紙の契約書の保管方法|ファイリングと穴あけ・保管場所の決め方
電子契約が増えても、紙の契約書はゼロにはなりません。取引先から郵送で届いた製本契約書、創業時に交わした賃貸借契約書、過去の基本契約書。とりあえず封筒のまま引き出しに入れている、という会社は少なくないはずです。この記事では、紙の契約書を「どう綴じて、どこに置いて、どう探せるようにするか」を、判断の順番つきで整理します。
この記事の結論
- 紙の契約書は、まず「原本かどうか」で分け、原本は穴をあけずにクリアポケットや封筒に入れて保管し、日常的に参照する写しだけを穴あけファイルに綴じる方法が扱いやすいです。
- ファイリングの並べ方は、取引先数が少ないうちは「取引先別」、契約件数が増えたら「契約種類別×年別」に切り替えると探しやすくなります。
- 保管場所は、施錠できること・水濡れと直射日光を避けられること・担当者以外も場所が分かることの3つを満たす場所を選び、保管場所と綴じ方を一覧表にして共有します。
まず決めるのは「原本をどう扱うか」
紙の契約書の保管でいちばん最初に決めるのは、収納用品ではなく「原本の扱い」です。原本は、あとから契約内容や押印の事実を確認する必要が出たときの、いちばん確かな資料になります。汚損や紛失を避ける前提で置き場所を決め、日常的に開いて見るのは写しかスキャンデータ、という役割分担にしておくと迷いが減ります。
具体的には、届いた契約書を開封したら、その日のうちに全ページをスキャンし、原本は保管用に回します。スキャンデータには「締結日_取引先名_契約名」のようなファイル名を付け、共有フォルダの決まった場所に置きます。この一手間があると、原本を引っ張り出す回数そのものが大きく減ります。
なお、スキャンした電子データを保存する場合の要件や、紙の原本を廃棄してよいかどうかの判断は、電子帳簿保存法など制度側の考え方が関わります。要件の詳細は国税庁など所管官庁の資料を確認し、判断に迷う場合は税理士にご確認ください。
契約書に穴をあけていいのか、迷ったときの判断
「契約書に穴をあけてよいか」は、検索でもよく見かける疑問です。結論から言うと、穴をあけたこと自体で契約が無効になるという性質のものではありませんが、実務では原本に穴をあけない運用をしている会社が多くあります。理由は、製本テープや割印・契印の位置に穴がかかると、あとで確認しづらくなることがあるからです。
判断の順番はシンプルです。まず①その書類は原本か写しか。原本なら穴をあけない方向で考えます。次に②穴あけ位置に押印・契印・製本テープがかかるか。かかるなら避けます。最後に③今後、第三者に提示する可能性が高いか。高いなら、見た目のきれいさも含めて穴なし保管が無難です。
穴をあけずに綴じたいときは、クリアポケット付きのファイル(リフィル式)に差し込む、個別フォルダーに入れてボックスに立てる、といった方法があります。どうしてもリングファイルで管理したい場合は、契約書をクリアポケットに入れてからポケット側に穴があいているものを使う、という折衷案も取れます。
一方で、更新のたびに差し替える覚書や、社内確認用に印刷した写しは、穴あけファイルに綴じたほうが扱いやすいことが多いです。原本と写しで用品を変える、と決めておくだけで、現場の迷いはほぼなくなります。
ファイル・ケース・ボックスの使い分け
収納用品は大きく3種類に分けて考えると選びやすくなります。1つめはリングファイルやパイプファイルなどの「綴じるタイプ」。ページをめくって一覧できるので、写しや社内資料向きです。2つめはクリアファイル(リフィル式ポケットファイル)などの「差し込むタイプ」。穴をあけずに原本を入れられ、抜き差しも簡単です。
3つめは個別フォルダーとボックスファイルを組み合わせる「立てるタイプ」。1件ごとに紙フォルダーへ入れ、ボックスに立てて並べます。契約書のほかに見積書や覚書、やりとりの記録をまとめて1件分として持てるので、案件単位で管理したい会社に向きます。厚みのある製本契約書でも押し込まずに収まります。
選ぶ基準は、契約件数と更新頻度です。件数が少なく、ほとんど動かないなら差し込むタイプで十分です。契約ごとに付随書類が多い、あるいは更新・変更覚書が頻繁に出るなら立てるタイプ。社内で回覧・参照する機会が多い写し中心なら綴じるタイプ、という順で当てはめてみてください。
収納用品の価格や品番は各社・各店で異なりますので、購入前にメーカーや販売店の公式サイトで最新の仕様を確認してください。サイズ違いで買い直しになりやすいので、手元の契約書の厚みを1件測ってから決めると失敗が減ります。
並べ方は「取引先別」から始めて「種類別×年別」へ
ファイリングの分類は、最初から複雑にしないことがコツです。契約件数が数十件までなら、取引先別(五十音順)に並べるのがいちばん直感的です。「あの会社との契約、どうなってたっけ」という探し方が実務ではもっとも多いためです。
件数が増えてきたら、「契約の種類別」を上位の区分にして、その中を締結年別に並べる形に移行します。たとえば、業務委託契約、秘密保持契約、賃貸借・リース、売買・基本取引、雇用・労務関係、といった単位です。種類でまとめると、更新時期の確認や、同じ雛形を使い回すときの参照が楽になります。
どちらの並べ方でも、背表紙やインデックスには「取引先名/契約名/締結日/有効期限または自動更新の有無」を書いておきます。特に有効期限は、あとで解約通知の期限を確認するときに効いてきます。
並べ方を変えるタイミングは、「探すのに5分以上かかる契約が出てきたとき」が目安です。作業としては、年度末や決算後の落ち着いた時期にまとめて組み替えると、通常業務への影響が小さくて済みます。
保管場所の決め方と、探せる状態を保つ仕組み
保管場所は、次の順に条件を確認します。①施錠できるか。契約書には取引条件や個人情報が含まれることがあり、誰でも開けられる棚は避けたいところです。②水濡れ・直射日光・高温多湿を避けられるか。窓際や給湯室の近く、床に直置きは向きません。③担当者が不在でも場所が分かるか。社長の机の中だけ、という状態は、事故のもとです。
自宅兼事務所のひとり社長の場合も考え方は同じです。鍵付きのキャビネットや耐火性のある書類ケースを1つ決め、そこを契約書の定位置にします。増えてから探すのではなく、最初に「ここが契約書の場所」と決めてしまうほうが結果的に早いです。
運用面では、「契約書管理一覧」を表計算ソフトで1枚つくります。列は、契約名/取引先/締結日/有効期限/自動更新の有無/原本の保管場所(キャビネットA・ボックス2など)/スキャンデータの保存先、程度で十分です。原本を持ち出したときは、代わりに「貸出メモ」を挟んでおくと、行方不明を防げます。
なお、契約書や取引関係書類には、法令上の保存期間の考え方があります。契約が終了したからすぐ捨てる、という運用は避け、廃棄の前に保存期間の要否を確認してください。判断に迷う書類は、税理士や弁護士に確認したうえで廃棄すると安心です。
届いてから保管までの手順(そのまま使える流れ)
実際の作業手順は、次の順に固定してしまうのがおすすめです。まず、①開封したら日付印またはメモで受領日を記録する。②全ページと製本部分をスキャンし、決めたファイル名で共有フォルダへ保存する。③契約書管理一覧に1行追加する(契約名・取引先・締結日・有効期限・保管場所)。
続いて、④原本をクリアポケットまたは個別フォルダーに入れる。⑤取引先別または種類別×年別の定位置へ収める。⑥必要なら写しを印刷し、社内参照用のファイルに綴じる。ここまでを締結後1週間以内に終える、とルール化しておくと、たまって手がつけられなくなる事態を避けられます。
準備しておくものは、クリアポケットまたは個別フォルダー、ボックスファイルかリングファイル、インデックスラベル、鍵付きの保管場所、スキャン手段(複合機またはスマートフォンのスキャンアプリ)です。特別な道具は要りません。
そして年に1回、決算後などのタイミングで棚卸しをします。一覧表と実物が一致しているか、期限切れ・自動更新の契約はないか、廃棄してよい書類はないかを見ます。この定期点検があるかどうかで、3年後の探しやすさが大きく変わります。
判断に迷ったら専門家に相談を
契約書の保存期間、紙の原本をスキャン後に廃棄してよいか、電子データとしての保存に必要な要件など、保管まわりには制度の判断が絡む論点がいくつもあります。会社の業種や取引形態によって扱いが変わることもあり、一般論だけで決め切るのは難しい部分です。
税務書類としての保存期間やスキャン後の取り扱いは税理士、契約内容そのものや紛争時の証拠としての扱いは弁護士、雇用契約や労務関係書類の保存は社会保険労務士、登記に関わる書類は司法書士、というように相談先を使い分けると話が早く進みます。
まずはこの記事の手順で「定位置と一覧表」をつくり、そのうえで自社特有の書類について専門家に確認する、という順番がおすすめです。制度の要件は改正されることもあるため、所管官庁の最新資料もあわせて確認してください。
よくある質問
契約書に穴をあけてファイルに綴じても大丈夫ですか。
穴をあけたこと自体で契約の効力が失われる性質のものではありませんが、実務では原本に穴をあけない運用が一般的です。押印や契印、製本テープの位置にかかると後から確認しづらくなるため、原本はクリアポケットや個別フォルダーに入れ、穴あけファイルには写しを綴じる方法が扱いやすいです。
契約書はどのくらいの期間、保管すればよいですか。
契約書は取引関係書類として法令上の保存期間の考え方があり、契約の種類や会社の状況によって扱いが変わることがあります。契約終了後すぐに廃棄するのではなく、保存期間の要否を確認してから判断してください。個別の書類については税理士や弁護士にご確認ください。
スキャンして電子保存すれば、紙の原本は捨ててよいですか。
電子データでの保存には、電子帳簿保存法など制度側で定められた考え方があり、要件を満たすかどうかで扱いが変わることがあります。要件の詳細は国税庁など所管官庁の資料を確認し、廃棄の可否は税理士にご確認ください。当面は原本も残しておくほうが安全です。
ひとり会社でも契約書管理一覧は必要ですか。
件数が少なくても、有効期限と自動更新の有無を一覧にしておくと、解約通知の期限を逃しにくくなります。表計算ソフトで、契約名・取引先・締結日・有効期限・保管場所・データ保存先の6列から始めれば十分です。