法人にかかる税金の種類と税率|赤字でもかかる均等割の考え方
「法人にすると税金が安くなる」と聞いて会社をつくったものの、いざ決算が近づくと、何をいくら納めるのかが分からない——そんな相談はとても多いです。法人の税金は1種類ではなく、利益に応じて増える税金と、利益がゼロでもかかる税金が組み合わさっています。この記事では、法人にかかる税金の全体像、赤字でも発生する均等割の考え方、納付のタイミング、そして税負担を試算するときに見るべき順番を整理します。
この記事の結論
- 法人にかかる主な税金は、法人税・地方法人税・法人住民税・法人事業税(および特別法人事業税)・消費税の5系統で、このうち法人住民税の均等割は赤字でも納付が必要とされています。
- 均等割は原則として資本金等の額と従業員数の区分によって決まり、事業所のある都道府県・市区町村ごとにかかるため、拠点を増やすと負担も増える仕組みです。
- 法人の申告・納付は原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内で、赤字の年でも申告書の提出は必要とされています(詳細は国税庁・各自治体の資料をご確認ください)。
法人化すると何の税金がかかる?まず5つに分けて覚える
法人にかかる税金は、ひとまとめに「法人税」と呼ばれがちですが、実際には国に納めるものと地方に納めるものが混ざっています。大きく分けると、①法人税(国税)、②地方法人税(国税)、③法人住民税(都道府県・市区町村)、④法人事業税と特別法人事業税(都道府県)、⑤消費税(条件に当てはまる場合)の5系統です。このほか、不動産を持てば固定資産税、車があれば自動車税、契約書には印紙税といった税目も関わってきます。
①〜④は、決算が終わってから「利益(税務上の所得)」をもとに計算し、まとめて申告・納付します。会計ソフトの画面では「法人税等」とひとかたまりで表示されることが多いので、内訳を意識していない社長も少なくありません。ただ、赤字のときにどれが残るのかを理解するには、この内訳を知っておく必要があります。
⑤の消費税は、売上にかかる消費税から仕入れにかかる消費税を差し引いて納める税金で、利益が出ているかどうかとは別の計算です。赤字でも消費税の納税義務が生じる場合があるため、法人税等とは切り離して考えてください。インボイス制度に登録している場合は、設立初年度から納税義務者になることもあります。
法人化の税率はどう決まる?「所得に比例する部分」と「固定の部分」
法人税は、税務上の所得に対して税率をかけて計算します。資本金の額や所得の区分によって適用される税率が分かれる仕組みがあり、中小法人には所得の一定額までを軽減する制度も設けられています。税率は改正されることがあるため、具体的な数値は国税庁の公式サイトで最新のものを確認してください。
地方法人税は法人税額を基礎に計算し、法人住民税の法人税割も法人税額を基礎に計算します。つまり、法人税がゼロなら、この2つも基本的にはゼロになります。一方、法人事業税と特別法人事業税は所得等を基礎に計算されるため、所得が出れば発生します。
ここで押さえておきたいのが、法人の税負担には「所得に比例して増える部分」と「所得と関係なく固定でかかる部分」があるという点です。前者が法人税・地方法人税・法人住民税の法人税割・法人事業税、後者が法人住民税の均等割です。実務では、この2階建て構造をイメージできると、赤字の年の見通しが立てやすくなります。
赤字でもかかる均等割とは?金額の決まり方と考え方
法人住民税の均等割は、その地域に事業所を構えていること自体に対してかかる税金と説明されます。利益が出ていなくても、休眠していない限り納付が必要とされるのが一般的です。「法人化 赤字」で検索する方が最初に知るべきなのは、この均等割の存在です。
均等割の額は、原則として資本金等の額の区分と、従業者数の区分の組み合わせで決まります。さらに、都道府県分と市区町村分がそれぞれあり、事業所を置いている自治体ごとに課されます。本店のほかに支店や営業所を出すと、その自治体でも均等割がかかる点は見落とされがちです。具体的な金額は自治体によって異なるため、本店所在地の都道府県税事務所と市区町村のサイトで確認してください。
判断の順番としては、まず「資本金をいくらにするか」を決める段階で均等割の区分を確認し、次に「どの自治体に本店を置くか」「支店を出すか」を検討するのが実務的です。資本金は信用や許認可の要件にも関わるので、均等割だけで決めるものではありませんが、区分の境目を知らずに設定してしまうより、知ったうえで決めるほうが納得感があります。判断に迷う場合は税理士にご確認ください。
なお、事業をまったく行っていない休眠状態の場合、自治体に届け出ることで均等割の扱いが変わることがあります。取扱いは自治体ごとに異なるため、事業を止める予定があるなら、早めに所管の税事務所へ相談してください。
いつ・何を・どこに出す?法人の申告と納付のスケジュール
法人の確定申告は、原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内に行います。3月決算なら5月末、9月決算なら11月末が目安です。提出先は、法人税・地方法人税が所轄の税務署、法人住民税と法人事業税が都道府県税事務所と市区町村(東京23区は都税事務所に一本化される取扱いがあります)、消費税が所轄の税務署です。
用意するものは、決算書(貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書)、勘定科目内訳明細書、法人事業概況説明書、そして申告書一式です。これらは日々の記帳が終わっていないと作れないので、実務上は決算日から1か月以内に帳簿を締める段取りが現実的です。電子帳簿保存法に沿った保存方法を採る場合は、要件の詳細を国税庁の資料で確認してください。
赤字の年でも、申告書の提出は必要とされています。提出しないと、欠損金を翌期以降に繰り越す取扱いを受けられなくなることがあり、将来利益が出たときに不利になる可能性があります。「赤字だから何もしなくていい」は誤解だと考えてください。
前期の税額が一定額を超えると、期の途中で中間申告・中間納付が必要になる場合があります。設立1期目は原則として関係しませんが、2期目以降は資金繰りに影響するので、前期の納税額が大きかった年は、翌期の途中に納付があるものとしてお金を残しておくと安心です。
法人化の税金シミュレーションは、どの順番で見ればいい?
個人事業と法人のどちらが有利かを試算するとき、法人税率と所得税率だけを比べても答えは出ません。見る順番としては、まず①役員報酬をいくらに設定するか、②その報酬に対する所得税・住民税と社会保険料、③会社に残る利益に対する法人税等、④赤字でもかかる均等割、の順に積み上げるのが分かりやすいです。
特に見落とされやすいのが社会保険料です。法人は原則として社会保険の適用事業所となり、役員報酬を出せば会社負担分と本人負担分の両方が発生します。税金だけで比較すると法人が有利に見えても、社会保険料を含めると印象が変わることがあります。逆に、将来の年金や傷病時の保障という観点では、加入にメリットを感じる方もいます。
また、法人化には税金以外の固定費もあります。決算申告を税理士に依頼する費用、法人口座や各種サービスの利用料、役員任期満了時の登記費用などです。金額はそれぞれの事務所やサービスによって異なるため、各社の公式サイトや見積もりで最新の料金を確認してください。
シミュレーションの結論は、売上の水準、利益の安定度、家族への給与の有無、将来の借入や採用の予定によって変わります。ネット上の簡易試算はあくまで目安として使い、実際の判断は自社の数字を入れて税理士に検証してもらうことをおすすめします。
納税で資金が足りなくならないための、実務的な備え方
法人の税金でつまずきやすいのは、税額そのものより「納付月に現金がない」というパターンです。決算から2か月以内に法人税等を納め、消費税の納税義務がある場合はそれも重なります。利益が出た年ほど納税額は大きくなるので、黒字なのに資金が苦しいという状況が起こり得ます。
対策としては、毎月の締めのタイミングで、利益に一定の率をかけた金額を別口座に移しておく方法が実務的です。率は業種や利益率によって変わるので、決算予測をもとに税理士と決めるのが無難です。消費税の納税義務がある会社は、預かった消費税を運転資金と混ぜないよう、口座を分けておくと見通しが立ちやすくなります。
もうひとつは、決算日を「資金に余裕のある月」から逆算して決めることです。設立時に決算月を選べるので、繁忙期の直後に納付が来ないように設計しておくと、毎年の資金繰りが楽になります。すでに設立済みでも、手続きを踏めば事業年度を変更できる場合があります。
迷ったら専門家へ:どの場面で誰に相談するか
税額の試算、役員報酬の設定、消費税の届出の要否、欠損金の取扱いといったテーマは、税理士の領域です。特に設立初年度は、届出書の提出期限が短いものもあるため、設立直後のタイミングで一度相談しておくと、後からやり直せない選択を避けやすくなります。
社会保険の加入手続きや、役員報酬と給与の扱い、従業員を雇うときの労働保険については社会保険労務士、資本金の設定や決算月の変更などの登記が絡む手続きについては司法書士が相談先になります。それぞれ扱える範囲が違うので、「お金の計算は税理士、人に関する手続きは社労士、登記は司法書士」と覚えておくと迷いません。
この記事は一般的な考え方の整理であり、個別の税額や有利不利を判断するものではありません。具体的な税率や均等割の額、制度の詳細は国税庁や各自治体の公式資料を確認したうえで、最終的な判断は顧問税理士にご相談ください。
よくある質問
法人が赤字なら税金はゼロになりますか?
所得に応じて計算される法人税や法人事業税は、赤字の年には発生しない扱いになることが一般的ですが、法人住民税の均等割は赤字でも納付が必要とされています。また、消費税は利益ではなく取引にもとづいて計算されるため、赤字でも納税義務が生じる場合があります。詳しくは税理士にご確認ください。
均等割はいくらくらいかかりますか?
均等割の額は、資本金等の額の区分と従業者数の区分、そして事業所のある自治体によって決まります。都道府県分と市区町村分がそれぞれあり、金額は自治体ごとに異なるため、本店所在地の都道府県税事務所と市区町村の公式サイトで最新の額を確認してください。
赤字でも法人税の申告書は出す必要がありますか?
赤字の事業年度でも、法人は原則として確定申告書を提出することとされています。提出しないと、その年の欠損金を翌期以降に繰り越す取扱いを受けられなくなる可能性があります。期限は原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内です。
個人事業と法人、どちらが税負担は軽いですか?
売上や利益の水準、役員報酬の設定、社会保険料の負担、家族への給与の有無などによって変わるため、一律には言えません。税率だけでなく、赤字でもかかる均等割や社会保険料を含めて試算する必要があります。自社の数字をもとに税理士へ相談することをおすすめします。