法人が合同会社の社員になる場合|職務執行者の選任と子会社設立

・会社設立・登記・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

合同会社の社員(出資者)には、個人だけでなく法人もなることができます。親会社が出資して合同会社の子会社をつくる、事業ごとに別法人を立てる、といった場面で使われる形です。ただし法人が業務執行社員になるときは「職務執行者」という、その法人に代わって実際に動く人を決めて登記する必要があります。この記事では、法人社員の合同会社をつくるときの判断の順番と、設立当日までに何を用意してどこへ出すかを整理します。

この記事の結論

  • 法人も合同会社の社員になれますが、法人が業務執行社員となる場合は、その職務を行う職務執行者を選任し、氏名・住所を登記する必要があります。
  • 職務執行者は親会社の役員や従業員から選ぶのが一般的で、就任承諾書と、親会社が選任したことを示す書面(取締役会議事録など)を設立登記の添付書類として準備します。
  • 親会社が出資持分のすべてを持つ合同会社は子会社として扱われ、会計や税務の取り扱いが親会社側にも影響するため、設立前に税理士へ確認しておくと安全です。

法人が合同会社の社員になれる? まず押さえる3つの前提

合同会社の社員とは、出資してその会社の持分を持つ人のことで、株式会社でいう株主に近い立場です。この社員には法人もなることができます。株式会社の取締役には法人が就任できない一方、合同会社では法人が社員となり、さらに業務執行社員・代表社員になることも想定されています。ここが、法人が主体となって新会社を動かしたい場合に合同会社が選ばれる理由のひとつです。

ただし法人には手も口もありませんから、実際に業務を執行する自然人が必要です。そこで法人が業務執行社員になるときは、その職務を行う者として「職務執行者」を選び、相手方に通知し、登記します。職務執行者は法人社員の代表者である必要はなく、親会社の役員や従業員から選ぶことができます。

もう一つの前提として、合同会社は社員が1名でも設立できます。親会社1社だけが出資する一人社員の合同会社も可能で、子会社設立の形としてはこれが最もシンプルです。まずは「社員は誰か」「そのうち業務を執行するのは誰か」「法人社員の職務執行者は誰か」の3点を紙に書き出すところから始めてください。

職務執行者とは何をする人か|選び方と登記の扱い

職務執行者は、法人社員が業務執行社員として行うべき職務を、その法人に代わって実際に担当する人です。契約書に記名押印する、取引先と交渉する、日々の判断を下すといった実務を担います。登記簿には、法人社員(たとえば親会社)の商号・本店に加えて、職務執行者の氏名と住所が記録されるのが一般的です。

誰を選ぶかは、次の順に考えると決めやすくなります。第一に、その事業の意思決定に日常的に関われる人かどうか。第二に、親会社の社内で決裁ラインがつながっている人かどうか。第三に、本人の氏名と住所が登記簿に載ることを了承しているかどうかです。登記事項である以上、住所の記載を避けたいという本人の希望があるなら、事前に話し合っておく必要があります。

職務執行者は複数名を選ぶこともできます。ただし人数が増えるほど誰が何を決めるかが曖昧になりやすいので、小さな子会社であれば1名から始め、事業が大きくなった段階で見直すほうが運用は楽です。なお職務執行者が交代したときは変更の登記が必要になりますので、人事異動の多い会社では、異動の影響を受けにくいポジションの人を選んでおくと手間が減ります。

親会社が出資して合同会社の子会社をつくる手順

手順は大きく、①親会社側の意思決定、②定款の作成、③出資の履行、④設立登記、の順に進みます。まず親会社で、子会社を設立すること、出資する金額、そして職務執行者として誰を選任するかを決議します。取締役会のある会社なら取締役会議事録、ない会社なら取締役の決定書といった形で、書面に残しておきます。この書面は登記の添付書類として使う場面があるため、日付と記載内容は定款の内容と食い違わないようにしてください。

次に定款を作成します。合同会社の定款には、商号、本店所在地、事業目的、社員の氏名または名称と住所、社員が有限責任である旨、出資の目的と価額などを記載します。社員が法人の場合は、個人名ではなく商号と本店を記載します。合同会社の定款は公証人の認証が不要とされているため、株式会社に比べて準備が一段少なくて済みます。

定款ができたら、出資金を払い込みます。法人社員からの出資は、親会社の口座から、設立予定の会社の代表社員(または職務執行者)名義の口座へ振り込み、通帳の該当部分の写しなどで払込みを証明するのが一般的な流れです。最後に、本店所在地を管轄する法務局へ設立登記を申請します。この申請日が会社の成立日になりますので、取引開始日や決算期との関係で日付を調整したい場合は、逆算してスケジュールを組んでください。

必要書類と、どこに何を出すか

設立登記に向けて一般的に用意するのは、定款、代表社員・職務執行者の就任承諾書、払込みを証する書面、本店所在地の決定書(定款で番地まで定めていない場合)、そして法人社員に関する書類です。法人社員については、その法人の登記事項証明書(会社法人等番号の記載で代えられる場合もあります)と、職務執行者を選任したことを示す書面が求められるのが通常です。

印鑑関係も忘れがちです。新会社の代表印を作り、法務局に届け出る場合は印鑑届書を用意します。職務執行者が個人として押印する場面があるため、個人の印鑑証明書が必要になることもあります。添付書類の細かな要否は管轄法務局の運用や事案によって異なることがあるので、申請前に法務局の相談窓口、または司法書士に確認しておくと手戻りが減ります。

登記が完了したら、税務署・都道府県・市区町村への法人設立届出、必要に応じて青色申告の承認申請、給与を払うなら源泉所得税関係の届出へと進みます。役員や従業員に給与を支払うなら社会保険の手続きも出てきます。登記はゴールではなく、ここからバックオフィスの初期設定が始まると考えてください。登録免許税や専門家への報酬は条件によって変わるため、費用の最新情報は法務局や各事務所の公式サイトでご確認ください。

子会社・連結・複数設立を考えるときの判断の順番

親会社が持分のすべてを保有する合同会社は、一般に子会社として扱われ、親会社側の決算で連結の対象になるかどうかという論点が出てきます。連結の範囲や会計処理は、親会社の規模や適用している会計基準によって異なります。「合同会社だから連結しない」ということはありませんので、親会社の経理担当や税理士に、設立前の段階で相談しておくのが安全です。

事業ごとに合同会社を複数つくるという選択も可能です。同じ法人が複数の合同会社の社員になることに制限はなく、それぞれで職務執行者を選びます。判断の順番としては、まず「会計と責任を分ける必要が本当にあるか」、次に「分けた場合に増える事務(決算・申告・社会保険・登記の維持)を回せるか」、最後に「取引先や金融機関への説明が複雑になりすぎないか」を見てください。分ける理由が節税目的だけという場合は、意図した扱いにならないこともあるため、税理士への確認をおすすめします。

株式会社にするか合同会社にするかで迷ったときは、外部からの出資を将来受け入れる予定があるなら株式会社、親会社が実質的に単独で運営し意思決定を速くしたいなら合同会社、という順で考えると整理しやすくなります。合同会社から株式会社への組織変更も制度としては用意されていますが、手続きと費用が別途かかりますので、最初の設計で決め切れないときは司法書士に相談してから決めても遅くありません。

設立後に忘れやすい実務と、専門家に相談するタイミング

設立後、最初につまずきやすいのが口座開設と契約名義です。法人社員・職務執行者という構造は金融機関や取引先にとって見慣れない場合があり、登記事項証明書に加えて組織図や親会社の資料を求められることがあります。設立登記が終わったら早めに登記事項証明書と印鑑証明書を取得し、説明用の資料も併せて準備しておくとスムーズです。

契約書の記名方法も確認しておきましょう。法人が代表社員である場合、「代表社員 ◯◯株式会社 職務執行者 △△」のように連ねて表記するのが一般的です。請求書や契約書の雛形を作る段階で、この表記を社内で統一しておくと、後から直す手間がなくなります。インボイスや電子帳簿保存法への対応も新会社ごとに必要になりますので、要件の詳細は国税庁などの所管官庁の資料を確認してください。

登記の添付書類や職務執行者の選任手続きは司法書士、連結や子会社の税務処理は税理士、従業員を雇うときの社会保険や就業規則は社会保険労務士が相談先になります。特に法人社員の合同会社は、通常の設立より書類の組み立てが一段複雑になりますので、迷った段階で専門家に相談し、設立日と決算期を決めてから動くことをおすすめします。

よくある質問

職務執行者と代表社員の違いは何ですか?

代表社員は合同会社を代表する社員そのもので、法人がこれになることもできます。職務執行者は、法人社員がその職務を行うために選任する自然人で、実際の業務や記名押印を担当します。法人が代表社員になる場合、その法人の職務執行者を選んで登記するという二段構えになります。

職務執行者は親会社の代表取締役でなければいけませんか?

代表取締役である必要はなく、親会社の取締役や従業員から選ぶこともできるとされています。実務上は、その事業の意思決定に日常的に関われる人を選ぶケースが多いです。氏名と住所が登記簿に記録されるため、本人の了承を得てから決めてください。

法人が社員の合同会社を複数つくることはできますか?

同じ法人が複数の合同会社の社員になることは可能で、それぞれについて職務執行者を選びます。ただし会社が増えるほど決算・申告・登記の維持といった事務が増えますので、分ける必要性と、増える事務を回せるかを合わせて検討してください。税務上の扱いは状況により異なるため、税理士にご確認ください。

設立にかかる費用はどのくらいですか?

登録免許税や証明書の取得費用、専門家に依頼する場合の報酬など、条件によって変わります。金額は改定されることもあるため、法務局や依頼先の事務所の公式サイトで最新の情報をご確認ください。

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この記事は一般的な情報をまとめたものです。税務・法務・労務の個別の判断については、税理士・弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。 料金や条件は変わることがあるため、お申し込み前に必ず各サービスの公式サイトで最新の内容をご確認ください。