インボイス制度の仕入税額控除|要件と保存しておく書類

・会計・税務・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

「インボイスをもらわないと経費にできない」と聞いて不安になっている方は多いのですが、実際に効いてくるのは消費税の計算、つまり仕入税額控除の部分です。この記事では、仕入税額控除を受けるために何が必要なのか、受け取った請求書のどこを見ればよいのか、そして帳簿や書類をどう残しておけばよいのかを、実務の順番に沿って整理します。自社が消費税の申告をしているかどうかで話が変わるので、そこから確認していきましょう。

この記事の結論

  • インボイス制度のもとで仕入税額控除を受けるには、原則として「適格請求書(インボイス)等の保存」と「一定の記載がある帳簿の保存」の両方が必要とされています。
  • 受け取った請求書では、登録番号、取引年月日、取引内容、税率ごとに区分した金額と消費税額、宛名(自社名)が入っているかを確認します。
  • 帳簿と請求書等は一定期間の保存が求められ、電子で受け取ったものは電子帳簿保存法の考え方に沿った保存方法を選ぶ必要があります。

そもそも仕入税額控除とは?自社に関係するかの見分け方

仕入税額控除とは、売上とともに受け取った消費税から、仕入や経費の支払いに含まれていた消費税を差し引いて納税額を計算する仕組みです。つまり、インボイスの話は「経費として落とせるか」ではなく「消費税の納税額を計算するときに差し引けるか」という論点です。法人税の経費計算とは別の話なので、そこを混ぜないことが最初のポイントです。

関係するかどうかの判断は、まず自社が消費税の申告をしているかどうかから見ます。免税事業者で申告をしていない会社は、そもそも仕入税額控除の計算をしないため、受け取る請求書の登録番号にこだわる必要は薄くなります。一方、課税事業者として申告している会社は、支払い先がインボイス発行事業者かどうかで納税額が変わる可能性があります。

また、課税事業者でも簡易課税制度を選んでいる場合は、売上から一定の方法で仕入分を計算するため、受け取ったインボイスをもとに控除額を積み上げる形にはならないのが一般的です。自社がどの方法で計算しているかが分からないときは、申告書を作っている税理士に確認するのが早い道です。

インボイス制度で仕入税額控除を受ける要件は2つ

原則として、仕入税額控除を受けるには「適格請求書(インボイス)などの請求書等の保存」と「帳簿の保存」の両方が必要とされています。どちらか片方だけでは足りない、という点が制度前との大きな違いです。請求書をきちんとファイルしていても、帳簿に取引の内容が残っていなければ要件を満たさないと扱われることがあります。

帳簿に書いておくべきこととしては、相手方の氏名または名称、取引年月日、取引の内容(軽減税率対象ならその旨)、支払対価の額が挙げられます。会計ソフトで摘要欄に取引先名と内容を入れて仕訳していれば、多くの場合はこの形に近づきます。逆に「消耗品費 一式」だけで相手先が分からない仕訳は、後から補いにくくなります。

なお、取引の性質によっては請求書等の保存を求めず帳簿の保存のみで控除が認められる取扱いや、少額の取引についての特例が設けられている場面があります。ただし対象となる取引や金額の要件は細かく定められているため、自社の取引が当てはまるかは国税庁の公表資料を確認し、判断に迷う場合は税理士に相談してください。

受け取った請求書のどこを見る?確認の順番

受け取った請求書やレシートは、次の順で見ると早く判断できます。第一に登録番号(Tから始まる番号)があるか。第二に税率ごとに区分した合計額と消費税額が書かれているか。第三に宛名が自社名になっているか。この3点が揃っていれば、適格請求書として扱われる形に近いと判断しやすくなります。

小売店や飲食店、タクシーなどで受け取るレシートは、宛名がない簡易な様式でも認められる取扱いがあります。レシートに登録番号が印字されているかどうかを見て、印字されていればそのまま保存し、ない場合は「登録番号のない支払い」として区別しておくと後の処理が楽になります。

登録番号がない請求書を受け取ったときは、支払いを拒む必要はありませんが、消費税の計算上は別扱いになる可能性があります。制度開始から一定期間は、免税事業者などからの仕入について一定割合を控除できる経過措置が設けられていますが、適用条件や期間は所管官庁の資料で最新の内容を確認してください。会計ソフト上では、登録番号の有無で税区分を分けて入力しておくと、期末にまとめて直す手間が減ります。

インボイス制度で保存しておく書類と保存期間の考え方

保存の対象になるのは、受け取った適格請求書、レシート、納品書、契約書、支払明細のような請求書等と、それらを記録した帳簿です。自社が発行した適格請求書の写しも、控えとして保存しておく必要があります。請求書の発行をメールやクラウド請求書で行っている場合は、送信したPDFや発行データがその写しに当たる形になります。

保存期間は、帳簿や請求書等について、原則として一定年数の保存が求められています。一般には法人の帳簿書類と同じく長期の保存が必要になり、欠損金が生じた事業年度などではさらに長く求められる場合があります。年数の具体的な取扱いは国税庁の資料で確認し、実務上は「決算が終わった年度ごとに箱やフォルダを分け、当面は捨てない」という運用にしておくと安全です。

保存方法は、紙で受け取ったものは紙のまま、または要件を満たしたスキャンでの保存。メールやウェブでダウンロードしたものは電子データのまま保存するのが基本的な考え方です。電子で受け取った請求書を印刷して紙だけ残す運用は、電子帳簿保存法の考え方と合わない場合があるため、対応方針を決める前に所管官庁の資料や税理士に確認してください。

月次でまわす保存フロー|いつ・何を・どこに

毎月の流れとしては、まず月初に前月の請求書とレシートを集めます。紙はスキャンまたは会計ソフトの証憑アップロード機能へ、メール添付やダウンロードのPDFはそのままクラウドストレージや会計ソフトへ入れます。この時点で「登録番号あり/なし」を分けておくと、入力時に迷いません。

次に仕訳を入力します。摘要に取引先名と取引内容を入れ、税区分を選び、証憑を仕訳に紐づけます。紐づけができるソフトを使っていれば、後から「この支払いの請求書はどれか」を探す時間がほぼなくなります。ファイル名で管理する場合は、日付・取引先・金額の順にそろえるルールを決めておきます。

最後に、月次の締めのタイミングで、証憑が見つからない支払いを一覧にして取引先へ再発行を依頼します。決算前にまとめてやると相手先の対応待ちで詰まりやすいので、月ごとに片づけるほうが結果的に早く終わります。人手が限られている会社ほど、この「毎月同じ場所に入れる」だけのルールが効いてきます。

迷ったときの判断の順番と、専門家に相談したいケース

判断に迷ったら、次の順に見てください。1つ目、自社は消費税の申告をしているか。していなければインボイスの受領要件で悩む必要は小さくなります。2つ目、原則課税か簡易課税か。簡易課税なら受け取った請求書を積み上げる計算にはなりません。3つ目、原則課税なら、支払い先に登録番号があるかで区分し、経過措置や特例の対象になりそうかを確認します。

この順番で見ても判断がつかないのは、課税事業者になるかどうかの選択、簡易課税や二割特例といった計算方法の選択、外注先が多い事業での取引条件の見直しなどが絡む場面です。これらは納税額や取引先との関係に影響するため、自己判断で決めると後戻りしにくくなります。

消費税の計算方法や届出のタイミング、保存要件への対応は税理士へ、外注先との契約内容や取引条件の変更については弁護士へ相談すると整理が進みます。自社の事業年度や取引の実情を前提に確認してもらうことで、毎月の運用まで含めて決めやすくなります。制度の詳細や最新の取扱いは国税庁の公表資料もあわせてご確認ください。

よくある質問

インボイス制度で仕入税額控除を受ける要件は何ですか?

原則として、適格請求書などの請求書等を保存していること、そして相手方の名称・取引年月日・取引内容・支払対価の額が記載された帳簿を保存していることの両方が必要とされています。一部の取引には帳簿のみの保存で認められる取扱いや少額の特例もありますが、対象は細かく定められているため国税庁の資料で確認し、迷う場合は税理士にご相談ください。

インボイスの保存期間はどのくらいですか?

帳簿や請求書等は、法人の帳簿書類と同様に一定年数の保存が求められ、欠損金が生じた事業年度などではさらに長期の保存が必要になる場合があります。年数の具体的な取扱いは国税庁の公表資料で確認し、実務上は決算年度ごとにフォルダを分けて残しておく運用が安心です。

登録番号のない請求書を受け取ったらどうすればよいですか?

支払い自体に問題があるわけではありませんが、消費税の計算上は区分して扱う必要が出てくることがあります。制度開始から一定期間は免税事業者等からの仕入について一定割合を控除できる経過措置が設けられているので、適用条件を国税庁の資料で確認し、会計ソフト上でも税区分を分けて入力しておくとよいでしょう。

メールで届いた請求書は印刷して紙で保存すればよいですか?

電子で受け取った請求書は電子データのまま保存する方法が基本的な考え方とされており、紙だけを残す運用は電子帳簿保存法の要件と合わない場合があります。保存方法を決める前に所管官庁の資料を確認し、社内の運用については税理士に相談して整えるのが確実です。

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