創業融資とは|日本政策金融公庫と自治体の制度融資の違い
会社をつくるとき、多くの人が最初につまずくのが「開業資金をどこから調達するか」です。自己資金だけで足りればよいのですが、設備や仕入れ、数か月分の運転資金まで考えると、手元だけでは心もとないことがほとんどでしょう。そこで検討されるのが創業融資です。この記事では、創業融資にどんな種類があり、日本政策金融公庫と自治体の制度融資はどう違い、どちらから当たればよいのかを、判断の順番に沿って整理します。
この記事の結論
- 創業融資とは、事業実績がまだない創業期の会社や個人事業主向けに用意された融資の総称で、主な窓口は日本政策金融公庫と、自治体・金融機関・信用保証協会が連携する制度融資の2つです。
- 日本政策金融公庫は窓口が一本で全国どこでも申し込め、制度融資は自治体の関与があるぶん手続きに関係先が多くなる一方、地元金融機関との取引を最初からつくれるという違いがあります。
- マル経融資は商工会議所などの経営指導を一定期間受けた小規模事業者向けの制度で、これから開業する段階の創業融資とは対象が異なります。
創業融資とは何か|実績がない会社でも借りられる仕組み
創業融資とは、これから事業を始める人や、始めて間もない事業者を対象にした融資の総称です。通常の事業融資は過去の決算書を見て返済能力を判断しますが、創業期にはその決算書がありません。そこで、事業計画の中身と自己資金の準備状況、これまでの職務経験などを中心に審査する枠組みが用意されています。
対象になる期間は制度によって異なり、「開業前」から「開業後数年以内」といった形で区切られているのが一般的です。会社設立の前でも申し込める制度もあれば、設立登記後でなければ手続きが進まないものもあります。自分が今どの段階にいるかで選べる制度が変わるため、まずは開業予定日と設立日を紙に書き出すところから始めてください。
なお、融資は返済義務のあるお金です。補助金や助成金とは性質がまったく違います。「返さなくていいお金」と混同したまま資金計画を立てると、開業後の資金繰りが苦しくなります。返済が始まるタイミングと、その時期に売上がどこまで立っている見込みかを、必ずセットで考えておきましょう。
創業融資はどこで借りる?主な選択肢は大きく2つ
創業期の資金調達先として一般的に挙がるのは、日本政策金融公庫と、自治体の制度融資です。前者は政府が全額出資する金融機関で、創業支援を役割のひとつとして掲げています。後者は、都道府県や市区町村が金融機関・信用保証協会と連携して用意する融資制度で、自治体が利子や保証料の一部を補助する仕組みを設けている地域もあります。
この2つ以外に、民間の銀行や信用金庫に直接相談する道もあります。ただし創業期は実績がないため、信用保証協会の保証を付ける形になることが多く、結果的に制度融資と似た流れをたどるケースが少なくありません。地元の信用金庫に口座をつくり、担当者と顔をつなげておくこと自体は、その後の資金相談で役に立ちます。
家族や知人からの借入という選択肢もありますが、金額・返済条件・期日を書面に残さないと、後から贈与とみなされたり関係がこじれたりすることがあります。借用書を作る、振込で記録を残すといった形式を整えておき、税務上の扱いが心配な場合は税理士に確認してください。
日本政策金融公庫と自治体の制度融資はどう違う?
いちばん大きな違いは、関わる相手の数です。日本政策金融公庫は、公庫の支店に直接申し込み、公庫が審査して公庫が貸します。窓口が一本なので、動きがシンプルで日程も読みやすいのが特徴です。全国に支店があるため、地域によって制度の有無が変わることも基本的にありません。
一方、制度融資は自治体・金融機関・信用保証協会の三者が関わります。多くの地域では、まず自治体の窓口で相談して斡旋を受け、そこから金融機関に申し込み、並行して信用保証協会の保証審査を受ける、という流れになります。関係先が多いぶん時間がかかりやすい反面、自治体が利子や信用保証料の一部を補助する制度を設けている地域もあり、条件面で有利になることがあります。
もうひとつの違いは、取引金融機関との関係づくりです。公庫から借りても民間銀行との取引履歴にはなりませんが、制度融資は地元の銀行や信用金庫を通すため、最初から取引実績を積めます。将来的に運転資金の追加借入や当座の相談をしたいなら、この点は小さくありません。
どちらが向くかの判断としては、開業までの時間が限られていて手続きをシンプルに進めたいなら公庫を軸に、地域に根を張る business で地元金融機関との関係を早くつくりたいなら制度融資を軸に検討する、という整理がしやすいでしょう。両方に相談したうえで組み合わせる人もいます。金利や保証料などの具体的な条件は制度ごと・自治体ごとに異なり、改定もあるため、公庫の公式サイトとお住まいの自治体の公式サイトで最新の内容を確認してください。
マル経融資と創業融資は何が違う?
マル経融資(小規模事業者経営改善資金)は、商工会議所や商工会の経営指導を一定期間受けている小規模事業者を対象に、その推薦を受けて日本政策金融公庫から借りる制度です。つまり、すでに事業を営んでいて、指導を受けてきた実績があることが前提になります。
これに対して創業融資は、これから開業する人や開業して間もない人が対象です。「まだ商売を始めていない」段階で使えるかどうかが、両者を分ける大きなポイントになります。開業前の人がマル経融資を検討しても、対象期間の要件に当てはまらないことが多いでしょう。
ただし、商工会議所や商工会は創業相談そのものも受け付けています。マル経融資の対象でなくても、事業計画書の書き方を見てもらったり、地域の創業支援制度を教えてもらったりする窓口としては有用です。会員でなくても相談できる場合があるので、まずは地元の商工会議所に問い合わせてみてください。
申込みの流れと、先に用意しておくもの
時系列で見ると、①資金がいくら必要かの洗い出し、②自己資金の確認と記録の整理、③事業計画書の作成、④窓口への相談予約、⑤正式申込み、⑥面談、⑦審査結果の連絡、⑧契約・入金、という順に進むのが一般的です。相談から入金までには相応の時間がかかるため、開業予定日から逆算して余裕を持って動きましょう。
準備するものとして一般に挙がるのは、創業計画書(事業計画書)、資金の使いみちと調達方法をまとめた資金計画、自己資金を確認できる通帳、見積書や賃貸借契約書などの根拠資料、本人確認書類、法人であれば登記事項証明書などです。制度融資では自治体所定の申請書が加わります。必要書類は窓口ごとに異なるので、相談時に一覧をもらってください。
特に見られやすいのが、自己資金がどう貯まったかと、売上の根拠です。コツコツ積み立てた形跡がある通帳は説明しやすく、直前に一時的に入金されたお金は説明を求められることがあります。売上予測も「頑張ります」ではなく、客単価×想定客数×営業日数のように分解し、なぜその数字になるのかを自分の言葉で説明できる状態にしておきましょう。
面談では、これまでの職務経験と始める事業のつながりをよく聞かれます。同じ業界で働いてきた経験があるなら具体的に、未経験分野なら何で補うのかを整理しておくと、話がかみ合いやすくなります。
創業融資を使うメリットと、気をつけたい点
メリットとして挙げられるのは、開業直後の手元資金に厚みが出ることです。売上が安定するまでの数か月を現金で乗り切れるかどうかは、事業の継続性に直結します。また、融資を受ける過程で事業計画を数字に落とし込む作業自体が、自分の事業を見直す機会にもなります。
一方で、借入は返済義務を伴います。返済が始まる時期、毎月の返済額、その時点での見込み売上を並べて、無理のない金額に抑えることが大切です。「借りられるだけ借りる」ではなく「返せる範囲で必要な額を借りる」という順番で考えてください。
また、法人で借りる場合の保証の扱いや、資金使途の制約(設備資金と運転資金の区分など)は制度によって異なります。契約前に条件を読み込み、分からない点はその場で窓口に確認しましょう。
審査の結果は制度や個別の状況によって変わり、必ず通るものではありません。断られた場合も、理由を踏まえて計画を練り直し、時期を置いて再挑戦する人もいます。
迷ったら、どの順で相談するか
まず、開業予定日と必要資金額をざっくり決めます。次に、自己資金でまかなえる範囲を確認し、不足額を出します。この2つが決まらないうちに窓口へ行っても、話が具体的になりません。
そのうえで、開業までの時間が短く手続きをシンプルにしたいなら日本政策金融公庫の創業相談を、地元での事業で金融機関との関係を早くつくりたいなら自治体の創業支援窓口を、それぞれ最初の相談先にするとよいでしょう。自治体によっては創業セミナーの受講が制度融資の要件になっていることもあるため、早めの確認が役立ちます。
創業融資は、資金調達であると同時に、事業計画・税務・登記が絡み合う場面でもあります。事業計画の数字の組み立てや資金繰り表の作り方は税理士に、会社設立の登記やスケジュールは司法書士に相談すると、手戻りが少なくなります。制度の要件や最新の条件は必ず日本政策金融公庫および各自治体の公式サイトで確認したうえで、判断に迷う部分は専門家に相談してください。
よくある質問
創業融資は会社設立前でも申し込めますか。
制度によっては開業前でも相談・申込みができますが、法人として借りる場合は設立登記が済んでいることを前提とする手続きもあります。個人で申し込むか法人で申し込むかによって流れが変わるため、設立予定日を伝えたうえで窓口に確認してください。
自己資金がまったくなくても創業融資は受けられますか。
自己資金の準備状況は審査で見られる要素のひとつで、まったくない状態では説明が難しくなることがあります。金額だけでなく、どう貯めてきたかの経緯も確認されるため、通帳などの記録を整理しておきましょう。
日本政策金融公庫と制度融資は両方使えますか。
制度上、どちらか一方しか使えないと決まっているわけではなく、両方に相談する人もいます。ただし全体の借入額と返済負担が過大にならないことが前提なので、資金計画を作ったうえで各窓口に相談してください。
申込みから入金までどのくらいかかりますか。
制度や混雑状況、書類の準備具合によって変わり、一概には言えません。特に制度融資は関係先が多いぶん時間がかかりやすいため、開業予定日から十分に余裕を持って相談を始めることをおすすめします。