資本金は誰が出すのか|親から借りる・借入で用意するときの注意点
会社をつくると決めたあと、意外と手が止まるのが「資本金のお金を誰が出すのか」という問題です。自分の貯金だけで足りるのか、親に援助してもらってよいのか、借りたお金を資本金にしてよいのか。ここは単なるお金の出どころの話ではなく、会社の持ち主が誰になるかを決める話でもあります。あとから直すのが面倒な部分なので、設立前に順番に整理しておきましょう。
この記事の結論
- 資本金を出した人が株主(発起人)となり、その出資額の割合に応じて会社の議決権を持つため、誰が出すかは会社の支配権を誰が持つかを決めることになります。
- 親族からお金を受け取って資本金にする場合は、贈与として扱われるのか、返済義務のある借入として扱われるのかで税務上の取り扱いが変わるため、事前に税理士に確認しておくと安心です。
- 資本金は設立前の発起人個人の口座に振り込んで通帳の記録を残す流れが一般的で、誰のお金がいつ入ったかを説明できる状態にしておくことが大切です。
資本金は誰が出すのか|出した人が株主になる
資本金は、会社に対して「これだけのお金を出します」と約束して払い込むお金です。株式会社であれば、払い込んだ人が株式を受け取って株主になります。設立時に出資して手続きを進める人を発起人と呼び、ひとりで会社をつくる場合は自分ひとりが発起人であり株主であり代表取締役、という形が多くなります。
ここで押さえておきたいのは、資本金は「会社の借金」ではなく「会社に渡し切ったお金」だという点です。出資した人は会社に対して返済を求められるわけではなく、代わりに株主としての権利(議決権や配当を受け取る権利など)を持ちます。つまり、誰が出すかを決めることは、会社の意思決定を誰が握るかを決めることとほぼ同じ意味になります。
「お金を出してもらったから、その人を株主にする」と安易に決めてしまうと、あとで方向性が食い違ったときに身動きが取りにくくなります。出してもらう金額の大小より先に、その人に会社の意思決定へ関わってほしいかどうかを考えてください。
自己資金・親族からの援助・借入、どの順で考えるか
まず確認するのは、自分の手元資金だけで設立と当面の運転資金をまかなえるかどうかです。まかなえるなら、資本金は自己資金で用意し、出資者は自分ひとりにしておくのがいちばん単純です。持ち株の話も贈与の話も発生せず、あとから整理する手間がありません。
自己資金だけでは足りない場合、次に考えるのが親族からの援助です。このとき分かれ道になるのが、そのお金を「もらう」のか「借りる」のかです。もらう場合は贈与として扱われることがあり、借りる場合は返済の約束をした個人間の貸し借りになります。どちらとして扱うのかを曖昧なままにしておくと、あとから説明が難しくなります。
三つ目が金融機関などからの借入です。ここは考え方が少し違い、会社をつくる前の段階では、借りるのは個人としてになります。創業時の融資制度は会社設立後や設立と並行して申し込む形が一般的で、自己資金の状況を見られることもあります。借入を前提に設立日を先に決めてしまうと予定が崩れやすいので、資金の目処が立ってから日程を組むほうが無難です。
親から資本金を借りる・もらうときに注意すること
親から受け取ったお金をそのまま資本金にすること自体は、実務上よく行われています。ただし、税務上の扱いは「もらった」のか「借りた」のかで変わります。贈与として扱われる場合には贈与税の対象となることがあり、借入として扱う場合は返済の実態があるかどうかが見られます。ここは個別の事情で結論が変わるため、税理士にご確認ください。
借入として整理するなら、借用書(金銭消費貸借契約書)を作り、いつまでにいくらずつ返すのかを書いておきます。そして、その内容どおりに実際に返済し、振込の記録を残します。書面はあるのに返済がまったく行われていない、という状態だと、実質的には贈与ではないかと見られることがあります。
逆に、援助として受け取る場合も、金額と日付、誰から誰へのお金かを記録しておきます。「親の口座から自分の口座に入金があった」という事実だけが残っていると、あとから性質を説明しづらくなります。どちらの形をとるにせよ、記録を残しておくことが自分を守ります。
親や配偶者を出資者(株主)にするかどうかの判断
お金を出してもらう方法には、①借りて自分が出資する、②もらって自分が出資する、③相手自身に出資してもらい株主になってもらう、の三つがあります。①と②は株主が自分だけになり、③は株主が複数になります。
ひとりで意思決定したい、将来の方向転換を身軽にしたい、という場合は①か②を選び、株主は自分だけにしておくほうが動きやすくなります。株主が複数になると、重要な決議で一定以上の賛成が必要になる場面が出てきますし、将来その人から株を買い戻すことになれば、そのときの会社の価値をもとに話し合うことになります。親族であっても、相続が発生すると株式が別の人に移ることもあります。
一方、その人に経営のパートナーとして本当に関わってほしいなら、③を選ぶ意味はあります。その場合は、誰がどれだけ持つのか、意見が割れたときにどう決めるのか、辞めるときに株をどう扱うのかを、設立前に書面で話し合っておいてください。株主間の取り決めは、関係が良いうちに決めておくほど後が楽になります。
資本金の払い込みと、記録の残し方
資本金の払い込みは、会社の口座がまだない段階で行うため、発起人個人の口座に振り込む形をとるのが一般的です。定款を作成したあと、発起人の口座に出資額を入金し、その通帳の表紙・裏表紙(口座情報のページ)・入金が記載されたページをコピーして、払込証明書とあわせて登記の添付書類にします。ネットバンクの場合は、口座名義や取引明細が分かる画面を印刷する方法がとられます。
このとき大事なのは、「誰がいくら入れたのか」が明細から読み取れるようにしておくことです。発起人が複数いるなら、それぞれの名義で振り込むと分かりやすくなります。すでに口座にある残高を使う場合でも、いったん引き出して入金し直すなどして、入金の記録として残す方法がとられます。
また、親から受け取ったお金をそのまま払い込むときは、親からの入金→自分の出資、という流れが通帳上でつながるようにしておくと説明しやすくなります。手続きの細かい様式は法務局の案内で確認できますので、登記に不安があれば司法書士に相談してください。
資本金の額は「出せる額」より「必要な額」から決める
資本金の額をいくらにするかは、出資できる上限から逆算するのではなく、設立後しばらくの支出をまかなえる額から考えると失敗が減ります。オフィスや備品、外注費、社会保険料、税理士などへの支払い。売上が入金されるまでの期間も含めて、何か月分の支出を手元に置いておきたいかを書き出してみてください。
資本金の額は登記事項で、誰でも確認できます。取引先や金融機関が会社の規模感を見る材料のひとつになることもあります。また、資本金の額によって消費税や法人住民税の取り扱いが変わる区切りがあり、許認可が必要な業種では一定の財産的基礎を求められることもあります。自分の業種に区切りがあるかどうかは、設立前に確認しておいてください。具体的な判断は税理士にご確認ください。
足りなくなったら増資すればよい、という考え方もありますが、増資には登記が必要で、登録免許税などの費用がかかります。費用の詳細は法務局の案内をご確認ください。何度もやり直すより、最初にある程度見通しを立てておくほうが手間が少なく済みます。
迷ったら誰に相談するか
資本金の出どころは、税務・会社法・登記のどれにも関わる話です。贈与と借入のどちらとして扱うか、資本金の額をどう決めるかは税理士に、株主構成や株式の取り決めは弁護士に、登記の書類や手続きの進め方は司法書士に相談すると、話が早く進みます。
特に、親族からまとまった金額を受け取って資本金にする場合は、設立前の段階で税理士に一度相談しておくことをおすすめします。あとから記録を作り直すことはできませんが、これから残す記録の形は今から整えられます。設立は一度きりの手続きなので、迷った部分は専門家に確認しながら進めてください。
よくある質問
資本金は親から借りたお金で用意してもよいですか。
実務上よく行われていますが、借入として扱うなら借用書を作り、実際に返済して記録を残すことが前提になります。返済の実態がないと贈与として扱われることがあるため、事前に税理士にご確認ください。
資本金を出した人は、必ず株主にしなければいけませんか。
資本金として払い込んだ人が株主になります。ただし、親族からお金を借りて自分が出資する形にすれば、株主は自分だけにできます。相手に経営へ関わってほしいかどうかで選び分けてください。
資本金は会社の口座に入れるのですか。
設立前は会社の口座がないため、発起人個人の口座に払い込み、その通帳のコピーを登記の添付書類にするのが一般的です。会社の口座は設立後に登記事項証明書などを用意して開設します。
資本金はいくらにすればよいですか。
設立後しばらくの支出をまかなえる額から逆算して決めると無理が出にくくなります。資本金の額によって税務上の取り扱いが変わる区切りや、業種によって求められる財産的基礎があるため、税理士や所管官庁の資料で確認してください。