定款認証後の流れ|認証後に内容を直す場合と謄本の再発行

・会社設立・登記・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

公証役場での定款認証が終わると、「もう会社ができた」と思ってしまいがちですが、会社が成立するのは法務局で設立登記が完了したときです。認証後は、出資金の払込み、必要書類の作成、設立登記の申請、登記後の各種届出と、やることが続きます。この記事では、定款認証が終わった直後から登記完了後までの流れを順番に整理し、あわせて「認証後に間違いが見つかった場合」「定款の謄本をなくした・追加で必要になった場合」の考え方をまとめます。

この記事の結論

  • 定款認証後は、出資金の払込み→払込みを証する書面など登記書類の作成→法務局への設立登記申請、という順に進み、登記が完了して初めて会社が成立します。
  • 認証後に定款の誤りが見つかった場合は、まず誤字脱字などの軽微なものか、内容そのものの変更かを切り分け、公証役場と法務局に相談したうえで、誤記証明・再認証・成立後の定款変更のどれで対応するかを決めます。
  • 定款の謄本が足りなくなった場合は、原本を保存している公証役場に再交付(電子定款なら同一情報の提供)を請求できるのが一般的で、手数料や必要書類は各公証役場に確認します。

定款認証が終わったら次に何をする? 全体の流れを先に押さえる

株式会社の設立では、公証人の認証を受けた定款は「原始定款」と呼ばれ、設立登記の添付書類になります。認証はゴールではなく、登記に進むためのチェックポイントです。認証が終わったら、(1)出資金の払込み、(2)設立時役員の選任など決定事項の書面化、(3)登記申請書類一式の作成、(4)法務局へ設立登記を申請、という順に進みます。

会社が法律上成立するのは、登記申請が受理され登記が完了したときではなく、原則として「登記を申請した日」が会社成立の日(設立日)として扱われます。そのため、設立日にこだわりがある場合は、逆算して認証日と払込日を組み立てておくと安心です。法務局が閉まっている土日祝は申請できない点も、日付を決めるときの前提になります。

なお、合同会社(LLC)は公証人の定款認証が不要とされています。この記事は主に株式会社を想定していますが、「認証後の定款の直し方」の考え方は、一般社団法人など認証が必要な法人にも共通する部分があります。

出資金の払込みはいつ・どこに? 払込みを証する書面の作り方

出資金は、発起人個人の銀行口座に振り込むのが一般的です。会社はまだ存在しないため、会社名義の口座は作れません。代表となる発起人の既存口座で構いませんが、あとで通帳の写しを使うので、記帳できる口座を選んでおくと手間が減ります。

払込みの日付は、定款の作成日(認証日)より後であることが求められるのが原則です。認証前に入金してしまった、残高はあるが入金記録がない、といったケースはつまずきやすいポイントなので、認証が終わってから、発起人ごとに「誰がいくら振り込んだか」が分かる形で振込入金してもらうのが無難です。自分の口座に自分で入金する場合も、ATMの預入ではなく振込にすると、名義と金額が記録に残ります。

登記には「払込みがあったことを証する書面(払込証明書)」を作り、通帳の表紙・裏表紙(口座番号と名義が分かる面)・入金が記帳されたページのコピーを綴じて、代表取締役が記名押印するのが一般的な形です。ネット銀行で通帳がない場合は、口座名義・口座番号・入金明細が分かる画面を印刷して代用する運用が広く行われています。書式は法務局のサイトに記載例が公開されているので、最新のものを確認してください。

設立登記はいつ・何を持って・どこに出す?

設立登記は、本店所在地を管轄する法務局(登記所)に申請します。管轄は市区町村ごとに決まっているため、法務局のサイトで「管轄のご案内」を確認してから向かいましょう。窓口持参のほか、郵送、オンライン申請という方法があります。

申請書に添える書類は、一般に、認証を受けた定款、払込みを証する書面、設立時取締役の就任承諾書、発起人の決定書(本店所在地や設立時役員を定款で定めていない場合)、設立時取締役の印鑑証明書など本人確認関係の書類、登録免許税の収入印紙を貼った台紙、印鑑届書などです。機関設計(取締役会の有無、監査役の有無)や現物出資の有無によって必要書類は変わるので、自社のケースに合わせて法務局の記載例と照らし合わせてください。

申請から登記完了までは数日から一週間程度かかることが多く、期間は法務局や時期によって異なります。完了後に、印鑑カードの交付を受け、登記事項証明書(履歴事項全部証明書)と印鑑証明書を必要枚数取得します。銀行口座の開設、税務署への届出、許認可申請などで何通も使うため、必要になりそうな数をまとめて取得しておくと二度手間を避けられます。

定款認証後に間違いが見つかったら? 直し方を判断する順番

まず切り分けるのは、「誤字脱字など明らかな書き損じ」なのか、「内容そのものを変えたい」のかです。前者であれば、認証した公証役場に連絡し、誤記証明書(誤記であることを公証人が証明する書面)を出してもらえるか相談します。誤記証明で対応できる範囲は公証人の判断によるため、自己判断で定款を書き直したり、手書きで修正したりせず、必ず認証を受けた公証役場に先に相談してください。

次に、内容の変更を伴う場合です。会社成立前(登記申請前)に、商号・目的・本店所在地・発行可能株式総数などを変えたいときは、原則として定款を作り直して再度認証を受ける方向で検討することになります。ただし、発起人全員の同意で変更できるとされる事項や、登記実務上の取扱いがある場面もあるため、「再認証が必要か」「この書類で登記が通るか」は、公証役場と管轄法務局の双方に事前相談するのが確実です。順番としては、公証役場(認証の要否)→法務局(登記の可否)の順に聞くと話が早く進みます。

会社成立後(登記完了後)に定款を変更する場合は、株主総会の特別決議によるのが原則です。商号や目的など登記事項にあたるものを変更したときは、変更登記の申請も必要になります。原始定款そのものを書き換えるのではなく、株主総会議事録とともに現行定款を整えていく形になる点が、成立前との大きな違いです。

なお、認証をまるごとやり直す(再認証)と、認証手数料が改めてかかります。金額は制度改正や条件によって変わるため、公証役場または日本公証人連合会の案内で最新の取扱いを確認してください。やり直しを避けるうえでは、認証前に商号・目的・本店・事業年度・株式の譲渡制限・公告方法を読み合わせておくのが一番効きます。

定款謄本の再発行(再交付)はできる? 電子定款の場合は

認証された定款の原本は公証役場に保存され、会社が受け取るのは謄本です。謄本を紛失した、金融機関や許認可の窓口に提出して手元になくなった、という場合は、認証を受けた公証役場に再交付を請求できるのが一般的です。公証役場は原本を一定期間保存する取扱いになっているため、設立から年数が経っていても対応できることがあります。

電子定款で認証を受けた場合は、紙の謄本ではなく「同一の情報の提供」という形で、書面またはデータで交付を受けます。手続きの呼び方は違いますが、必要になったときに追加で受け取れるという点は同じです。

請求できるのは、発起人や会社の代表者など関係者に限られ、本人確認書類や会社の代表者であることを示す書類(登記事項証明書・印鑑証明書など)、委任状を求められることがあります。手数料や必要書類、郵送対応の可否は公証役場ごとに運用が異なるため、行く前に電話で確認すると確実です。

再発行の手間を減らすには、認証時に謄本を複数通もらっておく、受け取った謄本はPDFでスキャンして保管する、原本は登記関係の書類とまとめて保管場所を決めておく、という三点が有効です。定款は設立後も、銀行口座の開設、補助金や許認可の申請、役員変更の場面などで求められることがあります。

登記が完了したら? 届出とバックオフィスの初期整備

登記完了後は、登記事項証明書と印鑑証明書を取得したうえで、税務署への法人設立届出書、青色申告の承認申請書、給与支払事務所等の開設届出書などを提出します。都道府県税事務所・市町村への届出も必要です。提出期限が定められているものがあり、特に青色申告の承認申請は期限を過ぎると希望する事業年度から適用されないことがあるため、登記完了後すぐに着手するのが安全です。

役員報酬を支払う会社や従業員を雇う会社は、年金事務所での社会保険(健康保険・厚生年金)の新規適用手続き、従業員がいれば労働基準監督署・ハローワークでの労働保険の手続きも進めます。ひとり社長でも、報酬を支払う場合は社会保険の加入対象になることがあるため、自社が該当するかを早めに確認してください。

並行して、法人口座の開設、会計ソフトの導入、請求書と領収書の保存方法の決定を進めると、初年度の決算が楽になります。電子帳簿保存法やインボイス制度への対応は、要件の詳細が改正されることがあるため、国税庁の資料で最新の内容を確認し、自社に必要な対応範囲を判断しましょう。

定款の記載内容が税務や登記に与える影響(事業年度の決め方、目的の書き方、役員構成など)は、あとから直すと手間と費用がかかります。認証前・登記前の段階で不安が残る場合や、認証後に内容を直す必要が出た場合は、登記まわりは司法書士、税務まわりは税理士、社会保険・雇用まわりは社会保険労務士と、早めに相談しておくと、やり直しのコストを抑えやすくなります。

よくある質問

定款認証が終わったら、会社はもう成立していますか?

いいえ、認証は登記に進むための手続きで、会社が成立するのは設立登記によります。認証後に出資金の払込みと登記書類の準備を行い、管轄法務局へ申請する必要があります。一般に、登記を申請した日が会社の成立日として扱われます。

認証後に定款の誤字が見つかりました。書き直してもいいですか?

自分で書き直したり手書きで修正したりせず、まず認証を受けた公証役場に連絡してください。軽微な書き損じであれば誤記証明書で対応できる場合がありますが、対応できる範囲は公証人の判断によります。内容そのものを変える場合は、再認証が必要になることがあるため、公証役場と管轄法務局の両方に事前相談すると確実です。

定款の謄本をなくしました。再発行してもらえますか?

認証を受けた公証役場に再交付(電子定款の場合は同一の情報の提供)を請求できるのが一般的です。本人確認書類や代表者であることを示す書類、委任状を求められることがあります。手数料や必要書類、郵送の可否は公証役場ごとに運用が異なるため、事前に電話で確認してください。

出資金は認証の前に振り込んでしまっても大丈夫ですか?

払込みは定款の作成日(認証日)より後に行うのが原則とされており、認証前の入金は登記で問題になることがあります。すでに振り込んでしまった場合は、改めて入金し直すなどの対応が考えられますので、管轄法務局や司法書士に確認してから登記書類を作成してください。

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