法人が受け取る配当金の処理|受取方法と税金の扱いの基本

・法人口座・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

会社の余剰資金で上場株式を持ったり、取引先や子会社の株式を保有していると、法人口座に配当金が入ってきます。個人の場合は証券会社が税金まで処理してくれることが多いのですが、法人の場合は「入金額をそのまま売上のように計上して終わり」にはできません。この記事では、法人が配当金を受け取るときの口座と受取方法、入金額と源泉徴収された税額の関係、決算で出てくる代表的な論点を、順番に整理します。

この記事の結論

  • 法人が上場株式の配当金を受け取るには、まず法人名義の証券口座を開設し、受取方法として株式数比例配分方式などを選ぶ流れが基本です。
  • 配当金は源泉所得税が差し引かれた後の金額が入金されるため、仕訳では入金額と源泉税額を合わせた総額を受取配当金として計上する考え方が一般的です。
  • 法人が受け取る配当金には受取配当等の益金不算入という制度があり、株式の保有区分に応じて課税所得から除かれる部分があるため、決算では税理士に確認することをおすすめします。

法人口座で配当金を受け取るには、まず何が必要か

法人が上場株式の配当金を受け取る流れは、大きく分けて二段階です。一つ目は、法人名義で証券口座を開設し、そこで株式を買うこと。二つ目は、配当金をどの経路で受け取るか(受取方法)を決めることです。この二つが決まれば、あとは権利確定日に株式を保有していれば、指定した経路で配当金が届きます。

法人名義の証券口座は、個人の口座とは開設手続きが別です。一般に、登記事項証明書(履歴事項全部証明書)や法人の印鑑証明書、代表者の本人確認書類、実質的支配者に関する申告などを求められます。必要書類や提出方法は証券会社ごとに異なるため、口座開設ページで最新の案内を確認してください。

なお、個人でおなじみの「特定口座」や少額投資の非課税制度は、個人向けの仕組みです。法人が使える枠組みではないため、法人口座では売買損益も配当も、原則として法人税の計算のなかで処理していくことになります。

配当金の受取方法は3つ|法人はどれを選ぶか

上場株式の配当金の受取方法には、一般に「株式数比例配分方式」「登録配当金受領口座方式(登録口座方式)」「配当金領収証方式」といった選択肢があります。株式数比例配分方式は、保有株数に応じて各証券口座へ直接入金される方式で、複数の証券会社に口座がある場合はそれぞれの残高に応じて振り込まれます。登録配当金受領口座方式は、あらかじめ登録した一つの銀行口座にまとめて振り込まれる方式です。配当金領収証方式は、送られてきた領収証を金融機関の窓口に持ち込んで受け取る方式です。

法人の場合、判断の順番はシンプルです。まず、証券口座で株式を売買していて、配当も売買の記録と一緒に把握したいなら株式数比例配分方式が扱いやすいです。次に、複数の証券会社や複数銘柄を持っていて、入金を法人のメイン銀行口座に一本化したいなら登録配当金受領口座方式が向きます。領収証方式は窓口に行く手間と期限管理が発生するため、担当者が少ない会社では負担になりやすい点に注意してください。

受取方法の変更は、証券会社や株主名簿管理人への届け出が必要です。反映までに時間がかかることもあるので、権利確定日の直前に慌てて切り替えるのではなく、口座開設時や年度の落ち着いた時期に設定しておくと安心です。手続き方法は取引先の証券会社の案内を確認してください。

法人口座の配当金と税金|源泉徴収と益金不算入の関係

配当金は、支払われる時点で所得税等が源泉徴収され、差引後の金額が入金されます。法人が受け取る場合も同じで、入金額は「税引後」の金額です。ここで大事なのは、法人ではこの源泉税を「取られて終わり」にはせず、法人税の計算のなかで精算する扱いがあるという点です。源泉徴収された所得税額は、一定の要件のもとで法人税額から控除したり、控除しきれない分の還付を受けたりする取り扱いが定められています(所得税額控除)。

もう一つの重要な論点が「受取配当等の益金不算入」です。法人が他の法人から受け取る配当は、配当を支払う側の会社で法人税が課された後の利益から支払われるため、受け取る側でもそのまま課税すると二重課税になります。そこで、株式の保有割合や保有期間などの区分に応じて、受取配当の一定部分を益金に算入しない制度が設けられています。区分ごとの割合や、負債利子の控除の有無といった細部は改正されることもあるため、適用の可否と計算は税理士に確認してください。

この二つの制度は、いずれも申告書の別表で計算するものです。つまり、帳簿上は配当金を収益として計上したうえで、申告の段階で調整するという流れになります。「入金額が少ないから税金は払い終わっている」と考えて何も処理しないと、受けられるはずの控除や不算入が反映されないことがあります。

仕訳はどう切る?入金額ではなく総額で考える

配当金の仕訳でつまずきやすいのは、通帳に載るのが税引後の入金額だという点です。帳簿に入金額だけを書いてしまうと、源泉徴収された税額が帳簿から消えてしまい、所得税額控除の計算に必要な情報が残りません。そのため一般的には、配当の総額を「受取配当金」として収益に計上し、差し引かれた税額を「仮払法人税等」や「法人税、住民税及び事業税」などの科目で処理する方法がとられます。会社の会計方針や使っている会計ソフトによって科目名は変わるので、顧問税理士と揃えておきましょう。

総額を把握する根拠になるのが、証券会社から届く「配当金計算書」や「支払通知書」です。ここに、配当の総額、差し引かれた所得税・住民税相当額、差引支払額が記載されています。入金の都度この書類を保存し、決算のときに年間分をまとめられるようにしておくと、申告書の作成がぐっと楽になります。

書類が電子データで交付される場合は、電子帳簿保存法の考え方に沿った保存方法を検討する必要があります。電子取引のデータは、印刷して紙で持っておくだけでは足りない場合があると整理されています。保存要件の詳細は国税庁の資料を確認し、自社のルールを決めておいてください。

子会社株式・取引先株式・余剰資金の運用で扱いが変わる場面

同じ「配当金」でも、なぜその株を持っているかによって論点が変わります。子会社やグループ会社の株式からの配当は、保有割合が高いため益金不算入の扱いが手厚くなる区分に入ることがあり、グループ内の資金移動の設計と一緒に考えることになります。取引先との関係で持っている持株(いわゆる政策保有株式)は、保有割合が小さくなりやすく、区分も変わります。

余剰資金の運用として上場株式や投資信託を持つ場合は、配当・分配金の性質によって取り扱いが分かれることがあります。投資信託の分配金には、運用益から支払われる部分と元本の払い戻しに相当する部分が含まれる商品もあり、単純に配当と同じ処理ができないケースもあります。商品の目論見書や運用報告書を確認し、判断に迷う部分は税理士に相談してください。

また、外国株式の配当では、現地で源泉徴収されたうえで日本でも課税対象になる場面があり、外国税額控除などの別の論点が出てきます。海外の銘柄を組み入れる前に、処理の手間まで含めて検討しておくと、決算期に慌てずに済みます。

はじめてでも詰まらない、年間の進め方

まず口座開設の時期です。法人設立直後は、登記事項証明書や印鑑証明書を取得する機会が多いので、そのタイミングで証券口座の申込書類も揃えてしまうと効率がよいです。口座開設と同時に、配当金の受取方法をどれにするか決めて届け出ておきます。

次に日々の運用です。配当が入金されたら、通帳の入金額と配当金計算書をセットで保存し、その月の記帳で総額処理まで済ませます。ここを後回しにすると、決算前に計算書を探し回ることになりがちです。証券会社の電子交付サービスを使っているなら、ダウンロードして保存する担当と保存場所を決めておきましょう。

最後に決算です。年間の配当金の総額と源泉徴収額を集計し、益金不算入と所得税額控除の計算を申告書に反映します。ここは制度の適用区分や計算方法の判断が必要になるところなので、自社で完結させようとせず、顧問税理士に配当金計算書一式を渡して確認してもらうのが安全です。顧問がいない場合も、はじめて配当を受け取った期の申告だけでも税理士に相談しておくと、その後の処理の型が決まって楽になります。制度の詳細や最新の取り扱いは、国税庁の資料および税理士への確認をおすすめします。

よくある質問

法人口座で特定口座は使えますか?

特定口座は個人向けの仕組みで、法人名義では利用できないのが一般的です。法人の場合は、売買損益や配当を法人税の計算のなかで処理することになるため、証券会社から届く取引報告書や配当金計算書を保存し、記帳と申告で対応していく流れになります。

配当金の入金額をそのまま売上や雑収入に入れてもよいですか?

入金額は源泉徴収後の金額なので、それだけを計上すると差し引かれた税額が帳簿に残りません。一般的には配当の総額を受取配当金として計上し、源泉税額を別科目で処理します。科目の設定は顧問税理士と揃えておくと決算がスムーズです。

法人が受け取る配当金は、二重に課税されてしまうのでしょうか。

受取配当等の益金不算入という制度があり、株式の保有区分などに応じて課税所得から除かれる部分があります。ただし適用の判定や計算は区分ごとに異なり、改正もあるため、実際の適用については税理士にご確認ください。

配当金の受取方法は後から変更できますか?

証券会社や株主名簿管理人への届け出により変更できるのが一般的です。ただし反映までに一定の期間がかかることがあるため、権利確定日の直前ではなく余裕のあるタイミングで手続きすることをおすすめします。手続きの方法は各社の公式サイトで確認してください。

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