合同会社の維持費|設立後に毎年かかるランニングコストの内訳
合同会社は株式会社に比べて設立費用が抑えられることで知られていますが、気になるのは「つくった後、毎年いくらかかるのか」ではないでしょうか。維持費は大きく分けて、赤字でもかかる固定的なもの、事業規模に応じて増えるもの、外注するかどうかで変わるものの3種類です。この記事では、その内訳と、どこから優先して押さえるべきかを順番に整理します。
この記事の結論
- 合同会社の維持費は、赤字でもかかる法人住民税の均等割と、会計・税務の外注費、社会保険料が中心になります。
- 株式会社と違い、合同会社には役員の任期による重任登記や決算公告の義務がないため、その分の定期的な費用は発生しません。
- 具体的な金額は自治体・報酬体系・役員報酬額によって変わるため、均等割は本店所在地の自治体、税理士報酬は各事務所に確認するのが確実です。
合同会社の維持費は大きく3つに分けて考える
毎年いくらかかるかを知りたいとき、いきなり総額を出そうとすると混乱します。まずは費目を性質で3つに分けてください。①利益が出ていなくてもかかる固定費、②利益や売上に連動して増える税金、③外注するかどうかで変わる費用、の3つです。
①の代表が法人住民税の均等割です。②は法人税や法人事業税、消費税など。③は税理士報酬や社会保険の手続き、登記の変更手数料などにあたります。
この分け方をしておくと、「今年は赤字だからゼロになるはず」という思い込みを避けられます。赤字でも①は残るという前提で、年間の資金繰りを組み立てるのが安全です。
設立にかかる法定費用
どちらの形態でもかかる、国が定めた費用です。設立代行サービスの手数料は、これとは別にかかります。
| 項目 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 登録免許税(設立登記) | 資本金の額の1,000分の7。15万円に満たないときは1件につき15万円 | 資本金の額の1,000分の7。6万円に満たないときは1件につき6万円 |
| 定款の認証手数料 | 資本金100万円未満 3万円/100万円以上300万円未満 4万円/300万円以上 5万円 | 日本公証人連合会の手数料の案内に掲載なし |
| 定款の謄本(同一の情報の提供) | 1枚につき250円 | 日本公証人連合会の手数料の案内に掲載なし |
| 収入印紙(紙の定款の場合) | 4万円 | 日本公証人連合会の手数料の案内に掲載なし |
赤字でもかかる固定費:法人住民税の均等割
合同会社を含む法人には、所得がゼロでも課される「法人住民税の均等割」があります。都道府県民税と市町村民税のそれぞれに均等割の部分があり、資本金等の額と従業員数の区分によって金額が決まる仕組みです。休眠状態に近くても、原則としてこの負担は残ると考えておくとよいでしょう。
金額は自治体ごとに条例で定められており、区分も自治体によって案内の仕方が異なります。本店所在地の都道府県税事務所と市区町村(東京23区内なら都税事務所)の公式サイトで、自社の資本金等の額に対応する区分を確認してください。
なお、赤字で所得がなくても法人税の申告自体は必要です。申告をしないまま放置すると、加算税や延滞税といった負担が生じることがあります。決算月から申告期限までのスケジュールは、設立初年度のうちに把握しておくと安心です。
利益が出たらかかる税金:法人税・法人事業税・消費税
利益が出ると、法人税、地方法人税、法人住民税の法人税割、法人事業税などがかかります。これらは所得に応じて変わるため、事前に「毎年いくら」と固定で見積もることはできません。決算期の3〜4か月前に着地見込みを立てて、納税資金を別口座に取り分けておく運用が現実的です。
消費税については、設立から一定期間は納税義務が免除される場合がありますが、インボイス発行事業者として登録した場合は、免税の要件を満たしていても申告と納付が必要になる扱いがあります。取引先が課税事業者中心かどうかで判断が分かれるところなので、登録の要否は税理士に相談してから決めるのが無難です。
役員報酬を出している場合は、源泉所得税の納付も定期的に発生します。納期の特例を使うかどうかで年の回数が変わりますので、給与支払事務所の届出とあわせて設立初期に決めておきましょう。
ひとり社長でも発生する社会保険料
法人は、社長ひとりだけであっても、役員報酬を支払っていれば社会保険(健康保険・厚生年金)の適用対象になるのが原則です。保険料は会社と本人で折半する形になり、会社負担分は毎月の固定費として重くなりやすい項目です。
保険料は報酬額の等級によって決まるため、役員報酬をいくらに設定するかが、そのまま年間の維持費に直結します。所得税・住民税との兼ね合いもあるので、報酬額は期首に一度腰を据えて検討する価値があります。判断に迷う場合は、税理士と社会保険労務士の双方の視点で見てもらうとよいでしょう。
従業員を雇えば、労働保険(労災保険・雇用保険)の負担と年度更新の手続きも加わります。人を増やす前に、給与そのもの以外にかかるコストを一覧にしておくと、採用判断の精度が上がります。
税理士に頼むか自分でやるか、判断の順番
会計・税務を外注するかどうかは、維持費の中でも変動幅が大きいところです。迷ったら、次の順に見てください。第一に、消費税の申告が必要かどうか。第二に、従業員や役員への給与計算があるか。第三に、金融機関や取引先に決算書を提出する予定があるか。
このうち二つ以上に当てはまるなら、顧問または決算のみでも専門家に関与してもらう方向で検討する価値があります。逆に、取引件数が少なく、消費税の申告もなく、当面は自分だけで完結するという段階なら、会計ソフトで記帳して決算だけスポットで依頼する形から始める選択もあります。
報酬は事務所ごとに考え方が異なり、訪問頻度や記帳代行の有無、決算のみか通年かで変わります。複数の事務所に、自社の取引件数と業種を伝えたうえで見積もりを取り、内容と範囲を比べてください。金額だけでなく「どこまでやってくれるか」を並べて比較するのがコツです。
見落としやすい維持費と、合同会社ならではの負担の軽さ
忘れがちなのが、住所や電話番号に関する費用、会計ソフトやクラウドサービスの利用料、法人口座に関連する各種手数料、印鑑や書類の保管にかかる実費などです。いずれも単体では小さくても、年間で足すと無視できない額になります。年に一度、契約中のサービスを棚卸しする日を決めておくと管理しやすくなります。
一方で、合同会社には株式会社のような役員の任期の定めがないため、数年ごとの重任登記とその登録免許税が定期的に発生しない点は負担が軽い部分です。また、決算公告の義務も株式会社とは扱いが異なります。ただし、本店移転や社員の変更などがあれば、その都度の登記と登録免許税は必要です。
電子帳簿保存法やインボイス制度への対応も、システム利用料や運用の手間という形で維持コストに影響します。要件の詳細は国税庁など所管官庁の資料で最新のものを確認し、自社の取引形態に合う運用を選んでください。
まずやること:年間カレンダーを1枚つくる
維持費を把握する一番の近道は、金額を調べる前に「いつ何が起きるか」を1枚に書き出すことです。決算月、申告期限、均等割の納付時期、社会保険の算定基礎届の時期、労働保険の年度更新、役員報酬を見直すタイミングを、月ごとに並べてみてください。
そのうえで、各項目の金額を自治体や契約先の公式サイト、見積もりで埋めていきます。埋まらない欄があっても構いません。埋まらない箇所こそ、専門家に聞くべきポイントが見える場所です。
税額や社会保険の適用範囲、インボイス登録の要否は、事業の内容や役員報酬の設計によって扱いが変わることがあります。自社にとっての最適解を出す段階では、税理士、労務の設計については社会保険労務士、登記に関わる変更については司法書士に、早めに相談することをおすすめします。
よくある質問
合同会社は赤字でも税金がかかりますか。
所得がゼロでも、法人住民税の均等割は原則として課される仕組みになっています。金額は資本金等の額や従業員数の区分、自治体の条例によって変わるため、本店所在地の都道府県税事務所と市区町村の案内を確認してください。また、赤字でも法人税の申告自体は必要です。
合同会社と株式会社では、毎年かかる費用に差がありますか。
合同会社は役員の任期の定めがないため、数年ごとの重任登記とその登録免許税が定期的には発生しません。決算公告の義務も株式会社とは扱いが異なります。一方で、均等割や社会保険料など、法人として共通してかかる費用に大きな差はないと考えておくとよいでしょう。
社長ひとりの合同会社でも社会保険への加入は必要ですか。
法人で役員報酬を支払っている場合、社長ひとりであっても健康保険・厚生年金の適用対象になるのが原則です。保険料は報酬額の等級で決まるため、役員報酬の設定が年間の維持費に直結します。個別の判断は年金事務所や社会保険労務士にご確認ください。
税理士に頼まず、自分で決算まで行うことはできますか。
取引件数が少なく、消費税の申告もなく、給与計算もない段階であれば、会計ソフトを使って自力で進める方もいます。ただし消費税や給与が絡むと難易度が上がるため、決算のみスポットで依頼する形も含めて検討するとよいでしょう。報酬の範囲と金額は各事務所に見積もりを取って比べてください。