法人口座を開設しやすい銀行はどこか|通りやすさの条件と選び方

・法人口座・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

会社をつくったあと、最初につまずきやすいのが法人口座の開設です。「審査がゆるい銀行はどこか」と検索してしまう気持ちはよく分かりますが、実際に効くのは銀行選びよりも「申し込む側の準備」と「申し込む順番」です。この記事では、銀行の種類ごとの性格の違い、審査で見られやすいポイント、自社の条件からどこに出すかを決める手順を整理します。

この記事の結論

  • 法人口座の開設しやすさは銀行の種類によって傾向が異なり、一般にネット銀行は手続きがオンラインで完結しやすく、都市銀行は事業実態の確認が丁寧に行われる傾向があります。
  • 審査で見られやすいのは事業内容の分かりやすさ、事務所の実在性、代表者の連絡先の確かさ、資本金や取引先の裏づけで、これらは申し込み前に書類で示せる形に整えられます。
  • 最初の1行は事業内容を説明しやすい銀行に、入金が動き始めてから信用金庫や都市銀行に広げる、という順番が現実的です。

「審査がゆるい銀行」は存在するのか

結論から言うと、「審査がゆるい銀行」という形で公開されているものはありません。各行とも犯罪収益移転防止法などをふまえて口座開設時の確認を行っており、基準そのものは公表されていないためです。ネット上で「甘い」「緩い」と言われている銀行も、実際には確認方法が違うだけ、というケースが少なくありません。

ただし「通りやすさの傾向」は確かにあります。たとえば書類のやり取りがオンラインで完結する銀行は、来店や面談を前提とする銀行に比べて、設立直後でも手続きを進めやすい場合があります。逆に、地域に根ざした銀行は、その地域に事務所がある会社を歓迎する傾向があります。

つまり、探すべきは「ゆるい銀行」ではなく「自社の状況を説明しやすい銀行」です。同じ会社でも、説明のしかたと出す先を変えるだけで結果が変わることがあります。

銀行の種類ごとの難易度の違いと向き不向き

大きく分けると、ネット銀行、都市銀行(メガバンク)、地方銀行・信用金庫、ゆうちょ銀行の4つです。ネット銀行は申込から本人確認までオンラインで進められることが多く、事務所を持たないひとり社長や、全国の取引先と振込中心でやり取りする会社と相性がよい傾向があります。一方で、対面での相談窓口は限られます。

都市銀行は取引先からの信用を得やすく、大きな取引や将来の資金調達を見据える会社に向きます。ただし口座開設時の確認は丁寧で、設立直後・実績なしの状態だと時間がかかることがあります。地方銀行・信用金庫は、本店所在地や代表者の生活圏がその地域にあるかを重視する傾向があり、地元で事業を営む会社、将来的に融資の相談もしたい会社に向きます。

どれか一つに絞る必要はありません。実務では「日常の入出金はネット銀行、取引先向けの表看板は地元金融機関」というように、2行を使い分けている会社が多くあります。まず1行つくり、事業が動き始めてから2行目を足す進め方が現実的です。

審査で見られやすい5つのポイント

公表された基準はありませんが、一般に確認されやすいのは次の点です。第一に事業内容です。何を仕入れて誰に売り、どうやって売上が立つのかが一言で説明できるかどうかが分かれ目になります。定款の事業目的が何十行も並んでいて実態が読み取れない場合、説明を求められることがあります。

第二に事務所の実在性です。賃貸借契約書や、看板・表札の写真、固定電話の有無などが確認材料になります。第三に代表者の連絡の取りやすさ。携帯番号しかない、メールの返信が遅いといった状態は、確認に時間がかかる要因になり得ます。

第四に資本金と、その出どころの説明のしやすさ。第五に取引の裏づけです。すでに契約書、発注書、見積書、請求書、ウェブサイトなど、取引が始まっている(始まる予定である)ことを示す資料があると、説明がぐっと楽になります。これらは銀行ごとに求められる範囲が違うため、各行の公式サイトで必要書類を確認してください。

自社に合う申し込み先を決める手順

まず、次の順に自社を当てはめてみてください。①事務所を借りているか(自宅兼事務所か)。②本店所在地と代表者の生活圏が同じ地域か。③取引先に振込先を提示する予定があり、その相手が法人か個人か。④将来1〜2年で融資を検討する可能性があるか。

①が自宅兼事務所で、③の相手が主に法人・オンライン中心なら、オンラインで完結しやすいネット銀行から検討するとスムーズです。②が同じ地域で、④の可能性があるなら、地元の信用金庫や地方銀行に相談に行く価値があります。信用金庫は会員資格の条件があるため、事前に窓口で確認してください。④が強いなら、早い段階で担当者に顔を覚えてもらうことが後々効いてきます。

申し込みは、準備が整った先から1行ずつ。同時に何行も出すこと自体が禁じられているわけではありませんが、1行目で求められた追加資料が2行目以降にも役立つため、順に進めたほうが結果的に早いことが多いです。

申し込み前に用意しておくもの

設立登記が完了したら、まず登記事項証明書(履歴事項全部証明書)と法人の印鑑証明書を法務局で取得します。あわせて定款の写し、法人番号が分かる資料、代表者の本人確認書類を手元にそろえます。銀行によってはマイナンバー関連書類や法人設立届出書の控えを求められることもあります。

加えて用意しておくと説明が早いのが、事業内容を1枚にまとめた資料です。何を売るか、誰に売るか、いくらくらいの入出金が月に何件発生する見込みか、主な取引先の名前を書いておきます。ウェブサイトや会社案内、名刺、取引先との契約書の写しも、あれば添えます。

必要書類の範囲と提出方法は銀行ごとに異なります。申し込み前に各行の公式サイトで最新の案内を確認し、不足があれば取り寄せる時間も見込んでスケジュールを組んでください。

断られたときに次にすること

開設に至らなかった場合、理由は通常告げられません。ここで大事なのは、同じ内容のまま別の銀行に出し直すのではなく、説明できていなかった部分を埋めてから再度動くことです。事業目的を絞る、固定電話を用意する、ウェブサイトを整える、最初の請求書や契約書を1件つくる、といった積み上げが効きます。

また、少し時間を置いてから再申し込みを受け付ける銀行もあります。3か月ほど事業を動かし、取引の実績が見える状態になってから改めて相談すると、話が進みやすくなることがあります。この間、代表者個人の口座で立て替えると経理が複雑になるため、立替分は帳簿上できちんと区別しておいてください。

なお、会社の資金と個人の資金の区分、役員借入金の扱いは、税務上の整理が必要になる場面があります。処理の方法に迷う場合は、顧問の税理士にご確認ください。設立時の登記内容(事業目的や本店所在地)を見直したい場合は司法書士に相談すると、口座開設のしやすさにもつながる整理ができることがあります。

よくある質問

設立直後でも法人口座はつくれますか。

設立登記が完了し、登記事項証明書が取得できれば申し込み自体は可能です。ただし実績がない分、事業内容や取引先の説明を資料で補う必要があり、確認に時間がかかることがあります。契約書や見積書など、取引の裏づけになるものを添えると進めやすくなります。

バーチャルオフィスだと法人口座は開設できませんか。

一律に開設できないわけではありませんが、事務所の実在性の確認に時間がかかる、または追加の説明を求められることがあります。契約書やウェブサイト、取引先との実際のやり取りなど、事業が動いている証拠をそろえて申し込むことが現実的な対策です。

ネット銀行と都市銀行、どちらを先につくるべきですか。

日常の入出金をオンラインで完結させたい、事務所を持たないという場合はネット銀行から、地元での取引や将来の融資相談を重視する場合は地元金融機関や都市銀行から検討するのが一般的な考え方です。最終的には2行を使い分ける会社が多く、まず1行つくることを優先して構いません。

複数の銀行に同時に申し込んでもよいですか。

同時申し込みが禁じられているわけではありませんが、1行目で求められた追加資料が他行でも役立つため、順番に進めたほうが準備が整いやすくなります。急ぐ事情があるなら2行程度に絞り、それぞれの必要書類を各行の公式サイトで確認してから出してください。

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この記事は一般的な情報をまとめたものです。税務・法務・労務の個別の判断については、税理士・弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。 料金や条件は変わることがあるため、お申し込み前に必ず各サービスの公式サイトで最新の内容をご確認ください。