事業目的は何個まで書けるか|多すぎる場合のデメリットと順番の決め方

・会社設立・登記・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

会社設立の準備で定款を書き始めると、多くの人が「事業目的っていくつまで書けるんだろう」で手が止まります。将来やるかもしれないことを全部入れたくなる一方で、「多すぎると印象が悪い」という話も聞く。この記事では、法律上の上限の考え方、実務で多すぎると起きること、そして何を何番目に書くかの決め方を、判断の順番に沿って整理します。

この記事の結論

  • 会社法や商業登記のルール上、定款に書ける事業目的の個数に明確な上限は定められておらず、数だけを理由に登記が通らないという性質のものではありません。
  • 一方で、事業目的が多すぎると、金融機関の口座開設審査や融資審査、許認可の申請、取引先からの与信の場面で「何の会社か分かりにくい」と受け取られることがあります。
  • 実務上は、今すぐ売上が立つ事業を先頭に置き、数年以内に着手する見込みのあるものまでに絞って、最後に包括条項を置く構成がよく使われます。

事業目的は何個まで書ける?法律上の上限と実務上の目安

まず前提から整理します。会社法にも商業登記の手続きにも、「事業目的は◯個まで」という個数の上限は定められていません。そのため、数が多いという理由だけで登記が受け付けられないという性質のものではありません。

ただし、登記実務では、事業目的は「その内容が明確であること」「営利性があること」「適法であること」といった観点で見られます。個数ではなく、一つひとつの書き方が問題になるということです。抽象的すぎる表現や、意味の取れない言葉は、法務局に事前相談した段階で修正を求められることがあります。

実務でよく見かけるのは、10個前後までにおさめる構成です。これは法律上の基準ではなく、「読んだ人が会社の事業像をつかめる範囲」という実感に基づく目安です。20個、30個と並べることも手続き上は可能ですが、後述するデメリットとのバランスで考えることになります。

事業目的が多すぎるとどうなる?デメリットを具体的に

最初に影響が出やすいのは、法人口座の開設です。金融機関は口座開設時に事業実態を確認しますが、定款に関連性の薄い事業が大量に並んでいると、「実際に何をしている会社なのか」の説明に時間がかかることがあります。設立直後は実績で示せるものが少ないぶん、定款の記載が判断材料として見られやすい場面です。

次に、融資や補助金の申請です。申請書に書いた事業内容と、定款の事業目的の並びに大きなズレがあると、追加の説明を求められることがあります。定款は会社の「やると宣言していること」の一覧なので、事業計画と噛み合っていないほど説明の手間が増える、と考えておくと分かりやすいでしょう。

許認可が必要な事業でも注意が必要です。建設業、人材紹介、古物商、旅行業などは、定款の事業目的に該当する記載があることが前提になる場合があります。逆に、関係のない事業が多数並んでいること自体で不利になるとは限りませんが、許認可の担当窓口から事業実態の確認を求められることはあります。要件の詳細は、それぞれの所管官庁や窓口の資料で確認してください。

もうひとつ、見落とされがちなのが取引先や採用候補者からの見え方です。登記事項証明書は誰でも取得できるため、事業目的は外から見える情報です。脈絡のない事業が並んでいると、専門性が伝わりにくくなることがあります。

逆に少なすぎるとどうなる?あとで変更する手間とコスト

では最小限に絞ればいいかというと、そう単純でもありません。定款に書いていない事業を始めること自体が直ちに禁じられるわけではありませんが、許認可の申請や、取引先との契約、金融機関の審査の場面で「定款に記載がない」ことが引っかかる可能性があります。

事業目的を後から追加するには、株主総会の特別決議で定款を変更し、法務局に目的変更の登記を申請します。登録免許税がかかり、司法書士に依頼すれば報酬も発生します。金額は法令や事務所によって異なるため、最新の情報を法務局や依頼先の公式サイトで確認してください。

つまり、「少なすぎると変更コストがかかる」「多すぎると説明コストがかかる」という両側のコストのバランスをとる話になります。どちらに寄せるかは、次の基準で決めます。

何個書くかの決め方|この順に当てはめる

判断は次の順番で進めると迷いにくくなります。第一に、設立直後から売上が立つ事業。これは必ず入れます。第二に、許認可が必要で、その許認可を取る予定がある事業。許認可は定款の記載が前提になる場合があるため、取得予定があるなら設立時に入れておくほうが手戻りが少なくて済みます。

第三に、おおむね2〜3年以内に着手する見込みがあり、具体的に説明できる事業。ここまでが「入れる」候補です。第四に、いつやるか分からない、説明を求められても答えにくい事業。これは一旦外します。実際に着手が見えた段階で目的変更をするほうが、定款はすっきりします。

この基準で並べたとき、合計がおおむね10個前後におさまるなら、そのまま進めて構わないでしょう。15個を超えるようなら、似た事業をひとつの条文にまとめられないかを見直します。たとえば「ウェブサイトの企画・制作・運営」のように、関連する行為を一文にまとめる書き方です。

最後の一項目として「前各号に附帯関連する一切の事業」という包括条項を置くのが一般的です。これがあることで、主たる事業に付随する細かな業務まで一つずつ書き出す必要がなくなります。ただし、包括条項があれば何でもできるわけではなく、関連性のない新規事業までカバーするものではない点に注意してください。

事業目的の順番はどう決める?先頭に置くものが会社の顔になる

順番にも意味があります。登記事項証明書では、定款に定めた順に事業目的が並びます。読む人は上から読むため、先頭の1〜3個で会社の印象がほぼ決まる、と考えておくといいでしょう。

そこで、順番は「売上の大きさ」ではなく「会社として一番説明したい事業」を先頭にします。多くの場合は、設立直後のメイン事業がそのまま先頭です。許認可を取る予定の事業がある場合は、その事業を上位に置くと、申請時に説明がしやすくなります。

2番目以降は、先頭の事業と関連の深いものから並べます。関連事業をかためておくと、読んだときに事業の広がり方が伝わります。将来向けの事業や、性質の異なる事業は後半へ。そして最後に包括条項、という構成が基本形です。

なお、順番を後から入れ替えるには定款変更と登記が必要になります。設立時に少し時間をかけて並びを考えておくと、あとが楽です。

実際の進め方|設立前に何を用意し、どこに出すか

手順としては、まず事業目的の草案を作ります。このとき、同業他社の登記事項証明書を法務局で取得して表現を参考にする方法や、法務局が公開している資料を見る方法があります。自分の言葉で書くよりも、実務で使われている表現に寄せるほうが、後の修正が少なくて済みます。

次に、許認可が必要な事業を含む場合は、その許認可の窓口に事業目的の文言を事前に相談します。建設業許可や人材関連の許可などは、求められる文言が具体的に決まっていることがあるためです。設立後に「この文言では要件を満たさない」と分かると、目的変更の登記が必要になります。

文言が固まったら、定款に落とし込みます。株式会社の場合は公証役場で定款の認証を受け、その後、本店所在地を管轄する法務局へ設立登記を申請します。合同会社は定款認証が不要な点が異なります。認証や登記の前に、法務局の登記相談や公証役場に文言を確認してもらうと、差し戻しを減らせます。

設立後に事業を追加したくなったら、株主総会の特別決議で定款を変更し、決議から所定の期間内に目的変更の登記を申請します。追加のタイミングは、新規事業の契約や許認可申請より前に済ませておくほうが安全です。

迷ったら専門家に確認を

事業目的は、書き方ひとつで許認可の可否や口座開設の説明のしやすさが変わることがある、地味ですが影響の長い項目です。特に、許認可が絡む事業や、複数の事業を並行して立ち上げる予定がある場合は、自己判断で進めると設立後にやり直しが発生することがあります。

文言や登記の手続きについては司法書士、許認可の要件については所管官庁の窓口や行政書士、事業ごとの税務の扱いについては税理士に確認するのが確実です。設立準備の早い段階で一度相談しておくと、定款の作り直しや目的変更の登記といった手戻りを避けやすくなります。

よくある質問

事業目的は何個まで書けますか?

会社法や商業登記のルール上、個数の上限は定められていません。ただし実務では、事業像が伝わる範囲として10個前後にまとめる構成がよく使われます。個数よりも、一つひとつの文言が明確かどうかが見られます。

事業目的が多すぎると登記できないことはありますか?

数が多いこと自体を理由に登記が受け付けられないという性質のものではありません。ただし、内容が不明確な文言や、営利性・適法性の観点で疑義がある文言は修正を求められることがあります。事前に法務局の登記相談で確認しておくと安心です。

定款に書いていない事業を始めてもいいですか?

定款に記載がない事業を始めたことが直ちに問題になるとは限りませんが、許認可の申請や金融機関の審査で記載を求められる場面があります。継続的に行う事業であれば、定款変更と目的変更の登記を検討してください。判断に迷う場合は司法書士にご相談ください。

事業目的の最後に「前各号に附帯関連する一切の事業」を入れる必要はありますか?

法律上の義務ではありませんが、多くの定款で使われている一般的な条項です。主たる事業に付随する細かな業務を一つずつ書き出さずに済む利点があります。ただし、関連性のない新規事業まで当然にカバーするものではない点にご注意ください。

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