法人カードの利用規程のつくり方|運用ルールと管理方法

・法人カード・決済・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

法人カードは、つくった瞬間から「誰が」「何に」「いくらまで」使えるのかという問題が発生します。ひとり社長のうちは頭の中のルールで回りますが、追加カードを発行して社員が使い始めると、私的利用の疑い、領収書の紛失、限度額の食い違いといったトラブルが一気に表面化します。この記事では、法人カードの利用規程に書くべき項目、運用ルールの決め方、日々の管理方法を、実際に手を動かす順番で整理します。

この記事の結論

  • 法人カードの利用規程には、最低限「利用できる人」「利用できる費用の範囲」「1回あたり・月あたりの上限」「申請と承認の流れ」「領収書の提出期限」「紛失・退職時の対応」の6項目を書きます。
  • カードの使いまわしは、不正利用時に誰の利用か特定できず、経費の証憑と利用者が一致しなくなるため、利用者ごとに追加カードを発行して1人1枚を原則にする運用が安全です。
  • 規程は最初から完璧を目指さず、A4で1〜2枚の骨組みをつくって運用し、判断に迷った事例が出るたびに条文を足していく方が実態に合います。

法人カードに社内規程が必要になるのはどの段階か

法人カードを持つのが代表者だけで、支払いも家賃や通信費といった固定費が中心なら、明文化された規程がなくても運用は回ります。この段階でやっておきたいのは、規程そのものより「事業用の支払いはこのカード、私的な支払いは個人カード」という口座とカードの分離です。ここが混ざると、後から規程をつくっても仕訳が追いつきません。

規程が要るようになるのは、追加カードを発行して自分以外の人が決済する段階です。判断の目安は、(1)代表者以外にカードを渡した、(2)カードを使う人が2人以上になった、(3)出張や広告費など金額が大きく変動する支出が出てきた、のいずれかに当てはまったときです。ひとつでも当てはまるなら、A4で1〜2枚の簡単な規程をつくっておくと、後の説明が楽になります。

もうひとつのきっかけが、税務や経理の外部説明です。誰が何に使ったかを説明できる状態になっているかは、経費性を判断するうえでの前提になります。規程があると、社内での線引きを対外的に示しやすくなります。

法人カードの利用規程に書く項目|サンプル構成

社内規程のサンプルを探している方が多いのですが、既製の雛形をそのまま使うより、次の骨組みを自社の言葉で埋める方が実用的です。最低限入れたいのは6つ。①目的と適用範囲、②カードを持てる人と発行・返却の手続き、③利用できる費用の範囲と禁止事項、④利用限度額と事前承認が必要な金額、⑤利用明細・領収書の提出方法と期限、⑥紛失・盗難・不正利用時の対応です。

条文の書き方は、たとえば③なら「業務上必要な旅費交通費、会議費、消耗品費、広告宣伝費、システム利用料等に使用する」と使える費目を列挙し、続けて「私的な支払い、現金化を目的とする利用、換金性の高い物品の購入は行わない」と禁止事項を並べます。抽象的に『業務に必要な範囲』とだけ書くと、判断が人によってぶれます。

⑤は最もトラブルが起きる部分なので、期限を数字で決めます。「利用日の属する月の翌月◯日までに、領収書または利用控えを経理へ提出する」といった形で、締め日と紐づけるのがおすすめです。提出がない場合の扱い(本人への確認、精算保留など)も一文添えておくと、督促がしやすくなります。

利用範囲と限度額はどう決めるか|判断の順番

限度額を決めるときは、役職で決める方法と、用途で決める方法があります。迷ったら、まず用途から見てください。出張が多い営業担当なら旅費と宿泊費で月いくらかかるか、広告運用の担当なら月の出稿予算はいくらか、という実額の積み上げが先です。そのうえで、役職による上限を重ねると運用が破綻しにくくなります。

事前承認のラインも決めておきます。目安は「1回あたり◯万円を超える支払いは、事前に所属長または代表の承認を得る」という形です。金額は自社の月商や1件あたりの平均支出から逆算し、月に数件だけ承認が発生する程度の水準にすると、承認が形骸化しません。承認の方法はメールでもチャットでも構いませんが、後から遡れる形に残すことが条件です。

カード会社側で設定できる利用枠と、社内規程で定める上限は別物です。カードの枠内であっても社内ルールを超える利用は認めない、という関係を規程に明記しておくと、説明がしやすくなります。実際に設定できる枠や条件は各カード会社の公式サイトで最新の内容を確認してください。

法人カードの使いまわしを避けるべき理由と、1人1枚にできない場合

1枚のカードを複数人で共有する使いまわしは、運用上のリスクが大きい方法です。不正利用や身に覚えのない請求が出たときに誰の利用か特定できず、領収書と利用者の突合もできません。退職者が番号を控えていた場合の対処も難しくなります。多くのカード会社では、会員本人以外の使用を認めない旨が会員規約に定められているため、契約面でも確認が必要です。

対処の基本は、利用する人ごとに追加カードを発行し、1人1枚にすることです。追加カードは利用者ごとに明細が分かれるため、誰の支出かが自動的に記録されます。発行できる枚数や条件はカード会社ごとに異なるので、公式サイトで確認してください。

どうしても枚数を増やせない場合は、カードそのものを渡すのではなく、経理担当が立ち会って決済する、あるいは本人の個人カードで立て替えて後日精算する、という運用に切り替える方法があります。立替精算にする場合は、立替の上限額と精算サイクルを規程に書き、本人の資金繰りに負担がかからない頻度で支払うようにします。

日々の管理方法|締め日から逆算した月次の流れ

管理の型は、カードの締め日を起点に組むと固まります。締め日を過ぎたら利用明細をダウンロードし、会計ソフトに取り込み、明細の1行ごとに領収書が揃っているかを照合します。照合できない行は利用者に確認を投げ、翌月の締めまでに解消する、という月次のサイクルをつくります。

領収書の集め方は、紙を回収するより、利用者がその場でスマートフォンで撮影してクラウドに保存する方法が続きやすいです。電子データでの保存には電子帳簿保存法に基づく要件があり、保存方法や検索の条件が定められています。詳細は国税庁の資料で最新の内容を確認し、判断に迷う点は税理士にご確認ください。

私的利用が見つかった場合の処理も、あらかじめ決めておきます。一般的には、本人から会社へ速やかに返金してもらい、返金の記録を残す形をとります。私的な支出を会社の経費として処理すると、税務上は役員給与や給与として扱われることがあるため、放置せずその月のうちに処理する運用にしておくと安心です。

規程をつくる手順と、退職・カード解約時のチェック

つくる順番は、(1)現状の利用者と利用費目を洗い出す、(2)6項目の骨組みを埋めてA4で1〜2枚にまとめる、(3)代表者が承認して日付を入れる、(4)利用者に配布し、受領の記録を残す、の4ステップです。就業規則のような届出は原則不要ですが、賃金や懲戒に関わる内容を含める場合は、既存の就業規則との整合を確認してください。

運用を始めたら、判断に迷った事例をメモしておき、半年に一度くらいのペースで条文を足していきます。よくある追記は、会食の人数と目的の記録、サブスクリプションの新規契約の承認、海外での利用と為替手数料の扱いなどです。最初から網羅しようとするより、実例で育てる方が現実的です。

見落としがちなのが退職時です。カードの回収、追加カードの利用停止手続き、カード番号を登録しているサブスクやクラウドサービスの支払い方法の切り替えを、退職手続きのチェックリストに入れておきます。人事・労務の取り扱いや規程と就業規則の関係について迷う場合は社会保険労務士に、経費処理や役員報酬との関係については税理士にご相談ください。

よくある質問

法人カードの社内規程のサンプルは、そのまま使ってもよいですか。

雛形は骨組みの参考として使い、利用者の範囲・限度額・承認ライン・提出期限は自社の実態に合わせて書き換えることをおすすめします。特に金額の基準は会社の規模で大きく変わるため、そのままだと運用が形骸化しやすいです。

法人カードを社員が私的に使ってしまった場合はどうすればよいですか。

まず本人に確認し、速やかに会社へ返金してもらい、その記録を残すのが一般的な対応です。私的な支出を会社の経費として処理すると給与や役員給与として扱われることがあるため、処理方法は税理士にご確認ください。

法人カードを複数人で使いまわすのは避けた方がよいですか。

利用者の特定ができず不正利用時の対応が難しくなるため、避けた方が安全です。多くのカード会社の会員規約で本人以外の使用が認められていないため、利用者ごとの追加カード発行が可能か、各社の公式サイトで確認してください。

ひとり社長でも利用規程は必要ですか。

自分しか使わないうちは簡単なメモ程度でも運用できますが、事業用と私的な支払いを分ける方針だけは先に決めておくと後が楽です。人を雇ってカードを渡す段階になったら、A4で1〜2枚の規程を用意しておくと説明がしやすくなります。

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この記事は一般的な情報をまとめたものです。税務・法務・労務の個別の判断については、税理士・弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。 料金や条件は変わることがあるため、お申し込み前に必ず各サービスの公式サイトで最新の内容をご確認ください。