法人の決算申告の流れ|必要書類と提出先を順番に確認
決算申告は「決算書をつくる」「申告書をつくる」「出す」「納める」の4つに分かれています。はじめての期末は、この順番と、どこに何を出すのかが分からないまま日が過ぎてしまいがちです。この記事では、期末を迎える前の準備から納付までを時系列に並べ、必要書類と提出先、社内で進められる部分と専門家に任せたほうがよい部分の切り分け方をまとめます。
この記事の結論
- 法人の決算申告は、期末日の翌日から原則2か月以内に、法人税・地方法人税の申告書を税務署へ、法人住民税・事業税の申告書を都道府県と市区町村へ提出し、あわせて納付までを終える流れが基本です。
- 提出書類は決算書一式(貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書・個別注記表)、勘定科目内訳明細書、法人事業概況説明書、申告書別表、税務代理をした場合の添付書面などで構成されます。
- 社内では期末までに残高の確定と証憑の整理を進め、別表の作成や税務判断は税理士に任せる切り分けが、ひとり社長や小さな会社では現実的です。
決算申告の流れは「締める・つくる・出す・納める」の4段階
法人の決算申告は、大きく4つの段階に分かれます。まず期末日で帳簿を締めて残高を確定させ(締める)、次に決算書と申告書一式を作成し(つくる)、税務署などへ提出し(出す)、期限までに税金を納める(納める)という順番です。この4つを別々のイベントとして頭に置いておくと、今どこで止まっているのかが分かりやすくなります。
スケジュール感としては、期末日の翌日から原則2か月以内が申告と納付の期限です。3月末決算なら5月末、9月末決算なら11月末が目安になります。実務ではこの2か月のうち、最初の3〜4週間を帳簿の締めと資料集めに、残りを決算書・申告書の作成と確認に充てる進め方が一般的です。
期限の延長については、一定の手続きにより法人税の申告期限を延長できる制度があります。ただし納付については取扱いが異なる点があるため、延長を検討する場合は事前に税理士や所轄の税務署へ確認してください。
期末を迎える前に社内でやっておくこと
決算作業がもたつく原因のほとんどは、期末前の準備不足です。期末日の1〜2か月前になったら、まず未処理の領収書・請求書がないかを確認し、通帳やクレジットカードの明細と帳簿の突き合わせを済ませておきます。この段階で内容の分からない入出金を洗い出しておくと、後で記憶をたどる手間が減ります。
次に、期末日時点で確定させる必要がある項目を洗い出します。売掛金・買掛金の残高、棚卸資産の数量、固定資産の増減、借入金の残高、前払・未払になっている費用などです。とくに棚卸は期末日の実地カウントが前提になるため、いつ誰がやるかを先に決めておきます。
役員報酬や賞与、決算賞与などの扱いは、支給時期や決議のタイミングによって損金算入の可否が変わることがあります。期末間際に判断すると間に合わないケースがあるため、検討している場合は早めに税理士へ相談しておくと安心です。
決算書と申告書一式には何が含まれるか
提出する書類は、大きく「決算書類」と「申告書類」に分かれます。決算書類は、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表が基本です。これに加えて、勘定科目内訳明細書(売掛金や買掛金、預貯金などの内訳をまとめたもの)と、法人事業概況説明書を添えるのが一般的な形です。
申告書類は、法人税申告書の別表一を中心に、所得金額の計算(別表四)、利益積立金や資本金等の計算(別表五)、租税公課の内訳、減価償却に関する明細などの各別表で構成されます。欠損金の繰越しや特別償却・税額控除を使う場合は、それぞれ対応する別表の添付が必要になります。どの別表が必要かは会社の状況によって変わるため、税理士や会計ソフトの案内に沿って確認してください。
地方税については、都道府県向けの法人事業税・特別法人事業税・法人住民税(道府県民税)の申告書と、市区町村向けの法人住民税(市町村民税)の申告書を別に作成します。東京23区内に本店のみがある場合など、提出先がまとまるケースもあるため、事務所の所在地ごとに確認が必要です。
提出先はどこか|税務署・都道府県・市区町村の3か所
提出先は原則として3か所です。法人税と地方法人税、消費税(課税事業者の場合)の申告書は、本店所在地を管轄する税務署へ提出します。法人事業税と道府県民税は都道府県の県税事務所(都税事務所)へ、市町村民税は市区町村の税務担当課へ提出します。事業所が複数の自治体にある場合は、それぞれの自治体への申告が必要になることがあります。
提出方法は、電子申告(国税はe-Tax、地方税はeLTAX)と書面の郵送・持参があります。一定規模以上の法人には電子申告が義務づけられていますが、それに該当しない会社でも、控えの管理や再提出のしやすさから電子申告を選ぶケースが増えています。電子申告を使うには事前の利用開始手続きと電子証明書の準備が必要なので、はじめての期末なら余裕を持って進めてください。
書面で出す場合は、控えに受付印をもらうか、電子申告なら受信通知を保存しておきます。金融機関の融資審査や補助金の申請で決算書と申告書の控えを求められる場面があるため、提出した一式はPDFと紙の両方で残しておくと後が楽です。
納付までを終えて決算申告は完了する
申告書を出しただけでは終わりません。法人税・地方法人税は税務署(または金融機関、電子納税)へ、法人事業税・住民税はそれぞれの自治体へ、原則として申告期限と同じ日までに納付します。資金の準備が間に合わないと延滞税や延滞金の対象になることがあるため、決算作業の途中で税額の見込みを早めに把握しておくことが大切です。
前期の税額が一定以上だった会社は、期の途中で中間申告・中間納付が必要になります。中間納付をしている場合は、確定申告でその分を差し引いて精算します。納付書や通知が届いたら、どの期のどの税目かを確認して保管してください。
納付が終わったら、決算に使った資料をまとめて保存します。帳簿書類や証憑には保存期間の定めがあり、電子取引のデータについては電子帳簿保存法上の取扱いがあります。保存方法の要件は改正されることがあるため、国税庁の資料や税理士の案内で最新の内容を確認してください。
社内でやる範囲と税理士に任せる範囲をどう分けるか
迷ったら、この順に考えてみてください。第一に「日々の記帳と証憑整理」は社内でできる会社が多い領域です。第二に「決算整理(棚卸、減価償却、引当、経過勘定)」は、会計の知識があるかどうかで分かれます。第三に「別表の作成と税務判断」は、税法の解釈が絡むため専門家に任せたほうが安全な領域です。
この条件に当てはまるなら税理士へ相談する、という目安を挙げます。売上や取引先が増えて在庫や売掛の管理が必要になった、役員報酬や決算賞与の扱いを検討している、設備投資をして特別償却や税額控除を使いたい、欠損金の繰越しがある、消費税の課税事業者になった——いずれかに当てはまる場合は、自力で完結させるより相談したほうが結果的に早いことが多いです。
逆に、設立初年度で取引が少なく、売上も経費もシンプルなら、会計ソフトを使って社内で進め、決算前に一度だけスポットで見てもらうという選び方もあります。依頼範囲(記帳代行まで含むのか、決算申告だけか)と、年間のやり取りの頻度で費用は変わるため、複数の事務所に同じ条件で見積もりを依頼して比べてみてください。料金体系は各事務所の公式サイトや面談で最新の内容を確認するのが確実です。
なお、決算申告の内容は会社の状況によって必要な書類も判断も変わります。この記事は一般的な流れの整理にとどまりますので、実際の申告にあたっては税理士にご確認ください。登記事項の変更(役員の任期満了による重任など)が決算時期と重なる場合は、司法書士への相談もあわせて検討してみてください。
よくある質問
決算申告の期限はいつまでですか。
原則として、期末日の翌日から2か月以内に申告と納付を行います。3月末決算なら5月末が目安です。一定の手続きにより申告期限を延長できる制度もありますが、納付の取扱いは異なる点があるため、税理士や所轄の税務署へ確認してください。
決算申告に必要な書類は何ですか。
貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書・個別注記表といった決算書一式に加え、勘定科目内訳明細書、法人事業概況説明書、法人税申告書の各別表が基本です。適用する制度によって追加の別表が必要になるため、会社の状況ごとに確認が必要です。
赤字でも決算申告は必要ですか。
利益が出ていなくても、法人である以上は申告が必要とされています。法人住民税の均等割など、所得にかかわらず生じる税目もあります。欠損金を翌期以降に繰り越すためにも申告を続けておくことが前提になりますので、詳しくは税理士にご確認ください。
自分で決算申告をすることはできますか。
取引がシンプルな会社であれば、会計ソフトを使って社内で進めている例もあります。ただし別表の作成や損金算入の判断は税法の解釈が関わるため、判断に迷う項目がある場合は税理士に相談したほうが安心です。