取締役会議事録の電子署名|要件と登記で使う場合の注意点

・契約・電子署名・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

取締役会議事録をクラウド契約サービスで作りたい、でも登記に出せるのか不安——という相談はとても多いです。ポイントは「社内の記録として電子化してよいか」と「登記の添付書面として法務局が受け付けるか」を分けて考えることです。この記事では、電子署名で議事録を作る際の考え方と、登記で使う場合に事前に確認しておきたい点を、順番に整理します。

この記事の結論

  • 取締役会議事録は電子データ(電磁的記録)で作成でき、その場合は出席した取締役・監査役の記名押印に代えて電子署名を行う形が会社法上想定されています。
  • 社内保存目的の議事録と、登記の添付書面として法務局に提出する議事録では、求められる電子署名の「種類」の確認レベルが変わるため、登記で使う予定があるなら事前に司法書士や法務局に確認しておくと安心です。
  • 代表取締役の選定など、紙であれば実印と印鑑証明書が求められる場面は、電子化する場合も対応する電子証明書が付いた電子署名かどうかが論点になります。

取締役会議事録は電子署名で作成できるのか

会社法では、取締役会の議事録は書面だけでなく電磁的記録(電子データ)で作成することが認められています。書面で作った場合は出席した取締役および監査役が署名または記名押印をしますが、電子データで作った場合は、それに代わるものとして電子署名を行う、という整理になっています。つまり「紙に押印」か「データに電子署名」かの二択で、どちらかを満たしていれば議事録としての体裁は整う、という考え方です。

ここで言う電子署名は、単に画像の印影を貼り付けたものとは異なります。誰が作成・承認したのかを示せること、そして後から内容が改変されていないかを確認できること、この二つの機能を備えたものが想定されています。PDFに印鑑画像を貼っただけの運用は、争いになったときに「本人が承認した」と示しにくいため、電子署名サービスを使うか、紙で押印するかのどちらかに寄せた方が無難です。

なお、取締役会を置かない会社の株主総会議事録や、業務執行の決定を記録した書面も、同じ発想で電子化が進んでいます。ただし議事録の種類ごとに求められる記載事項は異なるため、まずは自社の機関設計(取締役会設置会社かどうか、監査役がいるか)を確認してから、どの議事録をどう電子化するかを決めていきます。

「社内保存用」と「登記に出す用」で確認すべきことが違う

迷ったときは、この順で見てください。まず①その議事録を法務局に出す予定があるか、次に②出すとしたら実印・印鑑証明書が必要な種類の決議か、最後に③使おうとしている電子署名サービスがその要件に対応しているか、の三つです。①がノーであれば、社内規程と保存要件を満たす形で電子署名サービスを使う運用で回せることが多くなります。

①がイエスの場合、商業登記の添付書面としてどのような電子署名・電子証明書が認められるかは、法務省が示す範囲に沿って判断されます。使えるとされる電子証明書には、商業登記に基づく電子証明書、マイナンバーカードの署名用電子証明書、一定の認証業務による電子証明書などがあり、クラウド型サービスの署名についても取扱いが整理されてきています。どの方式が現時点で受け付けられるかは更新されることがあるため、法務省・法務局の最新の案内を確認してください。

実務上よくあるのが、「普段使っているクラウド契約サービスで議事録に署名したが、登記の段階で添付できないと分かった」というパターンです。登記が絡む決議(代表取締役の選定、本店移転の具体的場所の決定など)は、日常の契約書とは別ルートで考える、と決めておくと事故が減ります。

電子署名と実印押印はどう対応するのか

紙の運用では、取締役会議事録に出席者が押印し、決議の内容によっては個人の実印と印鑑証明書の添付が求められる場面があります。代表取締役の選定に関する議事録がその典型で、誰が本当に署名したのかを厳格に確認する必要があるためです。この「厳格な本人確認」が、電子の世界では電子証明書の種類に置き換わる、と理解すると整理しやすくなります。

つまり、実印+印鑑証明書に相当するのが、公的機関や認証局が発行した電子証明書を伴う電子署名、という対応関係です。逆に言えば、メールアドレスの確認だけで完結するタイプの署名は、社内の合意形成としては機能しても、登記の局面では別の確認が必要になることがあります。サービスを選ぶ際は「電子証明書が誰の名義で付与されるのか」を見てください。

また、会社の実印(代表者印)を紙に押す場面と、商業登記電子証明書を使う場面も対応しています。オンラインで登記申請までする予定があるなら、会社として商業登記電子証明書を取得しておくと、議事録以外の書面でも使い回しが利きます。取得手続や必要な準備は法務局の案内で確認してください。

電子署名で議事録を作るときの手順

進め方はシンプルです。まず開催前に、議事録を電子で作るのか紙で作るのかを決めます。登記に使う可能性があるなら、この段階で司法書士に「この決議は電子署名で通せるか」を確認しておくのが最短です。次に、議事録の案文を作り、開催日・場所(またはオンライン開催である旨)・出席者・議事の経過の要領・決議結果といった基本項目を漏れなく記載します。

開催後は、確定した議事録データに、出席した取締役および監査役が電子署名を行います。署名の順番は決まっていませんが、全員分がそろうまで内容を変更しないこと、変更が生じたら署名をやり直すことが重要です。署名済みファイルは、署名の有効性を検証できる状態のまま保存します。PDFを印刷して紙で保管すると、電子署名の検証ができなくなる点に注意してください。

保存については、取締役会議事録は本店に一定期間備え置くことが会社法上求められています。電子データで作成した場合も、閲覧請求に応じられる形で保管しておく必要があります。あわせて、電子取引データの保存に関する制度(電子帳簿保存法など)との関係が気になる場合は、対象となる書類の範囲を所管官庁の資料で確認するか、税理士に相談してください。

ひとり社長・小さな会社でつまずきやすいポイント

一つ目は、取締役会設置会社かどうかの取り違えです。取締役会を置いていない会社では「取締役会議事録」ではなく、取締役の決定書や株主総会議事録が必要になる場面があります。定款と登記事項証明書を見て、自社の機関設計を先に確認してください。ここを間違えると、電子署名の話以前に書類の種類が合いません。

二つ目は、退任した役員や連絡が取りにくい役員がいるケースです。電子署名は本人のアカウントや電子証明書が前提になるため、期限までに署名が集まらないと登記のスケジュールに影響します。人数が少ないうちは紙、役員が増えたりリモートが常態化したら電子、というように切り替え時期を決めておくのも現実的です。

三つ目は、サービスの乗り換えです。電子署名済みのファイルは、サービスを解約しても検証できる形で手元に残るか、事前に確認しておきましょう。料金やプランの内容は変わることがあるため、契約前に各社の公式サイトで最新の情報を確認してください。

登記が絡む議事録の電子化は、要件が細かく、取扱いも更新されていく領域です。代表取締役の選定や役員変更など登記に直結する決議を電子署名で進める予定があるときは、事前に司法書士に相談し、使用予定のサービスと電子証明書の種類まで含めて確認しておくことをおすすめします。税務上の保存の扱いについては税理士、役員と従業員の兼務など労務が絡む論点がある場合は社会保険労務士にご相談ください。

よくある質問

クラウド型の電子署名サービスで取締役会議事録に署名すれば、そのまま登記に使えますか。

サービスの方式や付与される電子証明書の種類によって取扱いが異なります。商業登記の添付書面として認められる電子署名の範囲は法務省が示しており、更新されることもあるため、申請前に法務局の案内を確認するか司法書士にご相談ください。

議事録のPDFに印鑑の画像を貼るのは電子署名になりますか。

印影の画像を貼り付けただけでは、本人が作成したことや内容が改ざんされていないことを示す機能がないため、電子署名として想定されているものとは異なると考えられます。電子署名サービスを使うか、紙に押印する運用に統一する方が安全です。

電子署名した議事録は、印刷して紙で保管してもよいですか。

印刷すると電子署名の検証ができなくなるため、署名済みのデータそのものを保存しておくことが基本です。紙は控えとして持つにとどめ、原本はデータで管理し、閲覧請求に応じられる状態にしておきましょう。

一部の取締役だけ紙で押印し、残りは電子署名にする方法は使えますか。

実務上は書面と電磁的記録が混在すると取扱いが複雑になり、登記で問題になることがあります。同じ議事録内では形式をそろえるのが無難で、混在せざるを得ない事情がある場合は事前に司法書士に確認してください。

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この記事は一般的な情報をまとめたものです。税務・法務・労務の個別の判断については、税理士・弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。 料金や条件は変わることがあるため、お申し込み前に必ず各サービスの公式サイトで最新の内容をご確認ください。