建設業で電子契約を使うには|建設業法の要件と工事請負契約書の対応

・契約・電子署名・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

「工事請負契約書を電子契約にしたいけれど、建設業法があるから紙じゃないとだめなのでは」——建設業の現場でよく聞く不安です。結論から言えば、建設工事の請負契約も一定の条件を満たせば電子的な方法で締結できる、というのが建設業法の基本的な考え方です。ただし、一般的な電子契約サービスをそのまま使えばよい、という話でもありません。この記事では、法令が求めている要件、相手方の承諾の取り方、CI-NETやCECTRUST-Lightといった建設業向けの仕組みと汎用サービスの使い分け、注文書・請書での運用まで、判断の順番に沿って整理します。

この記事の結論

  • 建設工事の請負契約は、相手方の承諾を得たうえで、法令が求める技術的な基準(見読性・原本性・本人性の確保)を満たす方法であれば、書面に代えて電子的に締結できるとされています。
  • 汎用の電子契約サービスを使うか、CI-NETやCECTRUST-Lightのような建設業向けの仕組みを使うかは、取引先が何を使っているか、公共工事が中心か、注文書・請書の連続発注が多いか、の順で判断すると決めやすくなります。
  • 電子契約に切り替える前に、契約書ひな形の「書面をもって」といった文言の見直し、相手方への承諾の取り方、保存方法の3点を決めておくと、後からのやり直しを防げます。

建設工事の請負契約は電子契約にできるのか(建設業法の考え方)

建設業法は、請負契約の当事者に対して、契約の内容を書面に記載して署名または記名押印し、相互に交付することを求めています。この「書面」の部分について、政令で定めるところにより、相手方の承諾を得たうえで電子情報処理組織を使用する方法などで行うことができる、という趣旨の規定が置かれています。つまり、建設工事の請負契約だから紙でなければならない、ということではありません。

ただし、誰でも好きな方法で電子化してよいわけではなく、政令・省令で技術的な基準が定められています。国土交通省は、この基準の考え方を示したガイドラインを公表しており、建設業界向けの解説資料も出ています。実際に導入する前に、最新版を国土交通省のサイトで確認しておくことをおすすめします。

注意したいのは、契約書本体だけでなく、注文書・請書のやり取りや、工期変更・追加工事の変更契約も同じ枠組みで考える必要がある点です。本契約は電子で、変更契約は口頭のまま、という運用は、後々のトラブルのもとになります。

電子契約に求められる3つの要件(見読性・原本性・本人性)

建設業法に基づく電子契約では、大きく分けて三つの点が求められると整理されています。一つ目は見読性で、契約内容をいつでも画面や書面で読める状態にしておくこと。二つ目は原本性(非改ざん性)で、契約締結後に内容が書き換えられていないことを確認できる措置がとられていること。三つ目は本人性で、その契約を締結したのが誰なのかを確認できることです。

原本性については、公開鍵暗号方式による電子署名やタイムスタンプ、あるいは改ざん検知ができる仕組みを使うことが一般的です。本人性については、電子証明書を用いる方法のほか、契約当事者間であらかじめIDとパスワードの管理方法を取り決めておく運用も想定されています。どの方式が自社の取引に合うかは、取引金額の大きさや取引先の数によって変わります。

電子契約サービスを比較するときは、料金や使いやすさの前に、この三つの要件にどう対応しているかを各社の公式サイトや資料で確認してください。「建設業法に対応」とうたっていても、具体的にどの機能でどの要件を満たしているのかを説明できるかどうかが、選別の分かれ目になります。

相手方の承諾はどう取るのか|切り替えの実務手順

電子契約を使うには、あらかじめ相手方に対して、使用する方法の種類と内容を示して承諾を得る必要があるとされています。ここは見落とされやすいところで、いきなり署名依頼のメールを送るのではなく、事前の合意を文書やメールなど記録が残る形で取っておくのが安全です。

実務の流れとしては、まず社内で使用する電子契約の方式を決め、次に「電子契約の利用に関する合意書」や基本契約書の条項として、使用するサービス名・方式・連絡先を記載した文面を用意します。そのうえで取引先に案内し、承諾の返信を得てから、最初の案件を電子で締結する、という順番になります。承諾は案件ごとに取り直す必要があるかどうか、社内ルールとして決めておくと運用が安定します。

既存の基本契約書に「書面をもって」「記名押印のうえ」といった文言が残っていると、電子契約と整合しない場合があります。切り替えのタイミングで、契約書ひな形の文言を見直し、電磁的方法による締結を認める条項を入れておきましょう。ひな形の改訂内容に不安があれば、弁護士に確認しておくと安心です。

CI-NET・CECTRUST-Lightと汎用サービスの使い分け

建設業界には、業界標準のEDI(電子データ交換)の仕組みとしてCI-NETがあり、見積から注文・請書・出来高・請求までのデータを標準フォーマットでやり取りできます。元請と下請の間で大量の注文書・請書が繰り返し発生する会社や、すでに取引先がCI-NETを導入している場合は、これに合わせるほうが事務が減ることがあります。一方で、導入にはシステム面の準備や社内の体制づくりが必要になります。

CECTRUST-Lightは、建設業向けに提供されているクラウド型の電子契約サービスで、Webブラウザから契約の締結・保管ができるタイプのものです。専用のシステム構築をせずに始めたい会社や、取引先からこのサービスでの締結を求められた会社が検討することが多い選択肢です。提供条件や利用開始の手続き、費用は提供元の公式サイトで最新情報を確認してください。

汎用の電子契約サービスは、建設工事以外の契約(業務委託、賃貸借、雇用関連書類など)もまとめて扱える点が利点です。判断の順番としては、①主要取引先が指定している仕組みがあるか、②注文書・請書の発行件数が多いか、③工事以外の契約も一本化したいか、の順に見ると決めやすくなります。①に該当するなら取引先に合わせる、②が強いならEDI寄り、③が強いなら汎用サービス、という整理です。複数併用している会社も珍しくありません。

公共工事・注文書請書・保存で気をつけること

公共工事では、発注者である国や自治体が電子契約に対応しているかどうかで扱いが変わります。対応している場合でも、指定されたシステムや電子証明書の種類が決まっていることがあるため、入札参加の案内や発注者の公表資料を先に確認してください。民間工事と同じ方法がそのまま使えるとは限りません。

注文書・請書方式で運用している場合も、建設業法が求める記載事項を満たしているかを確認する必要があります。基本契約書を締結したうえで個別の注文書・請書を電子で交わす形にすると、記載事項の抜けを防ぎやすくなります。追加工事や工期変更が発生したときに、変更内容を同じ仕組みで記録する運用まで決めておきましょう。

保存については、電子で締結した契約書は電子のまま保存することが基本になります。電子帳簿保存法の電子取引に関する考え方も関係してくるため、保存場所・検索方法・保存期間を社内で決めておいてください。要件の詳細は国税庁の資料で確認し、自社の保存方法で足りるか迷う場合は税理士に相談するのが確実です。なお、電子契約では収入印紙の扱いが紙の契約書と異なると説明されることがありますが、個別の判断は税務署や税理士にご確認ください。

導入前にそろえておきたい社内の準備

電子契約は、ツールを契約すれば終わりではありません。誰が締結権限を持つのか、締結前の社内承認をどう回すのか、締結済みの契約をどこに保管して誰が閲覧できるのかを、先に決めておく必要があります。とくに小さな会社では、社長一人に権限が集中しがちなので、不在時の代替手順まで考えておくと安心です。

現場代理人や協力会社とのやり取りが多い場合は、相手側の受け取りやすさも重要です。スマートフォンで確認・署名できるか、相手にアカウント登録を求める方式かどうかで、現場の負担が変わります。導入前に少数の取引先で試し、つまずいた点を洗い出してから全面展開するとスムーズです。

建設業許可の更新や経営事項審査では、契約関係の書類を提示・提出する場面があります。電子で締結した契約を、必要なときにすぐ出力して示せる状態にしておきましょう。許可関係の手続きで不明点があれば行政書士、契約条項や紛争リスクの設計は弁護士、保存や税務の扱いは税理士と、内容に応じて専門家に確認しながら進めることをおすすめします。

よくある質問

建設業法では工事請負契約書を紙で作らなければいけないのですか。

建設業法は契約内容を書面で相互に交付することを原則としつつ、相手方の承諾を得て、政令で定める要件を満たす電磁的方法によることも認めるという考え方をとっています。したがって、要件を満たす仕組みを使えば電子での締結も可能です。具体的な要件は国土交通省の公表資料で最新の内容を確認してください。

下請業者が電子契約に対応していない場合はどうすればよいですか。

電子契約には相手方の承諾が前提となるため、対応できない相手には従来どおり書面で締結する運用が現実的です。紙と電子が混在しても差し支えありませんが、どちらの方式で締結したかを台帳などで管理しておくと、保存や確認のときに混乱しにくくなります。

CI-NETとCECTRUST-Lightはどちらを選べばよいですか。

まず主要取引先が指定している仕組みがあるかを確認し、あればそれに合わせるのが最短です。指定がない場合は、注文書・請書のやり取りが大量で基幹システムと連携したいならEDI型、まず手軽に電子化を始めたいならクラウド型、という基準で検討してください。提供条件や費用は各サービスの公式サイトでご確認ください。

電子契約にすると収入印紙はどうなりますか。

紙の契約書と電子データでは印紙税の取り扱いが異なると説明されることがありますが、契約の形態や交付方法によって判断が分かれる場合があります。自社の運用で問題がないかは、税務署または顧問税理士に確認したうえで進めてください。

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この記事は一般的な情報をまとめたものです。税務・法務・労務の個別の判断については、税理士・弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。 料金や条件は変わることがあるため、お申し込み前に必ず各サービスの公式サイトで最新の内容をご確認ください。