無申告のまま税務調査の連絡が来たら|法人が取る対応の順番
「設立したけれど決算も申告もしていない」「売上が少ないから出さなくていいと思っていた」——そんな状態のまま税務署から電話や手紙が来ると、頭が真っ白になります。ただ、この段階でやるべきことははっきりしていて、順番も決まっています。この記事では、連絡を受けた直後から調査当日、その後の申告までを、法人の立場で時系列に整理します。
この記事の結論
- 税務署から連絡が来たら、無視せず日程調整にだけ応じ、その場で金額や理由を断定的に答えないのが最初の対応です。
- 無申告の法人でも、連絡後すみやかに帳簿と通帳を揃えて期限後申告に向けて動くことで、状況が整理されやすくなります。
- 法人の無申告は加算税や延滞税など複数の負担が絡むため、早い段階で税理士に相談して同席を依頼することが現実的な選択です。
税務署から連絡が来た直後に、まず何をすればいいか
最初にやることは「無視しない」ことです。電話であれ手紙であれ、税務署からの連絡は記録が残っています。折り返さない、開封しないという対応をしても案件が消えることはなく、連絡が繰り返されたり、より踏み込んだ手続きに進んだりすることがあります。怖くても、まず受け止めるところから始めます。
次にやることは、内容を正確にメモすることです。誰から(税務署名・部門・担当者名)、どの税目について(法人税・消費税・源泉所得税など)、どの事業年度について、いつまでに何をしてほしいと言われたのか。電話なら通話の直後に書き留め、手紙ならスキャンか写真で保存し、封筒も残しておきます。
この時点でやらないほうがいいのは、その場で金額や経緯を推測で答えることです。「たぶん売上は◯百万円くらいです」「経費は残っていないと思います」といった曖昧な返答は、後で実際の帳簿と食い違ったときに説明が難しくなります。日程調整には応じつつ、中身については「資料を確認してから回答します」と伝えるのが落ち着いた対応です。
「お尋ね」「呼び出し」「調査の事前通知」は何が違うのか
税務署からの接触にはいくつかの段階があります。文書で照会が届く、いわゆる「お尋ね」は、内容の確認を求めるもので、回答して終わることもあります。一方、「一度署にお越しください」という呼び出しや来署依頼は、対面で事情を確認したいという段階です。どちらも、申告が出ていない法人に対して行われることがあります。
さらに進むと、日時・場所・調査の対象となる税目や期間を伝える事前通知があります。これは実地調査を前提としたもので、通知を受けたら準備の時間が限られると考えたほうがよいでしょう。ただし、状況によっては事前通知なしで接触が行われる場合もあるとされています。
見分けるポイントは、書面や電話の中に「調査」という言葉と、対象期間・税目が具体的に示されているかどうかです。そこまで書かれているなら、本格的な準備に入る段階です。判断に迷う内容であれば、書面をそのまま税理士に見せて、どの段階なのかを確認してもらうのが早道です。
無視したり、放置したりするとどうなるか
連絡に応じないままでいると、税務署側で把握している情報をもとに税額が決められる手続き(決定)に進むことがあります。この場合、こちらが持っている経費の資料が反映されないまま金額が固まってしまう可能性があり、結果として本来より重い負担になることも考えられます。
また、期限までに申告しなかったこと自体に対して無申告加算税、納付が遅れたことに対して延滞税といった負担が加わる扱いがあります。さらに、意図的に隠したと判断される事情がある場合には、より重い取り扱いになることもあります。具体的にどう計算されるかは事案ごとに異なるため、税理士にご確認ください。
逆に言えば、連絡が来た段階で自分から資料を出して申告に向けて動くことには意味があります。経費が正しく反映されれば税額そのものが変わりますし、協力的に対応したという事実も残ります。「もう手遅れだから」と止まってしまうのがいちばん不利になりやすいところです。
調査日までに揃える資料と、集める順番
優先順位は、①法人名義の預金通帳(ネットバンクなら入出金明細のダウンロード)、②売上に関する書類(請求書控え、契約書、入金記録)、③経費に関する書類(領収書、請求書、クレジットカード明細)、④給与・外注の支払記録、⑤在庫や固定資産のメモ、の順です。通帳を最優先にするのは、お金の流れがそこにすべて残っており、他の資料の抜けを埋める手がかりになるからです。
紙の領収書がばらばらでも、まずは年度ごとに分けて封筒に入れるだけで構いません。完璧に整理してから提出しようとすると、いつまでも着手できません。足りないものは「ない」とわかっている状態にするほうが、当日の説明はしやすくなります。
並行して、法人としての基本書類も手元に集めます。登記事項証明書、定款、設立時からの届出書の控え、社会保険や源泉徴収に関するやりとりなどです。設立してから一度も申告していない場合、そもそもどの届出が出ているかが不明なことも多いので、この確認が後の作業を楽にします。
やってはいけないのは、後から領収書を作り直したり、通帳の記録に合わない書類を用意したりすることです。事実と違う資料は、見つかったときに事態を悪化させます。実態をそのまま出す、が原則です。
期限後申告はどう進めるか、税理士にはいつ頼むか
無申告の状態を解消する方法は、過去の事業年度について決算を組み、期限後申告を行うことです。対象は法人税だけでなく、条件によっては消費税、従業員や役員への支払いがあれば源泉所得税、地方税(都道府県民税・市町村民税・事業税)も関係します。提出先は所轄の税務署と、自治体の担当窓口に分かれます。
税理士に相談するタイミングは、「調査の連絡が来た時点」がひとつの目安です。すでに何期分も溜まっている、売上規模が大きい、消費税が関係しそう、現金商売で記録が乏しい、こうした事情がひとつでも当てはまるなら、自力で組み立てるより早く相談したほうが結果的に負担が軽くなることが多いです。
税理士を探すときは、①法人の無申告案件や税務調査の立ち会いを扱っているか、②何期分をどのくらいの期間で仕上げる想定か、③調査当日に同席してもらえるか、この3点を最初に確認します。費用は事務所や案件の規模で大きく変わるため、各事務所に直接見積もりを取ってください。
納税資金が足りないという不安もあると思います。その場合も、まず申告して金額を確定させたうえで、納付方法について税務署に相談するという順番になります。金額がわからないままでは、相談の入り口にも立てません。
調査当日と、その後に気をつけること
当日は、聞かれたことに事実で答えるのが基本です。わからないことは「確認して後日回答します」で構いません。推測で答えて後から訂正すると、説明の信頼性が下がります。記憶が曖昧な取引については、通帳や契約書を見ながら答えると誤りが減ります。
調査の結果、修正すべき点が示されたら、内容と根拠を確認します。納得できない部分があれば、その場で無理に同意せず、税理士を通じて説明を求めることができます。一方で、事実として認めるべき点を引き延ばしても状況はよくなりません。ここは切り分けて考えます。
調査が終わったあとにやるべきことは、再発させない仕組みづくりです。会計ソフトを導入して日々の取引を記録する、法人口座と個人の支払いを分ける、決算月の2か月前にリマインドを入れる。この3つだけでも、次の期からの状態は変わります。
なお、この記事は一般的な流れの整理です。加算税の扱い、消費税の課税事業者に当たるかどうか、過去何期分をどう申告するかといった判断は、事案ごとに結論が変わります。税務署から連絡を受けている段階であれば、できるだけ早く税理士に相談し、必要に応じて調査への同席を依頼してください。制度の詳細は国税庁の公表資料もあわせてご確認ください。
よくある質問
申告を忘れていただけでも、脱税として扱われますか
申告が漏れていた事実と、意図的に隠したかどうかは別の観点で見られます。記録を残しており、連絡後すみやかに資料を提出して申告に向けて動いている場合と、記録を改ざんしている場合とでは扱いが異なることがあります。個別の判断は税理士にご確認ください。
売上がほとんどない法人でも、申告は必要ですか
利益が出ていなくても、法人は原則として毎期の申告が求められます。赤字や休眠に近い状態でも、届け出の内容によっては均等割などの地方税が関係することがあります。自社がどう扱われるかは、所轄の税務署や自治体、税理士にご確認ください。
税理士に頼まず、自分で対応してもいいですか
1期分だけで取引も少なく、通帳と領収書が揃っているなら自力で進められる場合もあります。ただし複数期が溜まっている、消費税が絡む、記録が不十分といったケースでは、専門家に依頼したほうが整理が早く進みます。まずは無料相談枠のある事務所に現状を見てもらう方法もあります。
税務署からの手紙に期限が書かれていて、間に合いません
間に合わないとわかった時点で、担当者に連絡して事情を伝え、いつまでに何を出せるかを相談するのが現実的です。連絡せずに期限を過ぎるより、状況を共有したほうが話が進みやすくなります。連絡の記録は日付とともに残しておいてください。