従業員用の追加カード|発行枚数・貸与・退職時の返却まで整える
社員が増えてくると、立替精算のやり取りが急に重くなります。そこで検討したくなるのが、法人カードの従業員用追加カードです。ただ「とりあえず全員に配る」と、私的利用の疑いや退職時の回収漏れといった別の悩みが生まれます。この記事では、何枚まで発行できるのかという枠の考え方から、誰に持たせるか、貸与規程に何を書くか、退職時にどう回収するかまでを、実務の順番で整理します。
この記事の結論
- 法人カードの従業員用追加カード(社員カード)は、本会員である法人の審査枠の中で複数枚発行する仕組みで、発行可能枚数や追加発行時の費用はカード会社・カードの種類によって異なります。
- 従業員カードは会社が社員に貸与するものなので、配る前に「誰に・何に使わせるか」「限度額」「返却の条件」を決めた貸与規程やルールを用意しておくと、後のトラブルを減らせます。
- 退職や異動が決まったら、最終出社日を目安にカードを回収し、カード会社へ利用停止・退会の手続きを行い、未計上の利用分の精算まで確認する流れで進めます。
法人カードの従業員カード(追加カード)とは何か
法人カードの従業員カードは、契約者である法人(または個人事業主)が本会員となり、実際に使う社員の名義でつくる追加のカードです。カード券面には利用する社員の氏名が入ることが一般的で、利用代金は会社の口座からまとめて引き落とされます。社員が立て替えて後から精算する手間がなくなるのが、いちばん分かりやすい効果です。
個人向けのクレジットカードにある「家族カード」と混同されやすいのですが、性質が違います。家族カードは個人会員が生計を同じくする家族に発行するもの、法人カードの追加カードは法人が業務のために社員へ貸与するもの、という整理です。社長ひとりの会社で配偶者に業務を手伝ってもらっている場合でも、業務での利用なら法人カードの追加カードとして発行するのか、個人カードの家族カードで処理するのかを分けて考えたほうが、経理はすっきりします。
なお、カードの名義人は社員でも、支払義務を負うのは契約者である法人であることが通常です。つまり社員が使いすぎれば会社が払うことになります。この一点を押さえておくと、後で出てくる限度額設定や貸与規程の必要性が腹に落ちます。
何枚まで発行できる?発行枚数の考え方
「法人カードは何枚まで発行できるか」は検索でよく見かける疑問ですが、答えは一律ではありません。発行可能枚数の上限、追加カードの年会費の有無、申し込み時に必要な情報は、カード会社とカードの種類によって差があります。実際の枚数上限や費用は、各社の公式サイトで最新の条件を確認してください。
枚数を考えるときの順番はシンプルです。まず「経費を自分の判断で使う人」を洗い出し、次に「その人が月に何回カード決済の場面に立つか」を見ます。月に数回あるなら発行候補、年に数回なら立替精算や経費精算アプリで足りることが多い、という切り分けです。全員配布は管理コストが増えるので、最初は営業・仕入・広告出稿など支払い頻度の高い部署から始めて、運用が回ってから広げるほうが失敗が少なくなります。
もうひとつ意識したいのが、利用枠の共有です。追加カードは本会員の枠を分け合う形になることが多く、枚数を増やすほど1枚あたりに回せる枠が窮屈になる場合があります。大きな仕入れや広告費が特定の月に集中する会社は、枠の使い方も含めてカード会社に確認しておくと安心です。決済手段を分散したい場合は、別ブランドの法人カードを二枚持ちして用途を分ける、という選択肢もあります。
誰に持たせるか:配る前に決める3つの基準
迷ったら、この順に見ていきます。第一に「その人の判断で支払いが発生するか」。上長の承認を都度取る運用なら、カードを渡すより請求書払いや立替精算のほうが管理しやすいことがあります。第二に「支払いの場所」。出張や現地払い、オンライン広告のようにその場で決済が必要なら、カードを持たせる効果が大きくなります。
第三に「金額の幅」。日常的な少額決済が中心なら限度額を低めに設定した従業員カードが向きますし、高額な仕入れが中心なら管理部門が持つカードに集約して、現場には渡さないという判断もあり得ます。役職で一律に決めるより、支払いの実態で決めるほうが運用が続きます。
なお、ETCカードや電子マネー機能など、従業員カードに付帯できるサービスの範囲もカードによって異なります。社用車が多い会社はETCの発行枚数も併せて確認しておくと、後から追加申込をする手間が省けます。
貸与規程に書いておきたいこと
従業員カードは会社の資産を社員に預けるものなので、渡す前にルールを文書にしておきます。規程という名前でなくても、A4一枚の「法人カード利用ルール」で構いません。少なくとも、使ってよい費目(交通費・接待交際費・消耗品など)、使ってはいけない用途(私的利用、現金化につながる利用など)、1回あたり・1か月あたりの利用の目安、利用後の領収書提出の期限、紛失・盗難時の連絡先と連絡期限、退職・異動時の返却義務、この6点は入れておきたいところです。
あわせて、社員から「借用書」や「誓約書」の形で受領のサインをもらっておくと、貸与物であることが双方に明確になります。私的利用があった場合の取り扱い(会社への返金など)も、あらかじめ書いて説明しておくほうが、実際に起きたときの対応がぶれません。就業規則との整合や、給与からの控除の可否などは労務の論点を含むため、社会保険労務士に確認してから運用を始めると安心です。
運用面では、月次で「カード明細と領収書の突合」を誰がやるかを決めます。ここが決まっていないと、明細だけが積み上がり、何に使ったか分からない行が残ります。領収書の提出期限を締め日に合わせておくと、経理の作業が月末に集中せずに済みます。
退職・異動が決まったときの回収手順
退職が決まったら、最終出社日の前に段取りを組みます。順番は、①本人に返却日を伝える、②最終出社日にカード現物を回収し、その場でサインをもらう、③カード会社へ利用停止・追加カードの退会手続きを行う、④未計上の利用分(数日遅れて上がってくる明細)を翌月まで追いかけて精算する、という流れです。現物を回収しただけでは、オンライン決済に番号が登録されたままということがあるので、③まで進めるのがポイントです。
見落としがちなのが、サブスクリプションや広告アカウントに登録された決済情報です。退職者のカードで支払い設定をしていた場合、停止と同時に決済が失敗してサービスが止まることがあります。回収前に「そのカードが支払い元になっている契約」を一覧にして、別のカードへ付け替えてから停止すると、業務が止まりません。
異動や休職の場合も考え方は同じです。使わない期間が長いなら、いったん退会して必要になったら再発行するほうが、管理する枚数が減って安全です。紛失・盗難のときは、まずカード会社の紛失窓口へ連絡し、社内の責任者にも報告する、という連絡経路を事前に周知しておきます。
よくあるつまずきと、その防ぎ方
ひとつめは、私的利用が混ざるケースです。少額でも混ざると経理の負担が跳ね上がり、税務上の取り扱いも論点になることがあります。用途が限られる社員には限度額を低めに設定する、利用できる費目を絞る、といった予防策を先に置くほうが現実的です。私的利用分の処理については、給与とみなされる扱いになることもあるため、税理士に確認してください。
ふたつめは、領収書が出てこないケースです。カード明細は支払いの事実を示しますが、何を買ったかまでは分かりません。電子帳簿保存法に関わる保存方法や、インボイス制度での仕入税額控除の要件は、取引の内容や規模によって取り扱いが変わることがあります。制度の詳細は国税庁など所管官庁の資料を確認し、自社の運用に落とすときは税理士に相談するのが確実です。
みっつめは、発行枚数を増やしすぎて誰が何枚持っているか分からなくなるケースです。社員名・カード番号の下4桁・発行日・限度額・返却日を並べた台帳を、スプレッドシートで構いませんので用意しておきます。入退社のたびにこの台帳を更新する、と決めておけば、回収漏れはかなり防げます。
今日からの進め方(チェックリスト)
まず、支払い頻度の高い業務を書き出し、カードを持たせる候補者を決めます。次に、現在契約しているカードの追加カード発行の条件(枚数・費用・申込方法・必要な本人情報)を、カード会社の公式サイトや会員ページで確認します。ここで条件が合わなければ、別のカードを検討する判断材料にもなります。
続いて、A4一枚の利用ルールと受領書のひな形をつくり、社内で説明してから発行申込を出します。発行後は、台帳への登録と、月次の明細突合の担当を決めます。ここまでやっておくと、人が増えても同じ手順で回せます。
カードの選び方は「どこにお金を使う会社か」で変わります。従業員カードを多く出したいのか、限度額の大きさを優先したいのか、ETCや経費精算ソフトとの連携を重視したいのか。優先順位を1つ決めてから比較すると、迷いにくくなります。費用や付帯サービスの最新条件は、各社の公式サイトでご確認ください。
貸与規程の内容や給与との関係、経費処理や保存方法の具体的な判断は、会社の事情によって結論が変わります。制度設計の段階で、労務は社会保険労務士に、経費・税務の取り扱いは税理士に、一度相談しておくことをおすすめします。
よくある質問
法人カードの従業員カードは何枚まで発行できますか。
発行可能な枚数はカード会社やカードの種類によって異なり、一律の上限はありません。追加発行の条件や費用も各社で違うため、契約中のカードの公式サイトや会員ページで最新の条件を確認してください。
従業員が退職したら、カードはどうすればよいですか。
最終出社日を目安にカード現物を回収し、カード会社へ利用停止・退会の手続きを行うのが基本の流れです。回収前に、そのカードを支払い元に登録しているサブスクや広告アカウントを別カードへ付け替えておくと、業務が止まらずに済みます。
法人カードに家族カードはつくれますか。
家族カードは個人会員が家族向けに発行するもので、法人契約のカードで同じ仕組みが用意されているとは限りません。家族に業務を手伝ってもらっている場合でも、業務利用なら従業員として追加カードを検討するか、対応可否をカード会社に確認するのが確実です。
社員がカードを私的に使ってしまった場合はどうなりますか。
会社への返金を求めるのが一般的ですが、処理の仕方によっては給与として扱われることがあります。給与からの控除の可否は労務上の論点を含むため、税理士・社会保険労務士に確認したうえで、貸与規程に取り扱いを明記しておくと対応がぶれません。