マイクロ法人の設立費用と維持費|年間費用とランニングコストの考え方
マイクロ法人をつくるか迷っている人がいちばん気にするのが「結局いくらかかるのか」です。設立時に一度だけ出ていくお金と、会社がある限り毎年出ていくお金は性質がまったく違うので、分けて考えると判断しやすくなります。この記事では、金額そのものではなく「どんな費目が発生し、どこで金額が決まり、どこを削れるのか」を順番に整理します。実際の金額は制度や各社のサービス内容で変わるため、最後に確認先もあわせて示します。
この記事の結論
- マイクロ法人の費用は、設立時に一度だけかかる「設立費用」と、毎年かかる「維持費」に分けて考えると見積もりやすくなります。
- 設立費用は登記にかかる法定費用と書類作成の実費が中心で、株式会社か合同会社かによって発生する項目が変わります。
- 維持費は、赤字でもかかる法人住民税の均等割、税理士などの専門家費用、社会保険料、会計ソフトや登記住所などの固定費が主な内訳です。
マイクロ法人の費用は「設立費用」と「維持費」に分けて考える
マイクロ法人の費用を調べるとき、最初にやるべきなのは時間軸で分けることです。設立費用は会社をつくる一度きりの支出、維持費は会社が存在する限り毎年発生する支出で、判断に与える影響がまったく違います。設立費用は貯金から一度出せば終わりますが、維持費は売上がゼロでも出ていくため、こちらのほうが継続の可否を左右します。
具体的には、設立費用は「登記に関する法定費用」「定款まわりの費用」「印鑑や証明書などの実費」「専門家に頼む場合の報酬」の4つに分かれます。維持費は「税金の最低ライン」「決算・申告の専門家費用」「社会保険料」「会計ソフトや住所などの固定費」の4つです。この8項目を自分の状況に当てはめて埋めていけば、おおよその全体像がつかめます。
金額は、法定費用であれば法務局や国税庁などの公式資料、サービス費用であれば各社の公式サイトで最新の金額を確認してください。ネット上の記事に書かれた金額は時点が古いことがあるため、最終的な見積もりは一次情報で確かめるのが安全です。
設立にかかる法定費用
どちらの形態でもかかる、国が定めた費用です。設立代行サービスの手数料は、これとは別にかかります。
| 項目 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 登録免許税(設立登記) | 資本金の額の1,000分の7。15万円に満たないときは1件につき15万円 | 資本金の額の1,000分の7。6万円に満たないときは1件につき6万円 |
| 定款の認証手数料 | 資本金100万円未満 3万円/100万円以上300万円未満 4万円/300万円以上 5万円 | 日本公証人連合会の手数料の案内に掲載なし |
| 定款の謄本(同一の情報の提供) | 1枚につき250円 | 日本公証人連合会の手数料の案内に掲載なし |
| 収入印紙(紙の定款の場合) | 4万円 | 日本公証人連合会の手数料の案内に掲載なし |
設立費用の内訳は?株式会社と合同会社で変わるところ
設立時に発生する代表的な費目は、登記申請にかかる登録免許税、定款の認証や電子定款に関する費用、会社の実印の作成費、登記事項証明書や印鑑証明書の取得費です。このうち登録免許税は資本金の額によって計算方法が決まっており、金額の考え方は法務局の案内で確認できます。
株式会社と合同会社で大きく変わるのが、定款の扱いです。株式会社は公証役場での定款認証という手続きがあり、その分の費用と手間が発生します。合同会社はこの手続きがないため、設立時の負担は相対的に軽くなります。ひとりで事業をする前提で、対外的な信用より設立の軽さを優先するなら合同会社、取引先や採用で会社形態を見られる可能性が高いなら株式会社、という順で検討するとブレにくくなります。
紙の定款には収入印紙が必要になりますが、電子定款で作成する場合はこの負担が発生しない扱いになっています。電子定款には専用のソフトや電子証明書が必要なため、自分で用意するか、対応している専門家やオンラインサービスに任せるかを比べて決めます。一度きりの手続きなので、時間をお金で買う判断もしやすい部分です。
毎年かかる維持費の正体|赤字でも出ていくお金
維持費でまず押さえるべきは、法人住民税の均等割です。これは所得がゼロでも、会社が存在していれば課される仕組みで、金額は自治体や資本金・従業員数の区分によって変わります。マイクロ法人を「休眠させずに持ち続ける」場合の最低コストにあたる部分なので、お住まいの自治体の公式サイトで金額の区分を確認しておくと安心です。
次に大きいのが決算・申告まわりの費用です。法人の決算書と申告書は個人の確定申告より項目が多く、自分で作る人もいますが、税理士に依頼するケースも一般的です。顧問契約にするか決算だけ依頼するかで費用は変わるため、複数の事務所に見積もりを取り、含まれる作業範囲まで比較してください。
さらに、役員報酬を出すと社会保険への加入が関わってきます。法人は原則として社会保険の適用事業所となり、保険料は会社と本人で負担します。報酬額の決め方によって負担も変わるため、金額の設計は税理士や社会保険労務士に相談しながら決めるのが現実的です。
このほか、会計ソフトの利用料、法人口座の維持や振込にかかる費用、バーチャルオフィスなど登記住所を借りている場合の利用料が、毎月または毎年発生します。これらは各社の公式サイトで最新の料金を確認してください。
「月いくら」で考えるときの組み立て方
年間費用を12で割って「月いくら」に直すと、続けられるかどうかの判断がしやすくなります。組み立ての順番は、①赤字でもかかる税金の最低ライン、②決算・申告の専門家費用を12で割った額、③会計ソフトや住所などの月額固定費、④役員報酬を出す場合の社会保険料、の4段です。①〜③までが「事業がほぼ動いていなくても出ていく額」で、ここが自分の許容範囲に収まるかをまず見ます。
次に、売上の見込みと突き合わせます。マイクロ法人は小さく維持することが前提なので、固定費が月々の利益を食いつぶす構造になっていないかを確認します。もし①〜③だけで手元が苦しくなるなら、法人化を急がず個人事業のまま様子を見る、という選択も十分あり得ます。
逆に、取引先が法人格を求めている、社会保険の扱いを整理したい、責任の範囲を分けたいといった費用以外の理由があるなら、維持費は「その目的を得るための年会費」と捉えると納得しやすくなります。費用だけで決めず、何のために法人にするのかを一度言葉にしてみてください。
設立から1年目までにやることと、費用が発生するタイミング
時系列で見ると、最初にやるのは会社の基本事項を決めることです。商号、本店所在地、事業目的、資本金、役員、事業年度を決め、会社実印を作ります。ここで印鑑代と、住所を借りるなら初期費用が発生します。
次に定款を作成し、株式会社なら公証役場で認証を受けます。その後、資本金を払い込み、必要書類をそろえて本店所在地を管轄する法務局に登記を申請します。登録免許税はこのタイミングで納めます。登記が完了したら、登記事項証明書と印鑑証明書を取得します。
登記後は、税務署へ法人設立届出書や青色申告の承認申請書などを提出し、都道府県・市区町村にも設立の届出をします。役員報酬を出すなら年金事務所への社会保険の手続きも行います。提出期限が設けられている書類があるため、登記完了後の数週間はまとめて片づけると抜けにくくなります。必要書類の詳細は、国税庁や日本年金機構の公式資料で最新の様式を確認してください。
そして事業年度の末日から一定期間内に、決算と法人税の申告を行います。ここで決算費用が発生します。1年目の資金繰りを考えるときは、設立時と決算時の2回に支出の山が来ることを前提に置いておくと慌てずに済みます。
費用を抑えたいときに見直す順番
削りやすいものから順に見ていきます。最初は会計ソフトや住所などの月額サービスで、機能が過剰でないか、事業規模に合っているかを見直します。次に、書類作成を自分でやるか外注するかの線引きです。設立手続きは自分でも進められますが、時間がかかるため、本業の時間単価と比べて判断します。
一方で、削るリスクが大きいのが決算・申告と社会保険まわりです。ここを自己流で進めると、後から修正や追加の手続きが必要になり、かえって費用と時間がかかることがあります。判断に迷う部分は専門家に任せ、日々の記帳など自分でできる作業を内製化する、という分け方が現実的です。
また、法人住民税の均等割のように、存在しているだけで発生する費用は工夫で減らせるものではありません。事業を止める予定があるなら、会社をどう扱うか(継続するのか、手続きを取るのか)を早めに検討しておくと、無駄な支出を抑えやすくなります。
費用の見通しと役員報酬の設計は、税金と社会保険の両方に関わります。金額の妥当性や手続きの進め方については、税理士や社会保険労務士、登記の実務については司法書士に相談し、自分の状況に合わせた見積もりを取ることをおすすめします。
よくある質問
マイクロ法人の維持費は、売上がなくてもかかりますか。
はい、会社が存在していれば法人住民税の均等割が課される仕組みになっており、所得がゼロでも発生します。加えて、決算・申告の費用や会計ソフトなどの固定費もかかります。金額の区分は自治体の公式サイトで確認してください。
株式会社と合同会社では、どちらが費用を抑えられますか。
設立時に限れば、定款認証の手続きがない合同会社のほうが項目が少なく、負担は軽くなる傾向があります。ただし維持費の構造は大きく変わらないため、対外的な信用や将来の資金調達の予定も含めて選ぶのが現実的です。
設立手続きは自分でできますか。専門家に頼むべきですか。
登記申請は自分で行うこともできますが、書類の不備で補正が必要になることもあります。時間をかけたくない場合や、定款の内容に迷いがある場合は、司法書士に相談すると進めやすくなります。
役員報酬を出すと社会保険料はどうなりますか。
法人は原則として社会保険の適用事業所となり、報酬額に応じた保険料を会社と本人で負担します。報酬の決め方で負担額も税務上の扱いも変わるため、設計は税理士や社会保険労務士にご確認ください。