会社設立の事業目的の書き方|例文と決めるときの注意点

・会社設立・登記・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

会社をつくるときに、意外と手が止まるのが定款の「事業目的」です。何をどこまで書けばいいのか、いくつ並べればいいのか、後から変えられるのか。この記事では、事業目的の書き方の型と業種別の例文、決めるときに見落としやすい注意点を、手順に沿って整理します。

この記事の結論

  • 事業目的は「今やる事業」を先頭に、将来やる可能性のある事業を数個足し、最後に『前各号に附帯関連する一切の事業』を置くのが基本の形です。
  • 事業目的は登記事項なので、後から追加・変更するには株主総会の決議と変更登記が必要になり、登録免許税や手間がかかります。
  • 許認可が必要な業種は、所管の窓口が求める文言があることが多いため、定款を確定する前に窓口や専門家に文言を確認しておくと安心です。

会社設立の「事業目的」とは何か、なぜ重要なのか

事業目的とは、その会社がどんな事業を行うのかを定款に記載したものです。会社は原則として、定款に書かれた目的の範囲内で活動するものとされています。登記されて誰でも見られる情報になるため、取引先や金融機関が「この会社は何をしている会社か」を判断する材料にもなります。

重要なのは、事業目的が単なる自己紹介ではなく、その後の実務に影響する点です。許認可の申請では定款の目的欄に該当する記載があるかを見られますし、法人口座の開設や融資の審査でも、事業内容と目的の整合性が確認されることがあります。

一方で、書いた目的をすべてやらなければいけないわけではありません。将来やる可能性のある事業を含めておくのは一般的な作り方です。ただし、まったく関係のない事業を大量に並べると、何の会社か分かりにくくなるという別の問題が生じます。

事業目的の書き方の基本形|3つのブロックで組み立てる

迷ったら、次の順で組み立てると整理しやすくなります。第一に、設立直後から実際に売上が立つ「本業」。第二に、その本業に近く、数年以内に手を広げる可能性がある「準本業」。第三に、締めくくりとして置く「前各号に附帯関連する一切の事業」という一文です。

本業は先頭に書きます。登記簿を上から読んだ人が、最初の1〜2行でこの会社の仕事が分かる状態が理想です。準本業は、本業と関連があるものを選びます。たとえばWeb制作が本業なら、広告運用の代行やシステムの受託開発は自然につながります。

最後の「前各号に附帯関連する一切の事業」は、本業に付随する細かい業務まで一つひとつ書かなくて済むようにするための定型文です。ただし、この一文があれば何でもできるという意味ではなく、許認可が必要な事業や本業と離れた事業は、個別に書いておく必要があると考えてください。

文言は「〜の企画、開発、販売」「〜に関するコンサルティング業務」のように、動詞をそろえた名詞句で書くのが一般的です。「〜をやります」といった話し言葉や、社内でしか通じない造語、英語のみの表記は避けたほうが無難です。

業種別の事業目的の例文

IT・Web系であれば、「ソフトウェアの企画、開発、販売及び保守」「インターネットを利用した各種情報提供サービス」「ウェブサイトの企画、制作及び運用」「システムの受託開発及びコンサルティング」といった書き方がよく使われます。

コンサルティング・士業支援系では、「経営コンサルティング業務」「人材育成及び社員研修の企画、運営」「マーケティングに関する調査、分析及び助言」などが挙げられます。抽象度が高い分、何の分野かが伝わる語を一つ加えると読み手に親切です。

物販・EC系では、「衣料品、雑貨及び日用品の企画、製造及び販売」「インターネットによる商品の通信販売」「輸入雑貨の輸入及び販売」といった形です。取り扱う品目によっては別途許認可が関わることがあるため、次のセクションも合わせて確認してください。

そのほか、不動産系なら「不動産の売買、賃貸、管理及びその仲介」、人材系なら「有料職業紹介事業」「労働者派遣事業」、飲食系なら「飲食店の経営」、教育系なら「学習塾の経営」「セミナー及び講演会の企画、運営」などが典型です。いずれも実際に使う際は、自社の事業内容に合わせて語を調整してください。

許認可が必要な事業は文言を先に確認する

建設業、人材紹介・派遣、古物商、旅行業、介護事業、飲食業、産業廃棄物処理など、行政の許可や届出が必要な事業では、定款の目的欄に所定の事業が記載されていることが条件になっている場合があります。記載がないと、許認可の申請前に定款変更と変更登記をやり直すことになりかねません。

対策はシンプルで、定款を確定する前に、所管する窓口(都道府県庁、労働局、警察署、保健所など)や、その分野に詳しい行政書士・司法書士に「この文言で問題ないか」を確認しておくことです。窓口によっては望ましい表記の例を示してくれることがあります。

要件の詳細は業種や自治体によって異なり、更新もあります。ここで挙げた業種はあくまで例ですので、該当しそうな場合は所管官庁の最新の資料を必ず参照する、という進め方をおすすめします。

なお、許認可が必要な事業を目的に書いただけでは、その事業を行えるようにはなりません。目的への記載は入口であって、許認可の取得は別の手続きです。

いくつ書くか、後から変えられるか

数に法律上の上限はありませんが、実務としては本業を中心に数個から十数個程度に収める例が多く見られます。並べすぎると、登記簿を見た相手に事業の軸が伝わりにくくなり、金融機関の口座開設時に事業内容の説明を求められる場面が増えることもあります。

判断の順番としては、①今すぐ売上が立つ事業を書く、②1〜3年以内に着手する見込みがある事業を足す、③許認可が絡むものは文言を確認して入れる、④それ以外の「いつかやるかも」は入れない、という流れが整理しやすいです。④を入れないのは、後から追加できるからです。

事業目的は登記事項なので、変更するには株主総会の特別決議を経て、変更登記を法務局に申請します。登録免許税や、司法書士に依頼する場合の報酬がかかります。金額は法務局や事務所により異なるため、最新の情報を法務局の案内や依頼先で確認してください。

つまり「後から変えられるが、無料でも一瞬でもない」というのが実情です。設立時に少し先まで見据えて書いておく価値はありますが、可能性の薄い事業まで並べる必要はありません。

定款作成までの進め方と、つまずきやすいポイント

進め方としては、まず自分の事業を箇条書きで洗い出します。次に、似た業種の会社の登記簿や、法務局・公証役場が示す一般的な記載例を参考に文言へ落とし込みます。その後、許認可の有無を確認し、必要なら窓口に文言を照会します。ここまで固めてから、定款の原案を作成し、株式会社であれば公証役場で認証を受け、法務局へ登記申請という順になります。

つまずきやすいのは、公序良俗に反する内容や、内容が不明確で何をするのか読み取れない表現です。造語や社内用語だけで構成された目的は、修正を求められることがあります。迷ったら、一般的な語に置き換えてから、補足として具体的な分野名を添えると読みやすくなります。

もう一つ多いのが、設立を急ぐあまり許認可の確認を後回しにするケースです。目的の文言は、設立スケジュールの中で早めに片付けておきたい項目だと考えてください。

事業目的の書き方は、登記の面では司法書士、許認可の面では行政書士、設立後の税務の面では税理士と、関わる専門家が分かれます。自社の事業が許認可に関わりそうな場合や、複数の事業を並行して始める予定がある場合は、定款を確定する前に司法書士や行政書士へ相談し、あわせて設立後の税務については税理士にご確認ください。

よくある質問

事業目的は後から追加できますか

追加できます。ただし株主総会の特別決議を経て、法務局へ変更登記を申請する必要があり、登録免許税や依頼費用がかかります。設立時に、数年以内に着手しそうな事業まで入れておくと手間を減らせます。

「前各号に附帯関連する一切の事業」は入れたほうがよいですか

多くの定款で最後に置かれている定型文で、本業に付随する細かい業務をいちいち書かなくて済むようにする役割があります。ただし、この一文があればどんな事業でもできるという意味ではなく、許認可が必要な事業や本業と離れた事業は個別の記載を検討してください。

事業目的が多すぎると法人口座の開設に影響しますか

目的が多く事業の軸が読み取りにくいと、金融機関から事業内容の説明を求められることがあります。件数そのものより、何をしている会社かが登記簿から伝わるかどうかが大切です。取扱いは金融機関ごとに異なるため、各社の公式サイトや窓口で確認してください。

許認可が必要かどうか分からないときはどうすればよいですか

事業内容を書き出したうえで、所管しそうな窓口(都道府県庁、労働局、警察署、保健所など)に問い合わせるのが確実な進め方です。判断が難しい場合は、定款を確定する前に行政書士や司法書士に相談することをおすすめします。

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