シェアオフィスと建築基準法の用途|物件側で確認しておくこと

・住所・オフィス・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

シェアオフィスやコワーキングスペースを開こうとするとき、あるいは自社の登記先として借りるとき、意外と見落とされるのが「その建物が建築基準法上どういう用途の建物か」という点です。内装や什器は後からどうにでもなりますが、建物の用途や検査済証まわりの問題は、契約後に気づいても取り返しがつきにくい部分です。ここでは、シェアオフィスが建築基準法上どう扱われるかの一般的な考え方と、物件を決める前に確認しておきたいことを、見る順番に沿って整理します。

この記事の結論

  • シェアオフィスは、利用者が机を使って仕事をする形態であれば建築基準法上は「事務所」に近い用途として扱われることが多く、判断は所管行政庁(建築指導課など)が個別に行います。
  • 建物の一部または全部の用途を変えるとき、一定規模を超える特殊建築物への変更にあたる場合などは用途変更の確認申請が必要になることがあり、面積は区画ごとではなく建物全体の延べ面積で見られる点に注意が必要です。
  • 物件を決める前に、用途地域・検査済証の有無・現況の用途・消防設備の4点を、貸主または管理会社に書面で確認しておくと、後からの手戻りを減らせます。

シェアオフィスは建築基準法上どの用途にあたるのか

建築基準法には「シェアオフィス」「コワーキングスペース」という用途の区分はありません。実務では、その空間で実際に何が行われるかを見て、既存の用途区分のどれに近いかを当てはめていきます。利用者が机やブースで作業し、会議室を使い、郵便物を受け取る——という一般的なシェアオフィスであれば、「事務所」に近い用途として扱われることが多いと考えられます。

ただし、運営の仕方によっては事務所だけでは説明しきれなくなります。たとえば、不特定多数が出入りするイベントスペースやセミナールームの比重が大きい場合、カフェを併設して飲食物を提供する場合、宿泊を伴うサービスを重ねる場合などです。こうしたときは、集会場・飲食店・宿泊施設といった別の用途の要素が混ざっていると見られることがあります。

最終的な判断は、その建物がある地域の所管行政庁(市区町村または都道府県の建築指導課・建築主事)が個別に行います。「たぶん事務所でいけるだろう」で進めず、図面と運営計画を持って事前相談に行くのが確実な道です。同じような施設でも、自治体によって見解の細かな差が出ることがあります。

まずこの順に見る:用途地域 → 検査済証 → 現況の用途

物件を検討するときは、確認する順番を決めておくと迷いません。最初に見るのは用途地域です。都市計画で定められた用途地域によって、その場所に建てられる(使える)建物の種類に制限があります。住居系の用途地域では、事務所であっても規模や階数によって制限がかかることがあり、飲食や集会場の要素が加わると制限が厳しくなる場合があります。用途地域は自治体の都市計画情報のウェブサイトで調べられることが多く、無料で確認できます。

次に検査済証です。建築時に完了検査を受けて交付される書類で、これがあるかどうかで後の手続きの進めやすさが大きく変わります。検査済証がない建物で用途変更の手続きが必要になると、現況が法令に適合していることを別の方法で確認する作業が必要になり、時間も費用もかかりやすくなります。貸主や管理会社に「検査済証の写しはありますか」と早い段階で聞いておきましょう。

三つ目が現況の用途です。登記上や確認申請上、その建物(またはその区画)は何の用途で許可されているのか。もともと事務所ビルなのか、倉庫や工場だったのか、店舗や住宅だったのか。ここが今回の使い方とずれていると、用途変更の話が出てきます。この3点をこの順に押さえると、その物件が検討に値するかどうかがかなり絞り込めます。

用途変更の確認申請が必要になるのはどんなときか

建築基準法では、建物の用途を変更して一定規模を超える特殊建築物にする場合などに、用途変更の確認申請が必要とされています。特殊建築物には、集会場・飲食店・物販店・宿泊施設・共同住宅などが含まれ、事務所は一般にこれらには含まれないと整理されています。つまり、もともと事務所の建物を事務所的なシェアオフィスとして使うのであれば、用途変更の手続きは不要と判断されることが多いと考えられます。

一方で、倉庫や工場、店舗だった建物をシェアオフィスに転用する場合、あるいはシェアオフィスにイベントスペースや飲食提供を大きく組み込む場合は、手続きが必要になる可能性が出てきます。必要となる面積の基準や「類似の用途」として手続きが省ける範囲については、法令と告示で細かく定められています。数字の当てはめは個別判断になるため、所管行政庁の窓口や建築士に確認してください。

確認申請が必要になった場合、避難経路・階段の幅・排煙・内装制限・採光など、その用途に応じた基準への適合が求められます。図面上は入るはずだった席数が、避難計画の都合で減ることもあります。内装工事の見積もりを取る前に、この検討を済ませておくと手戻りが減ります。

「シェアオフィス 面積」で引っかかりやすいポイント

面積の話でつまずきやすいのは、自分が借りる区画の面積だけを見てしまうことです。建築基準法の規模要件は、建物全体の延べ面積や、用途変更する部分の床面積で見ることになります。ワンフロアだけを借りるつもりでも、建物全体でどう扱われるかを確認しないと判断を誤ります。

もうひとつは、面積の数え方です。共用部分をどう扱うか、階段やエレベーターホールを含めるか、メゾネットやロフトをどう見るかなど、図面がないと正確に出せない部分があります。募集図面に書かれた面積と、確認申請図面上の面積が一致しないこともあります。正式な判断材料にするなら、確認申請書の副本や竣工図の写しを見せてもらうのが確実です。

そして消防法です。建築基準法とは別の法律ですが、面積と用途に応じて消火器・自動火災報知設備・誘導灯などの設置が求められます。建築基準法上は手続き不要でも、消防設備の追加が必要になることはあります。所轄の消防署に、図面を持って事前相談に行くことをおすすめします。相談自体は費用がかからないのが一般的です。

契約前に貸主・管理会社へ確認しておく項目

確認は口頭で終わらせず、メールなど記録の残る形で行うと安心です。聞いておきたいのは、①建物の用途地域、②検査済証の有無とその写し、③確認申請上の現況の用途、④消防用設備の設置状況と直近の点検報告、⑤シェアオフィスとしての利用(不特定多数の出入り、法人登記、郵便受け取り)を賃貸借契約上認めてもらえるか、の5点です。

特に⑤は建築基準法とは別の、契約上の論点です。建物側で問題がなくても、賃貸借契約で「転貸禁止」「事務所使用に限る」といった条項があると、会員に席を貸す形態がその条項に触れると判断されることがあります。シェアオフィスを運営する側はもちろん、会員としてバーチャルオフィス的に登記だけ置く場合も、運営者に「この建物で法人登記ができる契約になっているか」を確認しておきましょう。

入居者側の立場であれば、確認の負担はもっと軽くて構いません。運営会社に「法人登記は可能か」「郵便物の受け取りはどう扱われるか」「建物の用途上、事務所として使うことに支障はないか」を聞けば、通常は説明を受けられます。説明を避けられる物件は、それ自体が判断材料になります。

迷ったときの相談先と、専門家に聞くべきこと

順番としては、まず自治体の建築指導課と所轄消防署への事前相談です。多くの自治体で窓口相談を受け付けており、図面と運営計画の概要を持っていけば、用途変更の要否や必要な手続きの見通しを教えてもらえます。ここで論点が見えたら、設計や申請の実務は建築士に依頼することになります。検査済証がない建物を扱う場合は、その経験がある建築士かどうかを最初に確認しておくと話が早く進みます。

賃貸借契約の条項、転貸の可否、会員との利用規約、トラブル時の責任分担といった契約面の論点は、弁護士に相談する領域です。シェアオフィスを運営する側は、会員規約の作り方によって後々の責任範囲が変わってきます。開業前の段階で一度見てもらっておくと、後から作り直す手間を避けられます。

なお、登記先としてシェアオフィスの住所を使う場合の手続きや、本店移転登記の実務については司法書士が、事務所費用の経理処理については税理士が相談先になります。建築基準法の当てはめは個別性が強く、この記事の内容は一般的な考え方の整理にとどまります。実際の判断は、所管行政庁の見解を確認したうえで、建築士および弁護士にご相談ください。

よくある質問

シェアオフィスは建築基準法でいう「事務所」でいいのですか。

利用者が机やブースで業務を行う一般的な形態であれば、事務所に近い用途として扱われることが多いと考えられます。ただしイベントスペースや飲食提供の比重が大きい場合は別の用途の要素が混ざると見られることがあり、判断は所管行政庁が個別に行います。図面と運営計画を持って事前相談に行くのが確実です。

倉庫だった建物をシェアオフィスにする場合、用途変更の手続きは必要ですか。

元の用途と新しい用途の組み合わせ、そして規模によって必要になることがあります。必要な場合は避難・排煙・内装制限などの基準への適合も求められるため、内装工事の発注前に確認しておく必要があります。自治体の建築指導課と建築士に早めに相談してください。

自分が借りる区画の面積だけ見ておけばよいのでしょうか。

規模の判断は建物全体の延べ面積や用途変更部分の床面積で見ることになるため、自分の区画だけでは足りません。募集図面の面積と確認申請図面上の面積がずれることもあるので、正式な判断が必要なときは竣工図や確認申請書の写しを確認しましょう。

入居する側として、最低限どこを確認すればよいですか。

運営会社に、法人登記が可能か、郵便物の受け取りがどう扱われるか、建物の用途上その使い方に支障がないかの3点を確認すれば、日常的な利用ではおおむね足ります。契約書に使用目的や転貸に関する条項がある場合は、その内容も読んでおくと安心です。

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