一人社長が使える補助金・助成金|ものづくり補助金など申請前の確認
「社長ひとりだけの会社でも補助金はもらえますか」というのは、設立直後にとても多い質問です。結論から言えば、一人法人であることだけを理由に門前払いになる制度は多くありません。ただし、制度ごとに「従業員がいること」「雇用保険に加入していること」を前提にしているものがあり、ここで一人社長はつまずきます。この記事では、申請ボタンを押す前に確認すべき順番を、具体的に整理します。
この記事の結論
- 一人社長の法人でも、要件を満たせば補助金の申請そのものは可能で、ものづくり補助金のように従業員数の下限を設けていない制度もあります。
- 一方で助成金の多くは雇用保険の適用事業所であることを前提にしているため、従業員を雇っていない一人社長は対象外となることがあります。
- 申請前は「①法人格と事業実態 ②従業員要件 ③対象経費 ④公募期間と交付決定前の発注禁止」の順に確認すると、無駄な準備を避けられます。
一人社長でも補助金は申請できる?まず「補助金」と「助成金」を分ける
補助金と助成金は、日常会話ではまとめて語られますが、所管と考え方が違います。おおまかに言うと、補助金は経済産業省・中小企業庁や自治体の系統で、設備投資や販路開拓など「やりたい取り組み」に対して公募し、審査を経て採択者を決める仕組みです。予算と採択枠があるため、要件を満たしても採択されないことがあります。
一方、助成金は厚生労働省の系統が中心で、雇用や人材育成に関する取り組みを行い、要件を満たせば支給される設計のものが多くあります。財源に雇用保険が関わる制度が多いため、雇用保険の適用事業所であること、つまり従業員を雇用していることが前提になりやすいのが特徴です。
この違いがそのまま一人社長の分かれ道になります。社長ひとりで従業員がいない会社は、原則として雇用保険の適用事業所になりません。そのため、まず狙うべきは補助金の系統、と考えると整理しやすくなります。助成金は「人を雇う予定ができたときに改めて調べる」という位置づけで構いません。
ものづくり補助金は一人社長でも対象になる?確認する4つのポイント
ものづくり補助金は、中小企業・小規模事業者等が革新的な製品・サービスの開発や生産プロセスの改善のために行う設備投資などを支援する制度として知られています。一人法人だから対象外、という切り分けはされていないのが一般的で、法人格があり、中小企業者等の定義に当てはまる事業者であれば、申請を検討できます。
ただし「申請できる」と「採択される」は別です。ものづくり補助金では、事業計画のなかで賃上げや給与支給総額の引き上げに関する目標を求められることがあります。従業員がいない一人社長の場合、この目標をどう設定し、どう達成を示すのかが実務上の論点になります。公募回ごとに考え方が変わりうるため、必ずその回の公募要領の該当箇所を読み込んでください。
確認する順番は、①自社が中小企業者等の定義に当てはまるか ②従業員数や賃上げに関する要件が一人法人でも満たせる書き方になっているか ③買いたい設備が対象経費に入るか ④スケジュール上、交付決定後に発注できるか、の4つです。このうち一つでも外れると、準備した時間が無駄になります。
なお、ものづくり補助金は事務局や公募回によって名称・枠組み・要件が見直されます。この記事の内容を前提にせず、申請時点の公式サイトの公募要領と、中小企業庁・事務局の最新案内を確認してください。
一人社長が検討しやすい補助金のタイプと、選ぶ順番
選ぶときは、金額の大きさからではなく「自分が今からやろうとしていることに一番近い制度はどれか」から入ります。設備を買って製造や提供の仕組みを変えたいなら、ものづくり補助金の系統。チラシ・ウェブサイト・展示会など販路開拓にお金を使いたいなら、小規模事業者向けの販路開拓支援の系統。業務のIT化やソフトウェア導入なら、IT導入支援の系統、という順に当たりをつけます。
次に見るのが自治体の制度です。都道府県や市区町村にも、創業支援、店舗改装、展示会出展、ホームページ制作などを対象にした独自の補助制度があります。国の制度より規模は小さくても、競合が少なく、地元事業者向けに設計されているぶん一人法人でも通りやすいことがあります。所在地の自治体サイトと、地域の商工会議所・商工会の案内を確認してみてください。
迷ったら、「今期中に実際に支出する予定があるか」で絞ります。補助金は原則として後払いで、先に自社が支払い、報告してから入金されます。支出予定がまだふわっとしている段階で複数の制度を並行して調べるより、支出が決まっている一つに集中したほうが、結果的に早く進みます。
申請前に必ず押さえる実務:交付決定前の発注、後払い、事業計画
一人社長が最もつまずきやすいのが発注のタイミングです。多くの補助金では、交付決定の前に発注・契約・支払いをしたものは補助対象外として扱われます。「採択されそうだから先に機械を買った」というのが典型的な失敗です。急ぎで設備が必要な場合は、補助金を待つのか、自己資金で先に買って補助金は諦めるのか、先に決めておきます。
次に資金繰りです。補助金は原則、事業が終わってから実績報告を出し、確定検査を経て入金されます。つまり、いったんは全額を自社で立て替える前提になります。一人法人は手元資金が薄いことが多いので、立て替えができるのか、金融機関との相談が必要かを、申請前に確認しておいてください。
事業計画は、審査でも実績報告でも使い続ける中心の書類です。何を課題と考え、何を導入し、その結果どんな指標がどう変わるのかを、自分の言葉で筋道立てて書きます。一人社長は「社長が全部やっている」状態なので、導入後に自分の時間がどこに移るのかまで書けると、説得力が出ます。書類の様式や必要な添付書類は制度ごとに異なるため、公募要領のチェックリストに沿って揃えてください。
申請から入金までの流れを、時系列で確認する
おおまかな流れは、公募開始の情報収集 → 事業計画の作成と必要書類の準備 → 電子申請 → 採択発表 → 交付申請・交付決定 → 事業実施(発注・支払い)→ 実績報告 → 確定・入金 → 事業化状況の報告、という順です。国の補助金は電子申請が基本で、事前にGビズIDなどの事業者向けアカウントが必要になる制度があります。取得に日数がかかることがあるので、公募を見つけたらまずここから動きます。
準備物として一般的に求められやすいのは、法人の登記事項証明書、直近の決算書や確定申告書の写し、見積書、事業計画書などです。設立直後で決算がまだない場合の扱いは制度ごとに定められているので、公募要領の「創業間もない事業者」に関する記載を確認してください。
締切直前はサーバーが混み合い、書類の不備に気づいても直す時間がないという事態が起きます。締切の数日前に一度提出できる状態を作る、というスケジュールで逆算するのが現実的です。採択後も、交付決定・実績報告・その後の状況報告と提出物が続くことを見込んでおきましょう。
人を雇う予定が出てきたら:助成金と社会保険・労働保険の手続き
一人社長の会社がはじめて従業員を雇うと、雇用保険や労災保険といった労働保険の手続きが発生し、その延長で厚生労働省系の助成金を検討できる場面が出てきます。人材育成や雇用環境の整備に関する制度は、要件を満たして計画どおり実施すれば支給される設計のものが多く、補助金とは準備の仕方が変わります。
ただし、助成金は「先に計画を届け出てから実施する」順番が決まっているものが多く、採用してから調べ始めると間に合わないことがあります。採用を検討し始めた時点で、労働保険・社会保険の手続きとあわせて、使えそうな制度がないかを確認しておくとスムーズです。
労働条件通知書や就業規則など、助成金の審査で整合性を見られる書類は、そもそも労務管理として整えておくべきものでもあります。制度の詳細な要件や、自社の状況で対象になるかどうかは、厚生労働省・都道府県労働局の資料を確認したうえで、社会保険労務士にご相談ください。補助金の事業計画や、補助金を受け取ったときの会計・税務上の扱いについては、税理士に確認しておくと安心です。
よくある質問
従業員がいない一人社長でも、ものづくり補助金は申請できますか。
一人法人であることだけを理由に対象外とする定めは、一般に置かれていません。ただし賃上げや給与支給総額に関する要件をどう満たすかが実務上の論点になるため、申請する公募回の公募要領で該当箇所を確認してください。判断に迷う場合は、認定経営革新等支援機関や税理士に相談すると整理しやすくなります。
補助金はいつお金がもらえますか。先に設備を買っても大丈夫ですか。
多くの補助金は後払いで、事業を終えて実績報告を提出し、内容が確定してから入金されます。また交付決定より前に発注・契約・支払いをしたものは対象外として扱われることが一般的なので、購入のタイミングには注意が必要です。立て替えが必要になる前提で、資金繰りを先に確認しておきましょう。
設立したばかりで決算がまだありません。申請できますか。
創業間もない事業者の取り扱いは制度ごとに定められており、直近の決算書の代わりに別の書類で対応できる場合があります。まずは公募要領の提出書類一覧と、創業者向けの記載を確認してください。創業支援に特化した自治体の補助制度が使えることもあるので、所在地の自治体や商工会議所にも当たってみるとよいでしょう。
補助金を受け取ったとき、税金の扱いはどうなりますか。
補助金は原則として収益として計上し、法人税の課税対象として扱われることがあります。取得した資産の処理や計上する時期によって考え方が変わるため、自己判断は避けてください。交付決定を受けた段階で、顧問税理士に処理の方針を確認しておくことをおすすめします。