法人口座は普通預金か決済用預金か|ペイオフと当座預金の違い

・法人口座・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

法人口座を開設するとき、申込画面で「普通預金」と「決済用預金(無利息型)」のどちらかを選ぶ場面があります。さらに、取引先から「当座預金はありますか」と聞かれることもあります。名前が似ていて違いが見えにくいのですが、判断の軸はシンプルで、「預けている残高の規模」と「小切手・手形を使うかどうか」の2つです。この記事では、ペイオフの考え方をふまえて、どういう会社がどれを選ぶことになるのかを、判断の順番で整理します。

この記事の結論

  • 決済用預金は「無利息・要求払い・決済サービスが提供できる」という条件を満たす預金で、金融機関が破綻した場合に全額が保護の対象とされる区分です。
  • 普通預金は利息が付く代わりにペイオフの保護範囲に上限があり、口座残高が常時その水準を超える見込みなら決済用預金への切り替えを検討する順番になります。
  • 当座預金は小切手・手形の支払いに使う無利息の決済用口座で、審査を伴うため、小切手や手形を使う予定がない会社は普通預金または決済用預金で足りることが多いです。

法人口座の「普通預金」「決済用預金」「当座預金」は何が違うのか

普通預金は、入出金が自由で利息が付く、もっとも一般的な口座です。法人の入出金、給与や仕入代金の振込、口座振替など、日常のお金の出入りはここで回すのが基本になります。

決済用預金は、「利息が付かない」「いつでも引き出せる」「振込などの決済サービスに使える」という3つの条件を満たす預金の区分です。多くの金融機関では「決済用普通預金」「無利息型普通預金」といった名前で用意されていて、使い勝手は普通預金とほぼ同じまま、利息だけが付かない形になります。

当座預金は、小切手や約束手形の支払いに使うための口座で、こちらも利息は付きません。開設には金融機関の審査があり、事業の実態や取引履歴を見られます。つまり、普通預金と決済用預金は「利息を取るか、保護の広さを取るか」の選択で、当座預金は「小切手・手形を使うかどうか」という別の軸の話です。

ペイオフとは何か|法人口座の補償額はどう決まる

ペイオフとは、金融機関が破綻したときに、預金保険制度にもとづいて預金者に一定の範囲で払い戻しが行われる仕組みのことです。個人だけでなく、法人の預金も対象になります。

このとき、利息が付く普通預金や定期預金は「一般預金等」としてまとめられ、1つの金融機関ごとに合計して、一定額までの元本とその利息等が保護の対象とされています。上限を超えた部分は、破綻した金融機関の財産の状況に応じた支払いとなるため、全額が戻るとは限りません。一方、決済用預金の条件を満たす預金は、全額が保護の対象とされる区分として扱われます。

保護される具体的な金額や対象となる預金の種類は制度で定められており、細かい取り扱いもあります。最新の内容は預金保険機構や金融庁の公表資料、および取引先金融機関の説明を確認してください。

普通預金と決済用預金、どっちを選ぶ?判断の順番

迷ったら、次の順に見てください。第一に「口座残高が、保護の上限とされる水準を日常的に超えるか」。超えないうちは、普通預金のままで大きな不都合は起きにくく、わずかでも利息が付くぶん普通預金が素直な選択になります。

第二に「一時的に大きな残高が乗る時期があるか」。たとえば、補助金や大口の売上が入る月、決算前後、納税や賞与の資金をプールする時期などです。年に数回でも上限を大きく超える残高が滞留するなら、その資金の置き場所として決済用預金を用意しておく、という考え方があります。

第三に「口座を分けるか、そもそも金融機関を分けるか」。保護の範囲は金融機関ごとに合算して判断されるため、複数の金融機関に分散する方法もあります。ただし口座が増えると、記帳・仕訳・残高確認の手間も増えます。ひとり社長や少人数の会社では、メインは普通預金、超過分は決済用預金または別の金融機関、という二段構えがシンプルです。

なお、決済用預金は無利息です。低金利の局面では失う利息はわずかでも、金利環境は変わります。切り替えを検討するときは、その時点の各金融機関の公式サイトで金利や手数料の条件を確認してください。

当座預金はいつ必要になるか

当座預金が要るのは、基本的に「自社が小切手や約束手形を振り出す」場合です。建設業や卸売業など、商慣習として手形が残る業界では今でも求められることがありますが、電子記録債権やインターネットバンキングでの振込に置き換わってきている分野も多く、創業直後の会社が最初から当座預金を開く必要はあまりありません。

取引先から「当座はありますか」と聞かれた場合は、支払方法として手形を前提にしているのか、単に振込先口座を聞いているだけなのかを先に確認しましょう。振込での決済が可能なら、普通預金や決済用預金の口座番号を伝えれば済むことがほとんどです。

当座預金は審査があり、設立間もない会社ではすぐに開設できないこともあります。必要になりそうなら、日常の入出金でメインバンクとの取引実績を作りながら、早めに担当者へ相談しておくと進めやすくなります。

実際の手続き|いつ、何を用意して、どこに出すか

新規に法人口座を開く場合は、登記が完了して登記事項証明書(履歴事項全部証明書)が取れるようになってから動きます。用意するものは、登記事項証明書、法人の印鑑証明書、届出印、代表者の本人確認書類、そして事業の実態が分かる資料(会社のウェブサイト、パンフレット、事務所の賃貸借契約書、取引先との契約書や請求書など)が一般的です。必要書類は金融機関ごとに異なるため、申込前に公式サイトで確認してください。

申込時に預金の種類を選べる金融機関では、その場で「普通預金」か「決済用普通預金」かを指定します。オンライン完結型の口座では決済用の取り扱いがない場合もあるので、決済用を使いたい場合は、対応しているかを先に確認しておくと二度手間になりません。

すでに口座がある会社が切り替える場合は、同じ金融機関内で普通預金から決済用預金へ種類変更できることがあります。口座番号が変わるかどうかは金融機関によって異なり、変わる場合は取引先への振込先変更の連絡、口座振替の登録変更、会計ソフトの銀行連携の再設定が発生します。決算期をまたがない時期に、変更の影響範囲を洗い出してから手続きすると混乱が少なくて済みます。

よくある勘違いと、あわせて整えておきたいこと

「決済用預金にすれば安全」と考えて全額を移す必要はありません。保護の考え方は、あくまで金融機関が破綻した場合の話です。日常的に重要なのは、資金繰りが見えていること、通帳やネットバンキングの残高を定期的に会計データと突き合わせていることのほうです。

もう一つ多い勘違いが、代表者個人の口座と法人口座を合算して考えてしまうことです。法人と個人は別の預金者として扱われるのが原則ですが、名義や実態によって判断が分かれることもあります。気になる場合は取引金融機関に確認してください。

口座の種類を決めたら、あわせて、ネットバンキングの権限設定、法人カードの引落口座、会計ソフトとの連携、入出金の記録の残し方まで通しで整えておくと、あとの経理がぐっと楽になります。預金の種類変更が税務上どう影響するか、利息の処理をどうするかなど、判断に迷う点は顧問税理士にご確認ください。

よくある質問

法人口座は決済用預金にしたほうがいいですか?

口座残高が保護の上限とされる水準を日常的に超えないうちは、普通預金のままでも大きな不都合は生じにくいです。大口入金や納税資金などで一時的に残高が膨らむ時期があるなら、その資金の置き場所として決済用預金を検討する、という順番が考えやすいです。

法人口座もペイオフの対象になりますか?

法人の預金も預金保険制度の対象とされており、保護の範囲は金融機関ごとに合算して判断されます。決済用預金の条件を満たす預金は全額が保護の対象とされる区分ですが、具体的な取り扱いは預金保険機構の資料や取引先金融機関の説明で確認してください。

決済用預金は無利息とのことですが、デメリットはありますか?

利息が付かない点が主な違いで、入出金や振込の使い勝手は普通預金とほぼ同じであることが多いです。ただし取り扱いの有無や条件は金融機関によって異なるため、各社の公式サイトで最新の条件を確認してください。

当座預金は作っておいたほうがいいですか?

小切手や手形を自社が振り出す予定がなければ、まずは普通預金または決済用預金で足りることが多いです。当座預金は審査を伴うため、業界の慣習で必要になりそうな場合は、取引実績を作りながら早めに金融機関の担当者に相談しておくとよいでしょう。

あわせて読みたい

「法人口座」の記事をすべて見る →

次に決めること

記事をすべて見る(1087本)→

この記事は一般的な情報をまとめたものです。税務・法務・労務の個別の判断については、税理士・弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。 料金や条件は変わることがあるため、お申し込み前に必ず各サービスの公式サイトで最新の内容をご確認ください。