業種別の事業目的の書き方|物販・コンサル・不動産・飲食などの例文

・会社設立・登記・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

会社をつくるとき、定款で最初につまずきやすいのが「事業目的」です。何をどこまで書けばいいのか、自分の業種だとどんな文言になるのか、手が止まる人はとても多いところ。この記事では、業種別の例文と、目的を決めるときの判断の順番をまとめます。書き写して終わりではなく、自社の言葉に直すところまで進められる形にしました。

この記事の結論

  • 事業目的は「①いま始める事業 ②近い将来やる可能性のある事業 ③『前各号に附帯関連する一切の事業』」の3階建てで書くのが基本です。
  • 業種名だけを書くのではなく、「○○の企画、製造、販売」のように“何を・どう扱うか”まで含めた一文にすると、目的の範囲が伝わりやすくなります。
  • 許認可・登録が必要な事業は、所管の窓口が想定する文言があることが多いため、登記前に必要な文言を確認しておくと手戻りを防げます。

そもそも事業目的とは?何を書くところか

事業目的は、定款と登記事項に記載される「この会社は何をする会社か」を示す項目です。登記簿を見た取引先や金融機関、許認可の窓口が最初に確認する箇所でもあり、会社の名刺代わりのような役割を持ちます。

実務でよく言われるポイントは、適法性(法律に反する内容でないこと)、明確性(読んで何をするか分かること)、営利性(事業として収益を目指すものであること)の3つです。あまりに独自の造語や社内用語だけで書くと、読み手に伝わらず、金融機関の口座開設や許認可の場面で説明を求められることがあります。

逆に、細かく書きすぎる必要もありません。ひとつひとつの事業を細分化して並べるより、「企画・制作・販売」のようにまとめた一文にしたほうが、後の運用がラクになります。

事業目的の決め方|この順番で考えると迷わない

まず、①今すぐ売上が立つ事業を書き出します。次に、②1〜3年以内に手を出す可能性がある事業を足します。最後に、③「前各号に附帯関連する一切の事業」を締めの一号として入れる。この3ステップで、たいていの会社は形になります。

②をどこまで入れるかで迷ったら、「そのお金の入り口が想像できるか」で判断してください。取引の相手と請求書の内容が思い浮かぶなら入れる、単なる憧れなら入れない、という基準です。目的は後から変更登記できますが、変更には手続きと費用がかかるため、現実的な範囲で少し広めに取っておくのがバランスの良いところです。

数についての明確な決まりはありませんが、十数個も並ぶと「結局、何の会社なのか」が伝わりにくくなります。主たる事業が最初の1〜2号に来るように並べ替えると、登記簿を見たときの印象が整います。

業種別の事業目的・例文集(物販・コンサル・不動産・飲食ほか)

以下は一般的によく使われる書き方の例です。そのまま使うのではなく、自社の扱う商材やサービスに置き換えて調整してください。【物販・EC・アパレル】「衣料品、服飾雑貨の企画、製造及び販売」「インターネットを利用した各種商品の通信販売」「輸入雑貨の販売」。取り扱う商材が広い場合は「各種商品の販売」とし、主力商材を別号で具体的に書く形がよく使われます。中古品を扱うなら古物商の許可が関係するため、「古物営業法に基づく古物の売買」といった文言を入れることがあります。

【コンサルティング】「経営コンサルティング業務」「マーケティング及び販売促進に関するコンサルティング」「人材育成及び社員研修の企画、運営」。コンサルは範囲が曖昧になりやすいので、分野(経営/IT/採用/広報など)を付けて書くと伝わりやすくなります。【不動産】「不動産の売買、賃貸、管理及びその仲介」「不動産の賃貸借及び管理」。自社物件の賃貸だけなら「不動産の賃貸及び管理」で足りることが多く、他人の物件の仲介まで行うなら宅地建物取引業の免許が関わってきます。

【飲食店】「飲食店の経営」「レストラン、カフェ、居酒屋の企画、経営」「食品の製造及び販売」。テイクアウトや通販もやるなら「食料品の製造、加工及び販売」を足しておくと動きやすくなります。【美容室・サロン】「美容室、理容室の経営」「エステティックサロンの経営」「化粧品、美容器具の販売」。【リフォーム・建築】「建築工事、内装仕上工事、リフォーム工事の設計、施工及び監理」「土木建築工事の請負」。建設業許可を取る予定があるなら、許可を受ける業種に対応した工事名を入れておくのが無難です。

【人材派遣・紹介】「労働者派遣事業」「有料職業紹介事業」。この2つは許可事業で、目的の文言が申請の前提として確認されることがあります。【農業】「農産物の生産、加工及び販売」「農業経営」。【設計事務所】「建築物の設計、工事監理及び調査業務」。【貿易】「輸出入業務」「各種商品の輸出入及び販売」。【運送】「一般貨物自動車運送事業」「貨物利用運送事業」「軽貨物自動車運送事業」。【福祉】「老人福祉センターの運営」「介護保険法に基づく居宅サービス事業」「障害者総合支援法に基づく障害福祉サービス事業」。福祉分野は根拠法と事業区分で文言が細かく分かれるため、指定を受ける自治体の窓口で必要な記載を確認してください。

許認可が必要な業種は、登記の前に文言を確認する

建設業、宅地建物取引業、人材派遣、運送業、介護・障害福祉、飲食(食品衛生)、古物商、旅行業、酒類販売などは、許可・登録・指定の手続きが別に必要です。このとき、定款の事業目的に対応する文言がないと、許認可の申請前に定款変更と変更登記をやり直すことになる場合があります。

順番としては、(1)取ろうとしている許認可を確定する →(2)所管の窓口(都道府県庁、保健所、労働局、運輸支局、市区町村など)の手引きやサイトで、定款の目的に関する記載の考え方を確認する →(3)その文言を反映して定款を作る、という流れが安全です。要件の詳細は制度や自治体で扱いが異なるため、最新の公式資料で確認してください。

「いつかやるかも」程度の許認可事業を先に入れておくこと自体は差し支えないことが多いですが、許可を持っていないのに事業を行っているように見える表示にはならないよう注意が必要です。判断に迷う場合は、司法書士や許認可に詳しい行政書士に相談すると早く片付きます。

後から困らないための書き方のコツと、変更したいときの手順

よくある失敗は3つ。①主力事業を書き忘れる、②業界用語だけで書いて意味が伝わらない、③許認可用の文言が抜けている。会社設立後に銀行口座の開設や融資の相談をする場面では、登記簿の事業目的と実際の事業内容が合っているかを見られることがあるため、実態と揃えておくことが大切です。

締めの「前各号に附帯関連する一切の事業」は多くの会社が入れている一文ですが、これがあれば何でもできる、という意味ではありません。柱となる事業からかけ離れた分野に進出するなら、目的の追加を検討します。

変更したいときは、株主総会の特別決議で定款を変更し、法務局に変更登記を申請します(登録免許税がかかります。金額は法務局の公式サイトで確認してください)。設立直後に何度も変更するのはもったいないので、設立時に②の「近い将来やる事業」を少し見ておくのがおすすめです。事業目的の表現や許認可との整合に不安があるときは、登記の専門家である司法書士、税務の影響が気になる場合は税理士に確認しておくと安心です。

よくある質問

事業目的はいくつまで書けますか?

上限の決まりはありませんが、多すぎると何の会社か伝わりにくくなります。主力事業を先頭に置き、現実的に取り組む可能性がある範囲にとどめ、最後に「前各号に附帯関連する一切の事業」を入れる形が一般的です。

今やっていない事業を書いておいても大丈夫ですか?

将来行う予定の事業を記載しておくこと自体は広く行われています。ただし許認可が必要な事業は、許可を得ないまま営業していると受け取られる表示にならないよう注意が必要で、心配な場合は司法書士や行政書士にご確認ください。

物販とネットショップは分けて書くべきですか?

「各種商品の販売」に含めて読める場合もありますが、通販が主力なら「インターネットを利用した各種商品の通信販売」と別号で書いておくと分かりやすくなります。中古品を扱うなら古物営業に関する文言の追加も検討してください。

事業目的を後から追加するにはどうすればいいですか?

株主総会の特別決議で定款を変更し、法務局へ変更登記を申請します。登録免許税などの費用がかかるため、設立時に近い将来の事業まで含めて検討しておくと手戻りが減ります。

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