までの日数は管轄や時期で変わるので、登記事項証明書が必要な予定(銀行口座の住所変更など)は余裕をもって組んでください。
印鑑届と印鑑カードはどうなるか
管轄外移転でつまずきやすいのがここです。新しい管轄では会社の登記記録が新たに起こされるため、これまで旧管轄に届け出ていた会社実印の情報は引き継がれません。新管轄あての印鑑届書を、移転登記の申請書に添えて提出するのが基本的な流れです。印鑑届書には代表者個人の印鑑証明書を添えるのが通常で、取得から一定期間内のものという条件があるため、引っ越しのバタバタで期限切れにならないよう気をつけてください。
印鑑カードも同じで、旧管轄で交付を受けたカードは新管轄では使えません。印鑑カード交付申請書を新管轄に提出して、新しいカードの交付を受けることになります。旧カードは返納を求められることがあるので、捨てずに保管しておいてください。
会社の実印そのものを作り直す必要は、通常はありません。印影が変わらないなら同じ印章を使い続けられるのが一般的です。ただし、印鑑証明書が一時的に取れない期間が生じる可能性があるため、移転の前後に契約や融資、入札など印鑑証明書が要る予定があるなら、先に必要枚数を取っておくか、日程をずらすかを検討しておくと安全です。
費用の考え方と、登記のあとに残る届出
管轄外移転では、登録免許税が新旧2つの管轄分かかる扱いが基本です。同一管轄内の移転より費用が増えることを前提に見積もってください。具体的な税額や計算方法は改正されることがあるため、法務局の公式サイトや窓口で最新の金額を確認してください。司法書士に依頼する場合の報酬は事務所ごとに異なるので、見積もりを取って比較するとよいでしょう。
登記が終わったら、関係各所への住所変更が続きます。税務署・都道府県税事務所・市区町村(法人住民税)、年金事務所、労働基準監督署とハローワーク(従業員がいる場合)、銀行、クレジットカード、許認可の所管庁などが主な先です。税務署は移転前後で管轄が変わることがあり、異動届出書の提出先や記載内容に注意が要ります。
登記完了後に取得した登記事項証明書を添付するよう求められる手続きが多いので、完了したら必要枚数をまとめて取っておくと二度手間になりません。あわせて、ウェブサイトや請求書、名刺、契約書のひな形、電子契約サービスに登録した住所など、社内の表記も洗い出して更新しておきましょう。
迷ったときの判断の順番
まず、移転先の住所を管轄する法務局を調べます。同一管轄なら申請は1件で印鑑カードもそのままなので、自分で進めやすい部類です。管轄外なら、申請書2通・印鑑届・印鑑カード再交付・登録免許税の増加、という4点が追加になると考えてください。
次に定款を見て、市区町村をまたぐかどうかを確認します。またぐなら株主総会の決議が要る前提で準備し、またがないなら取締役の決定だけで進められることが多いです。株主が複数いる場合や、種類株式がある場合は、決議の進め方が複雑になることがあります。
許認可を持っている、従業員がいて社会保険の手続きが絡む、移転と同時に商号や役員も変える、といった事情が重なるときは、早めに専門家に相談したほうが結果的に早く終わります。登記の手続きは司法書士、税務署への異動届出や消費税の取扱いは税理士、社会保険・労働保険の住所変更は社会保険労務士が相談先の目安です。スケジュールが決まった段階で一度相談しておくと、印鑑証明書の取得時期など細かい段取りまで詰められます。
よくある質問
本店移転で管轄が変わると、印鑑カードは使えなくなりますか。
新しい管轄では登記記録が新たに起こされるため、旧管轄で交付されたカードは使えなくなるのが一般的です。新管轄に印鑑カード交付申請書を出して、新しいカードの交付を受ける流れになります。旧カードは返納を求められることがあるので保管しておいてください。
申請書はどちらの法務局に出せばよいですか。
管轄外移転では、新管轄あてと旧管轄あての申請書2通を作成し、旧本店を管轄する法務局にまとめて提出するのが基本です。旧管轄で処理されたあと、新管轄へ書類が送られます。提出方法や様式は管轄法務局の案内で確認してください。
費用は同一管轄内の移転と比べてどれくらい変わりますか。
登録免許税が新旧2つの管轄分かかる扱いが基本のため、同一管轄内より費用は増えます。具体的な税額は改正されることがあるので、法務局の公式サイトや窓口で最新の金額を確認してください。司法書士に依頼する場合の報酬は事務所ごとに異なります。
登記はいつまでに申請すればよいですか。
本店移転の効力が生じた日から2週間以内に申請するのが原則とされています。引っ越し日が決まった時点で、議事録の作成や印鑑証明書の取得を逆算して準備しておくと安心です。期限や取扱いに不安がある場合は司法書士にご確認ください。