入社時の住民税の手続き|特別徴収への切替と会社側の届出

・採用・労務・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

入社手続きというと雇用保険や社会保険に目が行きがちですが、住民税は「会社が何もしないと何も起きない」種類の手続きです。前の会社から引き継がれることもあれば、本人が自分で納めている途中のこともあり、状況によって会社の動き方が変わります。この記事では、入社した従業員の住民税を特別徴収に切り替えるとき、いつ・何を・どこに出すのかを、判断の順番から整理します。

この記事の結論

  • 入社した従業員の住民税を給与天引き(特別徴収)にするには、会社が従業員の住所地の市区町村へ「特別徴収切替届出(依頼)書」にあたる書類を提出します。
  • 提出先は原則として、その年の1月1日時点で従業員が住んでいた市区町村で、会社の所在地の役所ではありません。
  • すでに納期限が過ぎた分は切替の対象にならない取扱いが一般的なため、入社が決まったら早めに本人の納付状況を確認するのが安全です。

入社手続きで住民税は何をすればいい?まず確認する3つのこと

住民税は前年の所得に対してかかり、給与から天引きする方法(特別徴収)と、本人が納付書で納める方法(普通徴収)があります。入社した従業員をどちらで扱うかは、その人が今どちらの状態にあるかで決まります。ここを確認しないまま書類を出すと、二重に徴収してしまうことがあります。

最初に確認したいのは、(1)前職があるか、(2)前職で特別徴収されていたか、(3)本人の手元に納付書が届いているか、の3点です。入社時のヒアリングシートにこの3項目を入れておくと、担当者が毎回迷わずに済みます。

前職から「給与所得者異動届出書」の写しをもらっている人もいます。そこに引継ぎの意思表示が書かれていれば、手続きの進め方が変わるため、入社時の提出書類として声をかけておくとスムーズです。

前職ありと前職なしで分かれる|会社側の動き方の判断順

前職があり、そこで特別徴収されていた場合は、前の会社が市区町村へ「給与所得者異動届出書」を提出し、そこに「新しい勤務先で引き続き特別徴収する」旨を記載して引き継ぐ流れになります。この場合、新しい会社は自社の情報(名称、所在地、指定番号など)を前職に伝えるのが主な役割です。前職が退職時にすでに一括徴収を済ませていたり、普通徴収へ切り替えていたりすることもあるので、実際の処理を本人または前職に確認します。

前職からの引継ぎがない場合や、前職がない場合、あるいは本人が納付書で納めている場合は、新しい会社が市区町村へ切替の届出を出して特別徴収を始めます。この届出は会社が出すもので、本人が役所に行って手続きするものではありません。

新卒入社など、前年に所得がほとんどない人は、そもそも住民税が課税されていないこともあります。その場合は入社年度は手続き不要で、翌年度の給与支払報告書の提出を通じて自然に特別徴収が始まる、という流れになるのが一般的です。

特別徴収への切替はどこに出す?書類と提出先

提出するのは、市区町村が用意している「特別徴収切替届出(依頼)書」といった名称の書類です。名称や様式は自治体ごとに異なるため、提出先の市区町村のウェブサイトから最新の様式をダウンロードしてください。記載するのは、会社の名称・所在地・特別徴収義務者の指定番号、従業員の氏名・生年月日・住所、切替を希望する期別などが中心です。

提出先は、従業員の勤務地ではなく、その年の1月1日時点の住所地の市区町村です。引越しをしている場合でも、課税しているのは1月1日時点の自治体なので、現住所の役所に出しても処理されないことがあります。本人の納付書が手元にあれば、そこに記載された自治体名が手がかりになります。

提出方法は郵送・窓口持参のほか、eLTAX(地方税ポータルシステム)に対応している自治体もあります。複数の自治体に従業員が散らばっている会社では、電子での提出に統一したほうが管理が楽になります。対応状況は各自治体の案内でご確認ください。

いつまでに出す?納期限との関係で急ぐ理由

住民税の年度は6月から翌年5月までで区切られ、普通徴収では年に数回の納期に分けて納付書が発行されます。切替の届出は、すでに納期限が過ぎた分については受け付けられず、まだ納期限が来ていない分から特別徴収に切り替える、という取扱いが一般的です。つまり、届出が遅れるほど本人が自分で納める回数が増えます。

また、自治体側の処理にも時間がかかるため、「提出した翌月の給与からすぐ天引き開始」とは限りません。実務では、市区町村から会社に届く特別徴収税額の通知を受け取ってから天引きを開始します。通知が届く前に見切り発車で天引きすると、金額がずれる原因になります。

入社月に関係なく、入社手続きのチェックリストに住民税の確認を入れておくのが確実です。特に、入社が集中する時期や年度替わりの前後は処理が立て込むため、早めに動いておくと後の修正が減ります。

普通徴収のままにできる?切り替えないという選択

給与を支払う会社は、原則として特別徴収義務者として住民税を天引きすることとされています。近年は多くの自治体が特別徴収の徹底を進めており、「本人が希望したから普通徴収のまま」という扱いは認められにくくなっています。

一方で、給与の支払いが不定期である、他の事業所で特別徴収されている、退職予定があるといった一定の事情がある場合に、普通徴収として取り扱う仕組みを設けている自治体もあります。該当しそうなときは、自己判断せず、提出先の市区町村の案内で条件を確認してください。

なお、入社後に退職した場合は、今度は会社が「給与所得者異動届出書」を提出して、未徴収分を一括徴収するか普通徴収に戻すかを整理することになります。入社と退職はセットで運用を決めておくと、引継ぎのときに担当者が困りません。

社内の運用に落とし込む|ミスが出やすいポイント

よくあるつまずきは、提出先を間違える、指定番号を空欄のまま出す、天引き開始月を通知より前にしてしまう、の3つです。自社の特別徴収義務者としての指定番号は、市区町村から届く通知書に記載されています。給与計算ソフトに登録しておき、届出のたびに確認できるようにしておくと安心です。

従業員が年の途中で引越しをしても、その年度の納付先はもとの自治体のままです。住所変更の届出と住民税の納付先は別の話なので、混同しないように運用メモを残しておきましょう。

入社時の書類一式(雇用契約書、扶養控除等申告書、年金手帳や基礎年金番号の確認書類、前職の源泉徴収票など)をまとめて回収するタイミングで、住民税の納付状況も一緒に聞いてしまうのが効率的です。回収物のテンプレートを作っておくと、担当者が替わっても同じ品質で処理できます。

住民税の取扱いは自治体ごとに運用の細部が異なり、退職時の一括徴収や年末調整との関係で判断に迷う場面もあります。処理の可否や社内ルールの設計に不安がある場合は、給与計算と税務の両面から確認できるよう、税理士や社会保険労務士にご相談ください。

よくある質問

入社した従業員の住民税は、会社が役所に何か出す必要がありますか?

本人が納付書で納めている状態から給与天引きに切り替える場合は、会社が市区町村へ特別徴収切替の届出書を提出します。前職から特別徴収が引き継がれる場合は、前の会社が異動届出書で手続きするため、新しい会社は自社情報を伝える対応が中心になります。どちらに当たるかを入社時に確認するのが先です。

提出先は会社の住所の役所ですか、従業員の住所の役所ですか?

原則として、その年の1月1日時点で従業員が住んでいた市区町村です。会社の所在地の役所ではないため、従業員が複数の自治体に住んでいる場合は、それぞれの自治体に提出することになります。様式や提出方法は自治体ごとに異なるので、各市区町村の案内をご確認ください。

新卒で入社した人の住民税はどうなりますか?

住民税は前年の所得をもとに課税されるため、前年にほとんど所得がない新卒の方は、入社年度は課税されていないことがあります。その場合、入社時点での切替手続きは不要で、翌年度から特別徴収が始まる流れが一般的です。個別の課税状況は本人宛の通知や市区町村でご確認ください。

本人が「普通徴収のままがいい」と言っています。そのままにできますか?

給与を支払う会社は原則として特別徴収義務者とされており、本人の希望だけで普通徴収を続けることは認められにくい取扱いです。給与の支払いが不定期などの事情がある場合に例外的な取扱いを設けている自治体もあるため、該当しそうなときは提出先の市区町村に確認し、判断に迷う場合は社会保険労務士や税理士にご相談ください。

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