採用代行の契約書で決めること|業務範囲・個人情報・解約の条項

・採用・労務・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

採用代行(RPO)は、スカウト送信や書類選考の一次対応、日程調整といった「採用の手」を外に出せる仕組みです。ただ、契約書を相手方の雛形のまま結ぶと、どこまでやってもらえるのか、応募者の個人情報を誰が管理するのか、途中でやめたいときにどうなるのかが曖昧なまま走り出しがちです。この記事では、採用代行の業務委託契約書で決めておきたい条項を、確認する順番に沿って整理します。

この記事の結論

  • 採用代行の契約書でまず固めるのは「業務範囲」「個人情報の取扱い」「解約」の3点で、この3つが曖昧なままだとトラブルの大半がここから起きます。
  • 採用代行は原則として求人企業の採用活動を代行するもので、候補者の紹介・あっせんにあたる行為が含まれる場合は職業安定法上の許可の要否が問題になり得るため、業務内容と報酬の決め方をあわせて確認する必要があります。
  • 応募者の個人情報を委託先に渡す以上、委託先の監督義務は委託元である自社に残るため、取扱範囲・再委託の可否・契約終了時の返還または削除を契約書に書き込んでおくことが重要です。

採用代行の契約書は、どの条項から確認すればいい?

相手方から提示された雛形を頭から読むと、どこが重要か分からなくなります。採用代行の契約書は、①業務範囲(何をどこまでやるのか)、②個人情報・秘密情報の取扱い、③契約期間と解約、この順に確認すると抜けが出にくくなります。この3つは、揉めたときに必ず参照される条項だからです。

次に、④報酬と支払条件、⑤成果物や作成物の権利、⑥再委託、⑦責任の範囲(損害賠償)を見ます。ここまで確認できていれば、細かい条項が残っていても、実務上の穴はかなり塞がります。

自社に法務担当がいない場合、条項を自分で書き起こす必要はありません。相手方の雛形をベースにしながら、上の順番で「自社の実態と合っているか」をチェックし、合っていない箇所だけ修正を申し入れる、という進め方が現実的です。

業務範囲は「作業の単位」と「判断の主体」で切り分ける

採用代行の業務範囲は、「母集団形成」「選考支援」のような大きな言葉で書かれていることがあります。これだと、スカウト文面は誰が作るのか、返信対応は何時間以内なのか、面接の日程調整はどこまでか、が読み取れません。契約書または別紙の業務仕様書に、作業の単位で具体的に書き出すことをおすすめします。

書き出すときは、「媒体への求人原稿の作成・入稿」「スカウト送信(件数の目安)」「応募者への一次返信」「書類選考の事務的な仕分け」「面接日程の調整」「選考結果の連絡」のように、動詞で並べると抜けが見えます。あわせて、対応時間帯、連絡手段、報告の頻度と形式(週次レポートなど)も決めておくと、期待値のズレが減ります。

もう一つ大事なのが「判断の主体」です。採否の判断、選考基準の決定、提示条件の決定は、委託元である自社に残すのが一般的な整理です。委託先が実質的に採否を決める建て付けになっていると、後述する職業安定法上の位置づけの問題にもつながるため、契約書の中で判断権の所在をはっきりさせておきましょう。

指揮命令と偽装請負を避けるには、どう書く?

業務委託契約なのに、自社の担当者が委託先のスタッフに直接、日々の作業指示や勤務時間の管理をしていると、実態が労働者派遣に近いと評価されることがあります。いわゆる偽装請負として問題になり得る論点で、契約書の文言だけでなく運用の実態が見られます。

契約書では、委託先が自らの裁量と責任で業務を遂行すること、業務の遂行方法や要員配置は委託先が決めること、連絡は双方の責任者を窓口とすること、を書いておくのが一般的です。そのうえで、実際の運用でも「委託先の責任者に依頼し、そこから担当者へ」という流れを守ります。

常駐型やオンラインで常時つないで作業する形態を希望する場合は、指揮命令の関係がより問題になりやすくなります。その場合は、労働者派遣の枠組みを使うべきかどうかも含め、契約形態の段階から弁護士や社会保険労務士に確認しておくと安心です。

採用代行と職業紹介はどう違う?報酬の決め方にも影響する

求人企業の採用業務を代行するのが採用代行、求職者と求人企業の間に立って雇用関係の成立をあっせんするのが職業紹介、というのが大まかな整理です。職業紹介にあたる行為を事業として行うには、職業安定法に基づく許可が必要とされています。

実務では、この線引きが曖昧になりやすい場面があります。たとえば、委託先が自社の保有する候補者データベースから人を選んで紹介する、採用決定の人数に連動した報酬を受け取る、といった形は、あっせんに近いと評価される可能性があります。逆に、自社の媒体アカウントを使ってスカウトを送る、自社名義で応募者とやり取りする、といった形は代行としての性格が強くなります。

そのため、報酬の決め方は業務の性格とセットで考えます。作業量や期間に応じた固定型、稼働時間に応じた従量型、面接設定数など採用決定の手前の指標に連動する型など、設計の仕方はいくつかあります。どの形が自社の委託内容と整合するかは判断を伴うため、許可の有無も含めて委託先に確認し、迷う場合は弁護士に相談してください。

個人情報と秘密保持の条項で書いておきたいこと

採用代行では、応募者の氏名・連絡先・職務経歴といった個人情報を委託先に渡します。個人情報の取扱いを委託した場合でも、委託元には委託先を監督する立場が残るとされています。つまり、委託先に任せたから自社は関係ない、という整理にはなりません。

契約書または覚書では、次の点を書いておくと実務が回りやすくなります。委託する個人データの範囲と利用目的、取扱いを行う場所や環境(社内のみか、在宅を含むか)、アクセスできる担当者の限定、再委託の可否と事前承諾、漏えい等が起きた場合の連絡手順、契約終了時のデータの返還または削除と、その報告方法です。

あわせて、秘密保持条項の対象に、採用計画・給与レンジ・組織図・候補者情報を含める形にしておきます。秘密保持の期間を契約終了後も一定期間残す書き方が一般的です。個人情報保護法上の具体的な義務の内容は個人情報保護委員会の資料を確認し、判断に迷う部分は弁護士に確認しておくと確実です。

解約・契約期間・成果物の権利をどう決めるか

採用は計画が変わりやすい業務です。採用枠が埋まった、組織方針が変わった、という理由で途中終了したい場面は普通に起こります。だからこそ、契約期間と解約条項は最初に決めておきたいところです。

見るべきは、契約期間(何か月単位か)、自動更新の有無と更新拒絶の通知期限、中途解約の可否と予告期間、解約時の費用精算の考え方です。中途解約が一切できない建て付けや、予告期間が長すぎる建て付けは、自社の採用計画と合っているか確認しましょう。委託先が業務を履行しない場合の解除事由、反社会的勢力の排除条項も、一般的に入れられます。

もう一つ忘れやすいのが、作成物の扱いです。求人原稿、スカウト文面、選考基準のドキュメント、候補者リストなどを委託先が作った場合、契約終了後に自社で使い続けられるのかを決めておきます。著作権の帰属または利用許諾のいずれかの形で明記しておくと、次の会社に切り替えるときに困りません。損害賠償の範囲や上限についても、どちらか一方に偏りすぎていないかを確認しておきましょう。

雛形を使うときの注意と、専門家に相談するタイミング

「採用代行 契約書 雛形」で見つかる書式は、あくまで一般的な業務委託契約の型です。採用代行特有の論点である、職業紹介との線引き、応募者の個人情報、判断権の所在は、雛形に十分に書かれていないことがあります。雛形はたたき台として使い、業務仕様書を別紙で作り込む、という使い方が現実的です。

相談のタイミングとしては、契約形態や報酬体系を決める前が最も効果的です。契約締結後に「この報酬の決め方で大丈夫か」と確認するより、設計段階で見てもらうほうが直せる範囲が広くなります。継続的に複数社へ委託する予定があるなら、自社側の雛形を一度作っておくと、その後の契約が楽になります。

契約形態や偽装請負・職業安定法まわりの評価は弁護士に、労務の運用や派遣との切り分けは社会保険労務士に相談するのが一般的です。委託費の会計・税務上の処理について判断が必要な場合は、顧問の税理士にご確認ください。自社の採用体制と委託の実態に沿った形で、契約書を整えていきましょう。

よくある質問

採用代行の契約書は、業務委託契約書でよいのでしょうか。

一般には業務委託契約(準委任または請負)の形で締結されることが多いですが、実態として自社が委託先スタッフに直接指揮命令する運用になると、契約書の名称にかかわらず問題になり得ます。常駐型を希望する場合などは、契約形態の段階で弁護士にご確認ください。

採用代行に応募者の個人情報を渡すとき、本人の同意は必要ですか。

利用目的の達成に必要な範囲で取扱いを委託する場合の考え方は個人情報保護法に定めがあり、委託元には委託先を監督する立場が残るとされています。委託の範囲・再委託の可否・終了時の削除を契約で定め、具体的な要件は個人情報保護委員会の資料や弁護士への確認で押さえてください。

成功報酬型の採用代行は問題がありますか。

採用決定に連動する報酬は、業務の内容によっては職業紹介のあっせんに近いと評価される可能性があり、職業安定法上の許可の要否が論点になります。委託先に許可の有無と報酬設計の根拠を確認し、判断に迷う場合は弁護士に相談することをおすすめします。

契約を途中でやめたいときに備えて、何を入れておくべきですか。

中途解約の可否、予告期間、解約時の費用精算の考え方、自動更新の場合の更新拒絶の通知期限を明記しておくと安心です。あわせて、求人原稿や候補者リストなど作成物を契約終了後も自社で使えるかを、権利の帰属または利用許諾の形で決めておきましょう。

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