決済代行を使うときのインボイス対応|誰の適格請求書が必要か

・法人カード・決済・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

決済代行やBtoB後払いサービスを使うと、請求書を送ってくるのは決済代行会社なのに、商品を売ったのは別の会社、という状態が生まれます。このとき「誰の適格請求書(インボイス)を受け取って保存すればいいのか」で手が止まる方は多いはずです。この記事では、取引を『商品やサービスの売買』と『決済代行手数料』の2階建てに分けて考える方法と、保存のしかたを整理します。

この記事の結論

  • 決済代行を経由した取引では、商品やサービスの売買についてのインボイスは原則として実際の売り手(販売事業者)の登録番号が入ったものが必要で、決済代行会社の請求書がそのまま代わりになるとは限りません。
  • 決済代行会社が売り手に代わってインボイスを交付する仕組み(媒介者交付特例など)を使っている場合は、決済代行会社名義の書類に売り手の登録番号等が記載される形になるため、書類の記載内容を実際に確認するのが確実です。
  • 決済代行手数料そのものについては決済代行会社が売り手(役務提供者)になるため、決済代行会社が発行するインボイスを別途受け取って保存します。

まず「誰と誰の取引か」を2階建てで分ける

決済代行が絡む取引がややこしく感じるのは、1回のお金の流れに複数の取引が混ざっているからです。最初にやるべきは、取引を『①商品・サービスの売買(買い手↔販売事業者)』と『②決済代行サービスの提供(販売事業者↔決済代行会社)』の2階建てに分けることです。インボイスは、この①と②それぞれについて、売り手側が発行するものと考えると整理しやすくなります。

①について、実際に商品を売ったのは販売事業者です。買い手が仕入税額控除を受けるために保存するのは、原則として販売事業者の氏名・名称と登録番号が記載された書類になります。決済代行会社は代金の回収や立替を担っているだけ、という位置づけが基本です。

②について、決済手数料や利用料を請求しているのは決済代行会社なので、こちらは決済代行会社が発行するインボイスを、販売事業者側が受け取って保存します。買い手にとっては②は関係がなく、販売事業者にとっては①(自社が発行する側)と②(受け取る側)の両方が発生する、という整理になります。

買い手側:決済代行会社から届いた請求書だけで足りるか

買い手として決済代行会社から請求書や支払明細が届いたとき、まず見るのは『そこに登録番号が書かれているか』『その登録番号は誰のものか』の2点です。決済代行会社自身の登録番号しか書かれていない書類は、商品・サービスの仕入れについてのインボイスとしては足りない可能性があります。

次に見るのは、書類の中に販売事業者の名称と登録番号が記載されているかどうかです。決済代行会社が販売事業者に代わって交付する仕組み(いわゆる媒介者交付特例など)を採っている場合、決済代行会社名義の書類に販売事業者の登録番号が併記される形になっていることがあります。この形であれば、その書類を保存する運用で足りることが多いと案内されています。

どちらにも当てはまらず、決済代行会社の書類に販売事業者の登録番号が見当たらない場合は、販売事業者から別途インボイス(または納品書・領収書等でインボイスの記載事項を満たすもの)を受け取る必要があります。実務としては、注文確認メールやマイページからダウンロードできる書類に記載されていることも多いので、決済代行会社と販売事業者の両方の案内を確認してください。判断に迷う取引は、税理士に実物を見てもらうのが早道です。

立替払型のときは「立替金精算書」が出てくる

決済代行会社が買い手に代わって販売事業者へ代金を支払い、後から買い手に請求する形(立替払)になっている場合があります。この形では、販売事業者が発行したインボイスの宛名が決済代行会社になっていることがあり、そのままでは買い手の書類としてつながりません。

この場合に使われるのが、立替払をした側が作成する精算書(立替金精算書)です。販売事業者が発行したインボイスの写しと、立替金精算書をセットで保存することで、誰のどの仕入れに対応するかを示す、という考え方が一般に案内されています。多数の取引をまとめて立て替えている場合には、精算書の記載方法について別の取扱いが示されていることもあります。

自社の取引がこの形に当たるかどうかは、契約書や利用規約の「代金の受領・立替」に関する条項と、実際に届く書類の様式を見ると判断しやすくなります。書類が足りない状態が続くと後からまとめて集めるのが大変になるので、導入時点で決済代行会社のサポートに『インボイスとしてどの書類を保存すればよいか』を確認しておくことをおすすめします。

NP後払い・Paidなどの後払いサービスを使っている場合

BtoC向けの後払い(NP後払いなど)やBtoB向けの請求代行(Paidなど)といったサービスでは、購入者や取引先のもとに、サービス提供会社名義の請求書や払込票が届く形になります。ここで確認したいのは、その請求書が『商品代金のインボイス』なのか、『支払いの案内(払込票)』なのかという点です。

多くのサービスでは、インボイス制度への対応方針を公式サイトやFAQで公表しています。販売事業者の登録番号を請求書面に印字する運用、マイページから適格請求書をダウンロードできる運用、販売事業者が自社で発行する前提の運用など、サービスによって設計が異なります。他社の運用を前提に判断せず、使っているサービスの最新の案内を必ず確認してください。

販売事業者(加盟店)側としては、自社が買い手に交付するインボイスを誰がどの様式で出すのかを、サービス導入時に決めておく必要があります。二重に発行してしまうと、買い手が同じ取引で2枚のインボイスを持つことになり混乱のもとです。『交付するのは自社か、サービス会社か』を一本化し、社内の請求フローに書き残しておきましょう。

決済代行手数料のインボイスはどこで受け取るか

決済代行手数料や月額利用料については、決済代行会社が売り手になります。多くの場合、管理画面から月次の利用明細・支払調書に相当する書類をダウンロードする形か、メールで送付される形になっています。紙で郵送されないケースも多いので、『どこに出ているか』を最初に確認しておくのが実務上のポイントです。

手数料が売上から差し引かれて入金される(相殺入金)形の場合、通帳に残るのは差引後の金額だけです。会計上は総額で売上と手数料を計上する処理が一般的ですが、処理方法は事業の内容や契約によっても変わるため、顧問税理士の方針に合わせてください。いずれにしても、手数料分のインボイスは別途保存が必要になります。

なお、決済手数料の消費税の扱い(課税か非課税か)は、サービスの内容によって異なる整理になることがあります。明細の表示をそのまま鵜呑みにせず、不明点は決済代行会社と税理士の双方に確認するのが安全です。

電子で受け取った請求書の保存はどうする

決済代行まわりの書類は、管理画面からのダウンロードやメール添付といった電子データで受け取ることがほとんどです。電子データでやり取りした取引情報は、電子データのまま保存することが求められる場面があり、紙に印刷して保管するだけでは要件を満たさない場合があります。要件の詳細は国税庁の電子帳簿保存法に関する資料で確認してください。

実務の型としては、月に一度の決まった日に、決済代行会社の管理画面から明細をまとめてダウンロードし、『年月_取引先名_金額』のような命名ルールでクラウドストレージの決まったフォルダに入れる、という運用が続けやすいです。担当者が一人しかいない会社ほど、探す手間を減らす命名ルールが効いてきます。

また、決済代行サービスは仕様変更が起きやすい領域です。インボイスの交付方法や明細の出力方法が変わることもあるので、年に一度は各社の公式サイトのお知らせやFAQを見直す時間をとっておくと安心です。

迷ったときの確認の順番と、専門家への相談

整理の順番はシンプルです。①その取引で商品・サービスを売ったのは誰か、②その売り手の登録番号が入った書類を持っているか、③持っていないなら決済代行会社が代わりに交付する仕組みになっていないか、④立替払型なら精算書があるか、⑤手数料分のインボイスは別に受け取っているか。この5つを順に確認すれば、たいていの取引は整理できます。

それでも判断がつかないのは、複数の販売事業者の商品が1枚の請求書にまとまっている場合や、海外のプラットフォームが絡む場合、免税事業者の販売事業者が混ざっている場合です。こうしたケースは、経過的な取扱いも含めて個別の判断が必要になるため、自己判断で進めないほうがよいところです。

インボイスと消費税の取扱いは、事業の形態や取引の契約内容によって結論が変わることがあります。自社の決済フローの図と、実際に届いている書類のサンプルを持って、税理士にご相談ください。制度の一般的な考え方は国税庁の公表資料でも確認できますが、自社に当てはめる部分は専門家と一緒に固めるのが結局いちばん早く、後戻りも少なく済みます。

よくある質問

決済代行会社から届く請求書は、そのままインボイスとして保存してよいですか。

書類に記載された登録番号が誰のものかによって変わります。実際の売り手(販売事業者)の名称と登録番号が記載されていればその書類の保存で足りることが多い一方、決済代行会社自身の番号しかない場合は、販売事業者から別途インボイスを受け取る必要があることがあります。判断に迷う書類は税理士にご確認ください。

NP後払いやPaidを使っている場合、インボイスは誰が発行しますか。

サービスごとに設計が異なり、販売事業者が自社で発行する前提の運用と、サービス会社が販売事業者に代わって交付する運用があります。導入しているサービスの公式サイトのインボイス対応に関する案内を確認し、自社が発行する側かどうかを社内で一本化しておくと混乱を防げます。

決済手数料のインボイスはどこで受け取ればよいですか。

多くの場合、決済代行会社の管理画面から月次の利用明細をダウンロードする形か、メールで送られてくる形になっています。売上から手数料が差し引かれて入金される場合でも、手数料分のインボイスは別に保存が必要です。出力場所が分からないときは、決済代行会社のサポートに確認してください。

ダウンロードした明細は印刷して紙で保管すればよいですか。

電子データでやり取りした取引情報は、電子データのまま保存することが求められる場面があります。紙に印刷するだけでは要件を満たさない場合があるため、国税庁の電子帳簿保存法に関する資料で要件を確認し、保存方法を決めてください。

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