勤怠管理システムの比較|中小企業向けの選び方と無料で使える範囲
従業員が数人のうちは、紙のタイムカードやエクセルでもなんとか回ります。ただ、人が増えたり、シフト勤務やテレワークが混ざったりすると、集計にかかる時間と転記ミスが一気に増えてきます。この記事では、勤怠管理システムを比較するときに「どの順番で、何を見ればいいか」を、中小企業・ひとり社長の目線で整理します。
この記事の結論
- 勤怠管理システムを比較するときは、①働き方(打刻方法)②給与計算ソフトとの連携③管理する人数と申請機能、の順に絞り込むと選びやすくなります。
- 無料で使える範囲は「人数上限つきの無料プラン」か「有料プランの無料お試し期間」のどちらかであることが多く、給与連携や申請承認は有料機能に含まれる場合があります。
- 紙のタイムカードから移行するなら、締め日の翌日を切替日にして、最初の1〜2か月は旧方式と並行して運用すると失敗しにくくなります。
勤怠管理システムとは何をしてくれるものか
勤怠管理システムは、出退勤の打刻、労働時間の自動集計、残業・休暇の申請と承認、給与計算へのデータ受け渡しまでを一つにまとめる仕組みです。紙のタイムカードが担っていた「打刻」だけでなく、その後ろにある集計と確認の作業まで引き受けてくれる点が違います。
中小企業で効果が出やすいのは、月末月初の集計作業です。タイムカードやエクセルだと、1人ずつ時間を足して、残業時間を区分して、給与ソフトに手入力する、という工程が発生します。ここが自動化されると、担当者の作業時間と転記ミスの両方が減りやすくなります。
もうひとつのメリットは、記録が残ることです。労働時間の把握は会社の責務とされており、誰がいつ打刻し、誰が承認したかが残る形は、後から確認したいときに役立ちます。具体的な保存期間や記録の要件は法令改正もあるため、厚生労働省の資料や社会保険労務士に確認してください。
比較の前に決めること|働き方と打刻方法から絞る
どのシステムを見るかより先に、自社の打刻方法を決めるほうが早道です。全員が同じ事業所に出社するならICカードや共有タブレットでの打刻、外回りや直行直帰があるならスマホアプリ(必要ならGPS付き)、在宅勤務中心ならパソコンのブラウザ打刻、という具合に、働き方で候補が絞れます。
混在している会社も多いはずです。その場合は「一番人数が多い働き方」を基準に選び、少数派はサブの打刻手段で吸収できるかを確認します。複数の打刻方法を1つの契約で併用できるかは製品によって差があるので、比較表で必ずチェックしたい項目です。
シフト勤務・変形労働時間制・裁量労働制など、勤務形態が特殊な場合は要注意です。製品によって対応できる勤務形態の幅が違い、自社の就業規則の設定を再現できないことがあります。該当する場合は、問い合わせ時に「うちの勤務形態は設定できますか」と具体的に聞くのが確実です。
中小企業向けの比較ポイント5つ
①給与計算ソフトとの連携。すでに使っている給与ソフトがあるなら、そこと連携できるかを最優先で見ます。連携できないと、結局CSVを整形して手入力することになり、導入効果が半減します。②申請・承認のワークフロー。残業申請、有休申請、打刻修正の申請が画面上で完結するかどうかで、管理者の手間が変わります。
③設定の手間とサポート。中小企業では、設定してくれる情シス担当がいないことがほとんどです。初期設定を伴走してもらえるか、チャットやメールでどこまで聞けるかは、導入の成否を左右します。④人数の増減への対応。採用が続く予定なら、途中で人数を増やしたときの契約と料金の考え方を確認しておきます。
⑤法改正への対応方針。労働関連の制度は変わります。クラウド型は提供側がアップデートする形が一般的ですが、どこまで自動で反映されるかは製品によります。料金は各社の公式サイトで最新のものを確認してください。比較するときは、同じ人数・同じ機能の条件で並べないと比べられません。
勤怠管理システムは無料で使えるのか
「無料」には大きく2種類あります。ひとつは人数や機能に上限のある無料プラン、もうひとつは有料プランの無料お試し期間です。前者は少人数のうちは続けて使えますが、給与計算との連携、申請承認、複雑な勤務形態の設定などが有料機能に含まれていることがあります。
ひとり社長や数名の会社であれば、まず無料プランや無料お試しで運用してみて、月末の集計がどのくらい楽になるかを体感するのが現実的です。そのうえで、人が増えたタイミングや、給与計算との連携が欲しくなったタイミングで有料に切り替える、という進め方が無理がありません。
無料で始める場合の注意点は、データの持ち出しです。将来乗り換えるときに、過去の勤怠データをCSVなどで出力できるかを、最初に確認しておくと安心です。出力できないと、移行時に履歴が途切れてしまいます。
紙のタイムカードから移行する手順
切替日は、給与の締め日の翌日にそろえます。月の途中で切り替えると、同じ月の勤怠が紙とシステムに分かれ、集計が二重になってかえって面倒です。締め日の1か月前には製品を決め、試用アカウントで設定を始めておくと余裕が持てます。
準備するのは、就業規則(または勤務時間・休憩・残業の取り扱いを決めたもの)、従業員名簿、所定労働時間や締め日・支払日の情報、有給休暇の残日数です。これをもとに、勤務パターン、打刻方法、承認者の設定を登録していきます。設定が終わったら、管理者と数名で1週間ほど試し打刻をして、集計結果が想定どおりか確認します。
従業員への案内は、切替日の2週間前くらいが目安です。打刻方法、打刻を忘れたときの修正申請の出し方、有休申請の流れを、A4一枚程度にまとめて配ると質問が減ります。最初の1〜2か月は紙のタイムカードも併用し、数字が一致するか突き合わせると、設定ミスに早く気づけます。
迷ったときの判断の順番と、相談先
全員が同じ場所に出社し、勤務形態もシンプルで、従業員が数名なら、無料プランや低機能のものから試して構いません。外出・在宅が混ざる、シフトがある、給与ソフトと連携したい、のいずれかに当てはまるなら、最初から有料の連携機能まで含めて比較するほうが結果的に早く落ち着きます。
候補が2つに絞れたら、実際に試用アカウントで「自社の先月分の勤怠」を入れてみて、集計結果が手計算と合うかを比べます。カタログの機能比較より、この実データでの検証のほうが判断材料になります。合わない場合は、設定でカバーできるのか、そもそも対応していないのかをサポートに確認します。
勤務形態の設定、残業の取り扱い、有給休暇の付与や管理の方法は、労務の判断が絡みます。就業規則との整合が取れていないまま運用すると、後から修正が必要になることもあります。自社の勤務形態が複雑な場合や、就業規則をこれから整える段階なら、導入の設計段階で社会保険労務士に相談し、給与計算との連携部分は顧問の税理士にも確認しておくと安心です。
よくある質問
勤怠管理システムは何人くらいの規模から必要ですか。
人数よりも、集計にかかっている時間と勤務形態の複雑さで考えるのが現実的です。月末の集計に半日以上かかっている、外出や在宅が混ざっている、シフトがあるといった場合は、少人数でも導入効果が出やすくなります。
無料の勤怠管理システムでも給与計算と連携できますか。
製品によって異なり、連携は有料プランの機能に含まれていることもあります。無料の範囲でどこまでできるかは各社の公式サイトで最新の情報を確認し、試用期間中に実際の連携を試してみてください。
タイムカードのまま運用を続けるのは問題がありますか。
紙のタイムカードでの記録自体が使えなくなるわけではありませんが、労働時間の把握や記録の保存について求められる考え方は制度改正で変わることがあります。自社の運用が要件を満たしているかは、厚生労働省の資料や社会保険労務士にご確認ください。
導入後に別のシステムへ乗り換えることはできますか。
可能なことが多いですが、過去データをCSVなどで出力できるかが鍵になります。契約前に、解約時のデータ出力方法と保存形式を確認しておくと、乗り換えのときに困りにくくなります。