越境ECの決済|海外向けに使える決済サービスと通貨・手数料の見方

・法人カード・決済・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

「海外からも買えるようにしたい」と思ってECを開いてみたものの、カート画面で止まってしまう。その原因の多くは、商品でも送料でもなく決済です。海外の人は、日本でよく使われるカードや決済アプリとは違う手段で支払っています。この記事では、越境ECで使える決済の考え方を、サービス名の比較ではなく「どの順番で何を見て決めるか」という形で整理します。

この記事の結論

  • 越境ECの決済は、まず「売る相手の国」を決め、その国で主に使われている決済手段に対応できる決済代行を選ぶのが出発点です。
  • 比較するときは手数料率だけでなく、対応通貨、為替の換算方法、入金サイクル、入金先口座(日本円か外貨か)の4点をセットで見ます。
  • 自社サイトかモール・カート型かで選べる決済代行は変わるため、先にプラットフォームを決めてから決済を選ぶと手戻りが少なくなります。

越境ECの決済は何が国内と違うのか

国内ECなら、クレジットカードとコンビニ払い、いくつかのQR決済を用意すれば、だいたいの買い物客をカバーできます。越境ECではこの前提が崩れます。国や地域ごとに「みんなが使っている支払い方法」が違い、それが用意されていないと、商品ページまで来た人がカートで離脱してしまいます。

もう一つの違いは通貨です。表示価格を日本円にするのか現地通貨にするのか、決済時にどのレートで換算されるのか、売上が日本円で入るのか外貨で入るのかによって、手元に残る金額が変わります。国内ECでは考えなくてよかった為替の論点が、越境では常について回ります。

加えて、不正利用対策とチャージバック(カード保有者からの支払い取消請求)の扱いも重くなります。海外取引は不正検知の基準が国内と異なることがあり、決済代行がどこまで対策機能を持っているかは、売上規模が大きくなるほど効いてきます。

決済手段を決める前に、売る国を1〜2か国に絞る

最初にやるべきは、決済サービスを探すことではなく、売る相手を決めることです。「世界中どこでも」は一見よさそうに見えますが、決済も配送も税関対応も、国ごとに前提が違います。結果としてどの国にも最適化されないサイトになりがちです。

絞り方の目安は、すでに問い合わせや注文が来ている国、日本語や自社商材と相性のよい市場、配送コストが現実的な近隣市場、の順に見ていくことです。アジア圏(台湾、香港、シンガポールなど)は配送日数が短く、日本製品への関心も届きやすいため、最初の一歩として検討されることが多い地域です。

国が決まると、必要な決済手段が自動的に絞れます。たとえば台湾向けなら、国際ブランドのクレジットカードに加えて、現地でよく使われているコンビニ払いや現地系の決済手段への対応が話題になります。「台湾 決済代行」で探すときも、社名ではなく“台湾の現地決済手段に対応しているか”を条件に検索すると、比較が早くなります。

越境EC向け決済代行のタイプと、向いている会社

越境で使われる決済サービスは、大きく3つのタイプに分けると整理しやすくなります。1つ目は、海外送金・受取に強く、アカウント間の支払いとして広く認知されているタイプ(PayPalなどが代表例として挙がります)。個人・小規模事業者でも導入しやすく、買い手側の安心感もあるため、月間の注文数がまだ少ない段階や、まず海外販売を試したい段階に向きます。

2つ目は、国内の決済代行として自社サイトやカートに組み込むタイプで、日本語サポートと国内商習慣への理解がある一方、海外の現地決済手段への対応は事業者によって差があります。日本語でやりとりしながら、アジア圏の決済手段も少し足したい、という場合に検討対象になります。KOMOJUのように、国内外の決済手段をまとめて扱う方向のサービスもこの層で名前が挙がります。

3つ目は、多通貨・多国の決済手段を1つの契約でまとめて扱うグローバル型で、Adyenなどが代表的に語られます。対応国や通貨の幅が広く、複数国に同時展開する規模の事業には合いますが、導入に技術的な実装や一定の取引規模が前提になることがあります。ひとり会社の立ち上げ期に無理に選ぶより、伸びてきた段階で移行を検討する方が現実的です。

どのタイプも、料金体系・対応通貨・導入条件は変わります。具体的な費用や対応範囲は、各社の公式サイトで最新の情報を確認してください。

手数料・通貨・入金は、この4点をセットで比べる

比較表を作るとき、決済手数料率だけを横に並べても判断できません。見るべきは4点です。①決済手数料(率と、取引ごとの固定費の有無)、②為替の換算方法(どのタイミングのレートで、どの程度の上乗せがあるか)、③入金サイクル(締めから入金までの日数と最低入金額)、④入金先(日本円口座に円で入るのか、外貨のまま受け取れるのか)。

特に見落としやすいのが②と④の組み合わせです。外貨で売って日本円口座に円で入金される場合、決済事業者側で換算が行われます。一方、外貨口座で受け取り、自分のタイミングで両替する設計なら、為替の扱い方を自社でコントロールできます。どちらがよいかは、仕入れが外貨建てかどうか、売上規模がどの程度かで変わります。

③の入金サイクルは資金繰りに直結します。海外向けは国内より入金まで日数がかかる設計もあるため、仕入れ代金の支払いタイミングと並べて確認しておくと安心です。なお、売上の前倒し受取をうたう資金調達サービスに安易に手を出さず、まずは入金サイクル自体を条件として比較することをおすすめします。

円建て表示にするか現地通貨表示にするかも、実は手数料の話とつながります。現地通貨で表示すれば買い手は比較しやすくなりますが、為替変動を自社が負うことになります。円建てなら自社の売上は読みやすい一方、買い手側のカード会社で換算が入り、最終的な請求額が分かりにくくなります。

導入までの手順と、用意するもの

手順は、①売る国と決済手段を決める、②プラットフォーム(自社サイト、カートASP、海外モール)を決める、③そのプラットフォームで使える決済代行を2〜3社に絞る、④申込・審査、⑤テスト決済、の順です。②を飛ばして決済から選ぶと、カートが対応しておらず契約し直しになることがあるので注意してください。

申込時に一般に求められるのは、法人であれば登記事項証明書などの会社の基本情報、代表者の本人確認書類、事業内容が分かるサイトのURLや商品情報、入金先口座の情報です。サイト側には、特定商取引法に基づく表記、返品・配送ポリシー、問い合わせ先を、海外の買い手にも読める形で用意しておくと審査がスムーズになりやすいです。

審査では取扱商材が確認されます。輸出規制や各国の販売規制にかかる商材は扱えないことがあるため、該当しそうな場合は事前に決済代行へ確認しましょう。テスト決済では、決済成功時だけでなく、失敗時・返金時の画面と通知も必ず一度は通しておくと、後のトラブル対応が楽になります。

税務・経理で先に決めておくこと

越境販売では、売上の計上をどの時点・どのレートで行うか、外貨建て取引の換算をどう処理するかといった論点が出てきます。輸出取引の消費税の取扱いや、国によっては現地の付加価値税(VAT/GST)の登録が関係することもあり、扱いは取引形態によって変わります。判断を自己流で固めず、早い段階で税理士に相談しておくと、後からの修正が減ります。

経理を回しやすくするには、決済代行の管理画面から取引明細をCSVなどで出力できるか、会計ソフトと連携できるかを導入前に確認しておきます。入金は手数料が差し引かれた純額で振り込まれることが多く、総額と手数料を分けて記録できる仕組みがないと、月次の突合に時間がかかります。

電子帳簿保存法やインボイス制度に関わる書類の保存方法も、国内取引と同じ考え方で整理しておく必要があります。要件の詳細は改正されることがあるため、所管官庁の最新資料を確認したうえで、自社の運用に落とし込んでください。

越境ECは、決済・物流・税務が同時に絡む領域です。契約形態や商材によって扱いが変わる部分が多いので、決済代行の契約前に一度、税理士(税務・経理の面)と、必要に応じて弁護士(利用規約や返品ポリシー、各国の販売規制の面)に相談し、自社の状況に合わせて確認することをおすすめします。

よくある質問

越境ECを始めるとき、PayPalだけで十分ですか?

まず海外販売を試す段階では、導入しやすく買い手にも認知されているため選択肢になります。ただし国や地域によって主流の決済手段は異なるため、注文が特定の国に偏ってきたら、その国でよく使われる決済手段に対応できる決済代行の追加を検討するとよいでしょう。

売上は日本円と外貨、どちらで受け取るのがよいですか?

仕入れや広告費を外貨で支払っているなら、外貨のまま受け取って同じ通貨で支払う方が両替の回数を減らせます。国内でしか支出がないなら日本円での受取がシンプルです。為替差の会計処理については税理士にご確認ください。

台湾向けに売る場合、どんな決済手段を用意すべきですか?

国際ブランドのクレジットカードに加えて、現地でよく使われる決済手段に対応しているかが比較の軸になります。対応状況は決済代行ごとに異なるため、「台湾の現地決済手段に対応しているか」を問い合わせて確認してください。

手数料はどこを見れば比較できますか?

決済手数料率だけでなく、為替の換算方法、入金サイクル、入金先通貨を合わせて比べます。料金体系や対応範囲は変更されることがあるため、各社の公式サイトで最新の条件を確認したうえで判断してください。

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この記事は一般的な情報をまとめたものです。税務・法務・労務の個別の判断については、税理士・弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。 料金や条件は変わることがあるため、お申し込み前に必ず各サービスの公式サイトで最新の内容をご確認ください。