法人成りで会計ソフトを切り替える|freeeとマネーフォワードの移行手順

・会計・税務・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

法人成りをすると、これまで使っていた個人事業用の会計ソフトをそのまま法人の帳簿に使い続けることは基本的にできません。freeeもマネーフォワードも、個人事業向けと法人向けは別のサービス・別の契約として提供されているためです。この記事では、いつ切り替えるか、個人時代のデータをどう扱うか、法人側で最初に何を入力するかを、実際の作業順に沿って整理します。

この記事の結論

  • freeeもマネーフォワードも個人事業向けと法人向けは別契約のため、法人成りでは「移行」ではなく法人用に新しく契約し直すのが基本です。
  • 個人事業の会計データは仕訳をそのまま持ち込めないので、法人側では設立日時点の資産・負債を期首残高として登録するところから始めます。
  • 個人事業の帳簿は廃業後も保存義務が残り、法人設立の年は個人の確定申告も必要になるため、個人用の環境はすぐに解約せず残しておく判断が安全です。

freeeやマネーフォワードは、個人用から法人用にデータ移行できる?

結論から言うと、個人事業で使っていた会計データを、法人の帳簿にそのまま引き継ぐ形での移行は想定されていません。freee会計もマネーフォワード クラウド会計も、個人事業主向けと法人向けでは勘定科目の体系も決算書の様式も異なり、そもそも別の事業主体の帳簿だからです。個人事業と法人は、税務上も法律上も別の人格として扱われます。

そのため実際の作業は「移行」というより「法人として新規に帳簿を立ち上げ、個人時代の残高を引き継ぐ」という形になります。同じメーカーを使い続けるメリットは、操作画面に慣れている、口座連携の設定方法が分かっている、といった学習コストの部分にあります。データが自動で引き継がれるわけではない、という点は最初に理解しておくと計画が立てやすくなります。

一方で、同じアカウント(ログインID)のまま法人用の事業所を追加できるかどうか、個人用の契約をどう扱うかは各社の仕様や契約形態によって変わります。プランや料金、契約の切り替え方法は変更されることがあるため、申し込み前に各社の公式サイトで最新の内容を確認してください。

切り替えのタイミングは「設立日」で区切るのが基本

帳簿を分ける基準日は、会社の設立日(登記申請日)です。設立日の前日までの取引は個人事業の帳簿に、設立日以降の取引は法人の帳簿に記録するのが基本的な考え方になります。個人事業の廃業日を設立日の前日に合わせておくと、区切りが分かりやすく、後から見返したときにも整理しやすくなります。

ただし実務では、設立直後は法人名義の銀行口座やクレジットカードがまだ用意できていないことがよくあります。この期間に代表者が立て替えた支出は、法人の経費として役員借入金(社長からの借入)などで処理する方法が一般的です。領収書に「立替」とメモを残し、日付と金額を一覧にしておくと、後の入力がぐっと楽になります。

逆に、設立日より前の支出でも、会社設立のために使った費用は創立費・開業費として法人側で扱えることがあります。どこまでを法人の費用として計上できるかは個別の事情で判断が分かれるため、迷う支出は分けて一覧にしておき、税理士に確認するのが無難です。

法人側でまずやること:期首残高の登録と口座連携の再設定

法人用の会計ソフトを契約したら、最初にやるのは事業所情報の登録(会社名、事業年度、消費税の経理方式など)です。事業年度は定款で決めた期間をそのまま設定します。設立1期目は設立日から決算日までの変則的な期間になるので、開始日を設立日にする点に注意してください。

次に、設立日時点の資産・負債を期首残高として入力します。金銭出資だけで設立した場合は、資本金と預金(または現金)だけのシンプルな状態からスタートします。個人事業の在庫・車両・工具などを法人に引き継いだ場合は、売買契約や現物出資といった形で引き継ぎ方が決まり、その内容に応じて資産と未払金(または資本金)を計上することになります。引き継ぎの方法によって税金の扱いが変わることがあるため、事前に税理士に相談しておくと安心です。

そのうえで、法人名義の銀行口座・クレジットカード・決済サービスを新しい事業所に連携し直します。個人名義の口座を法人の会計ソフトに連携させると、プライベートな取引まで取り込まれて仕訳が煩雑になりがちです。法人の入出金は法人口座に集約し、個人名義の口座は連携しない、という線引きを最初に決めておくと、後の月次処理が安定します。

個人事業側でやること:最後の確定申告と帳簿の保存

法人成りをしても、個人事業として活動した期間の確定申告は残ります。たとえば年の途中で法人成りした場合、その年の1月1日から廃業日までの所得について、翌年の申告期限までに個人の確定申告を行う流れになります。つまり、法人用のソフトを使い始めた後も、個人用のデータにアクセスできる状態を最低でも申告が終わるまでは維持しておく必要があります。

個人用の契約をどう扱うかは、申告が終わってから判断するのがおすすめです。解約するとデータの閲覧ができなくなる場合があるため、解約前に総勘定元帳・仕訳帳・決算書・固定資産台帳などをPDFやCSVで書き出して保存しておきましょう。帳簿や書類には法令上の保存期間があり、廃業したからといって処分してよいわけではない点に注意してください。

あわせて、税務署や都道府県・市区町村への廃業の届出、青色申告の取りやめに関する届出、消費税に関する届出など、個人側の手続きも発生します。提出先と期限は届出の種類ごとに異なるので、国税庁や自治体の公式サイトで最新の様式と期限を確認し、不安があれば税理士に整理してもらうとよいでしょう。

freeeとマネーフォワード、法人成りのときどちらを選ぶ?

すでに個人事業でどちらかを使っているなら、まずは同じメーカーの法人版を第一候補にするのが素直な選び方です。画面構成や取引登録の考え方に慣れている分、立ち上げの時間を短くできます。データそのものは引き継げませんが、「どこを見れば何が分かるか」が分かっている効果は小さくありません。

乗り換えを検討したほうがよいのは、次のような場合です。第一に、給与計算・勤怠・労務手続きまで同じシリーズでそろえたい場合。従業員を雇う予定があるなら、会計と人事労務のつながりやすさは選定の軸になります。第二に、依頼する予定の税理士が特定のソフトを主に使っている場合。顧問先とデータを共有する前提なら、相手の使い慣れたソフトに合わせたほうが、月次のやりとりがスムーズになります。

第三に、請求書発行・経費精算・電子帳簿保存への対応方針を見直したい場合です。電子取引データの保存やインボイス制度への対応は、ソフト側の機能に頼る部分が大きくなります。ただし機能の範囲や対応状況は更新されていくため、比較は各社の公式サイトの最新情報で行い、要件の詳細は国税庁など所管官庁の資料で確認してください。料金体系も改定されることがあるので、必ず申し込み前にご自身で確認しましょう。

法人成り後にやることチェックリスト(会計まわり)

会計ソフトの切り替えと前後して発生する作業を、順番に並べると次のようになります。①法人口座の開設と法人カードの申し込み、②法人用会計ソフトの契約と事業所設定、③期首残高の登録、④口座・カードの連携、⑤請求書の発行元を法人名義に変更、⑥取引先への法人化の通知と振込先変更の連絡、⑦売上・経費の入金出金をすべて法人口座に集約。この順で進めると、途中で「個人口座に売上が入ってしまった」という混乱を減らせます。

インボイス(適格請求書発行事業者)の登録番号は、個人事業で取得したものを法人にそのまま引き継ぐことはできません。法人として発行する必要があるなら、法人で改めて登録申請を行う流れになります。登録までに時間がかかることもあるため、取引先への案内と合わせて早めに動いておくとよいでしょう。制度の詳細や申請手続きは国税庁の案内を確認してください。

最後に、役員報酬の金額と支給開始のタイミングは、設立初期に決めておきたい重要な論点です。決め方や変更の可否には一定のルールがあり、後から直すのが難しい部分でもあります。設立から早い段階で税理士に相談し、会計ソフトの給与設定まで含めて整えておくと、その後の処理が安定します。判断に迷う場面が出てきたら、自己判断で進める前に税理士・社会保険労務士など専門家に確認することをおすすめします。

よくある質問

freeeの個人事業主向けプランから法人向けに、データを引き継いで切り替えられますか?

個人事業と法人は別の帳簿になるため、仕訳データをそのまま引き継ぐ形の切り替えは想定されていません。法人用として新たに事業所を作成し、設立日時点の資産・負債を期首残高として登録する流れになります。契約の扱いや申し込み方法は変わることがあるので、公式サイトで最新の手順を確認してください。

個人事業用の会計ソフトは、法人成りしたらすぐ解約していいですか?

廃業した年の個人の確定申告が残っているため、少なくともその申告が終わるまでは残しておくほうが安全です。解約するとデータを閲覧できなくなる場合があるので、事前に仕訳帳・総勘定元帳・決算書などを書き出して保存しておきましょう。帳簿には法令上の保存期間があります。

個人事業で使っていたパソコンや車を法人に引き継ぐには、どう記帳しますか?

売買・現物出資・賃貸など、引き継ぎ方によって記帳の仕方も税務上の扱いも変わります。売買なら法人側で資産と未払金を計上し、個人側では譲渡として扱われることがあります。金額の決め方で判断が分かれやすい部分なので、税理士に確認したうえで処理するのが安心です。

法人成り後、最初に会計ソフトへ入力すべきものは何ですか?

設立日時点の期首残高(資本金と預金など)が出発点になります。そのうえで、法人口座ができるまでに代表者が立て替えた支出を役員借入金などで整理して入力していくと、初期の取引が漏れにくくなります。創立費・開業費の範囲は個別判断になるため、一覧にして税理士に相談しましょう。

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この記事は一般的な情報をまとめたものです。税務・法務・労務の個別の判断については、税理士・弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。 料金や条件は変わることがあるため、お申し込み前に必ず各サービスの公式サイトで最新の内容をご確認ください。