リファラル採用の費用とインセンティブ設計|社内制度の作り方

・採用・労務・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

「求人広告も人材紹介も費用がかさむ。社員の知り合いに声をかけてもらえないか」——採用に悩む小さな会社が、最初に思いつくのがリファラル採用(社員紹介採用)です。ただし、制度として回すには、報奨金をいくらにするか、いつ払うか、就業規則にどう書くか、といった設計が必要になります。この記事では、費用の考え方から社内制度の作り方までを、順番に整理します。

この記事の結論

  • リファラル採用の費用は、社員に支払う報奨金と、制度づくり・面談などの社内工数が中心で、求人広告や人材紹介とは費用の出方が異なります。
  • 社員紹介の報奨金は「一人の採用にこれまでいくらかけてきたか」を基準に、職種や採用難易度ごとに差をつけて決めるのが実務的です。
  • 報奨金は賃金規程や社内規程に根拠を定めたうえで支給するのが基本で、労務・税務の扱いは社会保険労務士や税理士に確認してください。

リファラル採用の費用は、どこにかかるのか

リファラル採用は「タダで採用できる方法」と思われがちですが、費用がゼロになるわけではありません。かかるのは主に、紹介してくれた社員へ支払う報奨金(インセンティブ)、制度を設計・運用する手間、そして候補者と会うための面談時間です。外部に支払う固定費が減る代わりに、社内の人件費と報奨金に形を変える、と捉えると分かりやすくなります。

求人広告は掲載した時点で費用が発生し、採用に至らなくても戻ってきません。人材紹介は採用が決まってから費用が発生する形が一般的です。リファラル採用は、この「成功したときだけ払う」形に近く、かつ支払い先が社外ではなく自社の社員になります。同じ金額を使うなら社内に還元したい、という判断で導入する会社は少なくありません。

一方で見落とされやすいのが、選考にかける時間です。社員の知り合いだからといって選考を省くと、入社後のミスマッチが社内の人間関係にまで影響します。面接の回数や評価基準は通常の採用と同じにそろえ、その工数も費用として見込んでおいてください。

社員紹介の報奨金は、どう決めればよいか

金額を決めるときの出発点は、相場ではなく自社の実績です。まず「これまで一人採用するのにいくらかかったか」を出してください。直近1〜2年の求人広告費・人材紹介手数料・採用イベント費などの合計を、その期間の採用人数で割ると、一人あたりの採用コストのおおよその目安が出ます。報奨金は、この金額を超えない範囲で設定するのが基本の考え方です。

次に、職種ごとに差をつけるかを決めます。エンジニアや有資格者のように採用が難しく、外部に頼ると費用が大きくなる職種は高めに、募集すれば応募が集まりやすい職種は抑えめに、という設計です。すべて同額にすると分かりやすい反面、難しいポジションほど紹介が出にくくなります。

三つめの論点は、紹介者以外への配分です。紹介した社員だけに払う形が最もシンプルですが、候補者を紹介してくれた部署にチームで使える予算をつける、入社した本人にも入社時の手当を出す、といった形もあります。会社の規模が小さいうちは、まず紹介者への一本化で始め、運用が回ってから広げるほうが管理しやすいでしょう。

なお、具体的な金額水準については、同業他社の公開情報や採用支援サービスの資料など、最新のものをご自身で確認してください。この記事では金額そのものは示しません。

いつ払うか──支給タイミングの決め方

報奨金をいつ払うかは、金額と同じくらい重要です。よくあるのは「入社した時点」と「試用期間を終えた時点」の二つで、実務では後者、あるいは入社後一定期間の在籍を条件にする形がよく使われます。早期退職が起きたときに、会社側の負担だけが残るのを避けるためです。

分割にする方法もあります。入社時に一部、在籍が一定期間続いた時点で残り、という二段階にすると、紹介した社員の納得感を保ちつつ、リスクも抑えられます。ただし支給管理が煩雑になるので、採用人数が少ないうちは一括のほうが運用しやすいこともあります。

もう一つ決めておきたいのが、不支給の条件です。役員や人事担当者が紹介した場合はどう扱うか、選考途中で辞退したらどうするか、過去に応募歴のある人を紹介した場合は対象になるか。ここをあいまいにすると、後から「自分にも払われるはずだ」という不満が出ます。制度文書に先に書いておいてください。

制度をつくる手順──何を用意して、どこに出すか

手順は次の順番で進めると迷いません。まず、①目的と対象職種を決める。次に、②報奨金の金額・支給タイミング・不支給条件を決める。そのうえで、③社内規程(社員紹介制度規程など)として文書にし、賃金規程との関係を整理する。最後に、④社員に周知し、紹介の受付窓口と流れを用意します。

③の文書化は省略しないでください。報奨金は、賃金規程その他の社内規程に支給根拠を定めたうえで、従業員に支払うものとして整理するのが一般的な進め方です。職業安定法には、自社の社員に紹介の対価を支払うことについての定めがあり、規程に基づく賃金として支払う場合とそうでない場合とで扱いが変わることがあります。制度文書をつくる前に、社会保険労務士に一度みてもらうことをおすすめします。

就業規則を変更する場合、常時10人以上の労働者を使用する事業場では、労働基準監督署への届出が必要とされています。従業員代表の意見書など、届出に必要な書類の詳細は、厚生労働省や管轄の労働基準監督署の案内を確認してください。人数が10人未満でも、社内規程として文書にしておくことに変わりはありません。

④の周知では、「どんな人を探しているか」を具体的に伝えるのがポイントです。制度だけ作って職種名を並べても紹介は出てきません。仕事内容、任せたい範囲、一緒に働くメンバーの雰囲気まで書いた1枚の資料を用意し、社員がそのまま知人に転送できる形にしておくと動きが出やすくなります。

労務・税務で気をつけること

報奨金を従業員に支払う場合、給与として扱われ、源泉徴収や社会保険の算定の対象になることがあります。「一時金だから経費で落とせばよい」と自己判断せず、支給の形と処理方法を税理士に確認してください。扱いを誤ると、後から修正が必要になることがあります。

紹介者が自社の従業員ではなく、取引先や知人などの社外の人である場合は、考え方が変わります。人の紹介を業として行い報酬を受けることには法律上の規制があるため、社外への謝礼を制度化する場合は、事前に弁護士や社会保険労務士に相談してください。

もう一点、採用の公平性にも注意が必要です。紹介だからといって選考基準を緩めると、入社後の評価や処遇で社内に説明がつきにくくなります。選考フローは通常採用と同じにし、結果を紹介者にどこまで伝えるか(選考状況は本人の同意なく共有しない、など)も、あらかじめ決めておくと安心です。

リファラル採用と、他の採用手段の使い分け

迷ったら、この順に見てください。第一に「急いでいるか」。今月中に人が必要、という状況では、紹介が出てくるのを待つのは現実的ではありません。この場合は人材紹介や求人媒体を併用します。第二に「社員が自社を人に勧められる状態か」。働きやすさや評価に不満がたまっている状態で制度だけ作っても、紹介は出てきません。まず社内の状態を確認してください。

第三に「採用したい職種が、社員の人脈の中にいそうか」。同職種の経験者が社内に複数いるポジションは紹介が出やすく、社内に前例のない新しい職種は出にくい傾向があります。前者はリファラルを主軸に、後者は外部サービスを主軸に、という切り分けが現実的です。

リファラル採用は、すぐに人数を埋める手段というより、時間をかけて採用コストの構造を変えていく取り組みです。半年〜1年単位で運用しながら、金額や条件を見直していく前提で設計してください。

制度化の前に、専門家に一度相談を

社員紹介の報奨金は、金額の話に見えて、実際には賃金の扱い・就業規則・法規制がからむテーマです。特に、規程の書き方と支給の形は、後から変更すると社員の不満につながりやすい部分でもあります。

制度文書の案ができた段階で、社会保険労務士に規程と労務上の扱いを、税理士に支給時の処理を確認してもらうと、運用に入ってからの手戻りが減ります。顧問がいない場合は、地域の社労士会や税理士会の紹介窓口、自治体の相談窓口から探すこともできます。社外の人への謝礼を検討する場合は、弁護士への相談もあわせてご検討ください。

よくある質問

リファラル採用の報奨金に決まった相場はありますか。

職種や地域によって幅があり、一律の基準はありません。自社でこれまで一人採用するのにかかった費用を計算し、その範囲内で職種ごとに差をつけて決めるのが実務的です。外部の相場情報を参考にする場合は、各社の公式資料など最新のものを確認してください。

報奨金は給与として処理する必要がありますか。

従業員に支払う場合、給与として扱われ源泉徴収や社会保険の算定に影響することがあります。支給の形によって処理が変わるため、制度を始める前に税理士にご確認ください。

紹介した人がすぐ辞めたら、報奨金は返してもらえますか。

あらかじめ規程に定めていない返還請求は、トラブルになりやすい部分です。実務では、一定期間の在籍を支給条件にする、または分割支給にして早期退職時には残りを支給しない、といった設計で対応することが多くあります。条件の書き方は社会保険労務士に相談してください。

社外の知人が候補者を紹介してくれた場合、謝礼を払ってもよいですか。

人の紹介を業として行い報酬を受けることには法律上の規制があるため、社外への謝礼は慎重な検討が必要です。制度化する前に、弁護士や社会保険労務士に相談することをおすすめします。

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この記事は一般的な情報をまとめたものです。税務・法務・労務の個別の判断については、税理士・弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。 料金や条件は変わることがあるため、お申し込み前に必ず各サービスの公式サイトで最新の内容をご確認ください。